Mr.サンデー特別版・新証言&極秘資料独占入手『東京オリンピックと世紀の大犯… 2014.10.12

かつて日本は今と同じ夢を追いついにその日にたどりついた
オリンピック東京大会の開会を宣言します。
アジアで初めての世界のひのき舞台
だが悲願の招致を決めたそのときからこの国は時代の大きなうねりの中に入りこんだ
オリンピックという強烈な光の向こうに生まれた…
今も語り継がれるおぞましき3つの事件がある
時代の闇に現れた3人の死刑囚
東京入谷の公園で…
吉展ちゃんは戻らなかった
(父)お願いします。
逮捕されたのは足に障害を持ち好景気に取り残された時計職人…
その小原を追い詰めたのは声
自らが残した…
声を頼りに警察がマスコミが誘拐犯を追った
(女性)お願いします。
吉展ちゃんを返してください。
お願いします。
やがてその動きは日本中へと広がり見えざる犯人は国民の間で時代の怪物へと変貌していく
しかし肉声はもう一つ残されていた
それはあるラジオ局がスクープした…
戦後最大の誘拐事件
栃木県塩原温泉にあるホテル日本閣の経営者夫婦が次々に失踪する事件が発生した
人々が疑惑の目を向けたのは新たに旅館のあるじとなった女…
(カウ)あんたにもってこいの仕事があるんだけど。
日本閣の女将さんを片付けて。
(男性)えっ?
女を武器に男を押しのけオリンピックで一獲千金を狙った
(男性)うわっ!
独占入手した捜査関係者の取り調べ記録
そこに金と色にまみれた女の執念が記されていた
(男性)これが日本閣。
欲望の舞台。
ホテル日本閣でいったい何があったのか?
戦後初めて死刑が執行された女性
魔性の女…
悪魔の申し子と呼ばれた男による…
5人をためらいなく次々と殺害した男の名は…
急速に発達した交通網を利用して捜査の網をかいくぐりエリートに成り済まして世間を欺く
その西口の…
(るり子)お父さん。
(古川)うん?
少女と家族が西口と過ごした恐怖の一夜に何が?
われわれが入手した50年前の極秘の警察資料にはその非情な犯罪が克明に記されていた
西口がいた時代そのものが彼の復讐の相手だったのか?
戦後最悪の連続殺人事件
東京オリンピックに突き進む中日本を震撼させた3つの凶悪事件
50年の時を経てその謎と真相が今明かされる
(宮根)半世紀前日本は今と同じ目標に突き進んでいました。
東京オリンピック。
人々が歓喜したオリンピックのまばゆい光。
(宮根)しかしそれは一方で深い闇も生みだしました。
戦後最大の誘拐事件といわれる吉展ちゃん誘拐事件の犯人。
小原保元死刑囚。
2つの肉声が今も残されています。
一つは身代金を要求したときの電話のやりとり。
(小原)50万揃えといてください。
(母)でも確実お宅ですか?
(小原)間違いないよ。
(母)間違いないですか。
(小原)うん。
間違いないよ。
間違いない。
そしてもう一つは今回われわれが新たに入手した逮捕前に疑惑に答えていた音声です。
(小原)結局その犯罪のやり方が緻密だということは法律のことを知ってる人じゃないかと。
2つの肉声と新たな証言から凶悪犯のもう一つの顔が見えてきます。
ここはかつて戦後最大と呼ばれた誘拐事件の舞台だった
それはオリンピック開催をよくとしに控えた1963年3月のことだった
(母)さあ。
行きましょう。
(母)吉展。
今日お出掛けだから靴もいい方にしようね。
(吉展)やった。
その日吉展ちゃんがいい靴を履いていたのは偶然にすぎない
事情により母は1人で出掛けることとなったが吉展ちゃんの足元はそのままだった
(吉展)僕公園で遊んでくるね。
(女性)はい。
いってらっしゃい。
そのいい靴が全ての歯車を狂わせた
犯人は後にその高そうな靴を見て誘拐する子を決めたと語っている
その日吉展ちゃんは帰ってこなかった
2日後。
誘拐と悟った両親は当時まだ高価だった録音機を購入
この新しい機器によって事件は大きく変貌する
(刑事)録音機を用意していただいたのはありがたいんですがまだ誘拐と決まったわけでは。
(父)じゃあ何なんですか?4歳の子が2日も一人で遊んでるとでもいうんですか?
(刑事)いや。
そうは言ってませんが。
そしてその電話はかかってきた

脅迫電話の肉声が今も残されている
50万円。
現在のおよそ800万円を要求するも東北なまりが強くよく聞き取れない
しかし結局犯人は現れなかった
その声の主とは…
この不気味な脅迫電話で日本中を敵に回した男
ここからの6日間で小原の脅迫電話は実に8回に及んだ
初めは午後5時から10時ごろまでに集中しているが後半は深夜そして早朝と時間を選ばず執拗にかかってきている
その妙に冷静な物言いが両親の心をもてあそぶ
3回目の電話は翌日夜10時すぎ
ついに母が電話に出た
そして翌日の4回目の電話から…
その5時間後の早朝5時35分
ついに受け渡しか
警察は色めき立ったが小原は冷静だった
実はこのとき小原は警察の動きを探るため近くからこの電話ボックスを監視していたという
その日の夜居ても立ってもいられず電話に出たのは吉展ちゃんの母だった
そしてその2時間後の午前1時25分
最後の脅迫電話がかかってきた

吉展ちゃん誘拐犯小原からの最後の要求は…
戦後最大の誘拐事件
吉展ちゃん誘拐犯から最後の脅迫電話がかかってきた

このときも電話に出たのは母
(母)もしもし?
今度こそ本当の受け渡しに思われた
私一人ですぐに持ってこいって言ってます。
(刑事)分かりました。
これが身代金です。
中身は新聞紙ですが。
刑事さん。
私たちは本物のお札を持っていきたいんです。
(父)お願いします。
もし偽札をつかませて怒らせでもしたら…。
(父)吉展の命はないかもしれない。
(父)お願いします。
(母)お願いします。
犯人が指定した受け渡し場所は自宅から車でわずか1分ほどの…
ビルの脇のトラックに金を置けとの指示
そこに吉展ちゃんの持ち物を置いておくという
脅迫電話からわずか11分後
トラックの荷台にあったのは…
あの靴だった
(母)吉展…。
その母の姿を見届ける視線
そして…
犯人に見られないよう回り道をした警察は3分後に到着
このとき全ては終わっていた
戻ってきたのはあの片方の靴だけだった
(アナウンサー)50万円はまんまと持ち去られてしまいました。
見えざる誘拐犯に立ち上がったのは日本中の母だった
まるで自分の子供のように声をからして呼び掛けた
(女性)吉展ちゃんを捜してください。
お願いします。
当時絶大な人気を誇っていた双子の歌手ザ・ピーナッツも…
こうして吉展ちゃん事件は日本中が注目する社会現象となっていった
その原動力となったのは警察が公開したあの脅迫電話の声だった
(アナウンサー)皆さん。
これが犯人の声です。
街角で。
ラジオで。
テレビで
その声は繰り返し流された
(犯人)品川自動車。
それでお金をもらって1時間ぐらいたってから子供の置く場所を指定します。
(女性)この犯人の声あんたそっくりだね。
(小原)よせよ。
小原保。
30歳。
福島県出身
足が不自由なこの男は借金に追われていた
(男性)お前この前の5万円今すぐ返せよ。
さもないと警察突き出すぞ。
(小原)ちょっ…。
待ってください。
(小原)今月末には返しますから。
(男性)そう言って今まで何回言ってんだよ!今度という今度はな許せないんだよ!
(小原)すっすいません。
(男性)何カ月も同じこと言いやがって。
金返せよ。
金返せってんだよ。
お前。
金返せ!
(小原)すいません!
履いていた奇麗な靴に心が揺れた
(小原)坊や。
いい水鉄砲持ってるね。
(吉展)うん。
本当はねとってもよく飛ぶんだけどね水が出なくなっちゃったの。
(小原)どれ。
見してごらん。
(子供)じゃあ僕帰るね。
(吉展)バイバイ。
(子供)バイバイ。
(小原)ああ。
これなら直せそうだぞ。
どれ。
おじさんの家に行けば道具があるから。
直してあげようか?
(吉展)ホント?
(小原)ああ。
こっちだよ。
(店主)はい。
キャラメル。
(吉展)おじちゃん。
ありがとう。
ちゃんとお礼が言えて坊やはいい子だな。
さっ。
あっちだよ。
(吉展)うん。
この後の吉展ちゃんの一言が…
(吉展)おじちゃん。
(小原)うん?
(吉展)おじちゃんは足が痛いんだね?
(小原)ああ。
そうだね。
小原の心に突き刺さった
(小原)ここがおじちゃんの家なんだけどまだ誰も帰ってきてないから裏で待ってようか?
(吉展)うん。
(吉展)おじちゃん。
おうちに帰ろうよ。
おじちゃん。
おうちに帰ろうよ…。
それから1週間
警察の裏をかきまんまと身代金50万円を手にした小原は…
(女性)どうしたの?出てったっきりで。
(小原)ちょっと大きなもうけ口があったんだ。
(女性)うん?
(小原)ほら。
20万。
残りの金も借金返済で瞬く間に消えたという
(小原)誰にも言うなよ。
世の中は必死にあの声の主を追っていた
(犯人)あのう。
お宅以外はね…。
その特徴的な声に多くの人が反応
「小原では?」という情報が多数寄せられた
しかし警察は声から犯人像を40歳から55歳と推定し小原をシロと判断した
30歳という懸け離れた年齢
さらに足が悪い小原が身代金を奪い素早く逃げ切れるはずがないという意見も多かったという
ラジオ局の3人の記者にもたらされたタレコミから事態は大きく動き始める
(伊藤)四方。
(四方)はい。

(伊藤)はい。
文化放送報道部。
(伊藤)えっ?吉展ちゃん誘拐事件の犯人に声が似てるやつがいる?
まさに小原の情報だった
(伊藤)絶対に見逃すなよ。
まあ相手は足が悪いらしいから逃げられることはないと思うが。
(滝)はい。
(伊藤)よし。
分かれて見張ろう。
四方はここで見張ってろ。
(四方)分かりました。
入社2年目の新人四方恒充
張り込み場所は愛人が経営するという小料理屋の前
待つこと5時間
その男はやって来た
(伊藤)やつだ。
(四方)待て!おい。
待て!
吉展ちゃん誘拐犯に声が似ている男がいるとの情報をつかんだ3人の記者たち
そして…
(伊藤)やつだ。
(四方)おい。
ちょっと。
(小原)あっ。
くそっ。
(四方)待て!
(四方)おい。
待て!
(伊藤)滝。
やつを見たか?
(滝)いえ。
(伊藤)くそ。
まいたみたいだ。
(四方)小原。
小原保さんですよね?何だ?お前ら。
(四方)ラジオ局の…。
文化放送報道部の者です。
(小原)ラジオ局の記者?何だ。
デカじゃないのか。
そして…
(四方)小原さんの声が脅迫電話の声とそっくりだといわれてるんです。
(滝)小原さんの声を録音させてください。
何だって俺が。
(女性)あなたいいじゃない。
犯人じゃないなら話をしてあげれば。
小原はインタビューに応じるのか?
まあそういうことであれば…。
(伊藤)相すいません。
よし。
(四方)はい。
こうして文化放送の独占インタビューは始まった
(伊藤)いいな?
その貴重な音声が今も文化放送に残されている
記者の追及に小原は何を語るのか?
しらを切る小原
一方記者は小原が事件以降羽振りがよくなったという噂を追及する
とうとうと商売のコツを語る小原
しかしついにほころびを見せる
残酷なこと
だが吉展ちゃんの安否など誰一人分からぬはずだった
そして記者たちは事件の核心に迫る質問をした
小原保の独占インタビュー
最後に記者は事件の核心に踏み込んだ
小原は事件との関わりを最後まで否定した
あの脅迫電話の声と比べほとんどなまりはなく話す小原に記者たちは本当に小原が吉展ちゃん誘拐犯なのか悩んだ
(滝)警察に当ててみましょうか?今の段階では決め手に欠ける。
もし彼が犯人じゃなかったらどうするんだ?
放送は断念。
警察への情報提供も控えた
目の前にいた誘拐犯が擦り抜けてゆく
テープは封印された
50年の時を経てあの独占インタビューから何が分かるのか?私たちは取材をしました
四方恒充さん
小原に迫った3人の記者の一人です
50年ぶりにあの日の現場へと足を踏み入れます
足が悪いから身代金は奪えない
そんな警察の読みは間違っていました
(水谷)はい。
どうぞ。
(スタッフ)よろしくお願いします。
さらに小原と仕事上付き合いのあった水谷松郎さんに文化放送のインタビューテープを聞いてもらいました
(スタッフ)ホントですか?
(水谷)うん。
実は水谷さんは身代金が奪われた翌日借金返済に駆け回る小原に会っていました
大金を手に浮かれていたのです
ですがインタビューでは…
小原と同じ福島出身の知人にも聞いてもらいました
(小原のせき)
必死に平静を装い流ちょうに語ろうとした小原
しかしその冗舌が墓穴を掘ります
(小原)まあそういった教養のある人は…。
決定的な一言が耳に残りました
事件から1年
その半年後東京オリンピックが開幕
誘拐事件の記憶は人々から薄れていった
そして国家の威信を懸けた警備体制に警察は大動員を余儀なくされた
事件から2年後
わずかな専従班を残して捜査本部は解散した
迷宮入りもささやかれる中納得のいかない男がいた
文化放送の滝記者である
自分たちが追い掛けインタビューした男は誘拐犯ではなかったのか?
実はあの後記者たちは脅迫電話と聞き比べるため小原のもう一つの声を録音していた
(滝)小原保の声を電話越しに録音したものです。
脅迫電話と同じ電話越しの声を刑事に聞かせることにした
これが文化放送が録音した電話越しの小原の声
そしてこれが脅迫電話の声
もう一度比べてみると…
(小原)35〜36。
(犯人)50万…。
2つの声は重なった
そして文化放送報道部は小原逮捕を前にしてあの独占インタビューの放送を決断する
(アナウンサー)捜査当局では小原の慎重な裏付け捜査に入りましたが文化放送では小原の声を録音することに成功していました。
(アナウンサー)取材に当たった伊藤記者が当時の模様をお伝えします。
あのとき小原を捕まえた四方記者はこの放送を社内で聴いていたという
そして警察は小原の取り調べに踏み切った
しかし小原は口を割らない
それには訳があった
警察は小原取り調べに踏み切った
しかし小原は口を割らなかった
その訳を後にこうつづっている
・「かえしておくれ」
耐え切れぬ罪の重さと故郷の母
(男性)歩けっから。
福島の貧しい農村で育った小原
足を悪くしたのは履いていたわら草履のせいだった
(子供たち)えっちらおっちら保。
真冬でも1時間かけて学校に通いあかぎれからばい菌が入った
小原をいつもかばってくれたのが母だった
(小原の母)よかった。
取り調べでその母の様子を聞かされた
(刑事)いいか?お前のおふくろはな…。
それは取り調べ前刑事が最後の裏取り捜査に入ったときのことだった
(刑事)息子さんのことでちょっとお伺いしたいことがありまして。

(母)刑事さん!
(刑事)裏山まで追い掛けてきたんだ。
(刑事)そしてこう言った。
(刑事)保を悪いことする子に育てた覚えはねえ。
でももし犯人なら何とも申し訳ねえって。
こんなふうに体を折り曲げて…。
(母)申し訳ねえ。
申し訳ねえ。
申し訳ねえ。
(刑事)何度も何度も申し訳ねえ申し訳ねえって言ってたんだ。
(刑事)こっちをよく見ろ!
小原は自供した
それは好景気から取り残された男の犯行だった
(店主)うん?なかなかいいじゃないか。
まあよかったな。
この仕事は足が悪くても勤まるんだから。
ハハハ!
母の元を離れると世間は冷たかった
(男性)今まで何回言ってんだよ!
生活がすさみギャンブルに溺れた
そんなときあの靴を見た
履けなかった奇麗な子供靴
借金を返せればそれでよかったはずだった
(吉展)おじちゃん。
おうちに帰ろうよ。
おじちゃん。
おうちに帰ろうよ…。
(泣き声)
しかし吉展ちゃんが掛けた優しい一言が小原を本物の鬼にした
(吉展)おじちゃんは足が痛いんだね?
この子は自分の特徴を記憶した
もう返すに返せない

吉展ちゃん誘拐から827日たった1965年7月5日
吉展ちゃんは墓の下で遺体となって発見された
母の祈りは…。
日本中の祈りは届かなかった
告別式の朝遺体発見現場で女性が手を合わせていた
小原の母だった
そして吉展ちゃんの遺族にとなけなしの200円を記者に託し息子にこう言い残した
わら草履と
奇麗な子供靴
小原は息絶えた吉展ちゃんの鼻血をそっと拭ったという
あっ。
あっ。
うっ。
うあーっ。
うっ…。
貧しさと豊かさのはざまで自分を見失った男がそこにいた
事件から4年半後の1967年10月13日
小原保の死刑が確定した

(足音)・
(ドアの開く音)
(刑務官)小原保。
出房だ。
(小原)あのう。
(刑務官)うん?伝えてください。
今度生まれてくるときは真人間になって生まれてくるって。
戦後初めて死刑が執行された女性小林カウ
女を武器に殺人を繰り返した昭和の毒婦
捜査関係者の取り調べ記録を独占入手
(カウ)「埋めてしまえば完全犯罪だ」
(カウ)図星だろう?
(カウ)死刑だけは堪忍してね。
(刑事)名前は小林カウ。
52歳。
間違いないな?
(せきばらい)
小林カウ元死刑囚
戦後初めて死刑が執行された女性である
男たちをたぶらかし次々と殺害を繰り返した
これは番組が独自に入手した送検時のカウの実際の写真
その裏側のメモ
「写真は撮らないでねとくっくと異常な含み笑いをもらした」
当時昭和の毒婦と呼ばれ日本中を騒がせたその女は何者だったのか?
およそ50年前に惨劇が繰り広げられた温泉街に向かった
すると女の影はいまだに香水の残り香のように漂っていた
これは番組が独占入手した349枚に及ぶ捜査関係者の記録
そこには己の欲望のためには手段を選ばない女の一生が記されていた
温泉旅館を舞台に繰り広げられた連続殺人事件の真相
小林カウ元死刑囚。
事件に関する映像が何一つ残されていないことからこれまでテレビではほとんど取り上げられてきませんでした。
今回われわれは当時の捜査の内部資料を独自に入手しました。
日本閣殺人事件メモです。
捜査関係者の直筆で残忍な殺害の手口から驚くべき犯行の動機までが克明に記されています。
欲望の赴くまま迷いなく殺人を繰り返した小林カウ。
その強烈な本性が見えてきます。
(男性)おーい。
おーい。
世の中が変わろうとしていた
(男性)東京でオリンピックが決定したぞ。
(男性)東京でオリンピックが決まった。
おお。
おお。
東京でオリンピックが決まった。
(アナウンサー)注目の1964年オリンピック開催地は東京と決まり…。
5年後のオリンピック招致に成功した日本に大きなブームが押し寄せた
レジャーブームである
次々と生まれる温泉街やレジャー施設に観光客が押し寄せ始めた
(男性)こりゃ忙しくなるぞ。
なっ?みんな。
(カウ)ちょっと。
(男性)何?
(カウ)ちょっと貸しなよ。
(男性)カウさん!何すんだよ!いいじゃないか。
減るもんじゃなし。
(女性)相変わらずだねぇ。
東京オリンピック。
それはカウの欲望に火を付けた
彼女は5年ほど前にこの塩原温泉に現れた
(カウ)安くしとくから。
いらっしゃい。
いらっしゃい。
もともと行商人だったカウは商売の才覚を発揮しわずか数年で土産物屋を経営するまでになった
(カウ)うーん。
いいだろ?
その色気に男がなびいた
こうしてためた金は300万円
現在の価値にしておよそ5,000万円になった
ある目的があった
この塩原温泉で自分の旅館を持ちたい
カウの野望は膨らんでいった
男は仕事女は家庭。
それが当たり前だった時代
女にだって夢を持つ権利がある
実現できる女もいる。
カウはそう思っていた
ある日…
(鎌輔)私と一緒に日本閣経営してみないか?えっ?経営?何言ってんだい?鎌輔さん。
その旅館こそ後に殺人事件の舞台となるホテル日本閣だった
名前は大層だが客室は6部屋ほどしかないこぢんまりとした旅館だった
(鎌輔)女房とは別れる。
(鎌輔)あんた旅館の女将だ。
(鎌輔)私と一緒になって…。
確かにこれからの日本にはすごい好景気がやって来るのは間違いないよ。
でもね鎌輔さん。
あんな三流旅館にまで客は来るのかねぇ。
いや。
だから新館を増築して日本閣を大きくするんだ。
おう。
図面も用意してある。
(鎌輔)ほれ。
(カウ)はあー。
これで金が入り用になってうちの金を当てにしにきたってわけか。
えっ?
(カウ)図星だろう?ヘヘヘ…。
念願だった女将の話にもカウは冷静にそろばんをはじいた
(カウ)手切れ金として…。
鎌輔の返事はOK。
しかし…
えっ?
(鎌輔)カウさん。
まずいことになった。
(ウメ)30万円?
(ウメ)バカにするのもいいかげんにおし。
そんな額で私が納得するとでも思ってるのかい?
(カウ)そんなことだろうと思ったよ。
(鎌輔)やっぱ50万に…。
(カウ)何言ってるの?鎌輔さん。
手切れ金なんてどぶに捨てるのと同じさ。
そんながめつい女にびた一文払う必要はないよ。
どういうことだよ?
カウは温泉街で雑用をこなしていた大貫光吉を誘いこんだ
(カウ)大貫。
あんたにもってこいの仕事があるんだけど。
(大貫)何だ?これで日本閣の女将さんを片付けて。
(大貫)えっ?
(カウ)うまくいったら抱いてやるから。
人間だとは思わずに犬か猫をやるような気持ちになればできるから。
大丈夫。
取り調べ記録に残されたおぞましい言葉
すると大貫は…
そしてその日がやって来た

(ウメ)あっ!?あっ。
ああっ…。
大貫は忠実にカウの依頼に応えた
ご苦労さま。
じゃあ行きましょうか鎌輔さん。
(鎌輔)いや。
女房の死に顔だけは勘弁してくれよ。
祝い酒持ってきたから。

希代の殺人犯小林カウ
いったいどんな女だったのか?
カウは埼玉県の貧しい農家で8人きょうだいの5番目に生まれた
小学校の担任はカウの性格を花や動物を愛するところがなく人情味に欠けると語っていた
22歳のとき見合い結婚
だが夫小林秀之助は戦争で体を壊し病気がち
カウは不満だった
カウは違法に闇米や砂糖を仕入れ菓子を作って家計を支えた
(カウ)助かるわ。
ある日…
(関口)ごめんください。
(カウ)はい。
あっ。
お巡りさん。
(関口)小林さんのお宅だね?
(カウ)はあ。
(関口)調査に伺った。
(カウ)まあまあ。
中でお茶でもどうです?上がって上がって。
どうぞどうぞ。
闇取引がバレぬよう巡査をもてなすうちに…
(カウ)ねえ。
今度取り締まりのときは教えてね。
17歳年下の若い巡査関口にカウはのめりこんだ
波乱を呼ぶ恋だった
事態は急変する
(秀之助)どうやら今日は具合が悪いようだ。
そう。
だったらいいものがあるわ。
(秀之助)ああ。
(秀之助)うっ!?くっ。
ああっ…。

夫秀之助が死亡
死因は脳出血だった
関口と一緒に暮らすことになったカウは警察を辞めた関口のために必死に働いた
しかしその2年後…

(戸の開閉音)
(カウ)おかえり。
今食事の支度をしてるから。
(関口)飯はいい。
話がある。
何だい?今度は何が買ってほしいんだい?この前車は買ってあげたしねぇ。
(関口)もう何も買ってほしくないんだ。
えっ?
(関口)別れてもらいたい。
どういうこと?私はあんたを食わせるために一生懸命働いて何でも買ってあげて。
だからもうとことんうんざりなんだよ。
あんたみたいながめついおばさんと暮らすのはもうごめんなんだ。
じゃあ。
尽くした自分をなぜ捨てるのか?
恨みと未練が渦巻いた
カウは後に関口へのあふれんばかりの女心をほとんど平仮名でしたためた
愛する男に振られたカウは栃木県塩原温泉に移り土産物店を開いた
あれから50年余りたった今カウの土産物店の痕跡はありません
カウの仕事ぶりを聞いてみました
(良男)そこでね…。
そして皆さんが口を揃えて話したのは金への執着でした
(光四郎)この辺でこすいっていうんですけどね。
(戸村)冗談じゃないよ。
カウは関口と別れた後金への執着を加速させました
なぜでしょうか?
事件を取材しルポルタージュ『誘う女』を書いた吉田和正さんはこう語ります
(吉田)愛することにこりごりした。
のめりこむことにこりごりしたっていうのが正しいんじゃないですか?そういうふうなのもあって…。
私たちが独占入手した取り調べ記録には欲望に溺れるカウの赤裸々な姿が記されていました
大貫の野郎を片付けてよ。
ホテル日本閣を手に入れるため雑用係の大貫に生方鎌輔の妻ウメを殺害させたカウ
(ウメ)ああっ…。
(カウ)乾杯。
後に自らの運命を決定づけるあるものを見つける
妻ウメのくし
(カウ)ねえ。
これもらってもいいわよね。
使えるものは使わないともったいない。
遺体を近くの林に埋めて殺害を隠蔽
こうして念願の温泉旅館の女将の座を射止めた
(従業員)いらっしゃいませ。
貯金全額をつぎ込み新館を増築する
いらっしゃいませ。
どうぞこちらへ。
やり手の女将として旅館を仕切る
オリンピック景気に乗った一獲千金の夢が近づいた
(男性)あれ?女将が変わったな。
前の女将どうした?
(鎌輔)あっ。
いや。
お恥ずかしい話あのう…。
店の金盗んで間男つくって出ていきました。
だが増築中の新館を自分の名義に変更しようと地元の法務局を訪れたとき
(カウ)えっ?それはどういうことよ?
(職員)ホテル日本閣は借金まみれで新館も旧館も皆二重三重の抵当に入っています。
日本閣は事実上鎌輔のものではなくなっていた
(カウ)ここが抵当に入ってるってどういうことよ!
(鎌輔)えっ?ああ。
言ってなかったか?そのとおりだよ。
(カウ)あんた。
だましたのね?
(鎌輔)だました?人聞き悪いこと言うなよお前。
お前女将にしたの俺じゃねえか。
ありがたいと思えよ。
私はなけなしの300万をつぎ込んだんだよ。
返せ。
ぺてん師。
私の金を耳揃えて返せ。
嘘ばっかりつきやがって!
(鎌輔)あっ。
えい!
(カウ)あっ。
(鎌輔)うるせえ!とっとと出てけ。
このくそばばあ!
(カウ)あの男さえいなくなればあんたがこの旅館の主人になれるかもしれないんだよ。
(大貫)私が旅館の主人に。
(カウ)そうさ。
大貫。
根無し草のあんたが温泉旅館の主人だ。
大出世さ。
女の力で絞め殺すのは無理だ。
機を見て私が鎌輔の首にひもを引っ掛けるからあんたは止めるふりをして一緒に引っ張っておくれ。
記録に残る大貫の言葉にカウの執念がにじむ
(カウ)お待たせしました。
(鎌輔)おう。
(カウ)どうぞ。
(鎌輔)ああ。
来た来た。
あー。

(鎌輔)うっ!?うっ。
何すんだ。
おい!うっ!?謀りやがったな。
うっ…。
何やってんだおばさん。

(カウ)あっ。
てめえ。
許さねえ。
(カウ)あっ。
あーっ。
(大貫)おばさん。
包丁。
包丁。
(鎌輔)くっ。
うっ。
うっ…。
(大貫)うわーっ!
(鎌輔)うわーっ!?明けましておめでとうございます。
あの人も床の下に埋めたしね。
ご苦労さまだったね大貫。
これで日本閣はやっと私のものになったよ。
お前のもんじゃない。
この旅館は俺のものだ。
何だって?
(大貫)誰のおかげでこの旅館を乗っ取ることができたと思ってんだ?まさか俺をだましてやらせたんじゃないだろうな。
だったら全部ぶちまけるからな。
(大貫)俺がこの旅館の主人だ。
何が主人だよ。
風来坊のくせに。
殺し屋で雇っただけなのに図に乗りやがって。
このころ新聞は旅館夫婦連続失踪の謎に気付き騒ぎ始めていた
そんなとき大貫に犯行をぶちまけると脅されたカウは…
(カウ)ちょっといいかい?
(男性)何だい?あんたにもってこいのいい仕事があるんだけど。
(男性)あっ?
(カウ)これで大貫の野郎を片付けてよ。

カウのたくらみを知らぬ大貫

(足音)
そしてカウの運命も破滅へと突き進んでいく
カウのたくらみを知らぬ大貫
東京オリンピックまであと3年
日本閣を手に入れたカウ
あともう少しで大きなチャンスが巡ってくる
さあ。
これから忙しくなるよ。

(足音)いらっしゃい。
どうぞ。
お泊まりですか?
(刑事)小林カウ。
殺害容疑で逮捕状が出てる。
うん?
(刑事)大貫が全部話してくれたよ。
(刑事)警察だ。
(刑事たち)待て!
(大貫)あっ。
(刑事)おとなしくしろ!
(大貫)あーっ。
あーっ。
あーっ!
(大貫)俺は逮捕されることなんか何もやってないよ。
(刑事)いいこと教えてやろう。
(刑事)お前は逮捕されたから助かったんだぞ。
(大貫)どういうことだ?
(刑事)カウは次にお前を殺そうとしていたんだ。
大貫光吉は逮捕されたその日のうちに生方ウメそして生方鎌輔の殺害を自供した
(刑事)署まで来てもらおうか。
仕方ない。
実は警察はウメの失踪から内偵捜査を進めていたのである
決め手となったのはあの戦利品だった
それはカウが殺害したウメから奪い取ったべっ甲のくし
ウメが肌身離さず大切にしていた母親の形見だったのだ
逮捕から2日後カウは犯行を認めた
そして供述どおり無残な夫婦の遺体も発見されたのである
当時消防団として鎌輔さんの遺体発掘作業を行った人がいます
(磯)そしたらこうなって…。
遺体が埋められていたのは増築しようとしていた新館の廊下の下でした
そして殺害現場となった部屋にも足を踏み入れたといいます
(磯)だからさ…。
血に染まった天井と床下の死体
カウはそこで日本閣のどんな未来を夢見ていたのでしょうか?
逮捕後カウが犯行動機を語った
(カウ)ハァ…。
悪いことをしたとは思ってるけど泣いたって仕方ないし出る涙もない。
女だてらに男なら誰でもやってみたいと思うことをやってみただけ。
捕まったのは事業に失敗したのと同じことです。
そしてカウはもう一つの殺人を語りだした
9年前に病死とされたカウの夫秀之助
カウはその死の真相を語りだした
(カウ)ええ。
殺しましたよ。
青酸カリでね。
(刑事)何?そのころ私といい仲だった関口龍之介って男にね亭主が邪魔だって言ったら薬でも殺すことはできるよって持ってきたんですよ。
青酸カリを。
(秀之助)うっ!?くっ…。
(カウ)ああ…。
飲ませたらたちまち死んでしまいました。
一切の証拠がなく黙っていれば問われなかったはずの夫殺しをあっさり自白したのである
その一方で…
(カウ)刑事さん。
死刑だけは勘忍してね。
法廷で裁きを受けることになったカウ
そこには…
ひたすら尽くした年下の元恋人関口がいた
カウの供述で夫殺しの共犯として逮捕されていたのだ
だが関口はカウに青酸カリを渡したことを真っ向から否定
(関口)私から本当に青酸カリを受け取ったというのか?
(カウ)靴墨が入ってるようなビンに入れて渡してくれたじゃないですか。
(関口)本当のことを言ったらどうなんだ。
(カウ)自分が胸に手を当てて考えてみなさい。
あなたは私を恨んで私の家に火を付けるようなことを言っていたそうじゃないか。
それは嘘です。
恨んでなんかいません。
今でもあなたのことが好きです。
彼女がしたためた上申書にはこう記されていた
愛と憎しみをむき出しにした
そして死にたくもなかった
判決の日カウはきちんとした着物姿でいつものように化粧をしてそのときを待った
(裁判長)「主文被告人小林カウを」「死刑に処する」
両手で顔を覆った

(音楽)
判決のよくとし東京オリンピックが開幕
日本中が沸き返っていた
そのころカウは…
(刑務官)小林さん。
もうお化粧しないの?ええ。
もう必要ありませんから。
(カウ)だってここには女しかいないじゃない。
カウと大貫の死刑が確定した
元巡査の関口には懲役10年の実刑が下った
(読経)
(刑務官)目をつぶってください。
(刑務官)さあ。
61歳になったカウは戦後女性として初めて死刑を執行された

これが生前最後の言葉だったという
(カウ)もう2〜3日待ってもらえませんか?
(アナウンサー)次々と5人を殺害。
凶悪犯として全国に指名手配中の西口彰は逮捕されました。
77日ぶりに捕まった西口は取り調べに対しても罪を恐れぬ傲慢な態度です。
『復讐するは我にあり』
その凶悪犯罪は後に小説映画にもなった
連続殺人犯西口彰
エリートに化けて人を欺き殺人を繰り返す
悪魔の申し子と呼ばれた男の仮面を見破ったのは10歳の少女だった
西口彰元死刑囚。
警察は後にこんな極秘資料を作成しました。
「西口事件の捜査と反省」テレビ初公開となるこの資料には西口が犯した5人の殺害と10件の詐欺。
その全てが記録されています。
私が立っているのはそこに記された殺人現場の一つです。
西口は女性2人をためらいなく殺害し遺体を押し入れと布団の中に押し込みました。
残忍な犯行を繰り返しながらエリートに成り済まし日本中を逃げ回った知能犯的凶暴犯西口彰。
なぜ少女にその正体を見破られたのか?そこにも時代の影が差していました。
(るり子)やった!揃った。
どうぞ。

(美智子)るり子。
ちょっと。
ちょっと。
(るり子)何ね?
(美智子)お客さんばい。
2階のお父ちゃんの部屋さ案内して。
(るり子)うん。
その男は突然現れた
(美智子)ちょっと。
何ぼうっとしとっと?すいません。
どうぞ。
(美智子)るり子!
(るり子)あっ。
(るり子)うわ!?お父さん。
(古川)うん?
(るり子)あっ。
初めまして。
突然申し訳ございません。
東京で弁護士をやっているカワムラと申します。
(古川)カワムラ先生。
あっ。
これはこれはわざわざ遠かところばありがとうございます。
さっ。
座布団あててください。
当時東京の弁護士といえばエリート中のエリート
(古川)東京から?
家に来たあの弁護士の正体は連続殺人犯だった
るり子の家に突然やって来たあの男の正体は?
指名手配中の連続殺人犯西口彰だった
西口は16歳のときから犯罪に手を染め詐欺や恐喝を繰り返してきた
そして日本に明るい光が差していた東京オリンピックの前の年に…
逮捕直後に撮影された写真には不敵な笑み
50年たった今でも関係者は西口への恐怖を口にする
これはわれわれが独自入手した警察の極秘内部資料
そこには日本中を震え上がらせた連続殺人の全容と悪魔と呼ばれた男の正体が克明に記されていた
悪夢の始まりは東京オリンピック前年の10月18日のことだった
(西口)おーい。
ムラタさん。
止めてください。
西口は当時トラック運転手をしていた
(西口)実は知り合いのとこでうまい酒を手に入れたって聞いてて。
だから…。
以前勤めていた運送会社で顔見知りだった男性を言葉巧みに誘い出した
(西口)集金は終わったんでしょ?いいじゃないですか。
(男性)ああ。
ちょっと待っててくれ。
なっ。
(西口)一杯だけですから。
行きましょ行きましょ。
(男性)すぐ戻るから。
(西口)うおー!
それは始まりにすぎなかった
(男性)あれ?ムラタさんは?
福岡の片田舎で起こった…
犯人は26万円の金を奪って逃走
警察は遺留品や目撃証言などから犯人を被害者と面識のあった西口彰と断定し福岡県内に指名手配
手配書には…
2人の殺害から6日後
西口は岡山から香川に向かう連絡船で意外な行動に出る
靴を脱ぎ揃え手紙を置いた
そして海
船が高松港に到着
甲板に靴が置いてあると通報を受けた香川県警が駆け付けた
「先立つ不孝をお許しください。
西口彰」
遺書だった

(従業員)いらっしゃいませ。
そのころ…
(従業員)お客さん。
今日はどっから来られたんですか?・広島です。
大学で精神科の教授をやっててね。
(従業員)それはそれは。
悪魔は死んでいなかった
警察が偽装自殺だと悟ったのは翌日のことだった
その間に西口は次なる標的を定めて足取りを消していた
第2の事件が起きたのは11月18日
新幹線開通に向け建設工事が進んでいた静岡県浜松市だった
(木村)ああご主人。
ホント結構ですよ。
お構いなく。
(西口)いやいや。
遠慮なさらず。
わざわざ質屋さんの方から値踏みに来てもらったんだ。
さあどうぞどうぞ。
(木村)いやぁ。
しかしご主人。
またたくさんの品物を質に出すんですね。
(西口)いや。
実はね…。
堂々と旅館の主人に成り済ました
(西口)上にまだ幾つかあると思うから見てくるから待っててください。
(木村)ああ。
このときすでに西口は第3第4の殺害を終えていた
旅館の経営者である母と娘の首をひもで絞めて殺害した
入手した警察の内部資料によると西口は母と娘の遺体を押し入れの中と布団に放置
その後質屋を呼び金目の物を売り飛ばすという大胆な犯行だった
当時西口に応対した質屋のご主人は亡くなりましたが妻信子さんも西口と話をしました
その記憶は鮮明です
西口の犯行と分かり駆け付けた警察はこう語ったそうです
(信子)刑事さんたちはね。
オリンピックに向け日々急速に発達する交通網に警察の捜査は追い付いていませんでした
警察は残忍な犯行を繰り返す西口を全国に特別手配。
特徴も詳細に記しました
ところが…
浜松の次に西口が姿を現した場所は千葉
しかも犯罪者が近づくはずのない裁判所だった
(西口)何かお困りですか?
(母)はい。
(母)息子の保釈金のことで。
(西口)私息子さんを担当している弁護士のハナイです。
今日は保釈金をお持ちで?
(母)あっ。
はい。
(母)こちらでございます。
確かに。
弁護士に成り済まし保釈金5万円をだましとったのである
独自入手した捜査資料をたどると西口の犯行には共通点がある
それは大学教授や弁護士など高学歴なエリートに成り済まし信用させることだった
(アナウンサー)悲喜こもごもの受験の季節です。
折しも当時は学歴を持つ者と持たざる者との格差が広がり始めた時代
人々の間にはエリートに対する強い憧れがあった
西口はそれを巧みに利用するずる賢さとためらいもなく人を殺す残忍さを備えていた
そして次の標的を求め北海道へ
その道中西口を語る上で欠かせないエピソードが捜査資料に記されている
(子供)ポッポー。
(母)ほら。
おとなしくしなさい。
(子供)ポッポー。
ポッポー。
(母)いいかげんにしなさい。
そのときのことを西口は…
そして第5の殺人の舞台は東京
弁護士を殺し金品を奪った上弁護士バッジを奪った
次の犯行にどうしても必要だった
「人を殺すということは何ともなかった」
(アナウンサー)1964年の日の出。
オリンピックイヤーを迎えるまでの75日間
神出鬼没の動きを見せた西口は再び九州へ
関東での捜査が強化されたと知ってその裏をかいたのだ
るり子は10歳だった
なぜ連続殺人犯西口はるり子の家にやって来たのか?
実はるり子の父は住職を務める傍ら冤罪を訴える死刑囚を救う活動をしていた
西口はその資金に目を付けた
弁護士に成り済まし手助けを申し出たのである
(西口)どうもすいません。
正月早々押し掛けてしまいまして。
(古川)いやいや。
そげんこつは。
(古川)東京からわざわざ来てもろうただけでこちらとしてはもう。
ちょっと失礼します。
(るり子)あっ。
(古川)るり子。
何ばしよっと?
(るり子)お父さん。
(古川)うん?あの人西口ばい。
(古川)フッ。
何ば言いよるか。
(るり子)本当のこつばい。
さっき写真ば見てきたと。
あの人はな東京から来らした弁護士の先生ばい。
写真とそっくりだったとよ。
(古川)失礼かと。
お客さんに向かって。
ほんなこつが。
だって…。
あの人西口ばい。
ほんなこつ。
西口たい。
(美智子)愛子。
(愛子)何?
(美智子)ちょっと交番に行ってきてくれんね。
本当に西口なのか?
確かに似ていた
(愛子)鼻の右側に小豆大のあざ。
いやぁ。
それにしても古川さんの活動の噂を聞いたときには私いたく感動しましてね。
(古川)いや。
そがんこつは。
会話のときの西口が何かおかしい
それは何なのか?
(愛子)お母さんお母さん。
これ。
(美智子)あざ。
そういえばあの男は常に顔を右に向けていた
それは顔の右側にあるあざを隠すためなのか?
母の美智子は男が西口かどうか確かめるためある行動に出た
活動資金というのはどのようになされてるんですか?
(古川)うーん。
それが…。
(美智子)先生。
よかったらこっちば使うてください。
さあどうぞ。
(西口)ありがとうございます。
男が西口なら顔の右側に2つのあざがあるはず
しかし…
(西口)いやぁ。
今夜は冷えますね。
(古川)ええ。
(西口)あっ。
確かにあざがあった
手配書と同じ右眉の上と鼻の右側にある小豆大のあざ
(古川)はっ!?どがいしたか?ああーたまげた。
(美智子)シーッ。
(古川)うん?
(美智子)あの男西口ばい。
(古川)お前までそがんこつ。
うん?
(美智子)顔のあざあんたも見たでしょうが。
(古川)あざ?
(美智子)手配書に書いてあったと。
顔もそっくりたい。
間違いなか。
西口たい。
あっ。
みんなば部屋に集めてくれ。
子供の命も危ない。
しかし…
あいつば今夜ここに泊める。
(美智子)えっ!?
(古川)あいつが寝とる間に警察ば呼んで…。
(美智子)ちょっと待たんね。
何でそがんこつ?
(古川)今あいつば外に出せば何ばしでかすか分からん。
(美智子)その前に私たちが殺される。
(古川)落ち着かんか。
よかか?顔ば見られた以上もう俺たちの身は危なか。
警察が来るまでの辛抱たい。
ではそろそろ宿に帰ります。
あっいや。
あのう。
今日はここに泊まんなはったらどうですか?ではそうさせてもらいます。
(古川)うん。
どうぞ。
(古川)じゃあ。
ごゆっくり。
おやすみなさい。
恐怖の一夜の始まりだった
長女の愛子さん
現在は古川家の寺の副住職に就いています
あのとき掲示板に手配写真を確認に行ったときの恐怖が今も生々しく蘇ります
(愛子)ここが西口が泊まった部屋です。
西口の泊まった部屋に案内してもらいました
50年前まさにこの部屋で西口は一夜を過ごしたのです
壁や天井は当時のまま
西口はこの部屋で…
(古川)じゃあ頼むばい。
(美智子)あんたも気ぃ付けて。
(古川)うん。
美智子と愛子はすぐさま派出所へと向かった
(美智子・愛子)すいません。
すいません。
すいません…。
(愛子)早く。
開けて。
(美智子)すいません。
(妻)はい。
(美智子)あのう。
ご主人は?
(妻)すいません。
主人は今日本署の当直で。
(美智子)す…すぐ連絡ば取ってもらえますか?
(妻)あっ。
はい。
分かりました。
(美智子)お願いします。
警察署に電話をかけると警官が手配書の特徴を読み上げた

(警察官)肩は広く痩せ形。
縮れ髪。
(美智子)はい。
合うとります。
(愛子)あっ。
あとあざが。
(美智子)あざが。
あざがあるって手配書に書いとるはずです。

(警察官)右眉の上と鼻の右側に小豆大のあざ?
(美智子)合うとります。
間違いなかです。

(警察官)少々時間ば下さい。
警察は半信半疑だった
東京に潜伏しているとみられていた西口がなぜ熊本に?
(古川)どがんだった?
(美智子)まだ時間がかかるみたい。
(古川)くそ。
こっちの気も知らんで。
(美智子)来てくれたらそこのガラス戸ばたたいて知らせるって。
(古川)ああ。
確か余っとる鍵があったやろ?持ってきてくれ。
けど何ね?急に。
(古川)あと釘と金づちもな。
こがんときに何に使うとね?
(古川)ここに鍵ば付ければ何かあったときに時間稼ぎになるとやろ。
早う。
気付かれないように

(釘を打つ音)
ゆっくり打ち続けた

(釘を打つ音)・
(釘を打つ音)
30分かけようやく鍵が取り付けられた
そして…

(ガラス戸をたたく音)
(古川)待て。
待て。
(古川)あっ。
どうも。
(刑事)実は一つお願いしたかことがありまして。
(古川)えっ?
(刑事)朝西口が起きたらやつと一緒に風呂に入ってくれませんか?
(古川)えっ?
(刑事)こちらとしてはまだあの男が西口だという確証がなかとです。
もちろん温泉の中にはわれわれの捜査員もいます。
そこでやつの右胸にある傷ば確認できればすぐに逮捕できます。
ちょっと待たんですか。
裸であの殺人鬼と向き合えというとですか?
実際の手配書にある西口の決定的な特徴
右乳下の刃物痕
夜が明けても古川家の恐怖は続いていた

(西口)朝からすいません。
お会いできないかなと思いまして。

(西口)はい。
そうなんですよ。
ちょうど今熊本に来てるもので。

(西口)はい。
はい。
そうですか。
ではまたご連絡します。
はい。
(美智子)近くにお知り合いが?
(西口)ああ。
福岡に知り合いの弁護士がいるもので。
そがんですか。
あっ。
そういえば近くに露天風呂があるとですよ。
もしよろしければどがんですか?いいですね。
ぜひ。
西口の右胸の傷を確認できるのか?
そのとき西口が何かを感じ取った
昨晩はようお休みになれましたか?
西口と断定するため一緒に風呂に入ることとなった父泰龍
中には刑事が2人待機していた
西口の右乳下には傷
しかし手拭いで隠されていた
(西口)やっぱりいいもんですね。
(古川)そがんですな。
ああいかん。
手拭いば。
ああ。
すいません。
(古川)ああ。
背中ば流しまっしょ。
(西口)はい。
ちょっと手拭いば。

何かに気付いた西口
(美智子)おかえりなさいませ。
(美智子)ああ。
おかえりなさい。
(古川)あいつは?
(美智子)さっき2階に。
このまま逃がすわけにはいかない
もしもし。
警察ですか?はい。
古川です。
西口がもう出掛けると言うてます。
この男は次に何をたくらんでいるのか?

(警察官)駅まではバスですか?
(古川)そうです。
角ば曲がったところにバス停が。

(警察官)ではその辺りに捜査員ば置いておきます。
そこまで古川さん。
送っていただけますか?あっはい。
分かりました。
(西口)お世話になりました。
(古川)ああ。
どうも。
(古川)お見送りばそこまで。
これが西口を捕まえる最後のチャンスかもしれない
(西口)もうこの辺りで結構ですよ。
(古川)いえ。
せっかくですけんバス停の近くまでは。
(古川)《角を曲がれば…》
ついに西口が捕まる
…はずだった
(西口)もうこの辺りで結構ですよ。
これが西口を捕まえる最後のチャンスかもしれない
(古川)《角を曲がれば》
そこには警察が…
・ちょっとよろしかですか?
(アナウンサー)福岡をはじめ浜松東京などで次々と5人を殺害。
凶悪犯として全国に指名手配中の西口彰はついに熊本県で逮捕されました。
悪魔の申し子と恐れられていた西口がついに逮捕された
77日間で10件の詐欺を働き5人を殺害した
お手柄を挙げたるり子は小さな名刑事として世間の喝采を浴びた
実は西口彰という名前が同級生の西原彰君と一文字違いだったため手配書をよく覚えていたのだという
(男性)西口の逮捕に直接協力されました古川さんご一家に伺いたいと思います。
るり子ちゃんはどうしてその男が西口だと分かったわけですか?
一方るり子の父は…
エリートの仮面をかぶり世の中を欺いては姿を消してきた西口
しかし10歳の純粋な…
(アナウンサー)77日ぶりに捕まった西口は取り調べに対しても罪を恐れぬ傲慢な態度です。
西口の取り調べを担当した…
最初の殺人は愛人と駆け落ちをする費用のためという極めて短絡的な動機でした
西口事件の反省から警察は広域捜査の体制を整え現在に至っています
そして逮捕から5年後
西口がるり子ちゃんに送った恐怖のメッセージとは?
西口は古川家に手紙を出した
「その折は大変ご迷惑をお掛けいたし誠に申し訳ございませんでした」
「るり子さんも高校生にご成長なさって朗らかに毎日元気にお過ごしのことと伺っております」
(西口)「決して皮肉ではございません」「できたら今後るり子さんと文通したいと思いますがただ怖い人といった感じだけを残しているのかもしれませんね」「喜ぶべきか死刑囚われ西口彰」50年前オリンピックに沸き立ったこの国は富と成功の裏側で様々な欲望と不満を生みだしました。
事件は時代を映します。
2020年に再び夏のオリンピックを迎える私たちは今また新たな光に向かって走り始めています。
その光の向こうで時代は今いったいどんな影をつくりだしているのでしょうか?
かつて警視庁は史上最大規模の態勢でオリンピックに臨んだ。
多くが初めてのことだったという
マラソン42kmの警備
来日する要人の警護
繁華街の徹底浄化作戦
さらに多発する凶悪事件の捜査
その最前線で多くの警察官が戦っていた
そして…
(ロゲ)TOKYO。
6年後再びその日がやって来る
2014/10/12(日) 21:00〜23:39
関西テレビ1
Mr.サンデー特別版・新証言&極秘資料独占入手『東京オリンピックと世紀の大犯…[字]

50年前の東京五輪直前に3人の凶悪犯が日本を震撼させた