(テーマ音楽)こうしてぶらぶらしながら出会ったものを楽しめばいいと思うんだけどなあ。
あれ?こっちにもいない。
困ったな。
ああどうも。
今日は妻を鎌倉の古寺巡りに連れてきたんですけどね「あなたと歩いてると下調べが全くできてないから疲れちゃう」って言われて置いてかれちゃったんですよ。
困ったなもう。
草刈さん地図を見て下さい。
鎌倉のお寺は町なかだけでなく山の方まで点在しているでしょ?ぶらぶら歩いているだけじゃ疲れてしまいますよ。
じゃあどうすればいいの?東京から電車で1時間。
武家の町の風情を残す鎌倉。
歴史の重みを感じさせるのが緑の中静かなたたずまいを見せる古いお寺です。
散策するとそこに鎌倉ならではの美を見つけることができます。
装飾をできるだけ省いた力強い建築。
まるで今にも動きだしそうな生き生きとした仏像。
そして独特の地形が生み出した個性的な庭。
こうした古寺が点在する鎌倉の町。
その歩き方を鎌倉案内の達人にお聞きしました。
意外と鎌倉駅からお寺に行くには少し歩くことが必要なので行く道中も…空から見た鎌倉の町。
小高い山々が入り組んだ尾根を成しています。
尾根がつくる谷は谷戸と呼ばれ古寺の多くはこの谷戸にあります。
谷戸を流れる小川。
せせらぎの音に耳を傾けながらお寺に向かいましょう。
(せせらぎの音・小鳥のさえずり)まずは谷戸を巧みに利用した古寺の庭を鑑賞しましょう。
北鎌倉の明月院。
別名はあじさい寺。
鎌倉のお寺では谷戸の豊富な水を生かして花々が育てられてきました。
町から離れた谷戸に住まいを作ることを思いついたのは武士たちでした。
町の手狭な邸宅を補うため別邸を谷戸に作りそこに仏も祭ります。
そのお堂がやがて寺になったのです。
明月院の奥には切り立った崖があります。
これは狭い谷戸の土地を広げるために岩盤を削った跡です。
鎌倉の基本的な地形なんですけど…当時の鎌倉時代の…ですから必ずと言っていいほど谷戸谷戸の山裾には崖が存在することになります。
おそらく今より…人が削ってできた崖を鎌倉では切岸と呼んでいます。
切岸に手を加え独特の景観が生み出されてきました。
こちらはやぐらと呼ばれるお墓。
穴を掘り石塔などを置いた独特の墓です。
平地の少ない鎌倉ならではの知恵でした。
天井にはノミの跡が残っています。
谷戸の岩を用いた不思議な空間です。
今日最初のツボは…泉が谷と呼ばれる谷戸に築かれた浄光明寺。
裏手に広がる雄大な切岸を使って庭園が造られています。
この高く険しい切岸は僧侶たちによってあるものに見立てられてきました。
それが江戸時代の古文書に記されています。
「岩が表すのは菩提の高さである」菩提とは悟りの境地のことです。
僧侶たちは悟りを目指す修行の厳しさを高く険しい岩に感じ取ったのです。
切岸の頂からは風雪を経た1本の木が垂れ下がっています。
この木にも僧侶たちは特別な意味を見い出してきました。
上から生えている柏槇の木。
私個人の感じ方ですけれどもまるで…つまり仏さまの奥深い教えを学んでいる者には悟りの世界から仏さまが導いてくださる。
なかなか到達できない。
だからこそ日々精進しないといけないなとお庭を見るたびに感じております。
鎌倉ならではの切岸の庭。
歳月を重ねることでいっそう味わい深い景観となったのです。
続いてもう一つ崖を利用した名庭園をご覧いただきましょう。
瑞泉寺の奥に広がる庭園は池から切岸まで一枚岩から削り出されたものです。
この場所は40年ほど前には緑に覆われていました。
かつては岩を用いた庭があったという記録を確かめるために発掘調査が行われ鎌倉時代の姿がよみがえりました。
庭を造ったのは禅僧であり庭造りの名人でもあった夢窓国師。
国師にとって庭は眺めて楽しむためのものではありませんでした。
禅僧にとって庭はあくまで修行の場。
岩を削り池を設けただけの荒々しい風景です。
中央の洞窟は坐禅を組むための場所。
無骨にも見える景色。
それが悟りを求め修行をするのにふさわしい理想の庭でした。
切岸に込められた僧侶たちの心を静かに物語っています。
おやこんな所に茶店がある。
ちょっと入ってみようかな。
もう休憩ですか?ああやっぱりお寺にはお茶と和菓子が合いますよね。
いただきま〜す。
うん!うんうん…。
あれ?草刈さん?早く奥さんを捜さないと日が暮れて一緒にお寺巡りできなくなっちゃいますよ。
そうだ。
休憩してる場合じゃありませんよ。
次は鎌倉の古寺ならではの建築の美です。
北鎌倉の地獄谷と呼ばれた谷戸にある…鎌倉を代表する寺院です。
日本初の本格的な禅寺として開かれ中国に倣って建物が配置されました。
上から見ると谷筋に延びた細長い境内に一列に建物が並び窮屈そうな印象です。
ところが三門の下から見ると奥行きがあり広く感じられます。
その秘密は左右の並木にあります。
左右の並木が奥にある本堂へと視線を導きます。
さらに遠近感を強調し本堂を遠く見せる役割も果たしています。
開山当初に植えられたと考えられる柏槇の古木。
谷戸の狭い境内を大きく感じさせるための仕掛けでした。
そこで二つ目のツボは…なぜこうした仕掛けが考え出されたのでしょうか。
建長寺は鎌倉五山の1つ。
幕府が直々に創建したお寺です。
三門には「禅宗で国を興す」という幕府の方針が記されています。
当時中国で広まっていた禅。
幕府は中国から僧を招き鎌倉を京都とは異なる仏教の拠点としようと考えました。
鎌倉五山という禅宗寺院の格付けですけれども京都五山よりさらに格が上なんです。
同じく鎌倉五山の一つ円覚寺にも仕掛けを施された建物があります。
国宝の…禅宗とともに中国から伝わった建築様式禅宗様の傑作です。
飾り気のない質実剛健な建築。
しかし屋根が宙へと伸び上がっていきそれが壮麗な印象を与えています。
美しいカーブを描くラインが視線を引き付け軒先の跳ね上がりによってさらに上へと導きます。
屋根の工夫によって建物は実際よりも大きく見えるのです。
反り上がる屋根を支えているのが垂木。
放射状に広がる組み方から扇垂木と呼ばれる中国伝来の様式です。
この建物の修復に携わった…扇垂木は日本で一般的だった技法よりも高度なものだと言います。
これは松本さんが作った模型です。
右は従来の平行垂木。
屋根の隅に近い2本は桁に載っていないため軒を支える力がありません。
一方扇垂木はすべての垂木が頂から放射状に伸び桁に支えられるため力学的に頑丈なのです。
さらに禅宗様の建物では軒が反っているために扇垂木を一本一本微妙に異なる形に切り出さなくてはなりません。
何でもない普通の平の垂木は…こちらで一番隅の扇垂木の場合…扇垂木の断面は1本ごとに違うひし形です。
さらには1本の垂木の中でも先端と根元で形が異なります。
屋根の美しいカーブにぴったりと対応するためです。
美しい屋根のラインを支える垂木の一本一本に禅宗の精神性が宿っていると松本さんは考えます。
本当に見る者を圧倒するような力強さそれから繊細さ。
両方を兼ね備えている。
なんでこんなに美しいんだろうと考えますと自然に禅という世界がこういう世界なんだろうなと私は感じました。
特に禅宗様の場合は軒先の繊細さを表すためには少しの誤差も出したくない。
きれいな線を出したい。
計算どおりに反り上がらせたいという思いがあるからでしょうね。
ものの考え方そういうことも禅の精神と似てると思います。
禅宗という…舎利殿の内部です。
禅宗は簡潔さを重んじるため派手な色や目立つ彫刻はありません。
かわりに強い印象を与えるのが複雑な木組みです。
数百本に及ぶ扇垂木が緻密に組まれた様。
禅の教えに通じる質実剛健な美を醸し出しているのです。
鎌倉の禅寺を訪れることがあったら木組みを眺めてみて下さい。
そこには禅の心が隠されているかもしれません。
草刈さん今度は何をしているんですか?妻にしかられる恐怖から解放されるため心を無にしようと修行中です。
鎌倉古寺巡りにはまだ大事なポイントがありますよ。
修行中です。
聞こえません。
長谷観音として知られる…本尊は華やかな十一面観音です。
制作年代は明らかではありませんが奈良の長谷寺の本尊の姿に倣って造られたとされています。
鎌倉では京都や奈良の技や様式を学んで仏像が造られました。
鎌倉で特に好まれ流行した仏像の表し方があります。
浄光明寺の勢至菩薩。
1人の人間がそこに座っているかのような生々しい存在感を感じさせます。
リアルさを追求した仏像造り。
特徴的なのが目です。
玉眼と呼ばれる技法で水晶のレンズに瞳が描かれています。
光を映せばまるで涙で潤んでいるかのよう。
こうしたリアルな表現を好んで取り入れたのは武士たちだったといいます。
武士というのはどうしても職業柄といいますか人と争ったり場合によっては人を殺したりということがある。
ですから理想だけでは生きていけないと。
ですからもっと現実的な救いの証しのようなものが求められることがあったと思います。
拝んでいて心を動かされるといいますか本当に現実感があるといいますか今にも我々に近づいてきてくれそうな感じがありますね。
仏像には戦乱の時代を生きた武士たちの願いが込められていました。
今日最後のツボ。
こちらは建長寺の仏殿を守る伽藍神。
やはり玉眼が施されており人間味あふれる表情をしています。
よく見ると…身に着けている装束が一風変わっています。
実は…鎌倉では13世紀後半禅宗が広まった頃から中国の影響を強く受けた仏像が数多く造られるようになりました。
鎌倉由比ガ浜にある住宅や倉庫の遺跡。
今年中国・宋からもたらされたお金が大量に見つかりました。
住人が使っていたものだったと考えられています。
鎌倉は幕府が中心となって中国の文化を取り入れた町でした。
北鎌倉の東慶寺にはリアルな表現と中国の影響が見事に溶け合った傑作があります。
水月観音の名で親しまれる観音像。
リラックスして片足を下に投げ出すのは遊戯坐と呼ばれる中国風の姿勢です。
こちらは当時中国からもたらされた遊戯坐の観音さま。
腰掛ける姿は同じですがおおらかな雰囲気です。
まず脚をご覧下さい。
中国では大胆に片膝を立てていたのが横に倒し日本人好みのおとなしい印象に変えています。
続いては顔。
にこやかな中国の観音に対し水月観音は憂いをたたえた表情。
ともに悩み悟りへの道を一緒に歩んでくれそうなリアリティーを感じさせます。
玉眼で表現された目。
水面に映った月を眺めているといいます。
この世のあらゆるものは水に映った月と同じ儚いもの。
執着をやめて悟りへの道を歩むべきという教えが込められています。
東慶寺は夫から逃れたい女性たちが駆け込んだ寺。
水月観音は女性たちの心のよりどころでした。
女人救済のためのお寺でしたから。
特に哀れな女性を救ってあげるっていうのが観音様のご慈悲によるものだということでね特にこの水月観音は遊戯坐像で非常にくつろいだ形をしておりますのでねその辺も優しさを強調されてるかと思いますね。
水月観音は今も変わらぬくつろいだ姿で訪れる私たちにそっと語りかけてくれます。
(「美の壺」のテーマ曲)おっ妻からのメールだ。
なになに?「さっきは怒ってごめんなさい」「やっぱり1人じゃ寂しいから北鎌倉の駅で待っています」おお妻から先に謝るのは珍しい。
これも仏さまのご加護かな。
よ〜し今度こそちゃんと妻をエスコートしますからね!さてどのお寺から行きますか。
草刈さん今度は計画的に古寺巡りを楽しんで下さいね。
(テーマ曲)2014/10/12(日) 23:00〜23:30
NHKEテレ1大阪
美の壺・選「鎌倉の古寺」[字]
身近なテーマを中心に、美術鑑賞を3つのツボでわかりやすく指南する新感覚美術番組。今回は「鎌倉の古寺」。案内役:草刈正雄
詳細情報
番組内容
世界遺産登録を目指して注目を集める古都・鎌倉。紅葉シーズンに散策したいのが鎌倉市内に100以上点在する古い寺。季節の花が有名だが、鎌倉独特の起伏ある地形を生かし、鎌倉武士たちの好みや中国伝来の禅宗文化が加えられ、ほかの地域にはない独特の美が生み出されてきた。たくみに崖を使った庭や、中国と日本の表現を融合した仏像等、「庭」「建築」「仏像」の3テーマで、鎌倉の古寺の魅力を楽しむツボを紹介する。
出演者
【司会】草刈正雄,【語り】礒野佑子
ジャンル :
趣味/教育 – 音楽・美術・工芸
映像 : 1080i(1125i)、アスペクト比16:9 パンベクトルなし
音声 : 2/0モード(ステレオ)
サンプリングレート : 48kHz
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