昔北国の山あいの家に若者が住んでいました。
若者は独り身でしたが一生懸命畑を耕していました。
ふぅ…。
ある日のこと山に薪を取りに出かけました。
(鳴き声)一羽の鶴がもがくように落ちてきました。
かわいそうにケガをしている。
若者は川の水で傷口を洗い手当てをしてやりました。
(鳴き声)よかった元気になって。
もう人間になんぞ見つかるんじゃないぞ!
(鳴き声)やがて冬になり雪が降り出したある夜のことです。
今夜は一段と冷えるだ。
ん?
(戸を叩く音)
(戸を叩く音)こんな遅くに誰じゃ?若者が戸を開けると外には美しい娘が立っていました。
どうかひと晩泊めてください。
こんな吹雪の夜に…。
さぁさぁ中に入ってあったまってくだされ。
お前さんこんな雪のなか誰を訪ねて来たんかね?はい私はあなた様のお嫁にしてもらいに来ました。
え?おらの嫁に?若者は驚きました。
こんな貧しい家に嫁に来てくれるなんてまるで夢のようなことだと。
若者の嫁となった娘は一生懸命に働きました。
しかし若者の暮らしは厳しくなるばかりでした。
ある日のことです。
お前さま私に機を織らせてください。
機を織ると?はい。
そのかわり私が機を織っている間決して戸を開けないでください。
お願いします約束ですよ。
(機を織る音)嫁さまはそれから毎日毎日機を織り続けました。
そして7日目の朝。
嫁さまは織りあがった反物を若者に見せました。
それは目もくらむような立派な反物でした。
若者は嫁さまに言われて反物を町へ売りに行くことにしました。
反物を見た町の人たちはその美しさに驚きました。
いったいこのような品を誰が買うのだろうと。
そこに一人のお侍が通りかかりぜひ殿様にお見せするようにと計らってくれました。
おおこれは鶴の羽衣という品じゃ。
よく持ってまいった。
殿様はたいそうお喜びになり百両で買ってくれました。
そしてもう一反織って持ってくるようにと申しつけたのでした。
家に戻った若者は見たこともない小判に驚きました。
これで米や味噌着物なんでも買えるぞ。
おら嬉しいだ。
そうだ殿様にもう一反反物を作るように言われてきた。
すまないがなんとか作れんものかの。
なあなんとかならんものかの。
お願いだ。
わかりました。
それでは織りましょう。
また7日のお暇をくださいませ。
そして決して中を覗かないでくださいね。
(機を織る音)来る日もまた来る日も機織りの音は鳴り続けました。
村人たちはどうやって反物を織っているのか見せてくれとやってきました。
いやこれは見せられんのだ。
少しくらいよかろう。
いやいかん。
帰ってくれ。
しかしそうは言ったものの若者も中の様子が気になっていました。
う〜んいったいどんなふうに織っておるのか。
もうそろそろ織りあがる頃だし少しくらいなら見ても…。
うっ。
そこには自分の羽を一枚一枚抜いて糸に織り込んで反物を織っている鶴の姿がありました。
鶴だ!ああ…。
若者は驚きのあまり気を失ってしまいました。
お前さま見てしまいましたね。
う〜ん。
私はあなた様に助けてもらった鶴です。
命を助けてもらったその恩返しをしようとこの家に来たのです。
しかしもう私はここにいることはできません。
さようなら。
ま待ってくれ!行かないでくれ!おらが悪かった待ってくれ!待ってくれ!どうか戻ってきてくれ!若者は飛び去っていく鶴をいつまでも見つめているのでした。
昔侍といえばまず武芸に秀でていることがいちばんでした。
この城下町でも武芸を重んじる気風にあふれていましたが我が物顔にふるまう侍も少なくありませんでした。
そんななかに笛と舞の好きな若侍がいました。
腰に笛をさし舞扇を手に持って歩いていました。
その姿を若い娘たちはうっとり眺めていました。
若侍は笛と舞の名手でした。
同僚たちはそんな若侍を軽蔑していました。
あやつおなごのするようなことに心を奪われとる。
そうじゃあんなもんは侍とはいえん。
あやつは侍の風上にも置けんやつじゃ。
仲間からのけ者にされた若侍はいつもひとりぼっちでした。
ある日若侍は森の中で笛を吹いていました。
静かな森の中に澄んだ笛の音が鳴り響いています。
美しい笛の音にひかれて1頭の鹿がやってきました。
鹿は若侍から離れた所に佇んでいました。
流れるような笛の音にうっとりとして聴き入っているようでした。
若侍のなかでも武勇第一と言われる男が茂みの中から鹿を見つめていました。
いいところに出くわした。
あの鹿を射止めてみせるぞ。
ん〜っ!
(笛の音)鋭い笛の音に驚いた鹿はいちもくさんに森の中へと駆け込みました。
クソッ!邪魔が入って次の矢をつがえる暇もなかった。
あの笛吹きのやさ男め!とんでもない臆病者じゃ!この噂はたちまち町中に広がり殿様の知るところとなったのです。
そちのせがれは臆病者だそうだな。
わしの家来にそのような者がいては藩の不名誉じゃ。
せがれの心を入れ替えさせい!しかと申しつけたぞ。
はは〜。
いいかげんにせんか!お前のせいで殿から叱責をくらったぞ。
なのにいつまでも笛など吹きおって。
いや情けない。
父上お怒りめさるな。
私は無益な殺生を嫌ってわざと笛を吹いたのです。
言い訳はよい!私ならイノシシ100頭くらい射倒すことはいつでもできます。
若侍は弓に矢をつがえると1の矢でナシの実を射落としすかさず2の矢で落下するナシの実に命中させたのです。
上様せがれめは臆病ではございません。
その証しにイノシシ100頭を射止めその骨を献上いたしたいと。
せがれは臆病者親は大ボラ吹きか。
おもしろい。
三月と十日やろう。
見事イノシシ100頭を倒してみせい。
はは〜。
噂はたちまち広まりました。
あの臆病者がイノシシ100頭だとよ。
やさ男め大きく出たな。
100頭のかわりに親子並んで腹を切ることになりそうだ。
(ざわめき)《殿の命令にはさからえん。
100日の間毎日1頭ずつ仕留めねばならん》深い谷が続く山には霧が立ちこめ大木が生い茂っていました。
そこはイノシシや鹿の餌場でした。
谷の中ほどに自然の洞窟があり山の神のほこらがありました。
若侍はここに寝起きし朝は獲物を授かるよう祈りました。
夜は獲物を授かった感謝を捧げるのでした。
1日また1日と獲物を追って山を駆け歩き雨風にさらされて頬はこけ眼差しはしだいに険しくなっていきました。
こうして三月が経ち99頭のイノシシを仕留めました。
あと十日のうちに残り1頭を仕留めねばなりません。
ところがその日以来イノシシはぱったりと姿を見せなくなりました。
昼夜を問わず駆けずり回っても一向に獲物と出会いません。
そしてとうとう100日目がやってきました。
イノシシを見つけることができないままあとわずかで日が暮れてしまいます。
若侍は疲れきっていました。
諦めかけていたその時茂みの中から突然大きなイノシシが現れたのです。
夕日を浴びた若侍の顔がパッと輝きました。
嬉しさのあまり扇を開いて舞を舞い始めたのでした。
イノシシもびっくりしたように目を開いてじっと若侍の舞を見ていたのでした。
しばらく舞を見ていたイノシシはゆっくりと目を閉じそのまま動かなくなりました。
若侍は弓矢を持ち用心しながら近づいていきました。
なんとイノシシは立ったまま息絶えていたのです。
その時…若侍は悟ったのでした。
侍の名誉と意地だけのために100頭もの命を奪ってきたことを。
自分はいったいなんということをしてしまったのだろう。
(泣き声)その後…若侍の名誉は回復しましたが心が晴れることはありませんでした。
100頭目のあのイノシシの命を絶ったところにイノシシたちの供養塔を建てました。
今でも若侍の吹く笛の音が山や谷にもの悲しく響き渡るということです。
昔怠け者の男がいた。
畑仕事を働き者の女房に任せ自分は毎日釣りざんまい。
夕飯のおかずは任せとけ。
今日は釣れるといいね。
女房のお腹に子供ができても相変わらず釣りばかりしていた。
やがて女房のお産が近づいた。
あわわ…どうしたらええんだ〜。
ま待ってろ産婆さん呼んでくる。
早く早く生まれそうなんじゃ。
わしももうすぐおっとうか!そうじゃ。
子が生まれる祝いにひとつでっかい鯉でも釣ってくるか。
(雷鳴)ところが遠くで鳴っている雷のせいかメダカ1匹姿を見せなかった。
赤ん坊にわしの腕前見せたいのう。
(雷鳴)う〜ん。
神様もちでも酒でもなんでも差し上げます。
どうぞ立派な鯉を釣らせてくだせえ。
やった〜やったやった〜!神様ありがとうございます。
これこのとおり。
見事な鯉をありがとうございます。
ゴホン願いを聞いたのはわしではないぞ。
ほらあそこじゃ。
なんと男の願いを聞いたのは雲の上の雷様だった。
願いを聞いたかわりに生まれた子供は7歳の年祭りの前夜の宵宮に雷に打たれて命を取られるであろう。
そそそんな〜。
わ〜。
あわわ…。
男の子ですよお前さん。
わしはなんというつまらん願い事をしてしまったのかうぅ…。
それ以来男は生まれ変わったように畑仕事に精を出した。
(笑い声)しかし女房の気持を思うとお告げのことは言えなかった。
それから4年が経った。
おっとう虫じゃ。
おぉ虫を捕ったか。
すごいぞ。
(雷鳴)聞いてくれ!子供の命だけは勘弁してくれ。
代わりにわしの命をやる!ま待ってくれ雷様!
(雷鳴)あっあ〜っ…わ〜っ!大きな石で石びつを作るがよい。
宵宮のひと晩そこに子供を入れるのじゃ…うっ…。
気がつくとそこは神社の裏山だった。
それから男は毎晩出かけるようになった。
ある夜…女房は気になってあとを追った。
お前さん。
あっ…。
女房に見られては隠しておくことはできない。
男はお告げのことを口にした。
すまん。
わしの身勝手のせいじゃ。
でも石びつは作る。
きっと子供は守る。
今日から私もお手伝いします。
その夜から子供を寝かしつけたあと2人は石びつを作り続けた。
〜石びつが出来上がったのは子供が7歳を迎えた年の宵宮間近い頃…。
そして宵宮の晩が来た…。
今夜はここでかくれんぼだ。
いいな。
ああいいよ。
早く隠れて。
よ〜しおっとうのお囃子じゃ。
聴いておれよ。
〜いつしか雷鳴は遠のき夜が明けた。
助かった…。
こんなに安心しきった顔をして…。
よう子供を守り抜いた。
2人のその心がけに雷神も手出しができなかったのじゃ。
(笑い声)そうしてまた祭りのお囃子が力強く鳴りだした。
2014/10/12(日) 09:00〜09:30
テレビ大阪1
ふるさと再生 日本の昔ばなし[字][デ]
「鶴の恩返し」
「イノシシの搭」
「雷と石びつ」
の3本です。みんな見てね!!
詳細情報
番組内容
私たちの現在ある生活・文化は、昔から代々人々が築き上げてきたものの進化の上にあります。日本・ふるさと再生へ私たちが一歩を踏みだそうというこの時にこそ、日本を築いた原点に一度立ち返ってみることは、日本再生への新たなヒントになるのではないでしょうか。
この番組は、日本各地に伝わる民話、祭事の由来や、神話・伝説など、庶民の文化を底辺で支えてきたお話を楽しく伝えます。
語り手
柄本明
松金よね子
テーマ曲
『一人のキミが生まれたとさ』
作詞・作曲:大倉智之(INSPi)
編曲:吉田圭介(INSPi)、貞国公洋
歌:中川翔子
コーラス:INSPi(Sony Music Records)
監督・演出
【企画】沼田かずみ
【監修】中田実紀雄
【監督】鈴木卓夫
制作
【アニメーション制作】トマソン
ホームページ
http://ani.tv/mukashibanashi
ジャンル :
アニメ/特撮 – 国内アニメ
映像 : 1080i(1125i)、アスペクト比16:9 パンベクトルなし
音声 : 2/0モード(ステレオ)
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