目撃!日本列島「生い立ちを知りたい〜虐待の過去と向き合う〜」 2014.10.12

「母のぬくもり」。
「すらりとした体さらさらな髪細い手それは私を抱きしめるための手お母さんと私の心はいつも一つ」。
この絵を描いた少女は自分の生い立ちを知らない。
高校2年生の…児童養護施設で暮らしている。
9歳の時母親の再婚家庭で虐待を受けた。
彼女には幼い頃の楽しかった記憶がない。
写真も残っていない。
「自分は本当に望まれて生まれてきたのか」心にため込んできた不安。
今児童養護施設では子どもたちに生い立ちを伝える新たな取り組みが広がっている。
つらい経験から「自分は不必要な人間だ」と思い込んでしまう子どもたちに人生を前向きに捉え直させる。
この夏自分の生い立ちと向き合った高校生の姿を見つめた。
熊本県水俣市にある…2歳から19歳までの67人が暮らしている。
高校2年生の…9歳の時からこの施設で育った。
ただいま〜。
お帰り。
飲み過ぎお前。
この腹何ですか?みんなの前ではいつも明るくおどけてみせる。
でも人に心を開くのは苦手だ。
司さんは生まれてすぐに両親が離婚。
母親の再婚家庭で虐待を受けた。
何かをしたいと言えば訳もなく殴られた。
気が付けば自分の気持ちを押し殺すようになっていた。
やっぱりいろいろ我慢とかも…司さんの手元には幼い頃の写真がない。
最も古いのは小学6年生の修学旅行で撮ったもの。
これより前の写真は一枚もない。
幼い頃の楽しい記憶も思い出せない。
中学1年生の時この絵を描いた。
きっと母親は幼い自分を愛してくれていたはずだと思いたかった。
母親とはたまに電話したり会ったりしていたけれど昔の事を尋ねる事はできなかった。
司さんの暮らす施設では今年から子どもたちに生い立ちを伝える取り組みを始めた。
ライフストーリーワークと呼ばれ1950年代にイギリスで考案された方法だ。
ライフストーリーブックというノートを使う。
子どもと施設の職員が話し合い生い立ちを振り返る。
幼い頃に好きだった場所や楽しかった時。
両親や兄弟の事。
家族と一緒に住めない理由も子ども自身が書き込む。
つらい事実であってもちゃんと受け入れて人生を前向きに捉え直していく。
司さんのライフストーリーワークを始めるため職員たちは2か月かけて準備をしてきた。
司さんに過去をどう伝えるのか心理士も加わり検討する。
は…ある。
ある。
生まれ変わったみたいに思ってるかもしれない。
司さんには幼い頃の記憶や写真がないため職員が母親に面会し協力を求める事になった。
職員の話し合いから2週間。
1回目のライフストーリーワーク。
この日は司さんが生まれた時を振り返る。
ライフストーリーブックの最初のページには写真を貼る。
人生の原点となる一枚。
職員が母親から写真を預かっていた。
母親は生い立ちを知りたいという司さんの気持ちを知り再婚してからしまい込んでいた写真を捜し出してきたという。
じゃあ自分で。
きもっ!ハハハハハ。
こっち私そのままだけど。
ハイハイを始めた自分。
つかまり立ちをした自分。
やばっ顔顔受ける!司さんが選んだ写真は母親に肩車されている自分。
理由は…更に母親は大きくなった司さんのために育児記録を残していた。
「生まれた時から今日までみるみるうちに大きくなりました。
小さかった司がしっかりしてきてママはとってもうれしいです」。
「離乳食をスタートしました。
最初ママが作った食事を食べてくれた時は本当に感動しました。
うれしくてママは涙が出ました」。
「『司』という字は人の上に立つ立派な人間になって自分の好きな道を生きていってほしいという願いを込めて決めました」。
司さんは公立高校の福祉科に通っている。
いつも親に迷惑をかけない事を一番に考えてきた。
手に職をつけ自立できるようにと福祉科を選んだ。
私の首のところに手を回してもらっていいですか?育児記録を読んでから司さんの考えは少し変わった。
一ついいですか?右側臥位じゃないんですか?そうです。
ごめんなさい!もっと積極的に実習に取り組み介護のプロになりたいと思い始めた。
司という名前に込められた母親の思いを知ったからだ。
前回のライフストーリーワークから1週間。
2回目が行われた。
この日司さんはある事を知りたいと言いだした。
あのほら前の…何だっけ…。
育児記録に書かれていた事が気になっていた。
「司が5か月くらいの時ママとパパは話し合い離れる事に決めたんです。
いろいろあってママはパパと一緒にいたくなくなったからです。
それからしばらくしてパパはママと司を置いていなくなってしまったの」。
両親が離婚した理由。
ずっと知りたいと思いながら母親には聞けなかった。
母親に直接聞こうと言われても司さんは何も答えず部屋から出ていった。
2日後。
司さんは母親に電話する事を決めた。
もしも〜!司だよ。
ライフストーリーブックの質問から話を切り出した。
うんうん。
じゃあもう質問からでいい?えっとねまずはね…一応あれに書いてたのね。
じゃあ次ね。
発した言葉。
何か言ってたやつとか。
ああ単語?なるほど。
電話を始めて20分。
一番知りたかった事を聞いた。
ちょっとね「ん?」って思う事があったんだけど…母親は包み隠さず話してくれた。
お互いが若すぎた事。
実の父親が育児に関わらず夫婦に擦れ違いが生まれた事。
何て言うんだろう?うまく…。
うん。
うん。
じゃあねバイバイ。
は〜い。
すごいでしょ。
「は〜い」がね一緒なの。
「は〜い」ってハモるんだ。
司さんは明るく電話を切った。
ちょっと待ってよ。
あのね何か私を…産まれる瞬間もいたらしいの。
初めて知った両親の現実は厳しいものだった。
その夜司さんは部屋から出てこなかった。
翌朝。
部屋から出てきた司さんはいつもの明るい彼女ではなかった。
9月下旬。
この日のテーマは小学生の頃を振り返る。
こうやって。
顔に傷があったって事?9歳の時に受けた虐待。
首痛かった!何が?その時の気持ち。
痛いよ〜。
痛い怖い。
死ぬ〜って思った。
今後このつらい記憶とも真正面から向き合わなければならない。
死にそうな体験をしてるけど何でそんなに明るく話せるの?え〜?これが昔だったんだよ。
司さんのライフストーリーワークはこの先1年以上をかけて行われる。
心の奥にしまい込んでいたつらい記憶や親への気持ち。
過去を受け入れ乗り越えた時司さんはどんな未来を描くのだろう。
2014/10/12(日) 08:00〜08:23
NHK総合1・神戸
目撃!日本列島「生い立ちを知りたい〜虐待の過去と向き合う〜」[字]

親はどんな人?なぜ、家庭で暮らせないの?今、児童養護施設では子どもと生い立ちを振り返る取り組みが始まっている。16歳の少女が初めて知った出生のエピソードとは。

詳細情報
番組内容
司さん(16)は、生い立ちを知らない。幼いころの写真も見たことがない。9歳で虐待を理由に児童養護施設に預けられ、親から生い立ちを聞く機会がなかったからだ。そんな司さんは今、「ライフストーリーワーク」に取り組んでいる。施設の職員と、生まれてからの日々を整理することで、人生を捉え直しておこうというものだ。探し出された写真、育児日記に書かれた両親の別れ…過去と向き合い、乗り越えようとする姿を追った。
出演者
【語り】リリー・フランキー,【朗読】遠藤みやこ

ジャンル :
ドキュメンタリー/教養 – 社会・時事

映像 : 1080i(1125i)、アスペクト比16:9 パンベクトルなし
音声 : 2/0モード(ステレオ)
サンプリングレート : 48kHz

OriginalNetworkID:32080(0x7D50)
TransportStreamID:32080(0x7D50)
ServiceID:43008(0xA800)
EventID:56854(0xDE16)