NHK短歌 題「浮かれる」 2014.10.12

ご機嫌いかがでしょうか?「NHK短歌」司会の濱中博久です。
第二週の選者は斉藤斎藤さんです。
今日もよろしくお願いします。
さてまた変わった歌が冒頭出ましたね。
私の世界は例えば濱中さんの世界の中にはないし濱中さんの世界は私の世界にはないんだよなというのを何か妙に思っちゃいましてね。
違う人だという事ですね。
何かガムとか噛んじゃってね態度が悪くて申し訳ないです朝からね。
そんな歌ですはい。
そんな歌なんだそうでございますがさて今日の「NHK短歌」にお迎えしたゲストをご紹介致しましょう。
宗教学者の島田裕巳をお迎え致しました。
ようこそお越し下さいました。
島田さんはさまざまな著作がおありでございますが最近お出しになった本がこういうタイトルなんですね。
ご覧頂きましょう。
「0葬」と読みますが「あっさり死ぬ」とありますね。
これは葬祭に触れた…?葬式とかお墓とかお金かけたり派手にしたりという傾向がありますけどちょっとそういうのを見直してみようと。
究極にあっさり死ぬにはどうしたらいいかというのをこの本で考えてみたという。
へぇ〜そういうテーマですが斉藤さんもこれ読まれたそうですね。
読ませて頂いてお葬式もお墓も全くゼロというね非常に説得力があってなるほどと思うんですけど自分だったら全くゼロでどうなんだろうってすごいいろいろ考えるきっかけになる本ですね。
とても面白かったです。
島田さんところで短歌との接点はいかがでございましょう?僕は仏教とか神道とか昔の日本の事を調べたりするのでそうすると必ず歌が出てくるんですよ。
歌を読まなきゃいけなくなるというかだからそういう世界を割合と親しんでいるんです。
この番組出るにあたって皆さんに短歌のイメージを短い言葉にして頂いておりますが島田さんはどういう言葉で?「事情」…何か訳ありのような事なのか…。
どう訳ありかという事ですね。
このお話後ほど聞かせて頂きます。
どうぞよろしくお願い致します。
それでは今週の入選歌のご案内になりますが題が「浮かれる」または自由でございました。
斉藤斎藤選入選九首です。
一首目。
「浮かれてをれよ」という覚悟しとけよっていう口調そして「被害対策会」という字面の強さですよね。
でも字面の強さからすると「被害対策」というどうしましょうというような意味合いの内容はちょっと弱いような感じこのギャップがあって非常に上の句から下の句への転換が面白い歌ですね。
川鵜がする悪さに対して何とかせにゃいかんという事でしょうね。
そういう背景の歌ですね。
では二首目です。
非常に女性らしいかわいらしい歌ですよねお世辞には「少し浮かれて」という最後の手鏡のところでそうかしら?あらかわいいのかしら?お若いのかしら?っていうふうに浮かれている面といやいやちゃんと浮かれてちゃ駄目だわっていう気持ちと両方混じっているようで非常に巧みな結句だと思いました。
では次が三首目です。
プロフィールなんですけど内川さん90歳でいらっしゃると。
それを聞くとますます味わい深い歌で「散る花の混じるビール」というね人生で一花咲かされたあと更にそのあともうひとふんばりという「散る花の混じるビールを飲み干して」という上の句がとてもかっこいいですよね。
是非浮かれて頑張って頂ければと思います。
それでは四首目にまいります。
島田さんどう読まれました?まさに見栄を張ってしまったなというところの反省なのかちょっとそれを楽しんでるのかそこら辺が面白いですよね。
冠婚葬祭って世間体を気にして見栄を張るっていう「0葬」にも関係しますけどそれがよく表現されてて「いたな」ってところがなかなかいいなと思いますね。
思い浮かべて思い出しておられますね。
非常に細かいディテールから入って浮かれるを表現されていてでも例えば花代のランクが4つぐらいある中の上から2番目にしちゃったわねみたいな感じの細かさが面白かったですね。
本来の私なら下から2番目ぐらいでいいかなと。
だけど上げちゃったんですね。
若干浮かれちゃった感じですね。
それにしてもナイフの花にもこんなランクがあるんですね。
すごいですね。
では五首目です。
古希でいらっしゃって海に潜っていらっしゃるわけで非常にバイタリティーのある方だと思うんですけれども海に潜って何をしているかというと小魚を見てるんだよっていうちょっと地味な感じですね。
お元気な感じと落ち着いた感じの出し入れが非常に巧みで練れている歌ですよね。
さあ次です。
六首目です。
「浮かれる」というお題で自分が浮かれる歌はたくさんあったんですけど人を浮かれさせるっていう角度の歌はちょっと珍しかったんですね。
お二人の暮らしが長くなって愛がだんだん情に移っていく時でもコーヒーを丁寧にいれてあげようという気持ちがとても丁寧に描かれていますね。
お二人の時間が少し長くなってきている時期の…。
ときめきが若干落ち着きに変わっていく感じですよね。
何かこう実感が籠もってますね。
そんな事ないですかね?次いきますか。
七首目です。
非常にきれいな色使いの歌で今の季節オレンジがかった月が大きく出てる景色をよく見ますけどね。
それが何かこうステンドグラスじゃないですけど色つきの影絵のような切り取り方で描かれていて非常に美しい影絵のような絵でしたね。
群青鬼灯色そして月の色ですね。
「昇り来」というのがまた結句がうまいですね。
「月が昇り来」ですね。
では次です。
さあ島田さんどう読まれました?これはやっぱり強烈ですよね。
「告知され時間はないが」というところで死の宣告を受けてるような感じででも何かそのあとにいろいろ「未練もない」とかって揺れてる感じですか?そういうのが出てる感じですね。
揺れね…心の揺れ。
心の揺れがあると思いますね。
ここにはね。
さて蝉がひっくり返っているという。
夏の終わりによく蝉が落ちていますけれどもその景色が「告知され」という状況と響き合って出てきた歌なんでしょうね。
さて次がおしまいの歌です。
九首目にまいります。
島田さんいかがですか?一体この人どうなっちゃってるのかなというところが面白いですよね。
こんな世の中からはみ出してしまうような恋っていうのは一体どんなものなのかなっていうね。
最後もっとこう行ききっちゃった方がいいような気はするんですけれど。
思いっきりはみ出しちゃう?怖いとか言わないで。
その方がいいんじゃないの?という。
ええ。
なかなか危険な老いらくの恋になりそうですが斉藤さんどうでしょう?そうは言っても今回入選九首の中では最も真っ正面から浮かれて頂いた歌だと思いますよね。
「此の世からはみ出しそうな怖い夢」ってどんな夢なんだろうっていろいろ想像させるところがありますしとても面白い歌ですよね。
是非老いらくの恋を突き進んで頂ければと。
やっぱり突き進みますか?お二人とも勧めてますけどだいぶ怖い内容だったみたいですけど大丈夫ですかね?以上入選九首でした。
この中から斉藤斎藤さんが選ばれた特選三首の発表です。
まず三席からです。
高原晴子さんの歌です。
続いて二席です。
宮本次雄さんの歌です。
いよいよ一席です。
松田憲一郎さんの歌です。
島田さんの評のようにやはり意味が二転三転して非常に心が揺れている状況ですね。
夏の蝉を浮かれた蝉なんだと浮かれてるからひっくり返るんだという非常に思い切った把握なんですがただならぬ状況と響き合っていてこの状況だからこそ歌えた歌だなという感じがしましたね。
今日ご紹介しました入選歌とその他の佳作の作品はこちら「NHK短歌」テキストにも掲載されます。
是非ご覧下さい。
さあそれでは「うた人のことば」です。
終電車までいろんな表情を持っているのが駅なんですね。
その中で比較的電車はすいてるんですけれどもお昼っていうのはお食事時間でいろんな駅の構内に匂いが流れるんですけれどもカレーの匂いっていうのは空腹感を誘うと同時にある限りない懐かしさがあるわけです。
子供の頃カレーが好きだった人は多いと思いますけどいろんな仕事の人が昼になるとカレーを食べて元気をつけようというそういう気分になる。
そこのところに私はやっぱり働く庶民のね匂いと味というものがある感じがして。
奇妙ですけど寝てからなの。
枕元にノートを置いといてね電気を消しちゃってから真っ暗な中でねわりと心が豊かに広がるんですよ。
さまざまな空想もそれからさまざまな見た事柄も場面も思い浮かぶのでそういう時に真っ暗な中でノートに書くという事がよくありますね。
続いては「入選への道」のコーナーです。
皆さんからお寄せ頂くご投稿歌の中から一首斉藤さんが取り上げて表現の工夫の提案をなさいます。
今日はどういう事になるでしょう?今日はこちらの歌ですね。
非常に3人のねお父さんお母さん娘さんの関係性が見える面白い歌ですよね。
関係と情景も浮かびますよ。
ただ短歌ってどうしても2つの文章で構成するというのが一番オーソドックスな形なので登場人物が3人だとちょっとゴチャゴチャしてしまうんですよね。
3人が多い?多いですね。
娘夫私という事でちょっと定員オーバーな感じが若干します。
この状況を生かしながらどうにか登場人物を2人にしたいんです。
そこで例えばこうなります。
これで状況は全く同じなんですけれども娘がやけに浮かれてるなというふうにご両親で話し合って夫が妻に「おいお前聞けよ」ってつついているというような状況になると。
確かに文字的には娘と私しか出ておりませんね。
2つの文章2つの部分で3人を書いていると。
ですので改作はともかく基本的に短歌では一首に登場人物2人がすっきりしますよという事を覚えて頂ければなと思います。
登場人物の整理という今日はヒントでございました。
どうぞご参考になさって下さい。
それでは投稿のご案内を致しましょう。
さて斉藤斎藤さんの「初心者になるための短歌入門」今日はなんと「犬が歩いて棒に当たる」です。
こちら8月の放送の時スピードワゴンの小沢さんが作って下さった歌です。
特に下の句「券売機だから女子大盛りのボタン」なんてとてもリズム面白いんですが…。
ラーメンでしたよね。
問題は上の句ですね。
「普段なら頼む事などできないが」というのがちょっと理屈っぽいというか解釈が多いかなという感じします。
例えば「犬も歩けば棒に当たる」ということわざがありますがこれ解釈なんですけれども「犬が歩いて棒に当たる」というとこれ単なる事実ですよね。
この「犬も歩けば」を「犬が歩いて」という事実のレベルに落とすような作業が必要になってくると。
例えば「普段なら頼む事などできない」というのを「なら」とか「など」が解釈なので抜いて「普段は頼む事ができない」。
「事」を抜いて「普段は頼めない」。
更に「頼めない」という「め」が解釈なので「頼まない」という事実にしちゃう。
更に「普段は」というのもこれも解釈なので例えば「直接は頼まないんですよ」という非常にシンプルな事実の形にする。
つまり「普段なら頼む事などできない」を「直接は頼まない」というふうに単なる事実にする。
そうすると上の句はすっきりするんですね。
ただここまですっきりしちゃうと歌としてバランスがとりにくいのでもろもろバランス調整した結果例えばこんな感じになります。
ちょっと大盛りを中盛りに減らしてみましたけど。
こんな感じで解釈を抜いていってできるだけシンプルな「直接は頼まない」ぐらいの事実の形に落としていくという作業を意識されると上の句がすっきりしますのでご参考にして頂ければと思います。
これでスピードワゴンの小沢さん入選?これは入選間違いないですね。
こちらでも佳作ですね。
という事で皆さんもどうぞ参考になさって下さい。
さてゲストにお話を伺ってまいりましょう。
宗教学者島田裕巳さんをお迎えしておりますが短歌のイメージ短い言葉にして頂きましたね。
事情訳ありさあどういう意味でしょう?俳句とちょっと比較するといいと思うんですけど俳句って外の世界の情景を詠むわけですよね。
だけど短歌っていうのは詠んだ人の人っていうその人がどういう状況にあるかという事が直接やっぱり出てくるんじゃないかなと。
事情があった時に歌を歌うという事が非常に重要なポイントなんじゃないかなという事でこういうふうに考えてみたんですけどね。
どんな事情が歌われているかその文脈で最近印象に残った歌を引いてちょっとお話をして下さい。
この番組に出るという事でNHKのパンフレットを見たら「全国短歌大会」で近藤芳美賞というのがあると。
この1月に初めて設けられました賞でございます。
そこで受賞された熊谷純さんですか?その方のものを紹介します。
二首ございますね。
何かこう今の若者ってこういう感じかなっていうのがものすごくよく出ているなと。
つまり事情が見えるわけですね。
なかなか戦おうって言っても今の社会戦うようにできてないじゃないですか。
僕らが若い頃ってみんな戦ってたんですけれどそういうような心境みたいなものがうまく出てるし「職業の欄に『アルバイト』」っていうねそのアルバイトが大体職業なのかっていうとこですよ。
だけど自分はこういうアルバイトってものでしかないからあえてそういうふうに書いてると。
ここにこの人の事情が出てて単にそれを表明するだけじゃなくて世の中に対して自分はアルバイトでしかなれないんだよっていう事で抗議をしてるプロテストしてるっていうそういうところが出ていて面白いなと思ったんですよね。
ちょっと木を思いました。
「ぢつと風鈴を見る」「ぢつと手を見る」と思い出しましたが斉藤さんこれどうですか?木はじっと手を見ましたけどこの人はもうじっと手すら見ないですからね。
「ぢつとしてゐる」というここら辺も微妙に本歌取り的なところがあるかもしれない。
私なんかもアルバイトだったり契約社員だったり派遣社員だったりっていう正社員以外を行ったり来たりしてるようなところがあるんで職業欄にアルバイトって書く屈託は非常によく分かりますね。
ご自身も似たような事情がおありになった事がある?非常に身につまされる歌でしたね。
事情って事で言えば今日の一席の歌も全く事情でしたよね。
夏の終わりにおなかをさらしてる蝉があれはうかれた蝉なんだっていう見立てって普通の心理状態では出てこないと思うんですよ。
告知されたっていうただならぬご自身の状況があって心が揺れているからこそその蝉と響き合って出てきた。
まさに事情の歌。
事情を受け止めて出てきた比喩というか見立てかなという感じしましたね。
私も大病した事あるんですけど10年ぐらい前。
そういうものに直面すると人間って自分が生きてるとかあるいは死ぬとかそういう事を真面目に考えるようになるわけですね。
だからそういうような時じゃないとこの歌っていうのは「告知され」って絶対詠めないですよね。
ふだんただ考えて詠めるわけじゃなくてそういう状況事情になった時に初めてこれが出てくるわけでまたそういう時に歌っていうものがある事によってこの人は世の中に対して自分は告知されたんだけどまだ生きたいよっていうプロテスト…抵抗っていうのを示してるんだと思うんですよね。
そのために歌ってものすごくいい手段なんじゃないですか?くどくどと言っても駄目でこの短い言葉の中で表現する事によって強烈な世の中に対するメッセージが出てくる。
この歌で言えば揺れが表現されていてひっくり返った蝉でというところに意味を見いだしておられましたね。
ひょっとすると残り時間が少ないかもしれないと。
でも私は蝉みたいに浮かれないんだよと。
地に足を付けて生ききるんだよと言ってるんだけどもでもそう言い切るからこそそう思い切れてないんじゃないかみたいな揺れみたいなものもかえって伝わってくるようなところもあったりして非常に複雑です。
この歌を聞いたらねこの人どうなっちゃうんだろうというふうに周りの人とかこれを見た人は絶対感じますよね。
大丈夫なんだろうか?今はこの世にいないんじゃないだろうかとかいろいろ心配になってきます。
ある意味そういう心配を起こさせようというところも作った側にあるんじゃないですか?やっぱりこの歌を読ませて頂く事によって私なんかも受け止めさせて頂いてね自分の事も心境として考えますからね。
残り時間とか。
この作者の方と全く同じじゃないですけれども全く共感する事はできないんだけどもちょっとものの見方に共振するようなところはあってそれがやっぱり歌のいいところですよね。
表現はやはり他者に対するアピールという事。
…でありプロテスト。
辞世の歌ってよくありますよね。
それってやっぱり自分は死にたくないんだけど死ななきゃいけないと。
その時の心境をここで表現するわけだからやっぱりちょっと抵抗してるんだと思うんですよね。
受け止めてどう立ち向かっていくかという事ですよね。
今日は宗教学者の島田裕巳さんをお迎えして興味深いお話を伺いました。
どうもありがとうございました。
斉藤斎藤さんでは次回もどうぞよろしくお願い致します。
では「NHK短歌」時間でございます。
ごきげんよう。
2014/10/12(日) 06:00〜06:25
NHKEテレ1大阪
NHK短歌 題「浮かれる」[字]

選者は斉藤斎藤さん。ゲストは宗教学者の島田裕巳さん。それぞれの人の事情を映し出す短歌は、社会へのプロテストとしても読みとくことができるという。司会 濱中博久

詳細情報
番組内容
選者は斉藤斎藤さん。ゲストは宗教学者の島田裕巳さん。それぞれの人の事情を映し出す短歌は、社会へのプロテストとしても読みとくことができるという。【司会】濱中博久アナウンサー
出演者
【出演】島田裕巳,斉藤斎藤,【司会】濱中博久

ジャンル :
ドキュメンタリー/教養 – 文学・文芸
趣味/教育 – 生涯教育・資格

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