ETV特集 アンコール▽よみがえる色彩 激動の20世紀 アーカイブ映像の可能性 2014.10.11

フランスのテレビ番組…万歳!日本を含む165か国で放送され大反響を呼びました。
その映像世界はかつて誰も目にした事のないものでした。
多くの人を驚嘆させた映像。
そこには秘密がありました。
当時の映像記録の多くは白黒でしか残されていません。
番組の制作チームは世界中から集めた白黒の映像記録を綿密な考証と最先端のデジタル技術によってカラー化。
当時の生々しい現実をよみがえらせたのです。
独裁者ヒトラー率いるナチス・ドイツの旗の赤。
日本兵を苦しめたニューギニア熱帯雨林の緑。
色彩がよみがえった事で映像は感触や奥行きを取り戻します。
戦争の現実が改めて立ち現れてきました。
「アポカリプス」の成功を受けて今白黒映像をカラー化して作られた番組が次々に生まれ始めています。
NHKでもこうした試みが進められています。
テーマは「東京」。
関東大震災東京大空襲と波乱に満ちた東京の歴史。
100年にわたりさまざまに記録されてきました。
NHKでは改めて東京の映像を発掘。
ノウハウを持ったフランスの会社の協力を得て今色の復元を進めています。
今年秋に番組を放送する予定です。
色彩の復元で生まれ変わるアーカイブ映像の世界。
その最前線を紹介しながら色と記憶を巡って考えていきます。
こんばんは。
東京大学の丹羽です。
冒頭でご覧頂いたとおり今ヨーロッパのテレビ局では最新のデジタル技術を使って白黒フィルムに色をつけてドキュメンタリーを制作する試みが盛んに行われています。
テレビや映画がカラーになったのは20世紀の後半。
しかし世界の映像アーカイブにはそれ以前に撮られた白黒の記録映像が膨大に残されています。
このカラー化はこれまで十分に活用されてこなかったアーカイブ・フィルムに新たな命を吹き込む興味深い試みだと思います。
今日はこのカラー化の技術が持つ可能性や課題について考えてみたいと思います。
まずは最新の番組を1本ご覧頂きましょう。
フランスで制作された「パリ1920年代」です。
去年の年末に放送され大きな反響を呼びました。
それではダイジェスト版でご覧下さい。
(叫び声)めくるめく才能が自由を謳歌した街パリ。
「狂乱の1920年代」といわれた時代。
第一次世界大戦が終わり人々は何かを取り戻そうとしていた。
馬車に代わって街に自動車があふれた。
あちこちでばかげた悪ふざけがはやる。
自転車でエッフェル塔を駆け下りたりノートルダム寺院をよじ登ったり。
向こう見ずな挑戦愚かな新記録。
まるで変人たちの見本市だ。
パリは疾走していた。
あの忌まわしい戦争を忘れるために…。
友人や肉親愛する者を亡くした痛みを忘れるために…。
時代を支えたのはパリの住人だけではない。
戦後世界中から人が押し寄せた。
日本の画家藤田嗣治もその一人。
多くの若き移民たちがこの街で名を揚げていく。
モンパルナスは彼らの街角。
カフェーがひしめいていた。
物好きが集まり時代を象徴する場所となる。
通りを眺め飲み仕事をし誰かに見られ誘われる。
そこにいるだけで楽しみは尽きない。
モンパルナスの若造たちはやがて女王を選び出す。
その名はキキ。
男はキキにひかれ女はキキになりたがった。
「詩人画家役者それ以外は興味ないわ」。
戦争中一度男手を失った女たちは自立の味を知った。
パリをぶらつく女たち。
自由奔放な明るさ。
屈託のない笑顔。
素足にショートヘアが大流行。
ファッションが女性解放へと突き進んでいく。
そしてファッションに革命を起こしたのがココ・シャネル。
彼女のリトル・ブラック・ドレス。
喪服の色だった黒をエレガンスの極みへと進化させたのだった。
戦争前から芸術といえばモンマルトルが中心だった。
ここはまるでタイムマシン。
有名なカフェーに行けば印象派の画家たちに出会う事ができた。
例えば死を目前に控えた巨匠ルノワールがリューマチを患った手で絵筆を握り描き続ける姿を目にした事だろう。
または半ば見えなくなった目で「睡蓮」を描くモネに出会えたかもしれない。
印象派の時代が終わるとモンマルトルには新たな音楽が鳴りだす。

(演奏)ジャズ。
「狂乱の20年代」のBGM。

(演奏)アメリカから軍楽隊としてやって来た黒人兵士たち。

(演奏)彼らは人種差別のない街モンマルトルを目指した。
誰もがジャズを愛する「約束の地」。
だがそんなに甘くはなかった。
当時の広告を見れば一目瞭然。
他の場所と同じパリにも人種差別は存在した。
しかし20年代半ばセンセーショナルな一人の19歳がそんな偏見を一気に吹き飛ばした。
アメリカ生まれのジョセフィン・ベーカー。
歌にダンスに類いまれな才能を発揮した。

(歌)単なるセックスシンボルではなく史上初の黒人スター。
それを誕生させた地こそパリだった。

(歌)
(拍手)セクシーな写真もフランスのお家芸。
怪しい歓楽街で生み出された。
この分野でもパリが世界を大きくリードした。
「パリは移動祝祭日」と言ったのはヘミングウェーだ。
夜がモンパルナスのカフェーで始まるとパリはカクテルアワーに突入する。
ちょっと目を覚ましたくなったらシャンゼリゼで一泳ぎ。
キャバレー・リドのプールなら午前2時まで開いている。
2時を過ぎたらモンマルトルでクラブ巡り。
狭い地区に山ほど店がある。
革命を逃れてきたロシア人貴族であふれるモンマルトルはまるでコーカサスの熱い夜のようだ。
通り2本隔てたキャバレーで踊るのはアルゼンチンのダンサー。
もともとタンゴは貧しい酒場のダンス。
だからこそモンマルトルでうけたのだ。
「海岸に行こう!」。
夜が明けて不眠症のお金持ちがそう言いだしても大丈夫。
ドーヴィル海岸に行けばいい。
浜辺はまるでパリそのもの。
漁網をあしらった水着の女を連れてまたしても藤田嗣治の顔が見える。
侍の子孫藤田はこの奇抜な時代の代表選手だ。
ちょっとここで時代の舞台裏をのぞいてみよう。
電気も水道も無ければ自動車も無い。
パリの郊外では貧しい人々がゴミにまみれてもがき続けていた。
そんな現実をよそにどこまでも逸脱していくパリ。
金持ちに売春婦だて男に兵士酔っ払いにシュールレアリストにアマゾネスにおてんば娘。
死んだ人も起きるくらいの大音量で時代の熱狂が爆発する。
今やり尽くさなければ。
最後のパーティーなのだから。
いや〜実に驚きましたね。
まあパリのその色の華やかな…。
モノクロじゃないと何か迫ってきますね。
欲望であったりエロチシズムであったり風俗であったり。
何よりも僕感動しちゃったのは歴史上の有名人がドカンドカン出てきますよね。
画家で言うとルノワールとかモネとか。
で藤田がカラーで出てきて。
モノクロで見てた時だと藤田って何か歴史の向こうにいる人みたいなあれだったんですけども。
ガーンと。
生きてよみがえってきた藤田に会ったって感じがしましたね。
まさにそういう世界に私たち見てる側がタイムスリップしてしまうような効果がこの映像にはあるなと思ってて。
何かこう白黒で見てる時とカラーで見てる時に見てる側の入り込み方距離感っていうんですかね。
そういうものが随分違うなという感じがしたんですけれど。
そうですね。
特に美術っていうか芸術の方で言いますと花の都パリっていうのがある種最後の輝きを見せた時代ですね。
19世紀の印象派から始まって20年代。
そのあとは今度アメリカ・ニューヨークに世界の文化の中心が移っていくわけですけれども一番パリが華やかだった頃をカラーでよみがえらせるというかカラーで語っているっていうのがまさに時代をうまく映像化したなという感じは…そんな印象を持ちましたけれども。
色彩の観点から見て臨場感とかそういうものっていうのはどういうふうに説明できるんでしょうかね。
色がつく事によって色が復元される事によってそこで復元されたのが単なる色ではなくて色を含めたそこにあった世界そのものが復元されるっていうか。
白黒の映像だったら軽くスルーして見てしまうところを服に色がついてるだけで思わず目が留まってしまうっていうかそういう効果があって。
例えば色分けっていう言葉がありますけどもものに色がついてる事によってこの緑の服を着てる人とこの赤の服を着てる人というのが一目でそれぞれの存在がすごく際立ってくるっていうかそういう色分けの効果というのがありますしあと色彩の理論で言いますと色には実は遠近法の効果があるんですね。
4原色ぐらいでいくとどうなるかというとつまり赤青と黄色緑ぐらいでいきますと飛び出してくる方から順番に言うと赤黄色緑青という順番に遠近法ってできてるんですね。
例えばこれは20年代のパリと関係なくてもう少し前のゴッホの絵なんですが麦畑の絵でこれ今言った4原色つまり青と赤土は茶色ですがまあ赤黄色があって緑があるんですね。
これ明らかに手前に道があって麦畑があって奥に青空があるって分かると思うんですけどそれはそういう風景だからだそれ色と関係ないだろうって思うかもしれないんですけどそれを証明するのは簡単で色を落としてみればいいんですね。
そうするとどうなるかっていうと…こうなって完全な真っ平らな絵になっちゃうんですね。
単に色がついて鮮やかだっていうだけではなくて色がつく事で奥行きが見えたり。
そうですね。
空間が見えたりあとそれぞれの存在が際立ったり色分けされたりとかっていうそんな感想を持ちました。
ジョセフィン・ベーカーってアフリカ系アメリカ人だった。
後にフランス国籍を取るわけですけどその辺の肌の色がよく出てますね。
褐色の感じがね。
そうそう。
(布施)緑色のドレスというか服を着てましたけれども緑色っていうのは色彩の理論で言うと赤の補色なんですね。
つまり映像の効果としてはすごく肌の色を鮮やかに見せる効果があってつまり緑色の横に赤に近い色があると赤がものすごく鮮やかに見えるんですね。
なのでジョセフィン・ベーカーの持っている…まあ黒人ですけれども赤みががった肉体っていうのが緑とのコントラストでより刺激的に演出されているっていうそういう計算というか効果もあった。
映画でもそういう赤っていうのは非常に扇情的に出てきますわね。
何か欲望というのを出したいなといった時に僕は「未亡人下宿」という映画で…。
まあ学生が下宿生活だから色がないですよね。
何か欲望を感じさせるものを出したいなと思ってすき焼きのアップを撮った毎回。
肉がこう…すき焼きがぐつぐつ煮えてくるところこれのアップとそれを学生たちが焦ったように食べるわけですよ。
それ見てるとねその食べ物のアップがすさまじい。
あの感じのおいしそうな事とそれを若い者が食べるからこれただごとじゃ済まないよなという感覚が…。
動物でも変な話ですけど猿とか秋になると発情期になりますけどお尻が赤くなる。
だからなぜか赤っていうのはそういうもともと色なのかな。
(山本)ありますよね。
そうそう。
実は今年の秋色を使って東京の歴史を再現するというそういうプロジェクトが進んでいます。
今日は「カラーでよみがえらせる東京」というのを復元中のカラー映像も含めて少しご覧頂こうと思います。
おっ何が出てくるか。
この街はこの100年激動の歴史を歩んできました。
1923年の関東大震災。
そして1945年の東京大空襲。
ともに10万人以上の犠牲者を出し街は壊滅的な被害を被りました。
ところが東京は二度とも奇跡のような復興を果たしました。
世界に類を見ない東京のこうした歴史は実際どんな現実が積み重なってきたものなのでしょうか。
今年その知られざる現実が最新の技術でよみがえります。
NHKが今年秋の番組化を目指して白黒フィルムのカラー化を進めているのです。
色彩を復元する作業の一部はフランスで行われています。
第二次世界大戦のカラー化などデジタル技術を駆使した色彩復元に長く取り組んできました。
色をつける範囲をコンピューターの画面上で指定し色をのせていく。
この作業を繰り返しながら配色を少しずつ精密にしていきます。
実は20世紀初頭の白黒フィルムの時代にも映像に着色する試みがありました。
しかしフィルムのコマ一つ一つに手作業で直接色を塗るため細かな着色が困難でした。
それがデジタル技術の進歩によって細かい部分のしかも激しい動きへの対応が可能になりました。
例えばこの画面を横切る大八車のように位置が移動するものの場合。
色の範囲を一度指定すればそのデータを使って動きを追いかける事ができます。
修正も容易になりレベルの高い仕上げが可能になりました。
色の選択が精密にできるようになった事で復元する色の参考資料を探す作業が重要になってきました。
例えば東京の玄関東京駅であれば当時の絵葉書の色彩が。
東京の街を走る路面電車であれば残っている実物の色彩が良い参考資料になります。
拡大して着色する事も可能になり映っているものの細部にも注目し色彩を復元できるようになりました。
その結果膨大な参考資料を集める必要が生じます。
参考資料の収集と分析は日本とフランス双方で手分けして進めています。
昭和の初め東京の人々が愛したモダンな文化。
この映像は最近個人のお宅で見つかりました。
しかし色を特定する資料が日本にはありませんでした。
そこで注目したのが当時の宝塚のレビューに関わるある人物でした。
宝塚の演出家として活躍。
今回見つかったフィルムのレビューも白井の演出です。
1920年代白井は滞在したパリでレビューを見て心を打たれたといいます。
帰国後その経験を生かして宝塚のレビューを演出。
高い評価を受けました。
白井は後にこう回想しています。
図書館に白井がパリに滞在していた頃のレビューで使われた衣装の原画が残っていました。
多くの衣装に使われていた色彩は白井が「甘美なフランス的色彩」と表現した青やピンク白でした。
他にも同時代の衣装の中に白黒映像に映っていたものとよく似た形の衣装が数多く見つかりました。
この日見つかった資料は進められつつある復元作業に早速生かされます。
モノトーンの映像として現代に引き継がれてきた東京。
その歴史が少しずつかつての色を取り戻しつつあります。
白黒映像をカラー化する事にはどのような意義があるのか。
映像資料に着目した研究を続けている歴史学者の原武史さんです。
原さんは文字の資料を重視してきた歴史学の研究に映像記録の検証をもっと積極的に取り入れるべきだと考えてきました。
原さんが注目する映像の一つが戦前の昭和天皇の映像です。
原さんは文字資料だけでは確実でない事が映像から分かるといいます。
例えば当時新聞は天皇の姿を見た人々が「感涙した」と報じています。
極端な話ね例えば霧がかかっていたとか天候が悪くてよく見えなかったという可能性だってあるわけじゃないですか。
たとえそうだとしても多分新聞は天皇を仰ぐ。
ところが映像として見た場合にはそういう当時のイデオロギーからいわば自由な形で実際どうだったのかっていう事が確かめられるわけですよね。
それで確かにこうやって見ると非常に神々しく見えると。
なるほどというふうに感じる事もあるだろうしそうでもないなって思う事もあるだろうし。
ではカラー化した映像では何が分かるのか。
原さんに見て頂きました。
(アナウンサー)「東亜の天地に雄渾極まりなく金鵄の栄光燦として輝く紀元2600年記念観兵式は秋冷澄み渡る10月21日かしこくも大元帥陛下の親臨を仰ぎ奉り代々木練兵場において…」。
お〜。
やっぱりあれですよね。
天皇の何ていうかこう存在感っていうのがくっきりと浮かび上がる感じがしますけど。
モノクロの時には白と黒しかなかったのでここまで存在感が強調されるという事はなかったと。
そういう空気感みたいなものがここから読み取る事ができるんじゃないかと思うんです。
映像のカラー化によって浮かび上がる空気感とは一体どのようなものなのか。
美術作品の色彩復元が専門の…浮世絵など特に和の色彩に造詣が深い小林さん。
今回のカラー化にあたり女性の服装などについて多くの助言を頂いています。
小林さんは大正から昭和初期にかけての東京の映像を例に挙げてカラー化映像の空気感について語ってくれました。
戦争に向かってはいるんだけどもまだそういうふうに敗戦という雰囲気もなく日本という国はすばらしいんだという事に自信を持ち始めていた頃ですから。
そういう中で外に発散するくらい色の組み合わせが派手になったり見ている人たちも楽しめるくらいのデザイン力と色の組み合わせだったりするわけですね。
そういう事を時代の空気としてカラー化する事によって感じる事ができる。
専門家の方々のお話でも白黒映像のカラー化によって時代の色が見えてくるというような話がありましたけれども時代の色というものが果たしてあるのかどうか。
そういうものがカラー化によって見えてくるのかどうかというところどんなふうにお感じになりますか?今でも僕習慣として残ってるんですけど「お前ね銀座へ行くんだからそんな格好しちゃ駄目だ」と。
要するに銀座へ行く時は「銀ぶら」っていうのは東京の庶民が絶対おしゃれして行かなきゃいけないんですよ。
そこで銀座だとあの洋装本当にいましたああいう人たち。
銀座に行く時はちょっと気合いを入れてかないといけないみたいな事がこの映像からも見えてきますしそれがその時代の色でもあるっていう。
そう。
僕空気だっていうんですよ。
つまりおふくろに僕なんか言われてるんですよ。
「お前銀座へ行くんならちゃんとした格好してなきゃ」。
靴も磨いたしね要するに。
つまり学校行く時は磨かないんだけど革靴を磨いたですよ銀座に行くのに。
そうすると近所のおじさんが「お前靴磨いてどこへ行くんだ」「銀座」って言うと「お〜おしゃれして行かなきゃな」なんてそういう空気感が僕は原体験してるわけです。
少年時代に。
先入観として昔のものはあまりカラフルでなくて地味だみたいな勝手な思い込みみたいなものが何となくあるんです。
それはもしかしたら白黒の映像ばっかり昔のものを見ていたからなのかもしれないんですけども。
なのでこの色が時代の色というわけではないですけどもかつても色があったんだというのは当たり前の事ですけれども東京にも色があったんだなって事は何となく感じましたけど。
カラー化っていろいろそういう意味で意義があると思うんですけれどもう一つカラー化の副産物みたいなものも一つあると思いまして。
今回東京のカラー化にあたって私たちが見つけたフィルムも一部提供してるんですね。
それは大正6年に制作されたとフィルム缶には書かれている「東京見物」という白黒のフィルムが見つかったんです。
それ今回番組の中にも使われる予定なんですが実はそれカラー化の過程でどんどん調べていくとですね大正6年にはまだ無かったであろう靖国神社の鳥居とかそういうものが映っている事が分かってきて。
実はこれ大正6年の制作と言われてたんだけどあとから追加された映像があるらしいという事が分かってきたりする。
着色カラー化のためにいろいろとそのフィルムがいつどこで誰が撮ったものなのかっていう事を根拠を調べていくうちに思わぬいろんな新しい発見があったりっていう事が起こってくるような気がするんですね。
そうですね。
カラー化する事によってそのフィルムに対する扱いの情熱とか注目度とかっていうのが上がってくるわけですよ多分。
白黒だけだったら1回見て終わっちゃうところがカラー化するのでしっかりと吟味するっていうかそういう副産物というかカラー化する事によってきっちり見ようという事もあるんですね。
あと今日のこの収録で感じたんですがカラー化する事によって山本さんがどんどんどんどん当時の記憶が活性化されて思い出すんですよね。
思い出します。
これもカラー化のすごく重要な意義じゃないかなっていう。
僕は現実に知ってるんですけど日本橋。
あれは銀座方面から見た日本橋なんですけど日本橋を渡った左側になぜか細長い平べったいビルがあってねこれがやけに赤っ茶色に見えたんですよ。
あれをもっと倍以上強くしていいんですよ。
どっちかっていうと東京駅の赤レンガに近いような不思議な細長いビルでね。
いつもあれが好きで僕立ち止まって見てたって記憶がある。
色をつけたものがポンと出てくる事によってこういう色の時代があったのかっていうその時代の中にタイムスリップしていけるっていうかそういう効果があるので。
一方で研究的にきちんと根拠を追って調べつつでも最終的にそれを映像として形にしてるっていうのがすごく分かりやすいなと思いましたね。
その辺カラー化の難しいところでカラー化する事によっていろいろ見えてくるところがある反面カラー化によって過度に何かを強調しすぎたりあるいは偏った見方を助長してしまったりみたいなところもあるかもしれませんよね。
カラー化の可能性と同時に課題というか限界というかそういうところもきちんと見ていく事が大事だと思いますけどもね。
さてそういった時代の色について最もよく感じる事ができるのが続いて見て頂く「アポカリプス・ヒトラー」という番組です。
「パリ1920年代」というのは非常に鮮やかな色彩が印象的でしたが今度見て頂く「ヒトラー」というのはどんな色に代表される時代が見えてくるのかというような事是非色に注目してご覧頂きたいと思います。
まさに歴史は色ですよね。
(爆発音)アドルフ・ヒトラーは第一次世界大戦の間バイエルン第16連隊の伝令兵でした。
塹壕から塹壕へ命知らずの任務を続けました。
1919年ベルサイユ条約調印。
巨額の賠償金がドイツに課せられました。
経済の重荷が国民の不満の種となります。
(爆発音)潜水艦も爆破され陸軍も縮小。
そんな中ヒトラーは右翼過激派組織が多いバイエルン地方に復員しました。
これが初めて映像に捉えられたヒトラーの姿です。
デモに参加しています。
デモを主催した組織に潜入するよう軍に命じられたヒトラーは他に当てもなくそのままこの組織で政治活動をするようになっていきます。
この小さな過激派組織をヒトラーは勢いづかせます。
指導者となり自動車を贈られました。
彼は党の名前を「ドイツ国家社会主義労働者党」としました。
その略称は「ナチ」。
党の警備組織「突撃隊」を軍事色の強い民兵組織に変身させます。
隊員は皆若者でしたがヒトラーを崇拝し殺人をもいといませんでした。
シンボルカラーは茶色。
「褐色シャツ隊」と呼ばれました。
更にヒトラーは党の絶対的な存在になろうとします。
昔から演劇的な身振りに魅せられていたヒトラーはミュンヘンの小さな写真館で聴衆に威圧感を与えるポーズの研究に没頭します。
ヒトラーの言葉です。
「大衆は愚かだ。
感情と憎悪でのみコントロールできる」。
このころアメリカで起きた金融恐慌は世界中に波及。
とりわけドイツは大混乱に陥りました。
失業者は600万人に上りました。
ヒトラーは暴動をあおり一方で鎮静できるのは自分だけだと主張します。
この脅迫戦術は成功しました。
1930年の国会議員選挙でナチは100議席を獲得。
ヒトラーはドイツで2番目に議席の多い政党の党首となりました。
このころ上流階級の人々は彼を軽蔑し軽視していました。
作家ツヴァイクの言葉です。
「貴族や大学出のエリートにとって自分たち以外が権力を持つなどありえない事だった。
何よりプライドが彼らの判断を鈍らせた」。
戦争から復員しておよそ10年。
ヒトラーは大統領を目指すまでになりました。
国民は強烈なポスター戦略にさらされます。
更に「空飛ぶ総統」というスローガンが打ち出されます。
撮影された遊説の映像は全国で上映され究極の救世主という神話が作り上げられました。
1932年の選挙ナチは230議席を獲得。
ドイツ最大政党となりました。
権力に手が届く地位に初めて到達したヒトラー。
当時のヒンデンブルク大統領はついに彼を首相に任命しました。
首相となったまさにその夜。
ベルリンなど全ての大都市で突撃隊やヒトラーの親衛隊などによる「たいまつ行進」が組織されました。
首相執務室に立つヒトラーに熱狂的な賛辞が送られました。
ある教師が当時を振り返った言葉です。
「皆雰囲気に酔っていました。
そして叫ぶのが聞こえました。
ユダヤ人に死を!ナイフの先から血が吹き出すだろう!」。
人々の喝采にドイツの民主主義はかき消されました。
ドイツ人のほとんどは既に全体主義にのみ込まれていました。
一日の始まりに国のしるしとなった鉤十字の旗を掲揚する人々。
娘たちに必要な作法はナチの敬礼でした。
全ての準備が整いました。
ヒトラーはこの後全世界をおびただしい死者の霊がひしめく長い夜へと引きずり込んでいったのです。
ヒトラー率いるナチスはシンボルの使い方であったりとかあるいは演説の時の身振り手振りそれから服装一つとってみても周到に計算してどう自分たちを見せるかっていう事を計算してたわけですけどその事がこのカラー映像で…。
よく分かりますね。
色の使い方っていう事でちょっと細かく見ていくと軍服が茶色なんですがあるいは褐色なんですがそして旗と腕章が赤がすごく目につくと。
茶色と赤というのは別の色のようなんですが色相という言い方でいうと同じグループに入る色なんですね。
青とか黄色とかそういうのとは違って。
つまり茶色でまず統一されてるんですが更にそこに茶色と赤という更に統一した世界で補強されているというか。
その統一感というのがヒトラーの意志の強さというかそれをまざまざと見せつけるっていう。
色の演出のしかたが抜群だなという感じがしましたね。
怖いほどに抜群の色の演出をしているというふうに感じました。
ナチスだと有名なのはレニ・リーフェンシュタールが撮った「意志の勝利」とか「信念の勝利」とか党大会を記録した有名な記録映像がありますけどああいうのも全部モノクロですからそういう色の統一感とかそういうところっていうのはなかなか読み取れないんですが今回このVTRを見てなるほどと。
こういう形である種の統一感やあるいは高揚感みたいなものを作り出していったのかというのが本当によく分かりましたね。
(布施)美学で「美」というのとともにもう一つ「崇高」という概念があるんですが「美」というのが今回の例で言うと20年代のパリが見せてくれたものだとしたらもしかしたらヒトラーの世界は非常に危うい言い方なんですが崇高なものに人を引きずり込んでしまうというそういう集団で行進するとか。
そうです。
「美」というのとまたちょっと違うある種の人を引きずり込む…。
気持ちで言えばあの行進してる兵士一人一人なんかにとてつもない快感があるんじゃないかと。
崇高な気持ちを持ってしまう麻薬というか。
それがナチズムという国家戦略でそれを演出したのはヒトラーでそう思うわけで国民全部がそれに支持してなったんであって彼はヒンデンブルクから奪い取ったわけじゃないわけですからね。
ここに怖さがありますね。
それで一方で統一してるんですがある時はヒトラーは他の軍人たちと同じ制服を着て君たちと同志だという事を色彩でアピールしてるんですがまた別の場面では時に一人だけ全く違った色を。
そこで君たちと同志なんだけどしかし私は違うっていうその2つのまた使い分けっていうかそれもすごくうまいなと思いましたね。
私今回これ見て思ったのは戦前っていうのは非常に僕ら暗い時代戦争へ向かう時代として認識しがちなんだけどこうやってカラーで見ると改めて今僕らが生きてる時代と同じように人は生きてたしある欲望を持ってたり民主的な側面もあったりするし。
でもその中からヒトラーのような独裁も出てくるという事を考えると何か今の時代と関連づけて当時の時代を考えられるようになるという意味ではカラー化して戦前の映像を見るというのはとりわけ戦前と戦後を断絶して考えがちな日本人にとっては非常に意味があるんじゃないかなと思いましたね。
今日はちょうどいいすごくコントラストのいい2つの映像作品が並べて見られて1920年代のパリはひと言で言えば平和の極致みたいな時代ですよね。
ヒトラーの方は戦争の時代で。
平和の極致の色彩それはひと言で言えばさまざまな色がある多彩な世界。
それに対して戦争の権力で統一された非常に整理された色彩の世界。
色というのはやっぱり人間にとってある意味では普遍的な力を持っているもので今回のヒトラーの映像と20年代のパリを見た時に色というのは時に快楽を生み出す。
そして時に恐怖を生み出す事もあるという。
とても怖いものでもあるしまた力になるものでもあるという。
そういう時代を映し出すとともに色というものが持っている普遍的な力というか可能性というのも今日考えさせられましたね。
非常に似てるのは色が欲望であったり快楽であったりするけどナチズムの一員たる人間の快楽欲望それはあの制服の中に入ってるんでしょうね。
それが20年代は個としてみんな成り立ってるだけでその点では色っていうのは非常に人間を陥れるっていうか怖いものでもあるかも。
人の心をわしづかみにする力が色にはあるっていう。
言えますね。
いい意味でも悪い意味でもわしづかみにするっていう。
両方ありますね。
やっぱり映像の20世紀って言われるぐらいですから20世紀以降膨大な数の記録映像というのが作られてきたわけですよね。
これまでは歴史を考えるっていうと文字で書かれたものを中心に考えてきたわけですけど20世紀以2014/10/11(土) 23:00〜00:00
NHKEテレ1大阪
ETV特集 アンコール▽よみがえる色彩 激動の20世紀 アーカイブ映像の可能性[字]

白黒映像を最新のデジタル技術でカラー化した様々な作品を紹介。新しい命を吹き込まれたアーカイブ映像の魅力を語る。19日放送のNスペ「カラーでよみがえる東京」前哨編

詳細情報
番組内容
白黒映像に着色を施しカラー化した作品が今ヨーロッパで次々と作られている。第二次世界大戦やヒトラーなど復元されたカラー映像は、私たちがこれまでイメージしてきた歴史像を一変させる力を持っている。白黒の映像をカラー化することで何が変わるのか。専門家ゲストとともにその魅力を堪能しながら語り合う。丹羽美之、布施英利、山本晋也。19日夜9時放送のNHKスペシャル「カラーでよみがえる東京」と一緒にご覧ください。
出演者
【出演】映画監督…山本晋也,美術批評家…布施英利,東京大学准教授…丹羽美之

ジャンル :
ドキュメンタリー/教養 – ドキュメンタリー全般
ドキュメンタリー/教養 – 社会・時事
ドキュメンタリー/教養 – 文学・文芸

映像 : 1080i(1125i)、アスペクト比16:9 パンベクトルなし
音声 : 2/0モード(ステレオ)
サンプリングレート : 48kHz

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