ハートネットTV シリーズ 広島土砂災害(2)「隠れたSOSを見つけ出せ」 2014.10.09

8月20日に広島市で土砂災害が発生してから1か月半。
74人の命が奪われ4,500を超す住宅が被害を受けるなど災害の詳細が明らかになってきています。
一見落ち着いたように見える被災地。
しかしその陰に隠れて助けを必要としながらSOSを発せられない人がいる事も分かってきました。
こうした被災者の声なき声を拾おうと被災地域を一軒一軒訪問して回る支援チームが作られました。
聞き取りの結果支援が必要な人が次々と見つかりました。
「シリーズ広島土砂災害」第2回は被災者の隠れたSOSをどう見つけ出し支えていけばよいのか考えます。
こんばんは。
「ハートネットTV」です。
広島市で起きた土砂災害から1か月半。
ピーク時には2,300人を超える人たちが避難していましたが今は50人を切るまでになっています。
しかし避難所から自宅に戻った人たちの中には困難を抱えていても支援を求める事すらできない人たちがいます。
そこには一体どんなSOSが隠れているのか。
被災地である取り組みが始まりました。
多数の土砂崩れが起こった安佐北区の桐原地区です。
9月半ばこの地区を一軒一軒訪ねて回るボランティアの姿がありました。
看護師とケアマネジャーの2人です。
(2人)おはようございます。
おはようございます。
2人は自宅で生活を再開した人たちの中にも困り事を抱えている人がいるのではと訪ねて回っていました。
地図を片手に一軒ずつ確認しながら訪問していきます。
77歳のこの男性。
土砂のかき出し中に負った足のケガを気にしていました。
失礼致します。
ありがとうございました。
こんにちは。
こちらは80代の夫婦の家。
床下に土砂が流れ込み5日間近くの小学校に避難していました。
疲労がたまっているのではと心配し血圧を測りました。
掛かりつけ医に早めに受診する事などをアドバイスしました。
はいすいません。
どうもご苦労さんでした。
支援チームの結成は災害発生の8日後。
自宅に戻る人が増え始めた時期です。
避難所生活のストレスや被災のショックで問題を抱えている人がいるのではと心配の声が上がった事がきっかけでした。
ボランティアとして集まった看護師や社会福祉士弁護士などの専門職が2人1組になって回ります。
安佐北区は200か所以上で土砂災害が発生しおよそ1,200軒が被害を受けました。
支援チームは被害が大きかった3つの地域を中心に回る事を決めました。
家を一軒一軒回っていくいわゆるローラー作戦です。
支援チームの訪問に助けられたという人を訪ねました。
1人暮らしをしています。
大野さんの家には大量の土砂が押し寄せました。
家の裏側は岩や石で1メートルの高さまで埋まりました。
玄関先も30センチを超す土砂で覆われました。
大野さんは支援チームが訪問するまでの3週間ほぼ一人で土砂かきを続けていました。
一体いつになったら片づけが終わるのか…。
見通しが立たない現実を前にアルコールの量が増えていったといいます。
大野さんを訪問した看護師の新路理香さんはSOSを感じ取りました。
(ため息)このまま一人で土砂かきを続けさせてはいけないと新路さんは考えボランティアをその場で手配。
延べ50人のボランティアが駆けつけ土砂の撤去が一気に進みました。
このチームの支援で介護保険サービスの利用につながった人もいます。
妻に9年前に先立たれ畑仕事をしながら独りで暮らしてきました。
災害発生後避難所に寝泊まりしている間に体調に不安を感じたといいます。
更に自宅に戻った時畑の様子を目の当たりにしがく然としました。
一面土砂に覆われ精魂込めて作っていた野菜がほとんど流されていたのです。
明徳さんが避難所から自宅に戻った直後に新路さんのチームが訪問します。
新路さんは独り暮らしの明徳さんの様子に不安を感じました。
ボランティアセンターに戻った新路さんのチームは明徳さんにどんな支援が必要かメンバーに相談しました。
毎日夕方になると報告会議が開かれます。
この場には被災地を回るボランティアだけでなく介護保険の担当者や市の保健師も参加します。
明徳さんの件は新路さんのチームから介護保険の担当者に引き継がれる事になりました。
分かりました。
先月下旬。
明徳さんは週に1度デイサービスに通うようになっていました。
お世話になります。
すいません。
いえいえ…。
今日はよろしくお願いします。
おはようございます。
(女性)おはようございます。
今日もよろしくお願いします。
自宅に戻ってから18日という早さで介護保険サービスの利用につながりました。
・「こぶし咲くあの丘北国の」・「ああ北国の春」デイサービスに通い始めてから明徳さんの生活に大きな変化が表れました。
土砂に埋もれていた畑を自分の手で耕し直していたのです。
明徳さんに再び自分らしい暮らしが戻り始めていました。
スタジオには昨日に引き続き日本福祉大学准教授の山本克彦さんにお越し頂きました。
よろしくお願いします。
(山本)よろしくお願いします。
山本さんは東日本大震災をはじめさまざまな被災地に入って支援活動をされています。
そして今回広島の被災地にも災害発生の翌日に入られました。
避難所から自宅に戻る方ご覧頂きましたけどもなかなかSOSを発するというのは難しいんでしょうか?私も災害があった翌日から南と北それぞれエリアを回ったんですけれども東日本の際もそうだったんですけれどもご自身が受けた被害に対してお隣近所を見渡すと非常に大変な状況があるという事なんかをご覧になってなかなか自分自身が困っているかどうかっていうところが分からない。
本音が出しにくいという事がありますね。
困っている事が分からないという事は…ちょっと難しい言い方なんですが自分自身が今置かれた状態が果たして困ったというふうな声を発していい状態なのかどうかという事が判断がつきにくい。
そういう意味で声を上げる事自体に非常にエネルギーを要するようなそういう状態があったんじゃないかなと思いますね。
今の話で言いますと映像に出ていた58歳の男性の方も最初は「大丈夫だ。
大丈夫だ」っておっしゃってましたけどそのあと看護師の方がしっかり聞き取りをする事によって救う事ができたとありましたよね。
看護師の方も「大丈夫」という言葉の中にしかし背中は悲しそうだったとかあるいは笑うんだけれどもその笑顔が何か泣き顔のような笑顔だったという事をくみ取るというか感じ取ってらっしゃいましたよね。
ああいうところはやはり専門職であるからこその感じ方なのでそれがサインとして伝わっていく仕組みというのは本当にすばらしいものが出来てるんじゃないかなと思いましたね。
今回なんですが看護師のほかにもさまざまな専門職の人が集まってチームが作られました。
ちょっとこちらをご覧頂きます。
今回このチームというのは災害ボランティアセンターに組織されました。
社会福祉協議会に作られたボランティアセンターに土砂かきなどのボランティアを受け付けする窓口だけではなくて同時にこのように支援チームを作ってそこに看護師などの専門職のボランティアが集まるという形になっています。
この特色というのはどういったところにありますか?災害ボランティアセンターの中にこういった仕組みが出来たという事は恐らくこれまでにはないんじゃないでしょうかね。
全国初…。
そう言ってもいいんじゃないかと思います。
というのはこれまでの災害を見てもそれぞれのこういった看護師さんやあるいは社会福祉士さんとか介護に関わる方それぞれの専門チームが地域を個別に回るという事はありました。
しかしながら災害ボランティアセンターの中でこういった横の連携といいますか専門性をうまく活用したチームがあるというのは今までなかなかなくて。
更にどういったメリットがあるかというと地元の社会福祉協議会さんの中での動きですのでその事がまず一つ大事ですね。
災害の時に要援護者とか要配慮者といいますがそういった方々を常日頃から社協というのは把握している組織ですしそういう意味では情報がダブったり無駄な事がないという事もあると思います。
それから専門性を生かせるボランティアの方がいらした時に人材も確保できてうまい具合に生きるそういった動きができたんじゃないかなと思いますね。
いろんなニーズをこういった他職種が組む事によってくむ事ができると思うんですけどなぜ今回広島ではこのような形で専門職のチームを作る事ができたんでしょうか?広島市は災害の前から災害時に備えた連絡調整という事でさまざまなそういった専門性を持った方々とあと地元のNPOであったりそして民生委員さんとかあと青年会議所さんとかあるいはもちろん医療で赤十字さんとかいう所がつながりを持ってた。
そこに士業連絡会という形で弁護士さんや司法書士さんのように法律の事も分かる方がいらっしゃった。
そういった事が一つですね。
それからそういった力が見えていてもなかなかそれらを活用してチームを作っていこうという事は難しいかもしれませんがじゃあそれでやってみようよという力を借りていく柔軟性のようなものがセンターの方にあったと思います。
そうするとこれがほかの地域でも使える可能性を非常に持っていると思いますね。
一方でこうしたチームのメンバーというのはあくまでボランティアですので一時的なものです。
被災者が日常生活に戻るまでどう支援につなげていくのか。
支援チームのその後を取材しました。
支援チームの活動が始まって3週間。
ボランティアによるローラー作戦は一とおり終わり活動は一旦終了する事になりました。
訪問した件数は延べ1,000件。
そのうち16件が介護保険サービスを担当する地域包括支援センターにつながり更に12件が市の保健師に引き継がれました。
しかしまだ課題が残っていました。
引き続き支援が必要と思われるケースが103件残っていました。
これらは地元の社会福祉協議会の石田浩巳さんたちが引き継ぎました。
これからも見守りが必要な多くの人たち。
その中に70代の夫婦がいました。
妻が夫の介護をしながら暮らしています。
支援チームが3回訪問しましたが継続的な支援が必要とされていました。
はい呼んでますか?どうしましたか?
(物音)どうしたの?うん?どうしたんですか?夫の茂男さんは5年前脳梗塞で倒れ左半身不随となりました。
12の3。
どうする?お昼は。
パンでいい?おとうさん。
パン食べる?どうしますか?退院してからずっと2人で過ごしたいと自宅で介護してきました。
朝昼晩の食事も弘子さんが付きっきりです。
お代わりあるよ。
飲んでみる?コップから飲めるかな?ゆっくり飲みなさい。
は〜ようやく飲めるようになったねコップからね。
この生活の中酒井さんの家も被災。
床下と庭に土砂が大量に流れ込みました。
弘子さんは茂男さんの介護の合間を見つけては土砂の片づけをボランティアの人たちと進めています。
支援チームが解散した翌日。
社会福祉協議会の石田さんは酒井さん夫婦を訪ねました。
石田さんは弘子さんがり災証明や義援金の手続きを済ませていない事を知り書類を手渡しました。
更に役所に行く時間がない弘子さんに代わって自分が手続きを行う事を申し出ました。
石田さんは手続きに必要な被災状況を証明する写真を撮り始めました。
1時間後必要な書類と写真がそろいました。
支援チームから引き継いだ見守りが必要な人たち。
これからどうやって支えていけばよいのか石田さんは課題を感じています。
今の映像の石田さんですがこのあと地域包括支援センターと保健センターのメンバーとで会議を持って103件のうち22件を地域包括支援センターに。
そして26件を保健センターに引き継いでほかは司法書士などに個別につないだそうです。
しかしそのほかはまだまだ見守りが必要な人がいるという事で更にこれから新たに出てくるSOSを見逃さないために地域で気軽に集まれる場所を作り始めているという事です。
まだまだ見守りが必要な人がいると。
地域はどうすればいいんでしょうか?先ほどのお話の中でいくと制度やあるいはさまざまな機関につなげる場合はいいんですけれどもそうでない場合はやはり地域の力ですね。
そこを生かす必要があってそれは専門家の方々だけじゃなくこれまでのボランティアさんであるとかあるいはNPOという団体あるいは近隣の大学生のような若い人たちの存在が大事だと思うんですね。
先ほどVTRの中でこういう支援チームの人たちには話せるんだというような場面がありましたけれども自分の思いを言える人というのはどういう方々かというと人に寄り添う力のようなものをきちっと持ってらっしゃって丁寧にそこに向き合える人だと思うんです。
それっていうのはソーシャルワークと呼べる一つの力であって専門的なソーシャルワークもあればさまざまな方々がソーシャルワークの機能を果たすという事も十分ありえると思います。
これが災害の場面でのソーシャルワーク。
災害ソーシャルワークというところにつながるんじゃないでしょうか。
避難所から自宅に戻れたからそれは大丈夫じゃないかもう安心でしょという事ではない。
そういった意識も必要になってきますよね。
災害が起きた時というのは今までの…いわゆるふだんの状態が非常に課題の多い状態になってますからそこからふだんを取り戻すというかふだんの状態にという事からスタートを切る事になります。
そのふだんから今度は更によりよい地域や個々の幸せにつなぐという事になりますので災害の前と後ろを含めて災害ソーシャルワークという一つのくくりでこれからこういった場面を考えていく事が非常に重要じゃないかという事を思っております。
そういう事が隠れたSOSしっかりそこを拾い上げていくというところにつながってくるという事なんでしょうか?災害の直後は外からの支援の方が非常にたくさんいらっしゃる。
それはとても大事な事でありがたい事なんですよね。
ただ今度そこからいずれはそういった皆さんが去っていった時に残った地域そもそもの地域がいかにそこからつながりを取り戻すか。
そこが大事じゃないかなという事を思います。
今日はどうもありがとうございました。
2014/10/09(木) 20:00〜20:30
NHKEテレ1大阪
ハートネットTV シリーズ 広島土砂災害(2)「隠れたSOSを見つけ出せ」[字]

広島土砂災害では、被害に遭いながら助けを求めない人たちがいることが明らかになってきた。被災地区を1軒1軒回る被災者支援チームの活動を通して、その実態を見つめる。

詳細情報
番組内容
広島市安佐北区では、自らSOSを発せられない被災者を見つけ出し支援につなげようと、災害発生から8日後に、看護師を中心とした被災者支援の特別チームが結成された。1か月あまりで、のべ600軒を超す住民と面談。医療や福祉の支援が必要な案件が数十件見つかったという。隠れた被災者をどう見つけ出して支援につなげていくのか、また、継続的な支援を行うためにはどのような態勢が必要なのかを考える。
出演者
【出演】日本福祉大学准教授…山本克彦,【司会】山田賢治,【語り】河野多紀

ジャンル :
福祉 – その他
福祉 – 高齢者
福祉 – 障害者

映像 : 1080i(1125i)、アスペクト比16:9 パンベクトルなし
音声 : 2/0モード(ステレオ)
サンプリングレート : 48kHz

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