クローズアップ現代「若者たちの“反乱” 香港デモの深層」 2014.10.09

した。
一時10万人規模にまで膨れ上がった香港のデモ。
催涙弾から身を守るために傘を手にする若者。
傘革命とも呼ばれています。
中国への返還から17年。
新たな選挙制度で民主派の立候補が閉ざされたことで怒りが一挙に広がりました。
海外からは民主主義を突き崩すものだと批判が湧き起こっています。
こうした批判に中国は強く反発しています。
立ち上がった香港の若者たち。
中国の新たな火種となるのかその深層に迫ります。
こんばんは。
「クローズアップ現代」です。
香港が1997年にイギリスから中国に返還されて以降、これほど混乱したことはありません。
あす、民主的な選挙を求めて香港の中心部で抗議行動を続けている学生団体と香港政府が初めて正式な対話を行うことになっていますが学生側は対話で成果が得られるまで道路の占拠を続けるとしています。
一方、中国政府は一貫して抗議行動は違法で、社会の安定を損なうものとしています。
アジアの金融センターであり各国の企業が拠点を置く香港で選挙の在り方という政治課題を巡って長期化する混乱。
その行方と、中国政府が返還にあたって約束した1国2制度がどのように貫かれるのか世界中が注視しています。
この1国2制度の下香港には原則として50年間中国の法律は適用されず高度な自治、言論や集会の自由が保障されています。
返還されてから17年警察が催涙弾を市民に使用し多くのけが人や逮捕者が出る事態となるほどなぜ市民や、そして学生たちの怒り、反発が高まったのか。
焦点になっているのは3年後2017年に予定されている香港行政のトップである行政長官を18歳以上のおよそ500万人が直接選ぶ選挙制度です。
1人1票の普通選挙が香港で初めて実現するものの候補者は、中国寄りの委員が多い指名委員会が選ぶため民主派候補の立候補が事実上できない仕組みになりました。
名ばかりの普通選挙になるとして一斉に声を上げた若者たち。
金融・ビジネスの都市で政治への関心がここに来て急速に高まった背景を取材しました。
前代未聞となった、公正な普通選挙の実施を求める香港市民と政府との対立。
当局は、暴動を鎮圧する特殊部隊を投入し、強硬手段に打って出ました。
市民に対して、大量の催涙弾を使い、鎮圧を試みたのです。
しかし、鎮圧は失敗。
逆に市民は、大きく反発しました。
デモの参加者はさらに広がり、数万人の若者たちが、政府への抗議の意思を明らかにしました。
その一人、何子謙さん、19歳。
大学で国際関係を学ぶ2年生です。
催涙弾から身を守るため、みずからヘルメットとゴーグルを持参。
市内中心部のデモ隊に合流します。
再び衝突し、催涙弾に見舞われることは覚悟していますが、僕は抗議デモを続けます。
何さんが、デモへの参加を決意したきっかけ。
それは、香港政府が相次いで打ち出す政策の背後に見え隠れする、中国政府の影響力の高まりでした。
2年前、香港政府は、小学校から高校までの学校で、中国式の愛国教育を実施する動きを見せました。
さらにことし6月、中国政府は、香港の統治の在り方をまとめた白書を初めて発表。
香港の高度な自治権は、中国政府が授けたものだと強い権限を誇示したのです。
こうした政策への不信感もあって、最近の世論調査では、若者の半数以上が、みずからは中国人ではなく、民主主義的な価値観を持つ香港人だという意識を持つまでになっています。
今、中国政府は、強制的に、香港人に中国の考えを押しつけようとしています。
私は、自分らしさを捨てたくありません。
香港人としてのアイデンティティーを守るべきです。
さらに、何さんが不安に感じているのが、中国共産党による厳しい言論統制でした。
相次ぐウイグルでの事件。
中国国内では厳しい検閲を受け、詳しくは伝えられていません。
私たちは、情報が閉ざされるのを一番恐れています。
世界で何が起きているのか、情報を共有したい。
自分の未来を、自分で決める権利があります。
情報があって初めて、みずからが歩む道を、選択することができるのです。
政府庁舎前のデモ隊の数は増え続け、一時10万人規模にまで膨れ上がりました。
比較的自由な論調が許されている香港のラジオ。
学生を支援する放送が繰り返し流されていました。
21歳のかく建朝さんも、夜通し友人と共に政府庁舎前に座り込んでいました。
大学3年生のかくさん。
中国への経済依存度が高まる中、香港市民の生活基盤が、大きく揺り動かされていると感じてきました。
かくさんには、将来、一緒に暮らしたいパートナーがいます。
しかし、今の香港で、かくさんのような若い世代が持ち家を持つことは、事実上不可能となっています。
中国の経済発展に伴って、巨額な投資マネーが、中国から香港に流れ込み、不動産価格を一気に高騰させたのです。
今、かくさんは、みずからの意思で、香港人のための経済政策を行うリーダーを選びたいという思いを強くしています。
一方、母親は中国の政治体制や経済的な圧力には否定的ですが、市民運動よりも目の前の生活のほうが重要だと考えています。
中国の影響ではなく、みずからの自由意思で、政府のトップを選ぶ普通選挙を実現させたい。
声を上げた学生たちは、現場に一枚の垂れ幕を掲げていました。
僕らは、香港の未来のために、当局の命令に抵抗しています。
デモに参加するのは、北京の共産党に対して、僕たちが弱くないことを示すためです。
今夜は中国返還後の香港、そして1国2制度についてお詳しい、立教大学准教授の倉田徹さんをお迎えしております。
おとといまで香港にいらっしゃったということなんですけれども、一部ではその参加者が減ってきているという報道もありますが、今、全体としてどんな状況ですか?
やはり初日は、催涙弾を使うような、かなり激しい衝突がありましたけれども、その後はかなり落ち着いていますね。
それで人数も減っておりますけれども、バリケードが組まれた状態のままで、周辺の商店なども、少しずつ開き始めているけれども、解決がなかなか見えない、ちょっと長期戦というような雰囲気を受けましたね。
あすの対話は開かれそうですか?
そうですね。
一応、明日の夕方という予定ではありますけれども、ただ、直前まで、何を話し合うのか、あるいはどこに会場を定めるかですとか、そういったようなことで、かなり学生と政府の間にちょっと対立もあるようでして、ちょっと流動的な情勢だと思います。
今のリポートを見まして、若者たちがとりわけ、自分は香港人なんだと、そのアイデンティティーにこだわっている。
そうですね。
どうしてこの香港人というアイデンティティーが失われるんではないかという危機感が広がっているんですか?
実は、その返還をされることによって、香港は中国の一部になったわけですね。
当初はその返還とともに、むしろ中国人意識が育つだろうというようなことも予測されていたんですが、実際に、一時はそういう時期もあったんですけれども、特に最近5年ぐらいですね、急速に香港人アイデンティティーというものが成長しているのが、世論調査などから読み解けるんですけれども、その背景に恐らく中国化という現象が、逆説的ですけれども、あると思うんですね。
というのは、中国大陸から非常に多い数の観光客がやって来るですとか、政治、経済的な影響もどんどん強まってまいりますと、香港市民が、日常的に中国大陸的なものと接触する機会が増えてきていると。
例えば、今、占拠されている地域の中でも、繁華街、かなり含まれていますけれども、そういった所では、若者たちがもともとは買い物を楽しむようなスニーカーを売ってたりですとか、CDを売ってたりですとか、そういったようなお店が、どんどん中国人観光客向けの貴金属店、化粧品店、そういうものに変わっていっているんですね。
そういう街並みが変わっていくですとか、人の価値観とか、そういったところでどうしても大陸との違和感というものを香港の人は感じる機会が増えてきていると、そういうことだ思いますね。
今、若者の中で、不動産価格が上がって。
これは極めて深刻ですね。
インフレがひどいんですか?
ええ。
とにかく香港の人たちというのは、不動産を買って一人前という感覚がありますね。
特に私と同世代の友達と話しておりましても、結婚はしたいけれども、家が買えないから、賃貸だとちょっと結婚は厳しいと、そういうようなことを言う友人もいまして、やはりその若者が最初の一歩を踏み出すところが非常に難しくなってきていると、それに対する不満というのは大きいと思いますね。
そしてとりわけ、その反発が高まった理由ですけれども、中国側による愛国教育を実施しようとしたといった動きなどは、大きな影響を与えていないでしょうか?
そうですね。
実際、その愛国教育というのは2012年に香港政府の求めに応じて、香港政府が実施をしようとしたわけですけれども、実は学生たちがそれを一度、それに対する反対運動を起こしまして、何日も座り込みを続けた結果、その愛国教育を香港政府に撤回させるというような、そういうことを一度起こしておりまして、今回の学生の動きも、その成功体験を踏まえて、非常に自信を持って、盛り上がっていると、そういった側面があると思いますね。
一方、その白書では、高度な自治は中国側が授けたものというものが6月に出ましたね。
こちらの影響はどうだったんでしょうか?
これもやはり非常に、特にタイミング的にも悪かったわけですね。
6月4日というのが、天安門事件の記念日になります。
それから7月1日が返還記念日ですね。
毎年、この時期になりますと、香港では非常に政治的な意見が多数表明されて、雰囲気が盛り上がるんですね。
その真ん中に、6月という時期に、中国政府がかなり香港にとっては、反発を招くような論調の白書を出してしまったと。
初めての白書ですよね?
初めてです。
香港に関しては、白書は初めてですね。
これは非常に大きく報じられましたし、その後のこの抗議運動の盛り上がりに直接つながっていると思います。
ということは、中国政府は香港の人々の気持ちを、見誤ったんでしょうか?
そうですね。
ただ、ある程度の反発というのは、今回、予想をしていたようですね。
とにかく普通選挙というのは、北京が定めた最終目標であって、それをどのような形で定めるかというのは、今後の香港の政治の行く末を決めるわけですね。
この決定にあたっては、やはりいくぶんの香港の反発があっても、最近は特に経済的にも、香港は北京への依存、大陸への依存を強めていますので、それを覚悟しても、実際には力で押し切れると、そういうような判断がどうもあったようですね、北京の側にですね。
十分に17年たっても人々の心はつかんでない?
そうですね。
まさに北京がずっと問題にしてきているのは、その人々の心の回帰、返還といいますかね。
主権と領土は確かに中国の一部に香港はなりましたけれども、市民の心という点では、なかなか彼らの言うところの愛国心が育たないと、これを非常に歯がゆく思ってるんですね。
それに対して教育などの手段を使うわけですが、どうも逆効果を生んでいるようですね。
お伝えしていますように、若者たちから見ますと、約束された1国2制度が守られないのではないかという危機感があるわけですけれども、この約束が覆されそうになっている背景には、中国の経済的な成長があります。
香港の若者たちを支持する動きは世界各地に広がっています。
アメリカやイギリスなどでは香港の民主主義が守られるよう訴える集会が開かれました。
欧米各国の首脳も返還の際に約束した香港の自治を中国政府が、ほごにしようとしているのではないかと非難しています。
それに対して中国政府は内政干渉だと強く反発しています。
返還のときに中国が世界に示した一つの約束。
中国は、特例的に香港の民主的な制度を認める1国2制度を50年間維持すると誓いました。
当時、香港は中国にとって外貨の獲得や貿易拡大の拠点として魅力的な存在でした。
しかし、中国経済は急速に発展。
返還当時、国内総生産の16%を占めていた香港経済は17年で3%まで低下しました。
経済における影響力を背景に立場は逆転。
中国政府はみずからの政治制度に自信を深め香港に対し、強い権限を主張するようになったのです。
ケンブリッジ大学で国際関係学を研究するステファン・ハルパー教授。
レーガンやブッシュなどアメリカの歴代の共和党政権下で外交担当官を務めました。
ハルパー教授は中国政府は香港に過度の自由や民主主義を与えればチベットや新疆ウイグル自治区などにも影響を及ぼし一党支配の政治が瓦解しかねないという危惧を強めていると指摘します。
中国としては香港だけに自由な選挙を許すわけにはいかないと感じているようです。
もし前例を作ってしまうとほかの地域も同じことを望むようになるからです。
中国共産党はどんな犠牲を払ってでもみずからがよって立つ支配体制を堅持する決意なのです。
倉田さん、今のハルパー教授は、中国が共産党一党支配を堅持しようとすれば、たとえ香港であっても、自由な選挙を認めないだろうと言ってましたけど、どう見ていらっしゃいますか?
そうですね。
やはり、一方で、自信をつけてるのと同時に、非常に大きな不安感も持っているのが、今の中国の現状だと思いますね。
例えば2012年から、中国政府は、対香港政策の柱として、国家の安全ということばを明確に据えているんですね。
中国としては、香港で行われる民主化が、西洋の影響を受けた民主化という形で、共産党体制に対する大きな脅威になると、こういう姿勢を一貫して崩しておりませんので、やはりその中国大陸への波及ということを考えますと、なかなかその香港を、完全に自由にするということは容認し難いということですね。
かつ、その香港はいまや年間4000万人ぐらいの中国大陸からの観光客を迎えているわけですから、実際にもはや、香港も中国の外ではないと、そういう現状がありますので、なかなか香港だけというわけにはいかないということだと思いますね。
国内で情報を統制しても、人の往来によって、いろんな空気が伝わっていく?
そうですね。
香港でもたくさん、中国大陸で売られないような本も売られていますし、メディアやインターネットも、かなり自由なわけですね。
これは当然ながら、中国から見ると、非常に安心できない状況ということになると思います。
そういう中国政府の強い姿勢がある中で、この民主化を求める若者たちは、じゃあどこによって立って、これからの活動を続けていくのか、これはどう見られますか?
そうですね。
今、若者が出している要求というのは、北京の側から見ますと、本当に受け入れ難いことですね。
全人代が決定したことは覆せという要求は、恐らくのまれないだろうと。
ひょっとしたら、恐らく香港の若者もそこまでは分かってる可能性があるわけですね。
ただ、彼らも今回、私、デモで見てきたスローガンでも、きょう立ち上がらないと、あした立ち上がれなくなるというようなものもたくさん見ましたけれども、とにかくこれだけ急速な勢いで中国が影響力を強めてくるとなりますと、一度異議申し立てをしておかないと、まずいのではないかと、そういうような闘いだと思います。
ですから先の展望となりますと、彼らにとっても、Dialogue:0,0:24:32014/10/09(木) 19:30〜19:56
NHK総合1・神戸
クローズアップ現代「若者たちの“反乱” 香港デモの深層」[字]

2017年に行われる行政長官選挙のあり方をめぐって今香港が揺れている。“真に民主的な選挙”を求める若者の抗議行動が激化し大陸と香港の間で深まる溝。その背景に迫る

詳細情報
番組内容
【ゲスト】立教大学准教授…倉田徹,【キャスター】国谷裕子
出演者
【ゲスト】立教大学准教授…倉田徹,【キャスター】国谷裕子

ジャンル :
ニュース/報道 – 特集・ドキュメント
ドキュメンタリー/教養 – 社会・時事

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音声 : 2/0モード(ステレオ)
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