総務省の労働力調査によると、今年4〜6月の共働きシニア(65才以上の夫婦)は前年同期比11.7%増の95万世帯となり、過去最高を記録した。

 働くシニアのなかには意外な職種で活躍している人がいる。犬のしつけやペットシッターを業務とするフランチャイズ店を展開しているJTL愛犬のお散歩屋さん代表の古田弘二さん(72才)だ。

 もともと大手化粧品メーカーのサラリーマンだった古田さんだが、48才で早期退職した。

「47才を迎えたとき、このまま定年を迎えても将来もらう年金では食べていけないと考え、定年のない自営業に転じようと会社を辞めました」(吉田さん・以下「」内同)

 試行錯誤を経て、古田さんが立ち上げたのが犬の散歩代行業だった。古田さんの評判は徐々に口コミで広まり、全国紙の投稿欄で紹介されたことがきっかけで顧客が増えていった。今では全国主要都市に70店舗まで事業を拡大し、散歩した犬は7万匹を超える。犬を留守宅まで迎えに行き散歩や犬のしつけを代行する仕事は、シニアだからこそできるのだと古田さんは言う。

「お客さまの留守中に鍵を使って家に入りますが、スタッフの年齢が高いというのが信頼していただけるひとつの理由ではないかと考えています。また、人生経験があるので若い人と違って気配りができる。スリッパをきれいにそろえるなど簡単なことですけどね」

 実際、働いている人はシニアが多いという。

「働いているのはほとんどが65才以上の愛犬家。何匹も飼っているような犬好きばかりです。ご夫婦で働いていらっしゃるかたがほとんどで、収入は人によりますが、多くの場合は月25万〜30万円です。ふたりで月50万〜60万円も稼いでいるかたもいます。鍵を預かってお客さまのお宅に入るため女性の方が安心されます。奥さんは犬の散歩担当、旦那さんは運営側と仕事を分担していることが多いです」

 犬を散歩させて体を動かすから健康にもいいのだという。70才を過ぎて働き続ける理由を古田さんはこう結論づけた。

「人間同士の仕事だと煩わしさがありますが、無邪気な犬にはそれがないんです。長く続いているのは相手が犬だからでしょうね。これまで散歩してきた7万匹の犬たちから犬の恩返しを受けて仕事を続けていられるのです」

※女性セブン2014年11月6日号