温泉若おかみの殺人推理 2014.10.07

(金本)レジを開けろ!早く!早くしろ!早くしろよ!レジ開けろ!早くしろ!
(店員の悲鳴)早くしろよ!あったよ。
吉川加那…。
(金本)明日…?もちろんやるよ。
金が底をついちまったからさ…。
わかってるよ。
何があってもあんたの名前は出さねえよ。
(足音)こちらです…。
(松崎良平)金本琴平北署の者だ。
開けなさい。
(岡村刑事)金本!いるのはわかってるんだぞ!お願いします。
また逃げられたか…。
(松崎奈美)
毎年4百万人の善男善女が参拝に訪れる讃岐のこんぴらさん。
この香川県琴平町にある老舗温泉ホテル「紅梅亭」が私松崎奈美の仕事場であり我が家でもあります

(松崎奈美)加那ちゃん!
(吉川加那)奈美姉さん。
雑誌見たよ!すごいじゃない写真も大きくて。
ありがとう。
見てくれたの。
(松崎時子)正太郎さんよくいらっしゃいました。
加那ちゃんも「風来堂」の立派な跡取りね。
(吉川正太郎)私に言わせりゃまだヒヨッコの半人前ですよ。
よいしょ!よっと!奈美ちゃん!それは80万の古伊万里120万の信楽に60万の備前だぞ!ひえぇ〜!
(ミズエ)若女将!たくさんお持ちすることだけがサービスじゃないってお教えしてますでしょう!すみません失礼しました!気をつけます!こちらもまだまだヒヨッコの半人前で…。
さどうぞ…。
(吉川)はい。
元気にしてた?うん。
この間検診に行ってきた。
私がこの歳まで生きていられるのは奇跡に近いんだってよ…。
奇跡かあ…。
じゃああとは素敵な人を見つけておじさんを安心させてあげなきゃね。
私は多くを望まないの。
明日の懇親パーティー明後日の陶芸オークション…。
目の前のことをひとつひとつそこそこにクリアしていくの。
なんせ私は運を使い果たした女だもん。
何言ってんのよ。
加那ちゃんは16年前大変な病気と闘ってそのうえ最愛の両親を事故で亡くして…。
この先どれだけ運を積まれたって足りないわよ。
わかった。
私にはまだ運が残っているって思えばいいのね?そう。
たくさん残っているって思って。
じゃあねゆっくり温泉でも入ってて。
あとでまたね。
(携帯電話の着信音)先生?加那です…。
…明日?今夜の約束じゃ…。
…奥さまと!?…加那ちゃんに恋人!?私の前じゃケもない素振りしてる。
そいつが気になってね…。
そう…。
確かなの?生さぬ仲といったって娘ですよ。
娘の恋患いが見抜けんようじゃこの商売は勤まりませんよ。
親にも打ち明けられない相手なのかしら…?ねえ…。
吉川加那さんだな?死にたくなかったら声を出すな…。
おとなしく駐車場まで来るんだ。
何をおっしゃるんですか!その人を離しなさい!近づくな!ホテルで死人が出てもいいのかよ!その人をどうするつもり!?離しなさい!近づくな…。
離しなさい!来るな…。
来るなよ…!このアマ!
(警報ベル)あ火災ではありませんのでお部屋にお戻りください。
(警報ベル)どこどこ!?
(ミズエ)3階です!お客さまをお願い。
はい!大女将はこちらにいらしてください!なに?母さんどうしたの!?3階!早く行きなさい!3階ね?こっち!あっそうだ!加那ちゃん!奈美!…金本!あっ!ねえ良平さんこの人確か…。
ああ。
高松の連続強盗犯。

(パトカーのサイレン)お騒がせしました。
もう大丈夫です。
逃走資金を奪うのが目的だったみたいだ。
温泉ホテルなら金を持ってる客がいると踏んだんじゃないかな。
そうなの!?でも加那ちゃんのこと知ってたみたい…。
ねえ心配だから調べてみて。
ああオッケー。
もういいじゃない。
おかげで良平さんは大手柄。
私は自分のツキのなさを証明できた…。
加那ちゃん!またそんなことを…。
それにしても奈美さん火災警報を鳴らすなんて言語道断!今からお詫びしてまわりますよ。
はいお義母さま…。
大女将です!はい大女将…。
ちょっと…!あらっ!おじさん!おじさん!おじさん!大丈夫ですか!?今度発作を起こしたら命の保証はしないって。
しばらく絶対安静。
おじさん後のことは加那ちゃんに任せてしっかり養生してくださいね。
…仕方がねえな。
こいつが風来堂の身上を潰すのをここから見物するしかねえ…。
オークションでスカ掴まされたらアッという間かもよ。
はいはい私はホテルに帰ります。
今夜のパーティーの準備四国美術倶楽部お歴々のお出迎え…。
ふたりの憎まれ口を聞いてるヒマなんかないんです。
お大事に。
奈美ちゃん…。
えっ…?加那のこと…よろしくな。
ガッテン!上条先生いらっしゃいませ。
(上条忠夫)こんにちは。
家内です。
先生にはいつもご贔屓いただいております。
若女将の奈美です。
いらっしゃいませ。
(上条房子)ずいぶんお世話いただいているようですね。
高松や丸亀で学会やセミナーがあるときの常宿にしてもらってるからね。
会頭の吉川さんが倒れられたとか…。
ええ。
会の方はお嬢さまの加那さんが名代で…。
そう加那さんが…。
ご案内いたします。
どうぞ…。
(時子)ミズエさん…。

(スミ子)若女将加那さんが着付けを見てほしいと…。
できた?できた!「できました」でしょう。
すみません。
ねえ…どう…?うーん…。
バッチリ!ホント!?おじさんに見せてあげたいわ…。
近所で一番小さくて泣きべそだったあなたがねえ…。
さて!今日と明日はあなたのデビュー戦よ!しっかりね!
(拍手)入院いたしました義父になり代わり僭越ながら乾杯の音頭をとらせていただきます。
四国美術倶楽部のさらなる発展を祈り乾杯!
(一同)乾杯!
(拍手)明日のオークションにはどんな名品珍品が飛び出すのか…今から楽しみです。
今夜はお招きありがとうございました。
(拍手)
(滝沢)風来堂の親父さんにこんなきれいなお嬢さんがいるとは知らなかったな…。
一度うちの窯を見学にいらっしゃいよ。
目ん玉が飛び出る秘蔵のコレクションをお目にかけるよ。
ええぜひ…。
あの2人は…?ああ高松で「尚美堂」という店を出してる木藤さんとこっちっがハタ師の川合征一って男だよ。
オークションに2人でどえらいものを出すようだ。
どえらいもの…?俺が…なんとかするよ。
盛況じゃないの。
これはこれは名刑事。
昨日はたいへんなご活躍で…。
おかげでさ署長賞なんてのをいただけることに…。
やったね。
初手柄じゃないの。
長い月日かかってやっと…。
長いことご苦労おかけしました。
とんでもございません。
ところでさ川合征一って人を捜してるんだけどね。
川合ってどなた?昨日逮捕した金本の携帯にメモリーがあった男なんだ。
その人がどうしてここに?美術品のブローカーだからひょっとしたらと思ってね。
なるほど!おそらく四国美術倶楽部の関係者でこの会場にいるだろうと名刑事はにらんだのね。
名刑事?もう一回言って。
名刑事油売ってていいの?加那ちゃんなら知ってるかも…。
私も捜してるのよ…。
えっ…?会いたかった…。
私も…。
みなさまお待たせいたしました。
ただ今から明日のオークションのリストをお配りいたします。
今回は稀にみる名品揃いですが極めつけは何と言っても出品番号27番高麗茶碗の左エ門井戸でございましょう。
(どよめき)ピンとこない方のために来歴を紹介しますとかの織田信長が浅井長政の家臣から奪った戦利品の茶碗といわれ森蘭丸の弟森忠政が拝領した後松平家や大阪の商家など所有者が転々としまして明治の末期からその所在がわからなくなっている曰く因縁のある逸品でございます。
(どよめき)出品者はそちらにいらっしゃいます高松の商美堂さんです。
どういういきさつでこのようなとんでもない代物が出てきたかにつきましては落札者だけにしかお教えできないということです。
(どよめき)曰く因縁て…?なんだろう…?その茶碗が姿をあらわすと死人が出るという言い伝えがあるんです。
死人!?ヤダ…。
人を殺してでも手に入れたい代物だってことだろうね…。
なるほど…。
これをわざわざ…。
会頭に持っていくからって世話役の方にいただいたんですよ。
へえ…。
でもいいんですか?大女将がパーティーをほっといて…。
パーティーの接待も大事ですけど正太郎さんの方がもっと大事。
あなたがいい品物を手頃なお値段でお世話してくださるから紅梅亭は老舗の格式を保っていられるんですから。
いやあ美術商冥利につきるお言葉ですな…。
それより早く元気になって。
私たち後進に道を譲るにはまだ早すぎますわ。
(吉川)はい同感です。
それよりリストの27番をご覧になって…。
左エ門井戸…。
織田信長に滅ぼされた浅井長政の怨念がこもってるっていうお茶碗でしょう。
なんだか胸騒ぎが…。
あスミちゃん…。
加那ちゃん見なかった?アハハハ…。
若女将驚いちゃいけませんよ…。
加那さんが中庭で…どなたと抱き合ってたと思います?加那ちゃんがこんなことするわけないじゃない。
ちょっと…。
加那ちゃん…。
上条先生とはどうなってるの…?本気じゃないわよね。
本気よ…。
「自分は運を使い果たした女だから多くは望まない」って…。
あれはこのことを言ってたの?…このこと?不倫ってこと…?私は上条先生を愛しちゃいけないってこと?いけないわよ!いけないに決まってるじゃない!幸せも将来もない。
誰からも祝福されない。
苦しむだけの愛じゃない。
それでもいいって言ったら?加那ちゃん…。
私が誰と交際しようとどんな生き方をしようと私の勝手でしょ。
他人にとやかく言われたくないわ。
他人!?ここにいたのか…。
あなたこそどこにいらしてたの?偶然古い友人に会ってしまってね。
しばらく上のパブで…。
あなたが陰でしていること…。
人を使って何から何まで調べたわ。
私があなたにどんな仕打ちを受けたか…。
帰ってすべて父に報告します。
待ってくれ…。
(房子)もうここはイヤ!ここにいるだけで屈辱だってことがわからないの!?房子…。
あの女と手を切ってあなたをここまで押し上げた父に心から謝罪してください。
それが済むまで上条家には戻らないで!・
(電話の音)もしもし…?あんたか…。
ああわかってる…。
自分が何をすべきかわかってると言ってるんだ。
もう勘弁してくれ。
・ただいま。
はいお疲れさま。
結局川合征一って男は見つからなかったよ…。
そう…。
なんだ?どうした?こうしてるとねなんだか落ち着くのよね…。
あの茶碗の言い伝えを気にしてるのか?ねえ…ちょっと太った?うん…。
幸せだからね…。

(電話の音)はいもしもし…。
ああご苦労さまです…。
…殺し!?うちのルームキーをですか?わかりました!すぐ行きます!大変だ!なあに?河原でうちの宿泊客が殺されてるんだってさ!奈美も確認のためにすぐ来てくれって!うちのお客さま!?大変じゃない!ちょっと待て!奈美!そりゃまずいよ!奈美!立入禁止です!
(岡村)いいんだ。
かみさんが元インターハイじゃな…。
昨日いらしたお客さまです。
間違いありません…。
やはりおたくの…美術商が集まる会に出席していたんでしょうな。
誰あろう昨日1日捜し回ってた美術商の川合征一だよ。
本当ですか!?・岡村警部!なんだこりゃ…?ちょっといいですか?陶器のカケラですね…。
なんでこんなもの持ってたの…?あっ奥さんご足労でした。
これで結構ですから。
でも…。
早く帰らないとまた…。
そうね…。
お邪魔しました!おはようございます。
(時子)奈美さん…。
どこ行ってたの?お客さまの朝食の時間でしょう。
すぐにかかります!良平さんと死体を見に行って…。
死体!?ええ。
血がここから出て…。
あれはよっぽど恨みを…。
何言ってるんですか!その格好は何ですか!パジャマでしょう!これが起き抜けに死体を見に行くスタイルでございます!ミズエさん大変!帯締めが!あすみません…。
若女将!よろしいんですか!?教育係の私にあの態度!死体ねえ…!これより四国美術倶楽部秋期オークションを開催いたします。
出品番号は1番中村商店さまよりの出品で柿右衛門染付皿。
はい120万から始めます。
130万!はい130出ました。
130…。
150!はい150。
他にありませんか?170!170出ました。
他にありませんか?170万が出ましたところで落札です。
それでは続きまして出品ナンバー2番に移ります。
死体を見に行った話ですけど…。
(時子)もういいの。
良平から電話で聞いたわ。
そういうことに首を突っ込みたがるのがあなたの悪いクセ!私は夫唱婦随のつもりです。
(時子)ものは言いようね。
それにしてもオークションのリストに載ってる左エ門井戸っていうお茶碗のこと気になりませんか?気になるわよ!1億円は下らないってものを誰が落札するのか…。
はい…。
30万!他にありませんね?では30万風来堂さんの落札です。
続きましては4番織部飾壺。
明治初期のものです。
30万から。
他にございませんか?80万以上ございませんね。
それでは26番80万で落札です。
お義母さま…いよいよですよ…。
続きましては27番高麗茶碗左エ門井戸…。
(ざわめく会場)どうなってんだ!みなさまにお断り申し上げます。
出品番号27番左エ門井戸は事情により出品されなくなりました。
深くお詫び申し上げます。
恐れ入りますが別室の方でお伺いしたいことがあるんですが…。
これなんですがね上条先生が陶磁器関係の第一人者だと伺いましてぜひ鑑定していただきたいと…。
おそらく今回のオークションに出品される予定だった左エ門井戸という高麗茶碗の一片と思われます。
例の曰く因縁ありっていう桃山時代の…?出品されていればおそらく1億数千万の値がついたでしょう…。
(良平・岡村)1億数千万!?これです…。
おお!確かに!先生この写真しばらくお借りできませんか?どうぞ。
捜査のお役にたつんでしたら…。
(木藤)そもそもはハタ師の川合が持ち込んできた話でね…。
ハタ師…?
(木藤)店を持たず全国を渡り歩く美術品ブローカーのことを我々の世界ではそう呼んでる…。
川合さんが会場に搬入する手はずになってたんですよね?ああ。
とんだ恥かかされたよ…。
茶碗の出どころ…所有者については?いっさい聞いてない。
出どころを明かさないというのが条件でね。
川合さんが殺されたことに何か心当たりはありませんか?そりゃあそんないいお宝持って歩いてりゃこんな目に遭っても仕方ないよ。
しかしひどい話だ。
川合を殺すよりも左エ門井戸を壊した方がはるかに罪は大きいよ。
(刑事課長)どんなことでもかまいません。
今回の事件に関連のある情報をお持ちの方はご協力お願いします。
なお恐縮ですが一通りお話を伺いたいと思いますのでみなさん当ホテルにもうしばらくご滞在願うことになると思います。
そちらもよろしく…。
(騒然となる室内)四国美術倶楽部のみなさまは捜査の協力のために当分ここに留め置かれることになると思います。
ご不満な方もいらっしゃると思いますので今まで以上にサービスに心がけてください。
はいっ!!あらっ?みなさんお返事は?
(一同)はいっ!!気をつけてね!若女将!お膳が曲がってるでしょう!あら〜?なぜでしょう…?性根が曲がってるからじゃないですか?はいっ!お膳は畳の縁に合わせて!はい。
〔近づくなよ!このホテルで死人が出てもいいのかよ!〕〔川合ってどなた?〕〔金本の携帯にメモリーされてた男なんだよ…〕・
(ミズエ)若女将!…はいっ!また警報機を鳴らすつもりですか?なんですかこんな時間に花なんか持って歩いて…。
ついうっかり…。
うわぁ〜!あっ大丈夫…。
いやこれ…。
殺された川合さんて人知ってた?ううん。
一面識もなし…。
…2日前加那ちゃんを襲った金本っていう強盗犯。
あの人と知り合いだったみたい…。
今度の事件と関連あるっていうの?襲われたのは偶然じゃないって?うん。
お金目当てなんかじゃなくて…加那ちゃんを拉致しようとしたんじゃないかな…。
川合さんが金本を使って私を?でも何のために?さっきも言ったけど川合さんとは何の面識もないのよ。
例えば彼の背後に正太郎おじさんや加那ちゃんに敵意を持ってる人間がいるとしたら?その人間が警察の追求を恐れて川合征一さんを河原で殴り殺したっていうの?そう!相変わらず奈美姉さんの想像力のたくましさには感心するわ。
少なくとも加那ちゃんを相当憎んでる人間がひとりいるわよ。
誰よ…?オークション会場でもなんだかおかしかったもの…。
あれはあなたたちのこと知ってるわね…。
ご忠告ありがとうございます。
相変わらず心配性なんだから…。
ねえ加那ちゃん…今のあなたは綺麗で若くて輝いてるのよ。
どうして妻のある人を好きにならなきゃいけないの?私は今全身全霊を傾けてひとりの人を愛してるわ。
これ以上の幸せはないのよ。
そりゃあ金本を締め上げたさ。
だけど川合征一とのつながりも背後関係も何を訊いてもいっさい知らぬ存ぜぬの一点張りなんだ…。
ねえ良平さん上条先生の奥さんのお父さんて人…。
県立大学の学長でご先祖が土佐藩の家老っていう由緒ある家柄らしいの…。
ねえなんかピーンとこない…?…特にこない。
少しは頭を働かせてよ。
左エ門井戸の出どころ…。
んんっ?まさか上条先生の奥さんだっていうの?ピンポン!彼女は密かに大金が必要なことがあって左エ門井戸を持ち出して川合征一に売却を依頼した…。
ついでに夫の不倫相手である加那ちゃんを痛めつけるように頼んだ。
ところが実行犯の金本が失敗して逮捕されたので口封じに川合を…。
そうやって自由に発想する君がうらやましいよ…。
警察じゃね「考えるな」って言われるんだよ。
「頭を使うな足を使え。
ひたすら歩き回って事実だけを拾い集めてこい」…。
俺が事実収集マシーンにならないですんでるのは君のおかげかも。
ふーん…そうですか…。
ものは言いようか…。
あんまり食べると太るわよ。
食べてよ。
せっかく作ったんだから。
とりあえずは川合征一はパーティー会場を出て河原で殺されるまでの2時間の足どりですね…。
この辺の飲み屋街からいくか…。
俺はここを当たる。
奈美さん!それは「天地人」の「人」ですよ!えっ?あぁーっ!「人」を切ってしまったんですか?お義母さま。
「大女将」でしょう!まったく人を切ったり人をくったり…。
若女将!ターゲットAが動き出しました!了解!
(時子)なんなの?とりわけサービスにうるさいお客さまのことです。
ターゲットAが…。
(スミ子)ええ!大女将…!若女将こんにちは。
この間のね買い物がね…。
…あっ失礼します。
…キャーッ!!直帰しますか?
(岡村)時間もピッタリだしな…。
(携帯電話の着信音)はい松崎です…。
あ…奈美?どうしたの?こっ…琴平公園!木藤さん!尚美堂の…。
頭から血を流して…殺されてるみたい…!殺されてる!?尚美堂が?琴平公園だね?わかった!すぐ行く!暇つぶしにホテルを抜け出して…「海の科学館」に行ってました。
その帰りに尚美堂の死体と出くわしたんだ。
警察にも通報せずホテルに逃げ帰ったってわけですか…。
第一発見者になるといろいろと面倒じゃないの!とりあえずは容疑者のように扱われるし…。
報道関係からも追い回されるし…。
滝沢さん実は川合征一殺しでもあなたの名前があがってるんです。
事件のあった夜の11時頃あなたは「こそめ」っていう居酒屋で…。
〔なにっ!もう一度言ってみろ!!〕〔何度でも言ってやるよ!お前のそういう考え方がな!〕ケンカの原因は何です?ノーコメントだね。
あなたが左エ門井戸っていう茶碗を落札するために川合征一や尚美堂の木藤さんと裏取引をしていたっていう証言もあるんですよ。
そのことでトラブルになったんじゃありませんか?それで2人を…。
…芸術を産むために授かったこの手を私が人殺しに使うと思うか!?私は事件とは無関係だ。
アリバイもある!アリバイ…?滝沢さん連れの村上麗子はパーティー会場で飲み過ぎて夜の10時にはホテルの部屋で就寝しあなたが戻ってきたのは翌朝の5時だと言ってる。
「こそめ」を出てからどこで何をしていたか証明できるんですか?できる。
「こそめ」を出た後数件先のスナックに入りそこで女と知り合った。
その女を旅館に連れ込み…朝まで一緒にいたよ。
その女性は?名前も聞かずに別れた…。
その類の女じゃないぞ。
深窓の令夫人だ。
スナックでも旅館でも得心のいくまで調べたらいいじゃないか!いい加減にしてくれよ!アリバイ成立か…。
なんだけどさ…そのスナックのバイトの子が県立大学の学生で滝沢さんが口説いてた女性を知ってたんだよ。
誰だと思う…?…えっ私の知ってる人?ビックリしゃちゃうよ。
奈美が最初に怪しいって言った人…。
上条先生の奥さん!?そうなんだよ。
夫に裏切られてショックだってのはわかるけどさ学長の娘さんだよ。
プライドってもんがあると思うんけどねえ…。
いやいやむしろ彼女のプライドがそうさせたのよ。
目には目を歯には歯を…。
わかるなあ…。
わかるんだ…!?リベンジよ!怖い…。
それにしてもアリバイが成立した2人をリストから外すとなるといったい誰がどういう意図であの左エ門井戸のかけらを死体の手に握らせたのか…。
さっぱりわからないわ…。
俺も。
えっ!?しっかりしてよ名刑事!あっ…。
(くだをまく麗子)スミちゃんどうしたの!?バーの方でだいぶ飲まれたみたいで…。
女将さん…ねえ聞いて!私がこんなに愛してこれほどつくしてるのにあの人ったら私のことをただの飾りとしか思ってないの!一緒にいても頭の中は他の女のことばかり…。
ひどいよ…。
あんまりだよね!?そうですね。
ゆっくりお部屋でお休みになってください。
滝沢さんは?大麻神社へ行く道を訊いて出かけられました。
(麗子の泣き声)おやすみになってくださいね。
大麻神社…?こんな時間に…。
何してんだよ?早く!走るの〜!?ダッシュ!待ってくれよ。
神社で何してるんだろう…。
ねえ…何あれ…?キャーッ!!死んでる!滝沢さんでしょ!?ねえ…。
滝沢さんが…どうして…?奈美…ちょっと声が変じゃないか?熱いよ熱がある!早く帰ろう…。
たたり!?今どきそんなぁ。
いくら世の中進歩したって科学で推し量れないことがあるんだって。
だから年に何百万人もの人が金比羅さんにお参りするのよ。
じゃあ若女将もそれにやられちゃったってわけ?他の3人みたいに命取られなかった分…強かったんだろうね。
霊的パワーっていうのかな?おはよう!さっ今日も一日若女将の分まで頑張りましょう!
(一同)よろしくお願いいたします。
どう?ああ…お義母さま。
熱もだいぶ下がったみたいです。
ダメだよ奈美。
今日は一日寝てなきゃダメ。
はい。
母さん少し奈美に無理させてるんじゃない?良平!はいっ。
無理をしてるのはこの人の方よ。
若女将の仕事だけだって大変なのに警察の民間協力まで。
体がいくつあったって足りやしませんよ。
お義母さまのおっしゃるとおり少し張り切り過ぎちゃった。
良平さんこんなところにいていいの?いいの。
これから上条先生を署へお連れするところなんだ。
えっ上条先生を!?いや例のほら…鑑定。
…いけませんね。
これはいけません。
180度訂正です。
訂正とは?贋作です。
(岡村)贋作?偽物ってことですか?
(上条)この高台の部分が出てきてわかったんです。
それにしてもよくできてる。
贋作の名品です。
えっ何…?偽物!?ああ。
おかげでひとつの図式が見えてきたよ。
木藤と川合はオークションで贋作の左エ門井戸を売りさばくつもりだった。
「ターゲットは金に飽かして名品を買いあさる陶芸家でコレクターでもある滝沢…」ところが何か大きな予期せぬ力がその3人を飲み込んだんだ。
大きな予期せぬ力?まさか良平さんまで死者のたたりとか怨念とか。
まさかもちろん生きてる人間の仕業だよ。
だけどそれを動かしてるのはその怨念かもしれないな。
あのおどろおどろしい滝沢さんの死体を見ててそう思ったよ。
そうね〜恨みがなければあんなふうにはね…。
あっ…それじゃ切るぞ。
おとなしく寝てろよ。
これから?ウォーキング・マシーンに戻って凶器の刺身包丁の洗い出しさ。
カミさんか?鬼の撹乱ってやつです。
連中を恨んでいる人間?ええ例えば偽物を売られてひどい目に遭っているとか。
それはいるかもしれないな。
しかしこの世界じゃ贋作を見抜けなかった自分の未熟さを恥じるしかない。
相手を恨むのは筋違いだ。
シャレにならねぇ。
シャレ?古美術の神髄は洒落っ気だよ。
これはね…加那が今回のオークションで競り落としたものなんだけどね。
まあ4つのうち1つは…これだ。
偽物ってことですか?加那はこれで30万ほどスッたがそいつが数千万の物ともなると一声で身上をつぶすってことになる。
へぇ〜それでも目が利かなかった自分を責めるしかないんですね。
それがこの世界のおきてだ。
じゃあ目の利かない人が左エ門井戸のようなものをオークションで手に入れようとしたらどうすればいいんですか?俺のような目利きのやりを持つしかないな。
目利きのやり?俺が1億とやりを突けりゃ左エ門井戸に折り紙をつけることになる。
そうか…なるほどね〜。
でも実際はオークションにかけられる前に左エ門井戸は誰かに偽物と見破られて割られてしまった。
ということは犯人はかなりの目利きってことになりますよね。
そうかなるほどね。
おじさんありがとうございます。
ずいぶん参考になりました。
夫唱婦随も大変だな。
(2人の笑い)加那ちゃんは今日は?さっきまでいたよ。
金比羅さんに行くとか言ってた。
金比羅さんに?ああ。
何を願かけるんだか。
(2人)うわーっ!!お義母さま。
ビックリさせないでよ。
今幽霊の話を聞いたばっかりなんだから。
幽霊?先に三井のおばあちゃんのところにお見舞いにいったのよ。
そしたら亡くなったおじいちゃんが二晩続けて病院にお迎えに来たっていうの。
何だか気の滅入ることばっかり。
あんたも病み上がりなんだから気をつけて。
上条先生は?さっき愛媛の大学へ戻られた。
私もこれから丸亀のお店に戻る。
そうとんだデビューになっちゃったわね。
仕事も恋もね。
でもこれが私の選んだ道だから。
うん。
もうどんな形でもいい。
加那ちゃんが幸せって感じるんだったらいい。
(島内信介)おいっあれ!
(島内明子)あら!加那ちゃん加那ちゃんじゃないか。
(信介)ほらお父さんのお店の3軒先で時計屋やってた…。
加那ちゃんおばさんのこと忘れた?これから人と会う約束があるので失礼します。
すみません。
加那ちゃんどなた?ちょっと失礼じゃないの。
いいの。
スミちゃんこれは今日いらした605のお部屋ね?そうです。
私が行ってくる。
あとお願いね。
(ノックする音)失礼します。
若女将の松崎奈美でございます。
先ほどは大変失礼いたしました。
(驚き)こちらの女将さんでしたか。
…加那ちゃんとは幼なじみですか。
ええ。
岡山にいたころうちが近所で。
今でもなんだか本当の妹のようなんです。
ああそうですか。
じゃあご両親もさぞかし。
あの…ご両親は加那ちゃんの入院中に交通事故でお亡くなりになったんですよね?あの子そのころのことをまったく話したがらなくて。
それは思い出したくなくて当然ですよ。
ご両親は神戸に移られてから美術商を営んでいたんだがとんでもない詐欺にひっかかったんです。
詐欺に?ふたりは加那ちゃんに最先端の治療を受けさせようとある儲け話に飛びついたんです。
(明子)相手は男性3人です。
ご両親は親類や知人から1億円近いお金を借りてそれらを仕入れたのはいいんですが…。
(島内)〔成本さん!?〕
(加那の父)〔やられました。
全部合わせても100万にもなりません〕〔人の弱みにつけ込んでなんて連中だ。
早う警察に〕〔これも商売のうちだよ〕〔警察も取り合っちゃくれない〕〔この世界じゃ偽物をつかまされた方が悪いんだ〕〔そんな…〕
(加那の母)〔私談判に行ってきます〕〔加那の病気のこと話してお願いしてきます〕〔このままじゃ加那が!〕〔わかった俺も行く〕〔加那の命がかかってるんだ〕
(加那の父)〔どんなことしても金を取り返す〕おふたりは車で出かけてそれっきり戻りませんでした。
六甲の山道で車ごと転落して…。
おふたりが亡くなったと聞いたのは次の日です。
加那ちゃんを受取人にかなりの生命保険に入っておられたとか。
あの…こんなことを言ってはなんですけど本当に事故だったんですよね?1億円の借金と加那ちゃんの治療代をあがなうには…。
じゃあ…ご両親は…。
自らハンドルを…。
ご自分たちの命の代わりに娘の加那ちゃんを。
ご両親に偽物を売りつけた3人組は?いいえまったく見たこともない人たちでした。
でも1人だけは今会ってもわかります。
右のまゆ毛に大きな傷が。
えっ!?あのーここにですか?川合征一が…。
(時子)明日から「こんぴら温泉まつり」です。
これからも一致協力して私たち女将のパワーでこの不況を乗り切りましょう!
(拍手)そうか…殺された川合征一が加那ちゃんのご両親を。
とんでもないことになってきちゃったな。
そうなのよ。
私も突然のことで頭の中の整理がつかないのよ。
温泉まつりか…。
何があっても若女将としてのおつとめだけは果たさないと。
あなたもご自分のつとめを。
はいよ。
俺も川合と木藤の過去をもう一回徹底的に洗ってみるよ。
ここの折じわを。
これね。

(祭りばやし)
(祭りばやし)尚美堂の木藤も昔は全国を飛び回ってるハタ師だったんだってさ。
加那ちゃんの両親をペテンにかけた1人である可能性は大だね。
川合と木藤。
問題は残る第3の男だな。
その第3の男なんだけど大麻神社で殺された陶芸家の滝沢さんは?彼ならピッタリはまるんじゃない?ところが調べてみたら彼は16年前日本にいないんだよ。
アメリカ西海岸の日本レストランで板前を。
あっそう…そうか。
第3の男は闇の中か…。
やっぱり16年前のその出来事と今回の事件はなんか関連があるのかね…。
1日休暇を?高松に行って調べたいことがあるんです。
また民間協力ね。
はい。
良平さんが動けない分少しでもカバーできればと。
いいでしょう。
でも条件があるわ。
条件?なんですか?良平はあんたの夫だけど私の息子でもあるのよ。
あんたひとりで背負い込まずに私にも説明してよ。
私は私なりに推理をしてるのよ。
…はい。
いざとなれば学生時代に習った少林寺拳法が役に立つかもね。
とにかくあなたにもしものことがあったら私はご先祖様に顔向けできないんだから。
お義母さま…。
とにかく単独行動は許しません。
ちょっとすみません!はい。
こちらへの郵便物は大石にある小谷さんの家に配達するように…。
大石にある小谷さん?このあたりなのよね〜。
あっ…!あれ違います?ごめんください!わぁーっ!?若旦那!?スミちゃんご苦労さん。
交替だ。
気をつけて帰れよ。
どうも…。
ねえここ尚美堂の贋作工房じゃない?ええ!?じゃあ左エ門井戸もここで作られたっていうの?きっとそうよ。
確かに作風はバラバラだな。
(小谷)そこで何をしている?すみません。
別に怪しいものじゃ…。
亡くなられた木藤さんのことでちょっとお話しを伺えたらと。
警察の人が来ていろいろと話を訊かれたがね。
いえお伺いしたいのは昔のことなんです。
昔のこと?はい。
木藤さんの昔の仲間?さあ…川合征一って人はここに出入りしてたから知っていたが他は覚えないね。
小谷さんはいつからこちらに?10年ほど前からだよ。
木藤さんが私の借金を肩代わりしてくれてここで働かざるを得なくなった。
私はここへ来て偽物だけを仕入れる業者や偽物を承知で買う客筋があるってことを知った。
まったく不思議な世界だね。
あなたが作られた左エ門井戸を県立大学の上条教授という鑑定の第一人者がご覧になって贋作の名品と評していましたよ。
上条さんが?はい。
贋作の名品か。
…光栄だね。
一度ここにも見えたことがある。
こちらに!?本当ですか?ずっと以前木藤さんがハタ師だったころ岡山の旧家の古い窯跡から重要文化財級の古備前を掘り出したことがあってそのとき鑑定を頼んだのが縁らしい。
ご案内しましょう。
すみません。
さあどうぞ。
足元に気をつけられてな。
17年ほどになりますかな…。
2人連れの美術商の方がうちの古い窯跡を掘らせてほしいと言うて訪ねて見えましてな。
土を掘って出てきたガラクタを洗いざらい買うていったんですわ。
ガラクタをですか?それで?それで1か月ほど過ぎて愛媛の大学の先生という方を連れて見えてなうちから買うたガラクタから古備前の壷が出てきたの。
念のためもう一度窯跡を見せてくださいとこういうことになりましてな。
その先生は窯跡を掘り返し土くれのひとつひとつを丹念に調べて…。

(老主人)同じ時代の壷のかけらを見つけたんです。
そしてうちの窯跡から出た壷は室町末期に焼かれた古備前であると断言しました。
室町末期ですか…。
はい。
そんなものがうちにあったとはつゆにも知らず。
そのうえ美術商の方から何十万という金をポンといただいて家内とふたりであっけにとられてしまいました。
その古備前の壷は今どちらに?確か岡山の美術館に買い取られて今でもときどき展示されてるそうですよ。
岡山?古備前の壷って木藤と川合が仕込んだ偽物よね。
上条さんは罠にはまっちゃったわけだよ。
偽物を本物と鑑定したことで決定的な弱みを握られた。
それで上条さん彼らに利用されてるんじゃないかしら。
今回も偽の左エ門井戸に本物の折り紙をつけるために来てたのかもな。
ねえ加那ちゃんのご両親に偽物を売りつけた3人組のもうひとりってひょっとして上条さんじゃないかな…。
だとしたらひどい話だよな…。
ひどすぎるわよ。
おじさん…ありがとう…。
…さようなら。
加那ちゃんが琴平北署に自首したんだって!
(良平と奈美)自首!?この世界に入ったのもいつか連中を見つけ出して両親の恨みを晴らすためでした。
紅梅亭での懇親パーティーの会場で私はとうとうその男を…。
俺がなんとかするよ。
16年前両親を死に追いやった連中に間違いないと思いました。
パーティーが終わった後まず川合という男の後を追いかけて…。
そしてその2日後相談事があると言って…木藤を琴平公園に呼び出しました。
しかし木藤と川合はともかく滝沢まで殺したのはなぜだ?滝沢は関係ないだろう。
木藤を殺すところを見られたからです。
滝沢は口止め料としてうちのお店が持っている仁清や織部を譲れと言ってきました。
それで仕方なく大麻神社で会うことにして…。
加那ちゃん滝沢さんは見るも無惨な猟奇的な殺され方だった。
本当に君がやったのか?ええやったわ。
だったらどうやって殺したのかその後どうしたか説明してくれ。
もし少しでも違ってたら許さないぞ!お義母さま加那ちゃんは犯人ではありません。
なぜならば彼女は目利きとしてまだ半人前だからです。
目利きとして半人前?どういういこと?半人前だからあの左エ門井戸を偽物と見破ることはできません。
贋作と見抜いた人間でしか割ることはできないんです。
そうね。
それがこの事件を解く鍵かもしれない。
でも加那ちゃんが犯人でないなら自首して出たのはどういうわけ?誰かを庇ってるんです。
加那ちゃんにとって大切な誰かを。
奈美さん!?上条先生。
加那ちゃんのことでお伺いしたいことが。
17年前の古備前の壷の一件は事実だよ。
それ以来彼らの言いなりになってきたことも…。
(上条)偽物を本物と鑑定するよう強要されることで私は自分の知性や感性を日に日に腐らせてきた。
いくら拭っても消えない不快感や気持ちの悪さの中で…溺れかけていた。
そんな私をすくい上げてくれたのが加那さんだった。
もし助けることができるのならなんとしても助けたい。
じゃあ上条先生は…。
いや。
たとえ連中を殺しても…関係を断ち切るつもりだったが誰かに先を越されてしまった。
それに加那さんの両親に贋作を売りつけた3番目の男も私じゃない。
奈美さん私は加那さんを失いたくない。
そのための覚悟もできている。
信じてもらえないか。
どうしたの朝からボーッとして。
カラオケボックスのバイトも楽じゃないよ。
夜通しだもんな。
それで幽霊みたいにボーッとしてるの。
幽霊…?〔三井のおばあちゃんを見舞ったら亡くなったお爺ちゃんが二晩続けて病院にお迎えに来たって…〕良平さん今から岩佐病院まで来れる?急いで。
奈美!どうしたの?何があったの?いいから早く来て!早く!あれ正太郎おじさん…吉川さんは?ご本人の希望で一時帰宅されましたよ。
一時帰宅?看護婦さんちょっといいですか?すみません。
入院患者が夜中に外出しようとしたらこの前を通るしかありませんよね?ええ。
でも夜間の外出は禁止ですから夜勤の看護婦に止められます。
そうですか…。
じゃ看護婦さんの目を盗んで外出しようとしたら?エレベーターに乗ろうとすると音がするし階段で1階まで降りても守衛さんに見つかってしまいます。
そうですか…。
やっぱりおばあちゃんの気のせいかな。
非常口は?ありますよ。
あちらの奥に。
ちょっと。
いったいどうしたって言うんです?これですね?よっぽどのことがない限り非常口は使わないでしょう。
寒くて暗くて怖いもの。
やっぱり無理ですね。
無断外出は。
これよこれ!もっとわかりやく言ってよ。
おばあちゃんこんにちは。
こんにちは。
おばあちゃん夜中に2度も亡くなったご主人がお迎えに来たんですって?ええそうなのよ。
本当なの。
そのときのことこの人に話してくださいます?こんにちは。
こんにちは。
私トイレが近くて夜中に何度も起きるんです。
(老婆)そのときもトイレに行こうと廊下に出たら…。

(老婆)そしてもう一回は…。
それはいつといつのことかわかりますか?わかりますとも…こちらへ来てください。
どうぞどうぞ。
失礼します。
最初に出たのが主人の命日ですからこの日。
次が2日後のこの日。
やっぱりね…。
この日に川合が殺された。
そしてこの日木藤が殺されたのは昼間だったから幽霊は出なかった。
そして同じ日の夜滝沢が殺された。
正太郎さんだったのか…。
加那ちゃんが命がけでかばうとしたら他に誰がいる?・
(看護婦)たいへんです!吉川さん狭心症の薬全部忘れていっちゃったんです。
自宅にも帰ってないみたいだし。
俺加那ちゃんを連れ出してみる!私はおじさん捜す。
吉川加那を釈放!?君は警察の内規を無視するのか!内規?人の命がかかってるのになんですか!そんなことだから警察から市民が離れていくんですよ!もしこのことで人が死んだら課長が全責任を負うんですね!ありがとうございます。
行こう!あっ奈美。
加那ちゃんが心当たりがあるってオーケーホテルの前ね。
あっ来ました。
…行ってきます。
(時子)安全運転安全運転!安全運転よ!なかんだ浜!?16年前…自殺しようとしていた私を釣りに来ていたおじさんが助けてくれたんです。
自殺しようとした!?自殺?あっ!?おじさん!正太郎さん!奈美薬!車…!大丈夫?こんな薄着で!薬も持たないで!大丈夫?私を置いてひとりで死ぬなんて許さないからね。
許さないから!加那…。
16年前加那ちゃんのご両親に偽物を売りつけた3人組の3番目の男は…正太郎おじさんですよね。
本当なの?そのとおりだ。
俺は…木藤のやり口がイヤになって途中で仲間を抜けた。
だからこいつのご両親が事故で亡くなったことも俺は知らなかった。
そんな加那を…この海岸で助けるハメになろうとは…。
俺ができる唯一の…罪滅ぼしはこいつをいっぱしの目利きに育て上げることだと思った。
(吉川)16年たってやっと少し目鼻がついた。
女っぷりも上がりやがって加那を目当てに店にもやけに客が出入りするようになったが…。
四国美術倶楽部のオークション間近になって昔仲間だった木藤と川合がおじさんを訪ねてきたんですね。
〔左エ門井戸か…とんでもないものを作ったな〕〔陶芸家の滝沢が1億5千の競り値をつけると言ってる〕〔それはよう…俺や上条さんのお墨付きがあっての話だろう〕〔ああ…上条さんとは話がついてる〕〔あとはあんたが手を貸してくれりゃ…〕〔あんたのやり一本を2千万で買おうって話さ〕〔俺はよぉ…ここまでにした風来堂の看板に泥を塗る気はないんだ〕〔おいっ何すんだ!〕〔その気色の悪い化け物を持ってさっさと帰れ!〕でも木藤と川合は引き下がらなかった。
おじさんを計画に引き入れるため指名手配中の金本を使って加那ちゃんを襲った。
〔近づくなよ。
ホテルに死人が出てもいいのかよ〕そして再び木藤と川合はおじさんを計画に参加させようとした。
〔加那さん無事で何よりだった〕〔俺たちの言うとおりにしないと今度こそ加那さんの命の保証をしないよ〕〔お前たちが…加那を…〕それを知っておじさんは2人を。
このままだと加那ちゃんも彼らもお互いの正体を知ってしまう。
もちろんおじさんのことも。
あいつらの正体を知ったら加那は復しゅうするかもしれないし俺も仲間だと知ったら…加那は…。
おじさんは夜中病院を抜け出して仲間になるふりをして川合を呼び出した。
そして2日後尚美堂の木藤も…。
それを通りかかった滝沢さんに見られた。
(吉川)もうダメだと思った。
ところが滝沢が病院に訪ねてきた。
〔何も見なかったことにしますよ〕〔風来堂と加那さんを譲ってくれるならね〕
(滝沢)〔どうです?〕
(吉川)〔貴様…〕それで滝沢さんまで…。
おじさんは左エ門井戸の偽物があるとまた加那ちゃんのご両親のような被害者が出る。
それであの偽物を割ったんでしょう。
そうだ。
そしてそのかけらを死体に…。
あいつらにふさわしい…シャレだと思ったんだ。
加那ちゃんはどうしておじさんが犯人だと思ったの?ふたつ目の殺人があった日…病室で…。

(加那)私はおじさんの心臓の発作が心配で本当のことを聞き出せなかった。
どうせ私のためにやったに決まってるもの。
それにおじさんを刑務所で死なせることはできなかった。
だから私は黙って警察に。
バカな奴だよ。
バカはどっちよ!私はオークションで左エ門井戸を偽物だと見破って木藤と川合に復しゅうするつもりだったのに…。
おじさんにたたき込まれたこの目利きでお父さんとお母さんの恨みを晴らすつもりだったのに。
どうしてよ…どうして人を殺したのよ!おじさんまで私の目の前から消えてしまったら私はまたひとりぼっちになっちゃうのよ。
加那…。
さあ良平さん…。
そろそろ行こうか。
お前さんのワッパならきっと温かいだろう。
加那…。
お前はもういっぱしの美術商だ。
どこへ出したって恥ずかしくないぞ!奈美ちゃんたびたびのことなんだが加那のことをお願いします。
はい。
サンキュ。
正太郎さんがねえ…。
犯罪は犯罪だけど加那ちゃんを守ろうとした正太郎さんの愛には胸が痛むわ。
たとえ血はつながってなくても愛って強いのね。
そうだね。
そうだ。
これから寒くなるから正太郎さんにセーターでも…。
やっぱり母さんのいれてくれたコーヒーは一番おいしいや。
ありがとう。
こんにちは!あらどうしたの?加那ちゃんひとりで大変そうだからねアルバイトを連れてきたの。
どうぞ。
奥さんと別れて現在無職。
美術品鑑定の経験も少しあるみたい。
まあちょっと歳はいってるかもしれないけど当分見習いからどう?…先生!
(時子)本日は紅梅亭をご利用いただきまして誠にありがとうございます。
私大女将の松崎時子でございます。
若女将の奈美でございます。
2人を始め社員一同心を込めてサービスをいたします。
どうぞごゆっくりおくつろぎくださいませ。
(拍手)2014/10/07(火) 14:00〜15:51
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四国琴平1億円の信長の茶器が招くトリプル殺人!復讐か不倫か?瀬戸大橋に第三の真犯人

詳細情報
◇出演者
東ちづる、船越英一郎、岡田茉莉子、国生さゆり、若林豪、長門裕之 ほか

ジャンル :
ドラマ – 国内ドラマ
福祉 – 文字(字幕)

映像 : 1080i(1125i)、アスペクト比16:9 パンベクトルなし
映像
音声 : 2/0モード(ステレオ)
日本語
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