きょうの健康 うつ病が治らないあなたに「薬の使い方は正しいか」 2014.10.07

(テーマ音楽)皆さんの健康な毎日のために役立つ確かな情報をお伝えしましょう。
「きょうの健康」です。
今週はこちら。
今日はまずこんな例からご覧下さい。
Aさんはうつ病と診断され薬を1週間のみましたが効果を感じられずこの薬をやめて別の医療機関で違う薬をもらいました。
すると今度はすぐに吐き気や下痢といった副作用が起こりこの薬もやめてしまったんです。
うつ病は治らないまま途方に暮れています。
Aさんのような例は少なくないんだそうですね。
自分に合う薬をどう見つけていけばよいのでしょうか。
今日のテーマはこちらです。
今日も専門家をお迎えしております。
分かりやすく教えて頂きましょう。
ご紹介致します。
精神科特にうつ病双極性障害などの薬物治療がご専門でございます。
どうぞ今日もよろしくお願い致します。
うつ病の薬というのは扱うのが大変難しそうですね。
残念ながらそうですね。
うつ病の薬は効果は大きいんですが決して使いやすいとは言えません。
例えばここに挙げましたように薬にはいろんな多くの種類の薬があるんですが最初の薬が必ず効くとは限りません。
アメリカの非常に大規模な研究でも最初の抗うつ薬だけでうつ病の症状がなくなる人は4割弱というデータが出ています。
それからお薬が効き始めるまでにも日数がかかるという事がいわれています。
更には副作用が比較的出やすいという事がありますので十分な対処が必要とも考えられてます。
更に仮にお薬が効いて症状がなくなったとしてもそれを続けなければいけないという事がございます。
続けないとぶり返すという事がありますのでこういった気を付けなければいけない点がいくつかあるのが特徴とされています。
ではうつ病にはどんな薬があるのかこちらで見ていきましょう。
うつ病の薬というのは抗うつ薬が中心です。
主な抗うつ薬は5つに分かれていますがまず三環系四環系と呼ばれる薬は古くからあるものです。
SSRISNRINaSSAは新しく開発された薬です。
このほか抗不安薬や睡眠薬を一時的に使う事があります。
またうつ病の状態によっては気分安定薬抗精神病薬甲状腺ホルモン製剤も抗うつ薬と併せて使う事があります。
今日のお話の中心抗うつ薬でございますがこれを治療に使っていくというのはどんな場合ですか?うつ病の重症度でも変わるんですけれども中等症ですとか重症の方の場合にはほとんどの方の場合抗うつ薬を使います。
軽症の場合は状況に応じて使う時と使わない時がございます。
では薬が必要な病気の状態だと判断された場合はどのように使っていくんでしょうか?まずは抗うつ薬1つを選んで処方します。
通常はこちらにありますような新しいカテゴリーのお薬の中から選ぶという事が多いと思います。
これは副作用が比較的少ないという事が理由になるようです。
まず最初の薬を1つ選んでいくという事ですね。
でもこの最初の薬が必ず効くとは限らないという…。
先ほど4割弱と言いましたがそうなんです。
もし最初の薬が効かなかった場合は別のカテゴリーの薬に替えるという事が多くなっています。
ただ2つ目以降はこういった旧来のお薬を使ったりする場合もあります。
これが駄目ならあれ。
あれが駄目ならこれという事。
そうですね。
ただすぐには効かないというお話もありましたね。
抗うつ薬は副作用が出ないように基本的に少量から使います。
だんだんだんだん量を増やしていく訳ですがそうしますと効き始めに大体2〜3週間かかる訳です。
やはりこれは全く効かないという場合は薬を替えたりする場合があるんですがそうすると更に2〜3週間かかったりする事も…。
替えたらまたそれ2〜3週間。
そうなってしまいます。
そうしますと自分に合う薬が見つかってそれが本当に効果が出てくるまでには時間がかかるんだという事を理解しておかないと…。
例えば風邪薬ですとか痛み止めこういった薬ですとのんだらすぐに効果を実感するという事があると思うんですがこのように時間かかる訳ですから先ほどのAさんのケースのように効かないと思って1週間ですぐにやめては何もならない訳ですね。
少なくともこれぐらいは試さないと効くかどうかが分からないという特徴をよく理解しておく必要がありますね。
それでは効く薬が見つかったとして効果が出始めたとしてうつ病の症状がなくなっていくまでにどれぐらいの期間がかかるんですか?この2〜3週間というのはあくまでも効き始めに時間かかるんであってきちっとうつ病の症状がなくなるにはここにありますように大体2〜3か月必要だとされてます。
これは大前提お薬が効いたとしてこれだけかかるという事になる訳です。
更にこの症状がなくなっても薬はその後も続けるという事ですか?はい。
症状がなくなったからといってお薬をやめてしまうとぶり返しですね。
私たちは再燃といいますがこの再燃を呈したりします。
なのでこの再燃予防をするために大体症状がなくなってから半年から1年継続する必要があるといわれてます。
そうするとここにありますが回復という状態になります。
これはうつ病治療における真のゴールとされてます。
ですから症状をなくして治療を継続して回復を目指す。
これがうつ病治療において一番大切な事になるんですね。
症状がなくなってもしばらく続ける。
これが大事なんですね。
では次に薬の副作用について見ていきましょう。
こちらです。
これをパッと見ますといろんな副作用が出てちょっと嫌だなという印象を受けてしまいますがどうなんでしょう?確かに新しい抗うつ薬といえども副作用がない訳ではないんですね。
ただ書いてある事は書いてありますが患者さんの生活の質に大きな悪影響を及ぼすものは比較的少ないとされてます。
しかし三環系抗うつ薬はそういった生活の質に大きく影響を与えうるものですから先ほど私が申しましたように最初はこちらのお薬から使っていくのが望ましいとされている訳です。
冒頭のAさんの例を思い返しますと副作用がすぐ出てしまって怖くなってパッとやめてしまいましたね。
これはどう対応すればよかったという事ですかね?もちろん副作用が出たからやめるとか別の薬にすぐ替えるという方法もあるんでしょうけれどもただ我慢できる副作用もあるんではないかと思っています。
また基本的に副作用というのは使い始めに出やすいのですがやがてここにありますように慣れてくる事が多いんです。
一時的なものが多かったりしています。
…という事からやはり副作用というものを少し我慢して頂くという事も必要です。
しばらく続けてると慣れるという事が…。
一時的なもの結構あったりするんですね。
更にこれが特徴なんですが実は副作用が最初に出てそのあとに効果は遅れて出るという事があります。
ですから先ほどのAさんのように副作用出たからといってやめるともしかしたらお薬が効くのかもしれないけど副作用のためにやめてしまうという事が起きてしまいますのでその辺も残念な点だったと思います。
ああそうかそうか。
副作用が出て慌ててやめちゃったけどもしばらく続けていたら効果の方が後から出てきたかもしれない訳ですね。
それが効くか効かないかはその時点で分かるという事なんですね。
そういう説明を頂いて理解したとしても副作用そのものはやはり嫌ですよね。
つらいですね。
ごもっともだと思うんですね。
まず強調したいのは副作用我慢して下さいと言う前に副作用止めのお薬もあります。
なので例えばここにありました吐き気でしたら吐き気止めとかこういった薬もあるのでそういった薬を使うというのも一つの手かもしれませんがお薬の量が増えるという事を嫌がる方も結構いらっしゃいますのでこれは実は私たちが数年前にやりました患者さんへのアンケートからご紹介してるんですがこういった患者さんの立場でできる副作用対策というのがあってそれをご紹介致します。
例えば眠気というものでしたらお薬を朝昼ではなくて寝る前にまとめてのむとかカフェインですね。
コーヒーとかお茶を飲んで頂く。
顔を洗うとかガムをかむ目薬をさす。
こう書くと当たり前のように思いますがこういった事で対応される方も多いようです。
そして吐き気も吐き気止めの薬がありますが患者さんはたくさん食べないとか夜食べない。
あと酸っぱい物をとるといいよみたいに教えて下さった方もいますのでこのような対応をなされているようです。
そうしますと薬の特徴を私たちがよく理解して使うという事が大事ですね。
そうですね。
やはり私たちが大切だと思ってますのは抗うつ薬を使ったりする前に先ほど紹介しましたような効果ですとかこういった副作用そして対応策みたいなものを説明した上で患者さんに選んで頂くという方法も進められるかと思います。
これは治療における意思決定の共有といっていてこういった方法をとる事で患者さんが服用をしやすい状況服用を継続しやすい状況になるんじゃないかと思っております。
そして抗うつ薬でほかに注意が必要な点はありますか?多い訳ではないんですけれども実は若い人に使う場合ちょっと気を付けた方がいいといわれている事がございまして抗うつ薬は基本的に歯車を回すようなお薬だと思うんですね。
例えば元気がない人は元気という歯車を回すというふうにとっていいと思うんですが不安とかイライラした方の場合抗うつ薬を使った方が余計イライラするという方がいらっしゃいます。
それが不幸にも自殺につながる方がいらっしゃって残念ながらそれが24歳以下の方でそうなりやすいという事がいわれてますのでやはり若い人に使うのには慎重にという事がいわれています。
これ注意点ですね。
そうですね。
ところで薬を正しく処方されて効果が出るはずだというような使い方をしながら効果がどうも思うように出ないという事よく経験されるそうですがどんな背景があるんでしょうか?実はこれも私たちがやった研究なんですがうつ病の患者さんがお薬を開始してなんと半年で半分以上の方がお薬をやめているというような…。
私もびっくりしたんですけど。
のんでるはずなのに。
…という研究を私たちも発表致しました。
ですから私たち治療者は当然患者さんがのんで下さってると思ってる訳ですね。
だけど先ほどのAさんのように副作用が嫌だからとか効かないからとかそういった理由でやめてらっしゃる方が多いと思うんですね。
ですから私たちは是非この場でお願いしたいのはとにかくお薬を継続して服用して頂きたい事。
せめてのみたくないとかのんでなかったらそれをやはり治療者に伝えて頂きたい。
これが私たちからのお願いになりますね。
指示どおりのんでいて初めてそれが効くか効かないかの判断もできるという事ですが実はのんでなかったという事になるとちょっと材料がありませんね。
結構そういう事があるんです。
そしてこのうつ病の薬に関しては多く出され過ぎているのではないか過剰に出されているのではないかという疑問もありますけれどもこの点についてはどうですか?基本は1つの薬から始めるのがポイントだと思うんですね。
最近では2つのお薬を併せる事で効果があるというような研究もあったりするので…。
2剤ですね。
2剤まではいいと思うんですけどしかし3剤以上になって効果がより強くなるという事を証明した研究はほとんどないんですね。
むしろ3剤以上使うと副作用が増えるという事がいわれていますのでやはり多くならないようにした方がいいと思うんですね。
かつどうしても増えたとしても常に増やした瞬間に引き算の発想が大事だと思っています。
増やしたら今度はどうやって減らすかという事を考えなければいけないと思うんですね。
ですから患者さんにおかれてはもし多すぎるなと思った場合は是非多すぎやしませんかという事を主治医に聞いて頂く。
これが望ましいんじゃないかと思っております。
今のお話復習しますと抗うつ剤まず1剤が基本。
2剤まではよくあると。
そうですね。
実際それは効果が証明されていますね。
3剤以上になってる場合は気分安定薬や抗精神病薬などが足される事はありうるという理解でよろしいですね?抗うつ薬3つというのは証明されてませんが気分安定薬ですとかそういった薬を足す事はある程度効果が証明されてますのでそういったものはいいとは思うんですけどね。
いずれにしましても抗うつ薬を使うにあたっては医師の側と患者の側のコミュニケーションがないとうまくいきませんね。
そうですね。
治療の最初の説明という事もそうですけれども先ほどの半分ぐらいの方がのんで下さってないという事もありますし医者が大切に説明する事も必要ですけども患者さんの方も率直な意見でこういう副作用は嫌だとかのみたくないとかそういったご意見を是非医者に言って頂くとよろしいかと思うんですね。
ありがとうございました。
2014/10/07(火) 13:35〜13:50
NHKEテレ1大阪
きょうの健康 うつ病が治らないあなたに「薬の使い方は正しいか」[解][字]

うつ病には抗うつ薬が処方される。効き始めるまでに2、3週間かかり、最初の薬が必ず効くともかぎらないので、すぐ効かないからといって勝手に中断しては何にもならない。

詳細情報
番組内容
うつ病には抗うつ薬が処方される。効き始めるまでに2、3週間かかり、最初の薬が必ず効くともかぎらないので、すぐ効かないからといって勝手に中断しては何にもならない。反対に副作用は早く現れやすいが、様々な工夫で対処して薬を続ければ、副作用には慣れ効果もやがて現れてくることが多い。薬が効いてから、うつ病の症状がなくなるまでには2、3か月程度を要する。その後も症状がぶり返さないよう半年から1年は薬を続ける。
出演者
【講師】杏林大学教授…渡邊衡一郎,【キャスター】濱中博久,久田直子

ジャンル :
情報/ワイドショー – 健康・医療
福祉 – 高齢者
趣味/教育 – 生涯教育・資格

映像 : 1080i(1125i)、アスペクト比16:9 パンベクトルなし
音声 : 2/0モード(ステレオ)
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日本語(解説)
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