晩秋の冷たい風が吹く日本海。
新潟県佐渡市。
島ごと市に制定され沖縄本島に次ぐ広さがある。
新潟市の西35km。
京都・大原から8時間。
飛行機と船を乗り継いでやって来たベニシアさん。
島を歩くと幼い頃の記憶がよみがえってくる。
島大好き。
私小さい時島住んでたから。
近くにどこ行っても海が見えるし。
島の中に大体全てどこに何があるのか分かるから好きですね。
暖流と寒流が交わる佐渡島。
多くの魚介が生息する海と豊かな植生あふれる島が人々の生活を支えている。
穏やかな秋風の頃佐渡島は最もよい季節を迎える。
ベニシアさん今日はトレッキングを楽しむつもり。
その前にちょっと街歩き。
渋い昔の街が好き。
何て言うのかな…多分潮…海から潮風が来てるから何かこういう雰囲気が出るのね。
朝の澄んだ空気に乗ってみその香りが漂ってきた。
え〜こんにちは。
(塚本)あっこんにちは。
いらっしゃいませ。
早くから店開いてますね。
みそを造ってるんですか?ええ。
ここで造ってるんですか?もちろんうちで造ってます。
おみそ…お米ももちろんコシヒカリの麹。
そして豆もおいしい豆使ってます。
お塩も佐渡で取れた海洋深層水のお塩で水も海洋深層水使って。
佐渡島がみそを造ってるの結構有名ですか?そうですね佐渡は昔から麹屋とかみそ屋さんいっぱいありまして寒い地方の北海道とかそういう所に送ってましたね。
ああそう。
100年以上の歴史を持つみそと麹の店。
佐渡産の米麹に国産大豆を混ぜ込み1年間熟成した手作りのみそ。
昔ながらの製法がふるさとの味として親しまれている。
これ何ですか?これなめぜって地元では言ってて。
なめぜは初めて見た。
これは多分独特のものだと思います。
麦とね豆を煎ったものそれに麹菌みたいな大種を混ぜてこういうものに…。
になるんですか?ええ水を入れてね。
食べてみますか?なめてみます?あの〜ちょっとね癖があるんで結構好き嫌いがはっきりするんですけど。
発酵食品ならではの癖があるなめぜ。
しょうゆに近い独特な香りが楽しめると地元では人気がある。
ホントに自然食で栄養も…。
麹の味が結構…。
甘酒を少しブレンドしてるんでちょっと甘みが。
すごくおいしい。
佐渡の郷土食に思わず舌鼓。
家族で大切に守ってきた味は島の家庭の味にもなっている。
あっこんにちは。
あっこんにちは。
一人息子の理一郎さん。
家業のかたわら佐渡の山を案内しているという。
山ガイドをやってるって聞いたんで。
はい一応やらせてもらってます。
何かでもすごい若い…。
そう…今年で32歳になるんですけど。
ああもっと若く見える。
うちの息子と同じぐらいかなと思ったんだけど。
佐渡を訪れる人に島の魅力を伝えたいと3年前にガイドを始めた理一郎さん。
なだらかな丘陵が広がるドンデン高原は幼い頃から何度も訪れている取って置きの場所だという。
ちっちゃい時何歳から山登ってるの?物心付いた時にはもう何回も来てました。
週末とか夏休みとかよく来てそうですね遊んでましたね。
ガイドして歩くと島外から来たお客さんとかがすごく佐渡の自然で喜んでくれるんですよね。
それがやっぱりうれしくていい仕事だなと思ってやるようになりました。
今日はあの山の頂上まで…。
行くんですか?あの山は何ていうんですか?尻立山っていいます。
頂上まで30分の山道は季節によって違った表情を見せてくれる。
何かこの白い花がきれいね。
花咲いてるのね。
これはヤマホウコといいまして…。
ヤマホウコ。
ヨーロッパの方にエーデルワイスっていう花があると思うんですけど佐渡のエーデルワイスはこの花の事を言うそうです。
あっそうヤマホウコ。
きれいやね。
今ちょうど…。
今はいちょうど見頃ですね。
本州の方だと高山で咲くお花なんですけどここだとまだ1,000mもいかないぐらいの高さで咲くんですよね佐渡の場合は。
ヨーロッパアルプスの高山などに咲くエーデルワイスに例えられるヤマホウコ。
ここは標高900m。
けれども日本海から吹く強い風にされされ高山帯のようになるという。
これエゾリンドウっていう。
リンドウですね。
結構紫が濃く…。
かれんに咲く花々にベニシアさん感動。
このアザミは例えばガーデニングやるんだったらこれ一回切ってそれまた来年出てくる。
でも山の場合はもう全部ただそのまま自然に任してるのね。
そうですねはい。
それがすごい何かある意味でホントの庭ですけど。
そうですね。
山のりょう線に出ると海から吹く風が一段と強く感じられる。
風…フレッシュエアというか。
風は大体吹きますね。
風がおいしいっていう感じで。
動物来ないの?この辺。
動物は佐渡は大型の大きな動物がいなくてだから一番大きくてタヌキとかウサギとか怖くない。
ウサギ会いたい。
ウサギはなかなか会えないですね。
ああそう。
きれいきれい。
ねえ。
だいぶ紅葉が進んできましたね。
いつもこれタペストリーと思うのね日本の。
今年は例年よりもきれいかもしれませんね。
急に寒くなったからかもしれない。
そう言われてますね。
だってここもきれい。
山の紅葉は自然がつくり出す織物のよう。
季節の移ろいを感じながらのんびりと歩く。
イギリスまで見えないかな。
じゃあ山頂です。
うわ〜すごい。
そこの上までどうぞ。
へえ〜。
すごい。
へえ。
ああ…。
きれい。
あっ今日あそこ行ったんかなあ。
あそこ船が着く場所ですね。
僕の家もあそこに…。
あっあの辺にあるね。
でそこは新潟かな。
はいあっちが新潟で山形。
山形。
古絶海の孤島だった佐渡は流人の島でもあった。
歴史の中で罪人とされ海を渡ってくる人々を迎え入れ支えてきた。
すごいねみそ汁を山に登って飲むの初めて。
う〜んこれ多分最高のみそ汁。
この場所で飲んだらすごい感動よ。
この山も感動だけどみそ汁も感動。
う〜んおいしい。
何か山の上にいて何でも食べたらすごいおいしい。
そうですねはい。
高校卒業後6年間島を離れていた理一郎さん。
その時人を迎え入れる事で生まれた佐渡独特の伝統に気が付いたという。
うちの仕事にそんなに魅力を感じてなかったんですけどみそ造る仕事なんかもやっぱり日本の伝統的なお仕事なんでそのよさが向こうに行く事で分かったような気がします。
私はイギリスから出て結局日本に住んでしまったんだけどでもイギリスにあるものは忘れないよね。
そうですね戻ってきてから佐渡の伝統芸能能とかそういったものも価値のあるものなんだなっていうふうに思って見るようになりましたね。
暮らしの中で伝承してきているっていうのがホントに佐渡のいいところなんじゃないかなと思います。
来る者を拒まず受け入れてきた佐渡は暮らしの中に独自の文化を育んできた。
奈良時代以降島に来た僧侶や芸術家たちによって佐渡には多彩な文化が持ち込まれた。
能を大成させた世阿弥もその中の一人。
世阿弥の演目は今も島の人々に親しまれている。
畑仕事の時も口ずさむのは…。
(歌声)そして日が暮れると舞台に集まり日頃の成果を披露する。
ふだんは農業や役場で働く島の人たちが素朴な舞を演じる。
幼い頃から芸に触れ老若男女が演じる佐渡の能。
世代を超えて継承されている。
学校が終わったあと島の先輩たちから指導を受ける中学生たち。
(能の練習)思いがけないほど厳しい教え。
そこには長く伝わってほしいという思いが込められている。
その時にさあ体重が前へとね…。
かかとが上がらないように体重が残るように。
400年以上続く佐渡の能はこうして受け継がれてきた。
それは島の文化として知られるようになり暮らしの中で生き続けている。
島の一番南にある港宿根木。
江戸時代から南の玄関口として栄え船員や船大工が多く暮らした。
何かちょっと懐かしい感じ。
今も入り組んだ狭い路地が残りおよそ180人が静かに暮らしている。
ベニシアさんこの小さな集落に会いたい人がいる。
こんにちは。
ようこそいらっしゃいました。
渡辺さんですか?はい。
お待ちしてました。
ベニシアです。
初めまして。
何かこの辺でツバキ油作ってるって聞いたんですけどすごく私興味あるから今日来ました。
ベニシアさん自宅のヤブツバキで以前からツバキ油を作りたかったという。
ツバキ油を作ろうと思ったの…何で作りたかったっていう。
もうまず毎日いるとこのツバキの種の時期になるとたくさん道に落ちててここ全部こうヤブツバキず〜っと屋敷の所100年以上の木なんですけど種が落ちててこの種ツバキ…。
使わないと…。
それで父も病気があったので何か体にいいものってずっと心掛けてたので。
愛知県出身の渡辺さんが佐渡にやって来たのは今から36年前。
心臓病の父親を自然の中で療養させたいと家族で移住してきた。
当時薬ばかりのんでいた父に何か体によいものをと探していた。
島のツバキ油に血液をサラサラにする効果があると聞き油の搾り方を教わった。
かつてどの家庭でもツバキ油を使っていたという佐渡。
話を聞く中で島にあったツバキの文化を知ったという。
そうそう…これツバキ。
採っていいですか?いいですいいです。
最初これは赤い色になる?緑色のこういう葉っぱのような色の…それがこうだんだんこの季節になると赤くなってそしてちょっと開いて種がこぼれる。
でもこんなたくさん佐渡島にあるんだったらやっぱり使わなくちゃね。
80代のおばあさんが昔はねこの種を買ってくれる人が来てた。
でそれを売ってお金にしたり家では油を搾ってお食事に使ったりしてたって。
それを聞いて自分もちょっと復活したなっていう…。
それからこういろんな人に呼びかけて私だけじゃなくて佐渡の人がいろいろ呼びかけて下さって子どもたちとかみんなが手伝って油を搾って。
へえすごい事じゃない。
ヤブツバキの家族みたいなね。
そうですね。
厳しい冬を乗り越える佐渡のツバキは毛虫がつかず無農薬でも育つ。
そこから採れる良質な油はかつて佐渡の生活を支えていた。
そのよさを多くの人に知ってほしいと民宿を始めそこでツバキ油の料理を出す事にした。
佐渡で結婚し子どもを育てながら10年前に始めたツバキ油の製造。
こつこつ続けてきた活動は家族や島の人たちに受け入れられ少しずつ広がりを見せてきた。
種を持ってきたよ。
ありがとう。
こっち来てくれる?量るしね。
1kg500円で買い取っている種は1年に1tも集まるまでになった。
(渡辺)1,350円ね。
どうもありがとう。
また持ってきてね。
ありがとう。
ネットワークが広がってそれでホントに種が集まるようになりました。
みんな合わせるとお年寄りから子どもさんからそれこそ体のハンディキャップのある方から合わせると300人以上になってきました。
毎年この時期になるとお元気だなと思ってお顔を見るのが楽しみになりました。
集落の力で集まった種は丁寧に水洗いしてから娘の恵里紗さんに渡す。
母の思いを受け継いで手伝うようになった。
持っていける?
(恵里紗)うん。
じゃあねはいお願いします。
はい。
工場に運んだ種を傷や傷みがないか一つ一つ手作業で選別していく。
古くなった種を搾ると渋くなる。
地道な作業だが油の質を決める最も大切な工程。
種の圧搾は専用の小さな機械で行う。
およそ10kgの種から8。
一度に多くは搾り出せないが手間ひまかけて品質と純度を高める。
食用になるのはここから上澄みだけを取った部分。
臭みが無くサラッとした触感が味わえるツバキ油はどんな料理にもよく合う。
ツバキ油で食生活を改善した渡辺さんの父親は佐渡で33年間も生き続ける事ができた。
渡辺さんの感謝の思いが込められたツバキ油料理。
何かすごいごちそう。
旬の野菜や魚介を生かした佐渡ならではの料理を頂く。
これあの佐渡のお野菜とそれから今日はヒラメ。
さっきまでピチピチしてたヒラメを。
これお塩をちょっとす〜っとしてオイルたっぷりかけて。
へえ〜。
そしてこれ…。
スダチ?スダチの方ですね。
レモンでも大丈夫なんですけど。
うん。
どう…いけ…。
すごいおいしいこれ。
ああよかった。
でもこういう簡単な料理がうれしい。
素材がね分かるのがいいですよね食べてて。
地元の新鮮な食材。
ツバキ油がうまみを引き立ててくれる。
このオクラとかインゲンとかオイルをかけて…。
口の中のシャキシャキの野菜とこのちょっとオイリーなテイストが混ざったらすごくおいしいのね。
ツバキ油入ったら全部の味が…。
変わる。
何かおしゃれみたいな感じ…。
そうですね。
佐渡の名産スミイカとツルムラサキをツバキ油であえたもの。
口の中に甘い風味が広がる。
ツバキ油の…おいしいねホントに。
これ体にとってもいいと思う。
もうだって父がツバキオイルでお料理するようになって…。
長生きできた…。
うん長生きで…。
それはこのオイルの特にあれじゃないんですか。
そして余ると塗ったりして食べて塗って。
もう安心な種でそれをホントにその年のものを丁寧にきれいに洗って量はあんまり採れないかもしれないけどそれをこう次の世代次の世代と大事に受け継いでこう回っていけばいい。
そうね。
島の伝統を受け継ぎ新たなものを生み出す。
こうして文化がつながっていく。
そ〜らいく!
(太鼓)この日は年に一度の宿根木の祭り。
収穫の感謝と五穀豊穣を願って太鼓の音が巡る。
ふだんは静かな集落もこの日は大にぎわい。
渡辺さんも毎年この日を楽しみにしている。
みんなカッコイイじゃないですか。
はい!
(一同)そ〜らいく!
(太鼓)
(ホイッスル)すごい上手やん。
びっくりした。
これもうどのぐらい…ちっちゃい時からやってんの?1年生の時から。
1年生の時からすごい。
じゃあこの辺の人みんな小さい時からやってるの?僕たちもちっちゃい時からやってます。
どうもありがとう。
時を超えて世代を超えて受け継がれるものがある。
ああすいません。
頂きます。
はいどうぞ。
いい祭りになりました。
お天気よくてよかったです。
人と人が支え合う小さな集落の姿。
旅をすると大切な事が見えてくる。
風吹き渡る佐渡。
いつかまた来たい島。
2014/10/07(火) 12:25〜12:55
NHKEテレ1大阪
猫のしっぽ カエルの手「風わたる島〜新潟県 佐渡市〜」[字][再]
新潟県佐渡島を旅する。紅葉が始まった尻立山で風を感じながらトレッキングを楽しむ。島に自生するヤブツバキで油を作る渡辺さんを訪ねツバキ油を使った創作料理を味わう。
詳細情報
番組内容
潮風が心地よい新潟県佐渡島を旅する。古くから島でこうじをつくる店を訪ねると独特の郷土食があった。紅葉が始まった尻立山、本州では高山にしか咲かない花などをめでながらトレッキングを楽しむ。そして佐渡に自生するヤブツバキで油を作っている人がいると聞き、島の南にある町、宿根木に向かう。多くの人にツバキ油のすばらしさを知ってもらいたいと上質な油を作り続けている渡辺さん。そのツバキ油を使った創作料理を味わう。
出演者
【出演】ベニシア・スタンリー・スミス,【語り】山崎樹範
ジャンル :
ドキュメンタリー/教養 – カルチャー・伝統文化
情報/ワイドショー – 暮らし・住まい
趣味/教育 – 園芸・ペット・手芸
映像 : 1080i(1125i)、アスペクト比16:9 パンベクトルなし
音声 : 2/0モード(ステレオ)
サンプリングレート : 48kHz
OriginalNetworkID:32721(0x7FD1)
TransportStreamID:32721(0x7FD1)
ServiceID:2056(0x0808)
EventID:10621(0x297D)