東京・市谷本村町の防衛省で16日に開かれた日豪防衛相会談は、両国の安全保障の協力関係が「準同盟国」に深化しつつあることを強く印象付けた。日本とオーストラリアに、両国の同盟国である米国を加えると、太平洋を囲む安全保障のトライアングルを形成する。日米同盟と米豪同盟の2本の「線」を、日米豪の「面」に発展させることで、アジア太平洋地域の抑止力とする安倍晋三首相(60)の安全保障戦略が浮かび上がる。
■世界最高水準の潜水艦
「安全保障分野で同盟国の米国以外で豪州ほど緊密で高いレベルの協力をしている国はない。特別な戦略的パートナーシップを深化させたい」
江(え)渡(と)聡(あき)徳(のり)防衛相(59)が防衛省でこう歓待すると、ジョンストン豪州国防相(58)は「日豪は通商相手国としての友好を積み重ねてきたが、安全保障分野でも関係強化を期待している」と応じた。
この会談の1週間ほど前の8日、神戸市兵庫区の三菱重工神戸造船所で、「軍艦マーチ」が演奏される中、潜水艦の進水式が行われた。光を浴び黒々と光る潜水艦の艦名は「じんりゅう」(艦番号507、全長84メートル、幅9.1メートル、基準排水量2950トン)。最新鋭の「そうりゅう」型潜水艦の7番艦だ。
そうりゅう型潜水艦は、浮上して酸素を取り込まないでも動力を得る「AIP機関」を採用している世界最高水準の技術を結集した潜水艦だ。
豪州は2030年ごろにまでに潜水艦の更新を予定しており、その後継として、そうりゅう型潜水艦に早くから注目していた。日豪防衛相会談では、この技術協力に向けた検討を両国で進めることで一致した。海上自衛隊を中心にそうりゅう型潜水艦の技術提供には慎重論が強いが、安倍首相が技術提供に踏み切ったのは、豪州を「準同盟国」扱いしている証左だといえる。
防衛相会談では、日豪両国が米国から導入する最新鋭ステルス戦闘機F35Aライトニング2の機体整備でも連携を確認した。日本がアジア太平洋地域の整備拠点を国内に設置する方向で検討しているためだが、機体整備をきっかけに航空自衛隊と豪空軍のF35の相互運用性が高まれば、「空」の作戦領域でも抑止力を高めることが可能だ。会談では日米豪の共同訓練を拡大させる方針も一致した。