2011年9月に内閣総理大臣に就任した私は、復興庁、復興交付金、復興特区などを創設することにより、東日本大震災により被災した地域の復興を加速するため、翌10月に臨時国会を召集しました。この国会冒頭における私の所信表明演説に対し、自由民主党を代表して質疑に立ったのが小渕優子議員でした。
当時、「冷めたピザ」と言われた小渕恵三元首相と「ドジョウ」を自認する私が、よく似ていると多くのメディアが報じていました。父を敬愛する気丈なお嬢様にとっては、これらの報道が気に入らなかったらしく、
「比べるまでもないことです。野田総理と小渕総理は、 <中略> 似て非なるものどころか、天地ほどの差があるということをはっきり申し上げておきたいと思います。」と、けんもほろろに一刀両断されてしまいました。
いきなり出鼻をくじかれた私は、何とか気をとり直して、次のように答えました。
「小渕恵三先生と私が似ているような報道が当初ありましたけれども、私自身も恐縮至極でございました。ただ、天と地というほどの大きな差があるということ、ご指摘いただき痛み入りますが、私自身は、小渕先生が国会で初当選されたときに地元の皆さんと撮った写真がとても好きです。ある雑誌に出ていたんですが。そういう意味で、私なりにリスペクト(尊敬)の念と親近感を持っていることだけはお伝えさせていただきたいというふうに思います。」
中曽根康弘、福田赳夫という超大物政治家と同一選挙区であった小渕元首相は、ご自身を「ビルの谷間のラーメン屋」と称していました。そのような厳しい環境の中で、コツコツと地道に自らの後援会をつくってこられた元首相の政治姿勢に、私はどこか共感をおぼえていたのでした。
このたび小渕優子議員は、自らの後援会や資金管理団体等の不明朗かつ杜撰な会計処理が明らかになり、経済産業大臣を辞任しました。父親から政治資金を約1億2千万円も相続した時には、もはやラーメン屋は大きなビルのオーナーになっていました。だから、彼女自身が資金繰りで苦労したことも、その使途に関心をもったこともなかったのでしょう。会計処理も全て他人まかせだったのでしょう。その脇の甘さに関しては、父と娘の間に天地ほどの差があります。
猛省した上で、まだお若いのでしっかりと出直してほしいと思います。同業である我々も襟を正さなければなりません。私も落選し浪人をしていた頃、毎月1万円の個人献金をして下さる方が約50人いらっしゃいました。振込という安易なやり方ではなく、毎月各々のお宅や会社を訪問し、自らの活動報告を行い浄財を直接いただき、そして、自分の手でその場で領収書を書きました。その原点を忘れないようにしたいと思います。
松島法務大臣の辞任も当然です。法の番人が独自の勝手な法解釈を振りかざすようでは法治国家は成り立ちません。
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