ダーウィンが来た!「カニの大家族 葉っぱが我が家!」 2014.10.05

青い海に真っ白なビーチ。
ここは中米カリブ海の島国ジャマイカです。
今日の主人公はカニ…といっても海辺のカニじゃありません。
すんでいるのは海から遠く離れた森の中。
こちら…名前の由来はブロメリアという植物との切っても切れない深〜い関係。
カニの住みかは葉っぱのすき間の小さな水たまり。
ここでお母さんと赤ちゃんたちが一緒に暮らしています。
赤ちゃんは米粒の半分ほどしかない極小サイズ。
この小さな赤ちゃんたちのためお母さんはカニとは思えない驚きの子育てをします。
水たまりに入った落ち葉を運び出したり反対に何かの白い殻を運び入れたり。
実はこれ赤ちゃんが丈夫に育つために欠かせない…怪しい侵入者には得意の…体を張って我が子の安全を守ります。
奇想天外なカニの家族の物語です。

(テーマ音楽)葉っぱにすむ不思議なカニを探せ!私たちは4月ジャマイカの森を訪ねました。
海から10キロ以上離れた内陸部です。
ここはブロメリアガニ研究の第一人者ルドルフ・ディーゼル博士が長年にわたって調査をしてきた森。
森を見渡すとあちこちに変わった形の植物があることに気付きます。
地面の近くや木の上にある大きな葉っぱの固まり。
この森には4種類が生えています。
よく見ると…木の幹にはり付くように茎を伸ばしています。
ブロメリアにはこうしてほかの木や岩などにくっついて育つものが多いんです。
最大の特徴が中心部から四方八方に広がって生える細長い葉です。
実は果物のパイナップルもブロメリアの仲間。
畑ではこんなふうに生えています。
葉っぱの形がよく似ていますよね。
ブロメリアには森のいろんな生きものたちが集まってくるといいます。
早速近づいてきたのはハチドリ。
お目当ては花の蜜です。
これがブロメリアの花。
たくさんの小さな花が集まっています。
ハチドリは素早く飛び回りながらクチバシを花に差し込み蜜を吸い出すんです。
器用ですね〜!こちらも蜜が好物。
長い舌を持つシタバチです。
ブロメリアに来る昆虫を捕まえようと待ち伏せているのはトカゲ。
森の生きものたちの中でブロメリアとひときわ深く関わっているのが今回の主人公ブロメリアガニ。
一生のほとんどをブロメリアの中だけで過ごすといいます。
博士がのぞき込んでいるのは…。
葉っぱの付け根の部分。
葉と葉の間に水がたまっているのが分かりますか?ブロメリアは斜めに伸びた葉でここに雨水を集め自分の成長に使います。
1つの水たまりの水量はコップ1杯ほど。
博士が棒で水たまりの中を探ると…。
あっ!いました。
ブロメリアガニです。
一見ごく普通のカニですがある面白い特徴があります。
博士はブロメリアガニがカニとしてはとても変わった行動をする事を明らかにしました。
こちらのカニのハサミの辺り。
小さなものが動いていますよね。
カニの赤ちゃんです。
大きさわずか2ミリ。
でももうちゃんとカニの姿をしています。
普通カニの子どもは卵からかえるとすぐに親と離れ自分の力で生きていきます。
でもブロメリアガニはお母さんが3か月の間赤ちゃんの世話をするんです。
お母さんの体に赤ちゃんが上っています。
体に付いた藻などを食べさせていると考えられています。
今度は落ち葉を口に入れたお母さん。
自分で食べるのかと思ったら…。
口から取り出して足元に置いています。
落ち葉を小さくかみ砕き食べやすくして赤ちゃんに与えているようです。
お母さんこまやかですね!葉っぱのすき間で身を寄せ合って暮らすお母さんガニと赤ちゃんたち。
博士は更に驚きの事実を突き止めました。
お母さんと赤ちゃんの水たまりの隣に…あれ?ほかのカニがいます。
よく見るとこちらの水たまりにも。
成長した子どもたちです。
母親と同じブロメリアにすんでいるんです。
1株のブロメリアにいるカニを集めてみるとこんなにいっぱい!お母さんのほかに1歳の子が12匹そして2歳の子が1匹だけいます。
赤ちゃんから2歳の子どもまでブロメリアガニは数十匹の子どもが母親と暮らす大家族なんです。
ブロメリアには20個ほどの水たまりがありお母さんと赤ちゃん子どもたちはそれぞれ別の水たまりを使います。
まるでたくさんの部屋がある家みたい。
「ブロメリアハウス」とでも名付けましょうか。
こんなふうに親子が一緒に暮らすカニは世界中探してもブロメリアガニだけです。
こちらでは1歳の子どもが獲物の昆虫を捕まえました。
年上の子どもたちは自分で狩りをし食べ物をお母さんからもらうことはありません。
それでもお母さんと一緒にすんでいるのはここが安全だからです。
お母さんが赤ちゃんのいる水たまりから出てきました。
下の水たまりをのぞき込みいったん戻って今度は上の水たまりに向かいます。
侵入者がいないかチェックしているんです。
おや!大きなカタツムリ。
赤ちゃんの水たまりに入られたら潰されてしまうかもしれません。
「えい!あっちへ行きなさい!」。
今度は昆虫です。
背後から忍び寄るお母さん。
まずは軽く威嚇。
それでも立ち去らなければ強力なハサミで攻撃!暴れる相手をがっちりと押さえて…。
うわ〜!お母さんは子どもたち全員の安全を守るブロメリアハウスの番人でもあるんです。
いや〜お母さんガニすごいですなぁ。
でしょ?ヒゲじい。
でもちょっと待った。
そもそもカニって海や川にすむ生きものじゃないんですか?ブロメリアガニはなんでこんなヘンテコな場所に暮らしてるの?確かにほとんどのカニは海や川の中もしくはその近くにすんでいます。
卵からかえったばかりの子どもは水の中でしか生きられないためこんなふうに赤ちゃんを放つ時は必ず水が必要になるからです。
へえ〜そうなんですか。
でもブロメリアガニがすむ森は海から遠く離れている上に川もありません。
え!川がないの?そうなんです。
ジャマイカは海の底が盛り上がって出来た島で陸地の多くがサンゴなどから出来た石灰岩で覆われています。
石灰岩は水を通しやすく降った雨がすぐ地下に染み込んでしまうため川が出来ないんですよ。
なるほど。
一方ブロメリアの水たまりは1年を通じて水がかれることがまずありません。
海や川の代わりになる安定した水場なんです。
ブロメリアガニの祖先はこの水たまりに目を付け遠い昔にすみついたと考えられているんです。
でも安定しているっていってもたかだかコップ1杯の水でしょ?こんな所にわざわざすまなくてもいいんじゃないですか?それが意外と住み心地がいいようなんですよ。
ブロメリアには多くの昆虫たちが水を飲むなどの目的でやって来ます。
でも葉っぱが傾いているので足を滑らせちゃうものもいるんです。
ふ〜ん…あ落っこちちゃった!これがカニの獲物になります。
ブロメリアが水を集めるための仕組みがカニにとっては食べ物も集めてくれるというわけなんです。
ほうこれなら楽ちんですな。
ブロメリアハウス「たしカニ」いいかも。
多少狭くてもジャマイカだけに「じゃまあいいか」なんてね。
第2章では家族の大黒柱お母さんがますます大活躍。
落ち葉を運び出したり何かの殻を持ち込んだり。
そこには驚くべき作戦が隠されていました。
レゲエ音楽など独自の文化を持つジャマイカ。
実は自然もとってもユニークなんですよ。
ジャマイカにはこの島だけでしか見られない「固有種」が数多くいます。
こちらはその名もジャマイカインコ。
今から1,000万年以上前海底が盛り上がって出来たジャマイカ。
以来ほかの陸地と一度もつながったことがないため生きものたちが独自の進化を遂げました。
陸地を覆っている石灰岩も特徴ある自然を作り出しています。
これは石灰岩が雨水で削られて出来た洞窟。
ジャマイカにはこうした洞窟が1,000か所以上もあります。
石灰岩のおかげで大繁栄している動物がカタツムリ。
石灰岩には殻を作るのに欠かせないカルシウムが豊富に含まれているからです。
ジャマイカには秋田県ほどの面積におよそ560種類ものカタツムリがすんでいます。
まさに「カタツムリ天国」!実はこのカタツムリとブロメリアガニの間には意外なつながりがあるんですよ。
この後詳しくお伝えします!5月。
森は本格的な雨季に入りました。
植物のブロメリアにとってもそこで暮らすカニの家族にとっても恵みの季節です。
こちらのブロメリアの水たまりの中。
お母さんの足元にご注目。
黒くて小さな粒のようなものが動いていますよね。
これは生まれて間もないカニの赤ちゃん。
「幼生」と呼ばれます。
まだ甲羅が薄く形もカニらしくないですよね。
あれ?お母さんが見回りに出て行ってしまいますよ。
残された赤ちゃんたち大丈夫なんでしょうか。
ヤゴがやって来ました。
イトトンボの幼虫。
肉食のどう猛なハンターです。
カニの赤ちゃんに近づきます。
あっ捕まった!まだ甲羅の薄い赤ちゃん。
抵抗するすべはなくあっという間に食べられてしまいました。
カニの命を守るために欠かせないのが甲羅。
その成長を促すためお母さんガニはあらゆる手を打つといいます。
ある日子育て中の水たまりに…木の葉がひらり。
お母さん何だか木の葉が邪魔なようです。
水たまりの外へ出そうとしているみたい。
ありゃ足が滑る。
よいしょよいしょ…こりゃ結構大変です。
4分かかって…ふぅ。
こちらのお母さんも一生懸命です。
まるで落ち葉の重量挙げ。
両手いや両ハサミでお見事持ち上げたか…いやでも足場が決まらない。
あ〜重い!駄目だ!それでも諦めません。
実はお母さんのこの頑張りよう単に落ち葉が邪魔だからというわけではありません。
え?「水が酸性にならないようにする」…どういう意味?まず落ち葉で埋まった水たまりの酸性の度合いを測ってみます。
値が7より小さいと酸性ですが…。
およそ4.4。
かなり強い酸性です。
実はこれでは甲羅の成長が妨げられてしまうんです。
カニの幼生は脱皮を何度も繰り返し厚い甲羅を持つカニらしい姿になっていきます。
しかし水たまりに入った落ち葉が微生物によって分解されると酸性の物質が水に溶け出します。
こうした酸性の水の中では幼生はうまく脱皮ができないんです。
試しに先ほどの水たまりの落ち葉を全て取り除いてみます。
雨が多い季節です。
ブロメリアの水たまりには大量の雨水が流れ込みます。
雨の後もう一度測ってみると数値は4.4から5.5に上昇。
落ち葉のない水たまりに雨水が加わることで酸性が弱まったんです。
そうです。
お母さんは一生懸命落ち葉を取り除くことで水が強い酸性になることを抑え赤ちゃんの甲羅の成長を促していたんです。
こちらのお母さんは拾ってきたカタツムリの殻を子育て中の水たまりに運び込んでいます。
これ甲羅の材料を与えているんです。
ジャマイカの森は560種類ものカタツムリがいる「カタツムリ天国」でしたよね。
殻もそこらじゅうに落ちています。
殻を水に入れるとカルシウムが溶け出します。
これが赤ちゃんの体に取り込まれ丈夫な甲羅を作るんです。
お母さんが頑張ったかいあって幼生たちは無事カニの姿へと変身を遂げました。
あれ?でもお母さんはまだ殻を運び込んでいますよ。
赤ちゃんはカニの姿になってからも脱皮を繰り返して成長します。
どんどん大きくなっていく我が子のためにお母さんはカルシウムを補給し続けるんです。
そんなある日のことヤスデがやって来ました。
水たまりの水を飲みに来たようです。
お母さんが見逃すはずはありません。
ガッチリつかまえると…赤ちゃんが寄ってきました。
お母さんが獲物を短く切り足元に置きます。
そう赤ちゃんが食べやすいようにしているんです。
ヤスデにはカルシウムがたっぷり。
赤ちゃんの甲羅の成長にはもってこいのごちそうです。
お母さんが子育てを始めてから6週間。
赤ちゃんのハサミの先にお母さんと同じ赤い色が現れてきました。
水たまりにまたイトトンボのヤゴがやって来ました。
赤ちゃんが狙われています。
あっ!捕まっちゃいました。
でも抵抗していますよ。
見事振り切りました。
この赤ちゃんもかみつかれますがすぐに振り切ります。
カルシウムをたっぷりとって体が丈夫になったんでしょう。
ちょっとかみつかれたぐらいで食べられることはなくなったんです。
ブロメリアの水たまりで1か月以上も子どもの世話を続けてきたお母さんの苦労が報われました。
めでたしめでたし。
甲羅が丈夫になりたくましくなった赤ちゃん。
少しずつ水たまりから出るようになります。
この赤ちゃん葉っぱを乗り越えて隣の水たまりにお出かけです。
赤ちゃんは少しずつ親から離れ生まれて3か月もすると別の部屋で暮らすようになるんです。
このころブロメリアハウスの年上の子ガニたちにも変化が表れます。
こちら…同じブロメリアの中親とは別の部屋で暮らしてきましたが…出てきました。
甲羅の幅は1センチ。
大人の半分ほどに成長し生まれて初めて今まで育ってきたブロメリアを離れます。
自分があるじとなる新しいブロメリアを探すんです。
初めての1人旅。
鳥などの天敵に見つかったら最後。
とにかく先を急ぎます。
あっ見つけました。
木の上に立派なブロメリア。
新しい住まいとしてこの上ない物件のはずです。
ところがここには…小さな赤ちゃんを子育て中のお母さんがいました。
知らずに入っていくとハサミをガッチリつかまれ容赦なく攻撃されます。
水たまりに引きずり込まれ大ピンチ!命からがら逃げ出しました。
この森で立派なブロメリアはほとんどほかの家族が入居中です。
独り立ちした子ガニが新しい住まいを探す時ほかのカニに攻撃され命を落とすことも多いんです。
お母さんに守られた安全な家で育つ子どもたち。
独り立ちと同時に大きな試練に直面します。
ちょっと待った!えっここで来ましたか?もちろんです。
お母さんがあんなに大事に育ててきたのに子どもたちが独り立ちしたとたん死んじゃうなんてあんまりですよ。
そうですよね。
でもチャンスは少ないんですが子どもが新天地を見つける事もあるんです。
大きなブロメリアはほとんどが入居中ですから狙い目は新しく種から芽生えた小さな株です。
特にオスは子育てをしないので水たまりが小さくても大丈夫なんです。
そりゃ一安心だ。
更にブロメリアガニの家族には子孫を残すとっておきの秘策があるんですよ。
とっておきの秘策?はい。
家族に1匹だけ2歳の子どもがいたのを覚えていますか?あ〜そういえばいましたな。
実はこの2歳のカニはお母さんの「跡継ぎ」の娘なんです。
えっカニに跡継ぎなんているの?はい。
一番大きな娘だけは最後まで親元に残るんです。
お母さんが死んだ後家のあるじとなり繁殖の時だけやって来るオスとの間に子どもを作ります。
この繰り返しでブロメリアハウスを代々受け継いでいくんですよ。
へえそりゃびっくりですな。
あでももしこのブロメリアが枯れちゃったらどうするの?はい。
実はそこに更に驚きの仕組みがあります。
確かにブロメリアは4〜5年に一度花を咲かせると枯れてしまうんですが枯れる前に必ずすぐ隣に茎を伸ばして新しい株を作るんです。
つまりカニはブロメリアの性質を巧みに利用することでマイホームを将来にわたって確実に引き継いでいく事ができるんです。
いやはや感服いたしましたぞ!カニの家族とブロメリアはまさに一心同体。
その深〜い結び付きはるカニ想像を超えておりました。
ブロメリアと共に暮らす不思議なカニブロメリアガニ。
小さな水たまりでほかのどのカニとも違う独自の生き方を編み出しました。
そしてお母さんは驚くほどこまやかに子どもたちを育て上げていました。
小さなカニの大家族。
これからもジャマイカの森でひっそりとでも確実に命をつないでいくことでしょう。
(秀吉)茶々よくやった…。
(茶々)おのこでございます。
2014/10/05(日) 19:30〜20:00
NHK総合1・神戸
ダーウィンが来た!「カニの大家族 葉っぱが我が家!」[字]

中米ジャマイカの森に、数十匹の大家族で暮らす珍しいカニがいる。ブロメリアガニだ。母親は米粒の半分ほどしかない子ガニたちのため大奮闘。カニ大家族の仰天生活に密着!

詳細情報
番組内容
中米ジャマイカの森に、数十匹の子どもたちと大家族を作って暮らす珍しいカニがいる。ブロメリアガニだ。ブロメリアという植物の、葉と葉のすき間にあるコップ1杯ほどの水たまりがマイホーム。お母さんは米粒の半分ほどしかない子ガニたちのため、きめ細かな子育てをする。強力なハサミで危険な侵入者を撃退したり、子どもが丈夫に育つよう、水たまりの「水質管理」をしたり。カニとは思えない奇想天外な生活に密着!歌:平原綾香
出演者
【語り】近田雄一,龍田直樹,豊嶋真千子

ジャンル :
ドキュメンタリー/教養 – 自然・動物・環境
趣味/教育 – 旅・釣り・アウトドア

映像 : 1080i(1125i)、アスペクト比16:9 パンベクトルなし
音声 : 2/0モード(ステレオ)
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