正社員かなわぬ元派遣社員は10月28日 18時37分
派遣で働く人の中には、正社員になりたくてもかなわず、派遣の仕事を転々としている人もいます。
九州地方に住む50代の女性は大学を卒業後、都内の外資系企業に正社員として採用されましたが、事業所の閉鎖に伴い、失業したことをきっかけに派遣で働くようになりました。
女性は、正社員になることを目指して貿易事務の仕事で実務経験を重ねながら英語を身につけ、為替についても学びましたが、就職の面接では派遣社員であることを理由に評価してもらえなかったといいます。
女性は「正社員の採用面接を受けても派遣でそこまでやれるわけないと言われた。正社員だったときより実力はあるのになかなか社会は認めてくれない」と話します。
女性は正社員になれないまま、20年余り派遣社員として働き続けました。
派遣された会社は10社以上に上り、女性の元には契約更新のたびに送られてきた書類が今も束になって残っています。
女性はその後、東京での生活を諦めて、ふるさとの九州で非正規労働者として働いています。
女性は派遣での仕事について「契約が切れると思うと就職活動の準備をする余裕もない。普通の人が派遣になったらそこから出るのは難しい。改正案は派遣労働者のスキルアップをうたっているが、企業がきちんと評価して正社員に採用するかは疑問に感じる」と話していました。
労働者派遣法 規制緩和の歴史
労働者派遣法は、昭和60年に制定され、時代と共に規制が緩和されてきました。
当初は、通訳や秘書など専門的な13の業務に限定して認められた派遣労働は、企業のニーズに合わせて平成8年にはアナウンサーや広告デザインなども加えられ、今の26の業務に拡大します。
さらに、その3年後の平成11年には派遣期間の制限を設けたうえで26の業務以外にも派遣労働が認められました。
このときは労働者への影響が大きいとして製造業への派遣は認められませんでしたが、平成15年には製造業でも解禁され、派遣は急速に拡大します。
企業にとっては必要な期間だけ働き手を確保できるメリットもあり、ピークの平成20年には派遣労働者の数が200万人余りに達しました。
しかし、この年の秋以降、リーマンショックによる景気の悪化で、派遣労働者の雇い止め、いわゆる「派遣切り」が相次ぎます。
年末には仕事や住まいを失った労働者が東京・日比谷公園の「年越し派遣村」にあふれるなど社会問題となりました。
その後、派遣労働者の数は減少に転じ去年6月の時点でおよそ127万人となっています。