イッピン「シンプルで精巧な仕掛け〜栃木 鹿沼の木工〜」 2014.10.05

遺族を慰めてくれるのです。
一見シンプルな木製のバスツール。
この湯おけ。
実は画期的なイッピンなんです。
通常おけは「タガ」で固定されていますがこのイッピンは1本の木をくりぬいたかのよう。
木目の美しさが際立ちます。
東京・銀座で話題のセレクトショップ。
産地の特徴を生かした雑貨や食料を全国から集めて販売しています。
中でも人気なのがこの湯おけ。
シンプルで洗練された形。
実は高度な職人技が隠されています。
職人さんの新しいアイデアですとかそういうものが多く生まれている産地でもあります。
その産地とは歴史ある「木工の街」栃木県鹿沼市。
今鹿沼では職人技を駆使した精巧なものから遊び心あふれるアイテムまでさまざまな製品が生まれているんです。
栃木県鹿沼市。
およそ300の木材関連業者が集まる日本屈指の「木工の街」です。
訪ねたのは中山エミリさん。
鹿沼市っていう所が木工製品ですごく有名な所だという事を全く知らなかったのでどんな物に出会えるのかすごく楽しみです。
こちらがあの湯おけを手がけるメーカーです。
昭和20年の創業。
おけだけでなくまな板などのキッチン用品や家具など2000種類に及ぶ木工製品を作っています。
(星野)どうぞ。
わ!すごいいっぱい!なんかすごいいい香りしますね。
この会社の3代目…一生ものの…。
おけっていってもいろんな種類があるんですね。
そうですね。
一般には…。
こういうのはよく見たことある。
おけのパーツを固定する「タガ」。
緩めるとバラけてしまいます。
強度を保つためなくてはならないものです。
星野さんは「今までにないおけを作りたい」と2年かけて開発しました。
しかしタガが無くても大丈夫なのでしょうか?タガが外れちゃった感じですか?外れたんではなくて実はここに埋まっているんですよ。
この真ん中の所そうなんですね。
上下の方に埋まっていて…。
なんとおけの中に「タガ」が!幅10ミリのタガをおけの上と下に埋め込んでいたのです。
さてここに隠された職人技とは?おけに使うのは地元の日光杉。
間伐材を利用しています。
こちら職人歴35年の田嶋久夫さん。
この工場には30人の職人がいますがおけ作りを任されているのは田嶋さんただ一人です。
おけは20枚のパーツを組み合わせて作ります。
実はここにちょっとした工夫が下に向かって狭まっています。
そのため完成すると僅かに傾斜が。
「持ちやすさ」を考慮した形です。
20枚のパーツを接着し針金できつく固定。
1週間乾かします。
さあここからが田嶋さんの腕の見せどころ。
これを削って完全な円にしていきます。
外側と内側をそれぞれ削り厚さ11ミリに整えるのです。
厚みが均一に仕上がらないと「タガ」を埋め込んだ時材が割れてしまうのだといいます。
外側を削るのはベルト状のヤスリ。
軽く当て削りながら曲線を作っていきます。
力加減を間違えるとあっという間に削りすぎてしまうことに…。
こうして一つ一つ丁寧に角を取り全体を滑らかな円に仕上げます。
更に難しいのは内側の削り。
使うのはロール状のヤスリです。
おけには傾斜があるのでヤスリに対して僅かに傾けて削らなければなりません。
こんな感じです。
はい。
きゃ〜ツルッツル!気持ちいいですね。
削り終えた田嶋さんのおけ。
どこを計っても厚さはおよそ11ミリ。
誤差は僅か0.05ミリ以下という精度でした。
お見事!職人歴5年。
これまで机などの家具を作ってきた大野淳平さんに同じ作業に挑戦してもらいます。
大野さんは田嶋さんの弟子としてここ数か月おけ作りの修業をしています。
さて結果は…?厚さがバラバラでかなり誤差があります。
田嶋さんのおけと比べると薄すぎる所や厚い所などムラがありきれいな円になっていません。
やっぱり…そうですよね。
もうちょっともうちょっとみたいな…。
内側を削る作業を比べてみると田嶋さんはおけを正面に抱えるように両手を添えて削っています。
削り具合を手に伝わる振動で感じとり均等な厚さに仕上げていたのです。
当てた時にその力の加減で削り方も量が違いますのでそれを注意してやってます。
全神経を集中し微妙な振動を感じとる作業です。
そしていよいよタガを埋め込みます。
厚さはたった2ミリ。
タガをはめる細い溝を掘っていくのですが…。
抵抗が多いんですよ。
材は全て堅さや木目の向きが違います。
ここに正確な曲線を掘るのは至難の技。
そこで田嶋さんはおけを固定する「当て木」を作り2ミリ幅で掘れるドリルを特注しました。
厚みの部分の所にタガを埋めるための溝を掘っていくという…。
すっごい細い今度は!2ミリです。
2ミリ?ドリルを当て作業開始…。
少しでも溝がズレたら全ては台なし。
おけを少しずつ回しながら掘っていきます。
早すぎるとドリルが安定せず遅いと摩擦で木が焦げてしまいます。
見事寸分たがわず一周しました。
タガがぴったりとはまりました。
最後に底をつけて完成です。
すごい緊張感というかこんなに繊細なことの繰り返しでやっと出来るんだなぁってことにびっくりしました。
こういうのが好きなので楽しいです。
いろいろ挑戦しながら出来ていく商品が…。
最初からうまくいくというわけではなく?ないです。
私も人間ですから。
フフフフフ…。
超絶技巧が生んだおけ。
シンプルだからこそごまかしの利かない精巧な技が隠されたイッピンです。
鹿沼は日光杉や日光檜など良質な木材が豊富に手に入る土地。
木工の歴史は江戸時代のはじめに遡ります。
日光東照宮の造営に携わった職人たちがほど近い鹿沼に移り住んだのが始まりといわれています。
毎年盛大に開かれる秋祭り。
主役は絢爛豪華な彫刻屋台です。
東照宮を彷彿とさせる華やかな装飾。
こうした技術が鹿沼の木工の礎となりました。
おじゃましま〜す。
次に訪ねたのは鹿沼の木工技術を生かした雑貨を扱う店。
細い木で組まれた枠組みが斬新な壁掛け時計。
星のような形が特徴的な照明。
そして一番人気がこちらの箱です。
ティッシュケースなんですね。
そうなんです。
ティッシュケースで…。
いろんな柄といいますかデザインもたくさんあるんですね。
はい。
どうしたらこんなに細かくなるんでしょうね。
これらの商品は伝統的な「組子」を応用して作られています。
「組子」とは障子や欄間などの建具に施される飾り。
釘を使わず細い木を組み上げて作っています。
基本となるのはひし形。
ここに細かい模様を組み込んでいます。
このティッシュケースは組子のひし形を現代風にアレンジしたもの。
デザインしたのは…国内外で幅広く活躍しています。
インテリアデザイン全てを再構築といいますか組子を使った柄ですとか技術で再構成したいなと思ってます。
お部屋全体が新しい和風というか…。
組子のティッシュケース。
ここにも高度な技が隠されているんです。
ティッシュケースなど新しい製品の制作を行っているのが…35年にわたって組子を手がけてきました。
このティッシュケースには「美しく見せる」ための凝った仕掛けが。
どの面も全てのひし形がきれいに収まっています。
更にひし形の角がぴったりとそろい均整のとれた配列が美しさを際立たせているのです。
この仕掛けをひもとく為にパーツ作りを見ていきましょう。
横だけ片面使うんですけど。
はい。
細くカットした材を組むため溝を入れていきます。
この時溝に僅かな角度を付けるのがポイント。
溝の角度でひし形が微妙に変わります。
材を組み上げ…。
それぞれの面が完成!一見同じひし形に見えますが…。
2つを合わせてみると…。
形が違うことが分かります。
実は溝の角度が面に合わせてあらかじめ計算されていたのです。
(森)縦と横の寸法に合わせてそれに計算して手で引いて組んでいくんですけども結構大変な作業。
数学ですねこれ。
数学というか…?そうですね。
森さんのノートを見せてもらうと溝の間隔や角度など細かな計算がびっしり!完成したひし形。
僅かな違いが全体で完璧な調和を作り出します。
溝の角度を比較すると…。
およそ5度。
緻密な計算あってこそです。
私も何十年もやってますけどまだまだ…。
もうずっと勉強をしながらやっていくような感じでまだやった事ないデザインもありますしもっと奥が深いと思います。
まさにふだん使いの芸術品。
奥深い組子の技。
独自の表現を探求する職人がいると聞き訪ねました。
よろしくお願いします。
職人歴50年の…すっごい細かく…何て言うんでしょうもう理数系な感じですよね!そうですね。
ハハハ…。
吉原さんが自分でデザインし組み上げた衝立。
孔雀の模様です。
大胆な曲線を取り入れた優美な姿。
組子には基本となる模様が200種類以上伝わっています。
それらを組み合わせることで複雑な図柄を作っていくことができるのです。
昔は鹿沼にこういう伝統をやっている職人は何千人っていたんですが今は本当に数が少なくなってる。
うちの場合はせがれらが3人が後を継いでやってるんですが。
今は一緒にこちらでやってらっしゃるんですね。
吉原さんの3人の息子も組子職人。
次男の直幸さんが作っているのは地元に伝わる「麻の葉」という模様。
正三角形の中に2つのパーツを組み合わせています。
パーツ作りは全て手作業。
(直幸)これの中心に切れ目を作って紙一枚ぐらい残すんですね。
全部切れてるわけではないんですね。
切れてないんです。
0.1ミリだけを残して切れ込みを入れた状態。
これを折り曲げ同じ角度に切ったパーツをはめ込みます。
ぴったりですね。
(直幸)糊ついてなくてもこれの状態で外れないです。
へぇ〜。
一つ一つ奥が深いっていうか。
はい…。
楽しみもあるけど苦しみもある。
苦しみがあってそれが完成した時の達成感はありますね。
家族で伝統を継承し技を磨く吉原さん。
これからも独創的なデザインを生み出していきます。
今年4月鹿沼の木工工場にユニークなショールームがオープンしました。
家族連れが集まりなんだか楽しそうですが。
建具を中心に発展してきた鹿沼の木工業。
近年は大きく需要が減っています。
そこで木の魅力をアピールするため遊び心あふれる物づくりに取り組むプロジェクトが立ち上がりました。
参加するのは木工関連の6社。
そして生活雑貨で有名なデザイナーもボランティアで加わっています。
今回のテーマは木のぬくもりが感じられる「キッチン用品」。
毎日使っていくための楽しさとかそういうことがないといけないと思っていて。
デザイナーが提案したのはスタイリッシュな調味料入れ。
組子をモチーフにした六角形のシンプルなデザインです。
試作品を作るのは…木材加工メーカーの社長で経験豊かな職人でもあります。
発泡スチロールで作った模型をもとに意見が飛び交います。
蓋がどこに差さってもピチッと入んなきゃいけないって事とあとは…。
おじゃまいたします。
今回中山さんがオブザーバーとして参加することに。
今日メンバーに男性しかいないもんですから女性の視線で見ていただけると非常にありがたいんですけれども。
底っていうのはぴったりこういう感じなんですよね?ぴったりです。
はい。
中はラウンドじゃないですね今ね?こういう所に一味とか詰まったら嫌だろうなぁと思って。
(一同)あぁ。
なるほど。
底のコーナーを曲線にすれば調味料が挟まりにくくなるのではというのが中山さんの提案。
底がアールは確かにね!
(一同)女性目線じゃないとね…。
そのとおりだ!女性しか出てこないよね。
取れないよね。
取れない取れない隅があるから。
ムクを削りだすのはありえます?これは厳しい?これは厳しい!底がアールにならないですか?今頭の中で組み立てているんですけど。
クルクルクルクルってなってるんですか?全部丸か…。
さて実現できるんでしょうか?会議から3日後。
田代さんが試作品作りに取りかかっていました。
底を丸くできそうですか?こういうさまざまなものを作らせていただいてます。
こういった技術が底の部分をアールにすることに使えるのではというところで今回このような試作品を作ってみました。
窓枠や引き戸の部材を加工する機械を使い曲線を実現。
しかしまだ不完全だといいます。
調味料を保存するには密閉性が足りないのです。
(職人)ここはいくらかなだらかにしてもらわないと駄目ですねあんまり急だと…。
熟練の職人たちも知恵を出し合い試行錯誤が続きます。
何とかしてやっぱり形にしたいですし…来年の商品化を目指し更に改良を加えていきます。
精巧なデザインを可能にする鹿沼の高い木工技術。
職人たちの挑戦が心弾む新しい木工製品を生み続けています。
2014/10/05(日) 04:30〜05:00
NHK総合1・神戸
イッピン「シンプルで精巧な仕掛け〜栃木 鹿沼の木工〜」[字]

今回は栃木県鹿沼市の木製品。オシャレな湯おけ、細い木を組み上げて作り上げたティッシュケースなど、魅力的な製品が続々誕生。中山エミリが超絶の職人技を徹底リサーチ!

詳細情報
番組内容
今回は栃木県鹿沼市の木製品。シンプルでオシャレな湯おけや、細い木を組み上げて繊細な模様を作る「組子」を応用した照明、ティッシュケースなど、魅力的な製品が続々と生み出されている。それを可能とするのが、木を精巧かつち密に加工する超絶の職人ワザ…。中山エミリが、どんなデザインでも「カタチ」にしてしまう職人の究極の技を探る。さらに新たな製品開発の現場にも参入。果たしてそこからどんな新商品が生まれるのか?
出演者
【リポーター】中山エミリ,【語り】平野義和

ジャンル :
ドキュメンタリー/教養 – カルチャー・伝統文化

映像 : 1080i(1125i)、アスペクト比16:9 パンベクトルなし
音声 : 2/0モード(ステレオ)
サンプリングレート : 48kHz

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