クロスロード <山口源兵衛> 2014.10.04

ここにある一本の渋い地味と言ったほうがいいように思える帯。
ところが角度を変えてみるとエメラルドグリーンに輝く。
戦国時代武将に好まれたという孔雀。
その羽根を数え切れないくらい同じ向きに揃えて編み込んだ斬新な意匠。
そんな帯をつくったのがこの男。
京都でおよそ280年続く帯匠の十代目当主として帯を世に送り出す。
独特の存在感でスポーツカーの広告に登場したかと思えば現代最高の職人たちを束ね素材にも技にも一切の妥協を許さず究極の美を形にする。
その帯はもはや芸術品の域と言ってもいい。
京都洛中。
祇園祭に黒主山の飾られる室町通り沿いにその店はありました。
京都には祭りの日大店が人を招き接待を行う風習があります。
源兵衛さんも店に受け継がれる屏風を飾りました。
結構これ江戸の初期の人で1匹ずつタカ見ていただいたらホントにものすごい筆ですので。
源兵衛という名は帯問屋の十代目として襲名したもの。
おはようございます。
明治の名工の手による町屋づくり。
ここは源兵衛さんが生まれ育った家でもあります。
メーカーとして帯をつくり全国の有名呉服店に卸している誉田屋源兵衛。
年に三度行われる展示会ではこの美しい屋敷内の座敷や蔵を改装したギャラリーのようなスペースに商品が並べられます。
主要な商品のコンセプトを決め出来上がり売れるまでを厳しくチェックしているのが源兵衛さん。
ファッション業界でいえば…。
源兵衛さんのもとに職人たちが集まりました。
京都の帯づくりは分業が基本。
源兵衛さんはいつも各分野の一流と見込んだ5〜6名の職人たちとのみ徹底的に話し合いながら仕事を進めます。
彼らはいわば源兵衛さんのドリームチーム。
また難題や。
これを帯でどう表現するかや。
あらゆるものから着想を得る源兵衛さんの帯づくり。
今回のイメージの元は…。
その美しさに帯で挑みます。
早速1人の職人さんがデザイン画を描き始めました。
源兵衛さんはひたすら自分の頭にある帯のイメージを言葉を尽くして伝えていきます。
金糸でやるか。
金閣寺よりかはまだ純度の高い…。
ずっと上ですさかい。
金閣寺より。
群青やラピスラズリや。
使いたいと考える素材も超一級品ばかり。
ドリームチームの面々も次第に出来上がる帯について源兵衛さんと同じイメージを共有していきます。
過去にあったもんはいらんやん。
周りの黒の縁のところをホントに荒いものでやりたい。
細かいところは細かい。
僕は偉そうなこと言えないけど…。
源兵衛さんが発想し職人技の極みが注がれる。
誉田屋源兵衛の帯は新品の骨董とも呼ばれます。
これは決して後戻りはせず前へ前へと飛ぶ習性から武士が勝虫と呼び愛でたトンボの帯。
地は柿渋染め。
そこに羽は螺鈿胴体にはオパールが編み込まれ輝くトンボが今まさに網を食いちぎっています。
網の部分には本物の絹網を織り込みました。
この菊の透明感と無重力感を表そうと10年間試行錯誤を繰り返しました。
そして完成したのがこの帯。
菊が浮かび上がってくるかのよう。
こうした妥協なき美意識の結晶をひと目見ようと海外の有名ブランドのクリエーターたちも足を運んでいるそうです。
帯だけではありません。
戦国の末から江戸初期の世を奇抜な身なりで闊歩していたアウトローたちかぶきものの精神を表したのがこちら。
東京コレクションで大反響を呼んだ男の着物。
これを源兵衛さんとコラボしプロデュースしたのは人気セレクトショップユナイテッドアローズ。
アーティストの石井竜也さんはそんな源兵衛さんのモノづくりに魅せられ楽曲を作りました。
しかし老舗誉田屋源兵衛の歴史の中でモノづくりに手を出したのは実は源兵衛さんがはじめてだといいます。
きっかけは1枚の布でした。
幼い頃は小児結核で入院するなど病弱でしたが中学生の頃からは活発すぎるほどに成長。
家業に興味を持つこともなく遊び暮らす生活にも飽きた頃帯屋でも継ごうかなとつぶやいたところ母親に激怒されました。
母の言葉の意味を考える日々。
そんなとき出会ったのが1枚の布でした。
布が非常に貴重だった時代縫い直し染め直し補修し布の命が尽きるまで使い続けられた襤褸。
その魅力に圧倒された源兵衛さんは本腰を入れ店を継ぐとともに自らもモノをつくる悪戦苦闘の道に踏み込むことを決めました。
これが自分のおそらく…。
になるやろなぁと自分の先生やと。
時間ができると日本中を訪れているという源兵衛さん。
愛車はスポーツカーひと筋。
この日向かったのは日本有数の織物のコレクターのお宅。
かつては日本の各地で特色あふれる織物がつくられていました。
これはどこです産地は?九州です。
帯づくりを始めようと思ったそのときから源兵衛さんはこうして全国のコレクターや職人を訪ね布の魅力を再発見することを続けています。
これはええわ…これはいい。
おもしろいな。
考えるより感じることを大事に生きる。
そのために源兵衛さん着物を脱いだらすごいんです。
やってきたのはトレーニングジム。
筋トレしかもかなりハード。
たしかお年は65歳でしたよね?いささか過剰なほどの肉体づくり。
でも源兵衛さんにとってそれは感覚を研ぎ澄ませて臨む帯づくりにつながるものなのだといいます。
更には同じ理由で奄美大島を訪れてはハブ捕りまで。
いやぁ男っすね。
危険が人を育てる。
源兵衛さんがそう強く信じるようになったのはあるきっかけからでした。
自分の給料ももらえない状況で帯をつくっては売り借金を返し続けること10年。
電話の主は小さい頃からかわいがってくれた叔父で生活雑貨ブランド…。
けれどその言葉は…。
なんていうかね…。
源兵衛さんは改めて帯や着物の歴史を学び始めました。
そして戦国武将にとって破れた扇はそんな状況でも戦い続けるネバーギブアップの精神を。
前進するだけのトンボは不退転の決意を象徴するものであったことを知ります。
今日の命も知らず今を生きるしかなかった時代。
身につける衣の文様には切実な意味が込められていました。
源兵衛さんはそんな精神や魂を受け継ぐモノづくりを目指し始めたのです。
だから結局治世ってたいして深みのある…。
極限まで睨んだみたいな文化って生まれてないね。
7月初旬。
源兵衛さんがイメージした帯に取り組む職人たちのドリームチームは着々と仕事を進めていました。
あの100年前の宝飾品がどう帯に表現されるのでしょうか?帯全体のイメージを表す紋図とよばれるデザイン画ができあがっていました。
方眼紙に描かれすでにこのとおりに織っていけば成立する形になっています。
しかし…。
それから何度かデザイン画が修正されひと月後…。
織れた?はい。
目指しとよばれる織り見本。
デザイン画をもとに実際に織って細部を確認するためのもの。
それでもよう織れたねこの…。
この細かいところとこの粗いところが。
粗いでしょ?ここ細かいでしょ?これはありえないんです。
同じ織物でしょ?せやけど悪いけどな。
悪いけどもっと…。
これとこれの差をもっとつけんと…。
そんで金の色はこれはまあ見本やろうけど。
この黒光りはええよね。
嬉しいな。
赤でひいてもう一つ上に黒ひいてます。
何十年かしたらあの赤が出てきて漆の間から出てきて例えば高台寺の蒔絵とかああいうレベルの…。
外側革やね。
革です。
革に黒漆をひいてあります。
紙にひく漆と革にひく漆はもう全然違う表現になる。
実際にどんな素材でどう織るのかを吟味するのは織頭の田村さんの仕事。
工房で織り器と向き合う田村さん。
この帯づくりはかつてないほどの細やかな作業だといいます。
新しい目指しが織りあがりました。
素材に更に吟味が加えられ完成に近づいてきていることがわかります。
やっぱりここがバーンと浮き上がってこなあかんね。
それでもですか?うん。
もっとバーンと浮き上がらな。
職人が織った帯を持ってきました。
それをひと目見るなり何も語ることなく飾り始めた源兵衛さん。
職人たちは固唾を呑んで見守るばかり。
これまでとは様子がまったく違います。
できました。
源兵衛さんのイメージした帯がついに完成しました。
源兵衛さんの美意識とそれに応えた現代最高の職人技。
織物でありながらそこには宝飾品の持つあやしいまでの輝きとパワーがみごとに宿っています。
次から次にまた挑戦するんやから…。
そこになぜか源兵衛さんの姿が。
だんじりの熱気に血が湧きいてもたってもいられず祭りに入りたいと執拗に交渉。
地元の人が受け入れてくれたんだそうです。
口添えをしてくれたのはこの方。
参加を許されてから9年。
今年も4日間走り続けた源兵衛さん。
あなたの男っぷりを応援します。
好きやからね。
京都の人がきしわだ祭りどっぷりはまって祭りしてる自体すごいなと思うし。
2014/10/04(土) 22:30〜23:00
テレビ大阪1
クロスロード <山口源兵衛>[字]

京都でおよそ280年続く帯問屋・誉田屋源兵衛の十代目当主、山口源兵衛が登場。現代最高の職人たちを束ね、究極の美を形にする山口のクロスロードに迫る。

詳細情報
出演者
【ナビゲーター】
原田泰造
番組内容
元文年間創業の京都でおよそ280年続く帯問屋の十代目当主・山口源兵衛。独特の存在感で、スポーツカーの広告に登場したかと思えば、素材にも技にも一切の妥協を許さず、現代最高の職人たちを束ね、究極の美を形にする。誉田屋源兵衛の帯は、もはや芸術品の域。海外の有名ブランドにも大きな影響を与えているという。山口源兵衛は、どんな道を歩み、どこへ向かおうとしているのか。そのクロスロードに迫る。
番組概要
様々な分野で活躍する、毎回一人(一組)の“挑戦し続ける人”を紹介。彼らが新たなる挑戦に取り組む今の姿を追う。挑戦のきっかけになったもの、大切な人との出会い、成功、挫折、それを乗り越える発想のヒントは何からつかんだのか?そして、彼らのゴールとは?新たにどこへ向かおうとしているのか…。そんなクロスロード(人生の重大な岐路)に着目し、チャレンジし続ける人を応援する“応援ドキュメンタリー”。
ホームページ

http://www.tv-tokyo.co.jp/official/crossroad/

ジャンル :
ドキュメンタリー/教養 – その他
ドキュメンタリー/教養 – カルチャー・伝統文化

映像 : 1080i(1125i)、アスペクト比16:9 パンベクトルなし
音声 : 2/0モード(ステレオ)
サンプリングレート : 48kHz

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