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暗がりの中でうごめく奇妙な生き物。
あるケムシの集団です。
地中に潜ったケムシの大群がやがてサナギとなりガとなって飛び立ちます。
猛烈な勢いで増殖中の森の侵略者です。
ヨーロッパに生息するマツノギョウレツケムシは何千年もかけて南から北へと生息域を広げてきました。
春ケムシの大群が出発します。
二度と元の巣に戻る事はありません。
ケムシが巣を作るのは松の木です。
松の葉を食い荒らし一帯の森を丸裸にします。
マツノギョウレツケムシは今ヨーロッパの森をすさまじい勢いで食べつくしています。
特にフランス南西部の地方はケムシによる被害が深刻です。
立ち枯れたような木ばかりの森。
山火事の跡ではありません。
ケムシの大群が葉を食べつくしてしまったのです。
マツノギョウレツケムシはこの１００年間で生息域を大きく広げました。
森林の被害は深刻さを増す一方です。
フランスでは被害を食い止めるためにケムシの生態調査に乗り出しました。
スペイン南部の森はマツノギョウレツケムシの繁殖が始まった場所の一つです。
氷河期が終わる頃ここは比較的温暖な土地でした。
マツノギョウレツケムシがどうやって氷河期を生き延びたのか真相はまだよく分かっていません。
ヨーロッパの生物の大半は温暖な南の地域に逃れて氷河期を乗り切りました。
しかしケムシの場合脊椎動物などと違って解明の手がかりとなる化石が残っていません。
そこで遺伝子を分析して探ろうとしています。
およそ２万年前マツノギョウレツケムシは比較的温暖なヨーロッパの４つの地域に生息していました。
その後次第に北上しヨーロッパ各地に生息域を広げました。
地中海側の温暖な気候はケムシには好都合でした。
幼虫は生まれた瞬間から葉を食べ始めます。
１００〜１５０匹ほどの集団で食べ物にありつくために本能的に行列を作ります。
研究者たちの長年の疑問はこの小さな昆虫がどうやって標高の高い山々を越え生息域を北へ拡大したのかという事でした。
シエラネバダ山脈は標高が２，０００ｍ以上もあります。
マツノギョウレツケムシがこの山を越えるのは不可能だと思われていました。
今いる場所で標高１，０００ｍくらいです。
生えている植物の種類が変わってきたでしょう？松の木が見られるのは標高何ｍまでですか？大体２，２００ｍぐらいまで確認されています。
標高によって松の種類は異なり低い場所に多いのはアレッポマツという種類です。
この辺りに生えているのはカイガンマツ。
更に標高が高くなると別の種類に変わります。
マツノギョウレツケムシは松の木のある場所を移動します。
最も好むのはクロマツですがなければ他の松を食料にします。
見事なかぎ爪は分厚くて硬い葉も薄くて柔らかい葉もあらゆるタイプの松の葉をつかむ事ができます。
食べる松の種類を変える事でケムシの大群は標高２，０００ｍ以上のシエラネバダ山脈を越えました。
マツノギョウレツケムシにとって山はある意味理想的な環境でした。
気候の変動に合わせて標高の異なる場所に移動する事ができるからです。
シエラネバダ山脈の山頂付近は夏でも涼しく冬には厳しい寒さと悪天候に見舞われます。
マツノギョウレツケムシはここで３か月にわたる冬を越す事のできる数少ない昆虫の一つです。
冬になるとマツノギョウレツケムシは体から出した糸で巣を作ります。
ボールのような巣が寒さを防ぎ山の悪天候から守ってくれるのです。
ほらここに巣がある。
マツノギョウレツケムシを確認できるこの辺りで最も高い場所です。
ここまで及んだのは最近？ええ数年前には見かけなかったので間違いなく最近です。
幼虫が成長するにつれ巣は分厚く大きくなっていきます。
ケムシは動きながら糸を出していきます。
冬の間もケムシは動き回り３か月たつ頃には巣はかなりの大きさになります。
巣の内側にはケムシを包み込むクッションのような分厚い層があります。
一方外側の層はベールのように巣全体を覆います。
こうした巣のおかげでケムシは冬の間寒さや外敵から身を守る事ができるのです。
巣は太陽の光を浴び赤外線を吸収します。
生物学者のジェローム・ルースレは熱探知カメラを利用して巣が冬の寒さをどのくらい防げるかを調べています。
この巣は日光をふんだんに浴びられるよう南の方角を向いています。
熱探知カメラで見ると巣の中は私の体温とほぼ同じくらいです。
今気温は１２度なので巣の中は外気よりかなり暖かい事が分かります。
ケムシはこの巣のおかげで氷点下１６度の寒さにも耐える事ができます。
でも気温が低すぎると巣の外には出られません。
寒波が続くと葉を食べられず死んでしまいます。
イベリア半島の北部にはピレネー山脈がそびえています。
標高は最も高い所でおよそ３，４００ｍです。
マツノギョウレツケムシはピレネー山脈を避けて比較的暖かい海沿いをう回し更に北上する事に成功しました。
ピレネー山脈の北はフランス。
そこにはヨーロッパ最大の松の木の人工林があります。
まさに食べ放題のレストラン。
また簡単に進める幹線道路のようなものでした。
マツノギョウレツケムシはフランス南西部で大繁殖しました。
そして猛烈な勢いでヨーロッパの北の方へと広がり始めました。
これを見るとマツノギョウレツケムシの食欲のすさまじさが分かるでしょう。
ふ化したばかりの幼虫は比較的古い葉を好みますが少し成長すると松ヤニを多く含む若い葉を食べ始めます。
そうやって全ての葉を食べつくし木を丸裸にしてしまうのです。
この辺りは見渡す限り食べつくされています。
フランスで最も被害が深刻な地域かもしれません。
マツノギョウレツケムシは日が落ちてから巣を出ます。
夜は鳥などの捕食者に襲われる可能性が低くなります。
目はほとんど見えません。
左右に４つずつ小さな単眼がありますが明るさを感じとるだけで物を見る事はできません。
一方嗅覚は非常に優れています。
食べごろの葉の匂いを嗅ぎ分けまっしぐらに進みます。
多くの動物が冬の間は絶食しますがこのケムシは決して食べる事をやめません。
一本の松の木に４つか５つの巣があれば木はひと月あまりでほぼ丸裸になってしまいます。
マツノギョウレツケムシはフランス南西部の森林地帯に最適なすみかを見つけました。
長い間続いた大移動はここで終わるかに見えました。
しかしケムシの大群は再び北へ向かい始めました。
被害拡大を食い止めるために科学者たちは調査を続けています。
この辺りは１年前までマツノギョウレツケムシがいませんでしたが最近になって少しずつ巣を見かけるようになりました。
今のところここがケムシによる被害の最前線という訳です。
私たちは毎年最前線にあたる巣の位置をＧＰＳによって測定しています。
それと同時に付近のまだ巣がない地域を調べマツノギョウレツケムシの生息域を明らかにしています。
最前線は年々北上しているようです。
あれじゃないか？そうらしいな。
確認しよう。
ああこの木だ。
小さな巣ができてる。
たしかに。
まずは１つか。
よし位置を記録しよう。
この近くにまだあるかもしれない。
周りの木を探してみよう。
収集したデータを基にマツノギョウレツケムシの巣の分布図が作成されました。
確認された巣の地点を地図上に入力し分布図にしました。
ケムシは巣が見つかった場所の周辺数ｋｍにいると仮定しています。
その他のデータと併せるとマツノギョウレツケムシがどこまで北上しているかが分かります。
最前線はフランス北西部からスイスまで一本の線でつながっているようです。
マツノギョウレツケムシは予想以上の速さで広がっている事が確認されました。
科学者たちはケムシが成虫になるまでの全ての段階を調査しています。
ケムシは地中に潜ってサナギとなり数週間後地上に出てきます。
これがマツノギョウレツケムシの成虫マツノギョウレツケムシガです。
成虫は１日しか生きられません。
この１日で交尾をし子孫を残します。
成虫は繁殖のために新たな地へと飛んでいきます。
科学者たちは繁殖行動によって生息域がどの程度広がるかを調査しています。
山の中でガがどこまで飛ぶのかを追跡して調べる事は不可能です。
代わりに研究室でガの飛行能力を測定し行動範囲を予測する事にしました。
これは私たちが開発したガの飛行距離を測るための装置です。
グルグルと回転するシンプルな装置にガを取り付けます。
回転数を計りそれを飛行距離に換算します。
実験の結果メスはオスよりも先に飛べなくなる事が分かりました。
お腹にある卵の重みで飛行能力が低下するからです。
オスの体は流線型で胸部の筋肉が長距離飛行を可能にしています。
オスとメスの数はほぼバランスがとれています。
しかし行動する時間はやや異なります。
オスは交尾の相手を探すためにメスよりも早く行動を開始します。
オスはメスを探して辺りを飛び回ります。
オスには一晩のうちに１０〜１４ｋｍ飛び続ける能力があります。
その結果異なる集団のメスと交配しより強い遺伝子を残す事ができます。
オスが最初で最後の夜間飛行に出発します。
少し遅れてメスも行動を開始します。
メスは生殖の準備を整えフェロモンを周囲に放ちます。
飛行中のオスは触角でメスのフェロモンをキャッチします。
運よくメスと出会う事のできたオスは残ったエネルギーを全て使って交尾をします。
およそ１時間後オスは次の世代へと命をつなぎ息絶えます。
メスにはまだ大仕事が残っています。
産卵に適した松の葉を選び２００個を超える卵を産みつけお腹の鱗粉で念入りに覆います。
そして数時間後メスも息絶えます。
卵は捕食者に見つかりにくい松の芽に似た形をしています。
メスがどこに卵を産むかによって次の世代の生息場所が決まります。
メスが飛べる距離はせいぜい１．５ｋｍですからひと世代ごとに北上できる距離もその程度という事になります。
更に卵がふ化した場所の気候が幼虫の生死を左右します。
毎年の気温やガの飛行能力松の分布などのデータを総合的に分析しマツノギョウレツケムシの拡大を予測する研究が始まっています。
マツノギョウレツケムシの生息範囲の拡大に２つの要因が影響しています。
１つは地球温暖化でフランスでは１９９０年代から冬の最低気温が上昇しています。
冬を生き延びやすくなり温暖な地域が増えた事で生息範囲が広がっています。
２つ目の要因は植林された松の木の分布です。
これはフランス全土の森を記した地図ですが例えばボースという地域には森がありません。
そうした地域にはマツノギョウレツケムシが進出できないと考えるのが普通です。
ところがこの地域の高速道路の脇に何ｋｍにもわたって松が植えられています。
ケムシは松の並木をつたってまるで道路を進むように移動を続けているのです。
マツノギョウレツケムシの増殖。
その要因として挙げられるのは植林による松の増加と温室効果ガスによる地球温暖化です。
マツノギョウレツケムシは今では私たち人間のすぐそばにいます。
ふだんは目立たない場所に潜み密かに移動に備えています。
春ケムシの大群はサナギになる場所を求めて移動を開始します。
体から出す細い糸が行列の道しるべになります。
頭とお尻をつけて一列になって前進します。
後ろのケムシは前のケムシのお腹の毛に触れています。
一度移動を始めたら目的地に着くまでは止まりません。
必ずメスが列の先頭を進みます。
移動は何日も続く事があります。
最も危険なのは開けた場所に出たときです。
ケムシは危険を察知すると体から毒を含んだ毛を放出します。
目に見えないほど小さな毛が周辺に広がります。
マツノギョウレツケムシの毛は人間にとっても有害です。
ものものしい格好で作業をしているのでよく驚かれます。
都会で暮らす人には木にできた白い巣や足元をはうケムシにどれだけの危険が潜んでいるかなど思いもよらないのでしょう。
ケムシを扱う研究者はこのような防護服が欠かせません。
ケムシの毛には毒があり強いアレルギー反応を引き起こす危険性があるからです。
最悪の場合命に関わる事もあります。
ケムシは危険を察知すると体を丸め背中の袋を開けます。
そして毒のある棘だらけの毛を大量に噴射します。
空中に放出された毛は何かにぶつかると壊れて中から毒が出てきます。
長さはおよそ０．２ｍｍ。
電子顕微鏡でしか確認できない小さなものですがばらまかれたあと５０年も毒性を保つ事が分かっています。
毒のある毛はケムシがいなくなった後の巣にも大量に残されています。
ケムシが巣立ったあとの巣も触るのは非常に危険です。
冬の間幼虫が巣の中で脱皮を繰り返しその抜け殻に何百万もの有毒な毛が残されているからです。
人への被害を防ぐためフランス国立農学研究所ではマツノギョウレツケムシを効果的に駆除する方法を研究しています。
注目しているのはケムシが出すフェロモンです。
ケムシは行動する際に道しるべとなるフェロモンを出します。
巣から外に出て松の葉を食べ再び巣に戻って来られるのは仲間が残したフェロモンのおかげです。
細長く切った紙にケムシの出すフェロモンを付着させました。
それでは紙の上にケムシを乗せましょう。
見て下さい。
匂いをたどって進んでいきます。
時々頭を振って匂いの痕跡を探しています。
ケムシは仲間が残したフェロモンの跡をたどります。
この習性を利用すればケムシを誘導し駆除する事ができるかもしれません。
今はフェロモンを構成している物質が何なのかを突き止めようとしています。
それが分かれば人工的にフェロモンを作りだす事ができるでしょう。
その物質を松の木に振りかけておけば葉を食べに出てきたケムシが混乱し巣に戻れなくなるかもしれません。
そうなれば大成功です。
ケムシは集団でしか生きられず巣を離れて１匹になると冬を越す事ができないからです。
今のところ人工フェロモンの合成は成功していません。
実現にはあと数年かかると見られています。
他にもケムシの本能を利用した駆除の方法があります。
松の幹にプラスチック製の受け皿を巻きつけておきます。
ケムシは本能的に地中へ潜ろうとするため土の入った袋を下げておけば行列ごと袋の中に入ります。
あとは袋を処分するだけ。
しかし全ての松の木にこのわなを仕掛けるのは不可能です。
サナギになるのに適した場所を見つけるとマツノギョウレツケムシは潜り始めます。
糸で体を覆い繭を作ります。
驚くべき変態の始まりです。
ケムシからサナギになるのです。
サナギは数週間後ガに変わります。
気候条件によってはそのまましばらく休眠状態になる事もあります。
休眠しているサナギは完全に発育がストップします。
土の中で全く動きません。
休眠から覚める日が来るかどうかは分かりません。
自然界にはこのサナギを好む捕食者がいるからです。
ここは渡り鳥のヤツガシラがいかにも好みそうな場所です。
松の木が多いから辺りの地面には冬を越したマツノギョウレツケムシのサナギが大量にいるはずです。
子育て中のヤツガシラにとって格好の餌場です。
フランスではヤツガシラは希少動物として保護されています。
冬の間はアフリカへ渡り暖かくなるとヨーロッパに戻って子育てをします。
何か掘り出してる。
あれはマツノギョウレツケムシのサナギです。
繭をはぎとっている。
ヤツガシラはサナギを取ってはヒナに与えます。
ここにはいくらでもいますからね。
ええ。
ヤツガシラは土の中の獲物をくちばしで掘り出すのがとてもうまいんです。
ヤツガシラのおかげでサナギを７割程度減らす事ができた例もあるそうです。
休眠から覚めたサナギは再び発育を始めます。
マツノギョウレツケムシの最後の変態です。
ガへと変身するのです。
交尾を終えたメスは卵を産みつける場所を探します。
場所によって子孫を残せるかどうかが決まります。
産卵に適しているのは太陽の光をたっぷり浴びる松の木です。
最も理想的なのは森の端にある松の高い枝です。
木が密集していないため遠くからでも判別できます。
このメスの習性に注目してケムシから森を守る試みが始まっています。
卵を産み付けられないように松の木を隠すのです。
葉の多い木で松を隠すようにすると産卵が減る事が分かりました。
メスは恐らく木の輪郭を頼りに松の木を識別しているのでしょう。
更に落葉樹が放つ匂いの研究も進めています。
マツノギョウレツケムシガはその匂いを嫌うので落葉樹を周りに植えてガを松の木から遠ざけるのが狙いです。
この森では実験的に松の木とさまざまな落葉樹を３１通りの組み合わせで植えています。
ケムシの被害を最小限に抑えながら松の木がうまく育つ配分を探っています。
更に落葉樹にはマツノギョウレツケムシの天敵が住んでいます。
例えばこの…マツノギョウレツケムシの卵が大好物で見つけると一つ残らずたいらげてしまいます。
食料の乏しい冬には多くの鳥が巣の中にいるケムシを狙います。
シジュウカラは巣に巧みに穴を開け有毒な毛を避けて慎重に頭をついばみます。
今後ケムシの増殖を食い止める事はできるのでしょうか。
データによればマツノギョウレツケムシの生息域は今後も拡大し続ける事が予想されます。
増殖を阻む有効な手立ては見つかっていません。
ポルトガルリスボン北部の森では近年マツノギョウレツケムシにまつわる奇妙な現象が起きています。
この地方では１９９７年の夏に突如マツノギョウレツケムシが大量発生しました。
通常ケムシは冬の間に成長します。
夏の大発生は昆虫学者たちの注目を集めました。
夏に大発生したマツノギョウレツケムシは突然変異によって新たな種に変化したものではないかと言われています。
１９９７年の夏の大発生はすごかったと聞いています。
あなたは実際に森で観察されたそうですね。
ええ。
最初に異変が発見されたのはこの場所のすぐ近くです。
地元の新聞がマツノギョウレツケムシが大発生しているというニュースを伝えました。
通常このケムシが目立って活動するのは冬ですから何か異常な事が起きているのではないかと思いすぐに現地に駆けつけました。
私が調査したのは９月２日でした。
森に入るなり奇妙な光景が広がっている事に気づきました。
成長したケムシが松の林を覆いつくすようにビッシリと張り付いていたんです。
長年このケムシを研究してきましたが夏にあのような光景を見たのは初めてでした。
その後森では夏の間もマツノギョウレツケムシが大発生するようになりました。
夏のケムシは寒さと闘う必要がなく薄い膜のような巣を作ります。
これらはどちらもマツノギョウレツケムシですが違いは歴然です。
大きく育っている方は最近現れた夏に成長するものでサナギになる手前まで育っています。
対する小さい方はふ化したばかりです。
こちらが従来どおりのものです。
興味深いのはこれらが同じ一つの松の木にすんでいるという点です。
同じ昆虫が同じ生息場所で異なる時期に育つ事は自然界ではめったに見られません。
少なくとも確認された例はほとんどありません。
夏の間この地域は気温が４０度を超える日もあります。
マツノギョウレツケムシは本来暑さには弱く従来の研究では気温が３２度を超える場所では生息しないと言われてきました。
…という事はこの森にいるのはこれまでとは異なるタイプのものです。
突然変異によって生まれたのだと思います。
森で捕獲したケムシを研究室へ持ち帰り従来のものと比較しました。
どれほどの暑さに耐えられるか夏の気温を再現して限界を調べます。
その結果明らかに従来のタイプと異なる特徴が確認されました。
夏に成長するものと冬に成長するものを比較した結果温度に対する限界がかなり異なる事が分かりました。
夏型のものは冬型のものに比べより高い気温のもとで生きる事ができます。
その差は６度もありました。
つまり突然変異によってそれまでより気温が６度高い環境に適応し夏の暑さのもとでも生息するようになったのです。
将来的には突然変異によって更に新しいタイプが現れる可能性もあります。
毎年２種類のマツノギョウレツケムシに襲われるためリスボン北部の松の森では立ち枯れとなる木々が増えています。
突然変異のケムシが今後生息域を広げるのか研究者たちは注目しています。
今はまだ限られた地域にいるだけですが今後どうなるかが気になります。
突然変異を引き起こした要因は何なのか他の地域でも起こり得るのか多くの疑問が残されたままです。
マツノギョウレツケムシの生息域が拡大する過程にもまだ謎があります。
かなり離れた場所にいきなりマツノギョウレツケムシが現れる事があります。
地図上にはポツンと孤立した生息域があります。
マツノギョウレツケムシには新たな土地に進出するための秘策があります。
それは長期間にわたる休眠です。
通常サナギは数週間でガになりますが環境によっては数年間休眠します。
マツノギョウレツケムシが一度は姿を消した地域に突然現れるのはこの驚くべき休眠のメカニズムによります。
休眠中のサナギは長旅にも耐える事ができます。
さまざまな要因で遠くへ運ばれ新天地で活動を再開する可能性があります。
マツノギョウレツケムシはヨーロッパの広い地域で繁殖していますが生息に適した地域はヨーロッパだけではありません。
偶然運ばれた先で増殖し始める事も十分考えられます。
並外れた適応力があるマツノギョウレツケムシ。
温暖化とグローバル化が進む今その歩みはとどまる事を知りません。
いつか地球全体を覆いつくす日が来るかもしれません。

（掛け声）ん？つな引き？2014/10/04(土) 19:00〜19:45
ＮＨＫＥテレ１大阪
地球ドラマチック「増殖中！ケムシ　森を食べつくす！驚異の生態」[二][字]

毒のある長さ０．２ミリの毛をまき散らし、行列を作って移動する…。毛虫がヨーロッパで大繁殖し、森を食い尽くされる被害が続出している。毛虫の知られざる世界に迫る。

詳細情報
番組内容
問題となっているのはマツノギョウレツケムシ。名前の通り、松の葉を食べ、行列を作って移動する。近年、フランスでは松林が食べつくされる被害が広がっている。冬の間、松の枝にある巣で成長して春に行列を作って木を降り、土の中でさなぎになる。氷点下の寒さに耐えられる巣作りや仲間を誘導するフェロモン、身を守るために放つ毛の毒性は５０年続くという驚きの生態に、迫力の映像やＣＧで迫る。（２０１３年フランス）
出演者
【語り】渡辺徹

ジャンル :
ドキュメンタリー／教養 – 自然・動物・環境
ドキュメンタリー／教養 – 宇宙・科学・医学
ドキュメンタリー／教養 – カルチャー・伝統文化

映像 : 1080i(1125i)、アスペクト比16:9 パンベクトルなし
音声 : 2/0モード（ステレオ）
日本語
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2/0モード（ステレオ）
英語
サンプリングレート : 48kHz

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