劉備:孔明先生!曹操くんに30万円お金貸したのに返ってこなくて泣きそうなんだけど・・・
孔明:何で30万円も貸したんだ!
劉備:だって曹操くん、「お母さんが病気」だって・・・でも僕見ちゃったんだ、曹操くんがそう言ってた直後にiPad Air買ってニヤニヤしてたのを・・・
孔明:それはもしかしたら騙されちゃったんじゃないか(笑)
劉備:えーん!!
孔明:とりあえずお金は取り戻さないとね。
劉備:そうなんだけどさ、どうしたらいいの?何度言っても返してくれないんだよ。内容証明郵便ってやつを送ったらいいのかな?
孔明:そうだね。ただ、内容証明郵便は受け取り側に心理的なプレッシャーを与えることができるができるが法的には普通の郵便と同じだからね。正直効果は高くないよ。
劉備:じゃあどうしたらいいの?僕はお金取り戻せないのかな・・・
孔明:そんな場合のために「少額訴訟」という制度があるんだ。
劉備:少額訴訟って何?
孔明:後で詳しく話すけど、簡単に裁判をしてお金を回収できる制度だよ。
劉備:え!そんな制度があるの?教えて!
孔明:では、今回は少額訴訟について書いていくよ。
目次
0、少額訴訟とは?債権回収の流れは?
1、少額訴訟をするために必要な書類を揃える
2、管轄裁判所へ必要書類を提出。提出先の裁判所は?
3、裁判所からの期日の連絡
4、事前聴取
5、法廷で審理
6、判決
7、もし支払ってくれなければ強制執行!
8、重要!少額訴訟のリスク!
0、少額訴訟とは?債権回収の流れは?
(1)少額訴訟とは?
劉備:今さらなんだけどさ、「少額訴訟」って何?
孔明:文字通り、60万円以下の少額のお金の回収を目的とする裁判だよ。通常の裁判は手続きがやや複雑。だから弁護士に依頼しなければならないことも少なくないんだよ。そのため、時間だけじゃなくても費用もかかることからどうしても利用しづらかったんだ。そうすると少額のお金を回収を諦めて泣き寝入りしてしまう人が多数出てきてしまう。
そこで簡単な手続きで時間もかけずにお金を回収することを可能にする趣旨でできたのが少額訴訟制度だ。
(2)少額訴訟は費用があまりかからない!
劉備:でも安いと言ってもさ、10万円くらいかかっちゃうんじゃないの?
孔明:費用については後で詳しく話をするが、基本的には1万円前後で申立てすることができる。
劉備:え!結構安いんだね!
(3)少額訴訟は時間もかからない!
劉備:費用はあまりかからなくても時間がかかるんじゃないの?
孔明:そんなことないよ!普通の裁判だと2~3年かかってしまうけど、少額訴訟は1回の審理(裁判所での主張のやり取り)の後ですぐに判決が出されるからあまり時間がかからないんだ。
劉備:時間がかからないのもいいね!
(4)少額訴訟で債権回収するまでの7つのステップ
孔明:実際に少額訴訟で債権回収するステップをみていこう。以下の通りだ。
- 少額訴訟をするために必要な書類を揃える
- 管轄裁判所へ必要書類を提出
- 裁判所からの期日の連絡
- 事前聴取
- 法廷で審理
- 判決
- もし支払ってくれなければ強制執行!
(5)少額訴訟でお金を回収するための手続きのチェックリストダウンロード
孔明:きちんとお金を回収するためにはもれなくスムーズに手続きを進めることが重要になるよ。だからチェックリストをダウンロードできるようにしたからダウンロードして活用してみて。
ではいよいよ、具体的な手続きをみていこう。
1、少額訴訟をするために必要な書類を揃える
(1)必要書類は?
孔明:まずは裁判所に提出する必要書類だ。具体的には以下の通り。
- ①訴状
- ②訴状副本
- ③(相手が法人の場合)登記事項証明書
- ④証拠
それぞれ具体的に説明していくよ。
①訴状
孔明:少額訴訟を含めて裁判は訴状を提出することでスタートする。訴状は裁判をするために不可欠の書類だ。具体的な作成方法については後で詳しく説明する(「1ー(2)訴状の書き方参照)。
②訴状副本
孔明:「副本」とはコピーのことだ。訴状の内容は裁判所だけでなく訴えられる被告も確認する必要がある。被告にも送るために副本が必要となる。
③(相手が法人の場合)登記事項証明書
孔明:相手が法人の場合には登記事項証明書が必要だ。登記事項証明書は全国の法務局で取得することができる。必要な金額は印紙代600円だ。
④証拠書類
孔明:以上に加えて裁判で勝つには証拠が必要となる。具体的には訴えをした原告の「お金を請求する権利」を証明するものだよ。
具体的には以下のようなものが証拠となるんだ。
- 契約書
- 請求書
- 見積書
- お金を支払う権利がある旨について書かれたメール文のコピー
- お金を支払う権利がある旨について言及された電話の録音
もしこれらの証拠がなければ請求が難しくなってしまう可能性があるよ。
(2)訴状の書き方
孔明:次は少額訴訟の訴状の書き方だ。流れとしては、
1、①訴状をダウンロード
2、②記載例を参考に書いてみる
だね。
①訴状をダウンロード
孔明:まずは訴状のダウンロードだ。以下の文字をクリックすると少額訴訟の雛形をダウンロードできる。
②記載例を参考に書いてみる
孔明:次の「(3)訴状の記載例」を参考に実際に書いてみよう。
(3)訴状の記載例
孔明:次に記載例を参考に書いてみよう。支払ってもらうお金の種類によって内容が異なる。それぞれの記載例は以下の通りだよ。
①貸したお金を返してもらいたい場合の記載例
②販売した商品の代金を支払ってもらいたい場合の記載例
③未払いの給料を支払ってもらいたい場合の記載例
④敷金を返してもらいたい場合の記載例
⑤その他、一般的にお金を支払ってもらいたい場合の記載例
2、管轄裁判所へ必要書類を提出。提出先の裁判所は?
孔明:次はいよいよ訴状を含めた必要書類を簡易裁判所に提出しよう。提出先となる裁判所は相手の住所地を管轄する簡易裁判所だ。
劉備:カンカツって何?
孔明:管轄とは、どの事件をどの裁判所が担当するかという振り分けのことをいう。少額訴訟の場合にはお金を支払わせたい相手の住所地の裁判を引き受ける簡易裁判所だ。下記裁判所のページより相手の住所地を管轄する簡易裁判所を探すことができる。
全国の裁判所の管轄区域はこちら
http://www.courts.go.jp/
3、裁判所からの期日の連絡
孔明:訴状を提出すると裁判所から期日の連絡がある。
劉備:期日って?
孔明:裁判官の前で原告と被告がそれぞれの主張をぶつけ合う日時のことだ。
劉備:よくテレビで見る裁判のシーンと同じようなことをやるの?
孔明:テレビでやっているのは刑事事件が多いが、おおよそあのようなイメージだ。
4、事前聴取
孔明:次に行われるのが事前聴取だ。期日の前に行われる。
劉備:事前聴取って?
孔明:裁判所が事前に当事者双方の話を聞くこと。裁判が1回で終わるように事前に争いのポイントを整理しておくことを目的として行われるものだよ。
5、法廷で審理
孔明:事前聴取の後はいよいよ本番となる法廷での審理だよ。
劉備:審理ってなに?
孔明:裁判で、争い内容に関する事実関係などを詳しく調べてはっきりさせることだよ。審理の参加者は原告、被告、裁判官、書記官らで、主に原告と被告が双方の主張をぶつけ合うことになるんだ。
劉備:主張をぶつけ合う、って具体的にどうするの?
孔明:どちらの主張が正しいかを裁判官が判断できるように、原告と被告が提出した書類を調べたり、呼び出した証人の話を聞いたりする。
劉備:へー。そうすると結構時間がかかるんじゃないの?
孔明:いや、30分〜2時間ほどで終了するよ。ちなみに、場合によっては審理の場で話し合いにより和解が成立する可能性があるよ。
劉備:和解って?
孔明:原告と被告がお互い譲り合って妥当なラインで争いを終わらせる約束をすることだよ。例えば、「60万円支払え!」と主張する原告と「1円も支払う義務がない!」と主張する被告が30万円支払うということでこの争いを終わらせる約束をすることを和解、というんだ。
劉備:なるほどね!勉強になるなー。
6、判決
孔明:審理をしたらいよいよ判決だ。裁判所としてどちらの主張が正しいかを判断した上で「被告は原告に◯円支払え」という内容の判決をする。後日、判決の内容について書かれた判決書がもらえるんだ。
7、もし支払ってくれなければ強制執行!
劉備:もし、裁判に勝てば支払ってもらえるんだね!
孔明:それは気が早い。
劉備:え?どういうこと?
孔明:裁判によって法律上は「お金をもらえる権利があること」が確定したが、だからといって即お金をもらえるということにはならない。あくまで相手が自主的に払う必要がある。
劉備:じゃあ裁判で勝っても意味ないじゃん!
孔明:そのように相手が自主的に支払ってくれない場合のために「強制執行」という制度がある。
劉備:「強制執行」ってなに?
孔明:「差押え」って聞いたことないか?
劉備:あるよ!赤札貼られて使えなくなっちゃうことでしょ?
孔明:ドラマとかであるよね。あれは物だけど・・・差押えの対象としては銀行口座や給料が一般的だね。銀行口座や給料から優先的に支払うべきお金を獲得することになる。このような差し押さえのことを強制執行っていうんだ。
劉備:なるほどね。もし相手が支払ってくれなければ強制執行しなきゃいけないんだね。
孔明:そうなんだ。少額訴訟の場合の強制執行として「少額訴訟債権執行」という制度があるんだ。詳しくは「少額訴訟債権執行とは?少額訴訟後に強制的にお金を回収する方法」で話をするよ。
8、重要!少額訴訟のリスク!
孔明:最後に、強制執行のリスクを書いていこう。以下の通りだよ。
(1)少額訴訟はできる回数が限られてる?
孔明:まず一つ目、「少額訴訟は年間10回しかできない」という回数制限があるよ!
(2)通常訴訟への移行してしまうかもしれない?
孔明:少額訴訟は相手(訴えられる側)が通常訴訟を希望すれば通常訴訟へ移行してしまうというリスクもあるよ!
孔明のまとめ
今回は少額訴訟で債権回収する方法について書いてきたがいかがだっただろうか?参考になれば嬉しい!