あなたが男しかいない10人程度のサークルに属している、これまでの人生で彼女のいた経験のない20歳そこそこの男(若干オタクで、ニチアサをTwitterで実況したり、ゲーセンで音ゲーをしていたり、チェックシャツを愛用していたりする)だと仮定する。
これまで同じようなスペックの男友達と、サークルで楽しい日々を過ごしていたのだが、ある日突然、まるで嵐かの如く女の子が来訪した。うまく喋れないままに横目で眺めていると、気づいたらいつもの居酒屋で行われるサークルの飲み会で彼女がすぐ隣に座っていた、とする。
彼女は決してとびっきりの美少女というわけではないが、にこにこと笑顔で話しかけてくれ、どうにも一緒にいると気分が良い。おまけに帰り道ふたりで歩いていると、連絡先を交換したいと恥ずかしそうに告げられた。
これまでの人生で女の子から連絡先の交換など申し出られたことのないあなたは、もしかしたらこの子ははたしてクラッシュ、ないしは自分を騙す目的があるのか、それとも単に仲良くしているだけなのか、判断に悩むのではないだろうか。
インターネット上での情報が都市伝説のように飛び回り、全国の男性比率の高いサークルからは恐れられている(のかもしれない)サークラ*1だが、自衛の方法はごく簡単である。
サークラが行うのは、自転車に乗って通りすがりの人を凶器で無差別に刺して行くような、通り魔的で一方的な犯行ではない。ひとつのサークルのなかに「複数人」ろくでもない「女になびいてしまう」メンバーがいなければ、そもそも彼女はサークラでも何でもなく、単なるサークルの1メンバーに過ぎないのである。
サークルに突然飛び込んできた女の子が、単に自分のことを好きだという場合は警戒する必要はないが、クラッシュが目的の場合は、自分の大切な居場所が壊滅状態に追いやられる可能性もある。
わたし自身がクラッシュに失敗した(=クラッシュを未然に防がれた)経験を基に、前者とは親しくなれ、後者とはスムーズに縁が切れる方法をお伝えしたい。
1、報告・連絡・相談!
女の子から好かれるというごくプライベートなイベントだからこそ、他人に話したくないという意識はもちろんあるだろう。これまで恋愛にあまり積極的ではない人ならば、余計に気恥ずかしさが先行してしまうかも知れない。
しかし、彼女のことが気になっているという思いや、ふたりで遊びに行くなどのイベントは発生するまえにサークルのメンバーに「報告・連絡・相談」を欠かさないことが大切だ。そうすれば「あれ、あの子AにもBにも同じこと言ってるぞ」という事実が自然と浮き彫りになる。
とあるサークルをクラッシュする気で乗り込んだ時、そのサークルのリーダーは恐ろしく人望のある人だった。そのため、メンバーがそれぞれ「鶉さんに遊びに誘われた」だの「鶉さんにカッコ良いと言われた」だのの報告や、「今度ふたりでデートに行きたいのだが、どこに行くのが良いのか」などの相談を、無意識とは言えリーダーに欠かさなかったのである。
当然、わたしがAさんとBさんとCさんと同時進行して声を掛けていることをリーダーは把握しており、わたしは呼び出されて「誰かひとりに絞るか、サークルから出て行く」という選択を穏やかに迫られた。
ひとりで抱え込まず、あくまでサークルは組織だということを意識して、細かな内容でも報告・連絡・相談を欠かさないで欲しい。
2、とりあえず「2ヶ月」待つ
サークラに引っかかる男性は、告白に至るまでの時間がとても短い。わたしの経験則上、平均2週間以内、最短で出会ったその日の帰り道(本名すら知らない状態)で告白される。我が家の近くにはちょっとした公園のようなスペースがあるのだが、そこで告白されたことは数知れない。時間を掛けてもっと良く相手のことを知ってから告白しようとはしないため、ちょっと相手の腹を探れば解るであろう魂胆に気がつき辛くなってしまうのである。
サークラにとっては、彼らの早過ぎる判断も好都合である。次々男の子とデートを重ね、告白させるのにひとりずつみっちり時間を掛けている余裕はない。予算の都合上なるべくデートは多くても2回以内に収めたいし、次のターゲットを発見するのにも時間を食う。結論から言えば、とっとと告白してこない男は「見切る」のである。
なので、彼女のことが好きで好きで仕方がないと思っても、そして彼女も自分のことを好きだと繰り返してきても、ひとまず2ヶ月、時間をおいて欲しい。
2ヶ月あれば、週末は8回あり、デートの回数を重ねることが出来る。その時点で告白してこなければ、サークラ目的の場合は徒労になってしまう可能性が高い。ごく普通にあなたのことが好きな女の子なら2ヶ月なら待ってくれるだろうし、クラッシュが目的なら、とっとと他のひとに標的を絞っているはずである。
3、魔法の言葉「みんなで行こう」
サークラは、複数人の飲み会、しいてはサークルのイベントから男の子を引きはがし、1対1の関係性に持ち込んでからが勝負である。わたしがサークラだったときも、とにかくありとあらゆる手を使ってふたりっきりになる努力をしていた。
相手が映画が好きだと言えば前売り券を買って「貰いものなんだけど一緒に行かない?」と誘う、大学の講義が重なっていれば「こないだの講義休んじゃったからノート貸して欲しい」→「お礼としてお茶をご馳走させて欲しい」、オタク同士なら「コミケ(あるいは準じた同人イベント)に一緒に行って買い物を分担しよう」、サークルのイベントの幹事になれば「下見に付き合って欲しい」、そのほか、相手に合わせて理由はカスタマイズしていたものの、ありとあらゆる口実を作って、自然と2人になる状況を強制的に作り出していた。
もちろん、彼女が既にサークルにすっかり溶け込んでいて、あなたとも個人的なやりとりを何度もするくらい仲良くなっていれば何ら問題はない。しかし突如現れたサークルの紅一点から、急にふたりっきりになる可能性のあるイベントに誘われた際には一旦、警戒が必要である。自分の気持ちを落ち着かせるためにも、ひとまず挟む言葉が「みんなで行こう」である。あるいは「Aも一緒に行こう」「Bも興味あるみたいだよ」でも良い。とりあえず《2人以外で行く可能性》を提示してみるのである。
「えっでも」とややゴネられたときには、少し疑いの眼差しを持った方が良い。「とりあえず他のひとにも聞いてみても良い?」と畳み掛けて、Noを突きつけられた場合には、サークラの可能性が9割くらい。残りの1割は、本当にどうしてもあなたとふたりっきりになりたい時の場合だが、単に好きなだけなら嫌われたくない、が先行して、一旦は引くだろう。
実際にふたりっきりになるか、それともほかの人を交えるかが重要なのではなくて、はたして「ふたりっきりになる」ことが目的なのか「一緒に出かける」ことが目的なのかを見極めるのが、重要なのである。
冒頭にも述べたが、サークラは一方的な話ではない。騙す側が当然悪いのに決まっているのだが、騙される側も自衛をすることは出来る。
大事なサークルを守るためにも、ぜひ、少しの工夫を取り入れてみてもらいたい。
*1:本文中のサークラとは、全てサークルクラッシャーを指します