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大阪市を五つの特別区に分割し、広域行政は大阪府に一元化する大阪都構想案…
大阪市を五つの特別区に分割し、広域行政は大阪府に一元化する大阪都構想案が、大阪府・市議会で否決された。橋下徹市長が率いる大阪維新の会以外の主要会派が反対した。法に基づき、都構想の是非を問う住民投票はできなくなった。
橋下氏は「議会ではなく住民が決める問題だ」と反発し、住民投票をするべきかを問う別の住民投票条例案を出す考えを示した。首長権限で議会承認を飛ばす専決処分も視野に入れる。
だが、議会承認は、法に明記された要件だ。市議会が新たな条例案を通す可能性も低い。民意を直接問いたいという橋下氏の思いは理解できなくもないが、専決処分のような強引な手段では、都構想への住民の支持が失われるリスクもあろう。
やり直したいなら、橋下氏はあくまで正攻法で臨むべきだ。
議会と橋下氏の対立が深まったのは、都構想案をまとめる法定協議会をめぐってだった。
維新は3月の出直し市長選での橋下氏再選を根拠に、反対派府議を協議会から締め出した。市議会の反対派も協議をボイコットし、都構想案は維新議員だけで完成した。民主的な正統性は疑問というしかない。
もっとも、自民や公明など反対派も責務を果たしたとはいえない。市議会の集中審議には橋下氏を呼ばず、事務方にだけ質問した。弁舌を封じる作戦らしいが、あまりに情けなかった。
橋下氏も各党も、冷静に考え直してほしい。いま取り組まなければならないことはなにか。
大阪は深刻な危機に直面している。高齢化と生活保護受給者の多さは群を抜き、東京との経済格差は拡大するばかりだ。
橋下氏は府市の二重行政こそが元凶とし、解決策として都構想の具体化に力を注いできた。賛否はおくとしても、問題提起としての意義は大きかった。
都構想案に対しては「新しい特別区が財政的に立ち行くか」「行政コストがかえって増えないか」といった重大な疑問がいくつも出ている。
橋下氏は「車を買うのに設計図を一から見るか」と語り、住民投票で結論を出すのが先だというが、それは乱暴すぎる。大阪市をひとたび解体すれば、もうやり直しはきかない。
維新以外の各党は、法定協議会に反対派を戻すことを決め、協議の再開を求めている。橋下氏はぜひ応じてもらいたい。
来年4月の府・市議選まで半年を切った。大阪の改革は都構想で進めるべきか否か。有権者が判断できるよう、橋下氏と野党は誠実に議論してほしい。
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