日本最大の総合建材卸売業を営むジャパン建材。同社は年2回、住宅資材の展示即売会「ジャパン建材フェア」を東京ビッグサイトで開催している。出展メーカーは200社以上、毎回プロユーザーが2万人以上来場する、業界では誰もが知るイベントだが、今年8月22日~23日に開かれた第32回ジャパン建材フェアでは、1つの新しい試みが行われた。
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大勢の来場者で賑わうジャパン建材フェア |
フェアの目玉商品に関する動画を用意。社員に支給しているタブレット端末「iPad mini」を使って、動画を見せながら目玉商品について説明するという試みである。「やはり動画があると、分かりやすく商品の特徴を伝えられます。iPadを使った説明は、とても効果的でした」と、同社 営業推進部の蔦尾祐斗氏は評価する。
第32回ジャパン建材フェアの売上目標はなんと485億円。だが、iPadも一役買い、見事この目標を達成できたという。
現場の強い要望を受けてKDDIのiPad miniを約300台導入
ジャパン建材がiPadを本格導入したのは、今年5月のこと。以前から一部にiPadをトライアル導入していたが、今回残りの社員に支給するため、約300台のiPad miniを追加導入した。
本格導入を強く後押ししたのは、営業現場の声だった。iPadの導入以前、社員が外出先で情報を得る手段というと、携帯電話と携帯メールくらい。「デジタル機器を使って、外出先で情報を得るための手段が欲しい」という要望が現場から挙がっていたという。
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ジャパン建材 東京北営業所の石原達也氏(左)と、営業推進部の蔦尾祐斗氏 |
採用したのはiPad mini RetinaのCellularモデルで、携帯キャリアはKDDIを選択した。以前からKDDIのフィーチャーフォンやiPhoneも使っていた同社。「KDDIの営業担当者は、普段からいろいろな提案をしてくれるほか、iPhoneの故障時などの対応もスピーディと非常に親身でした。そのサポート力に期待してiPadもKDDIに決めました」と蔦尾氏は選定理由を語る。
企業がスマートデバイスを導入するうえでは、セキュリティをどう担保するかが共通課題だが、ジャパン建材の場合はKDDIのMDM(モバイルデバイス管理)サービス「KDDI Smart Mobile Safety Manager(SMSM)」を活用している。主に利用している機能は、パスワードポリシーの強制設定と紛失盗難時のリモートロック/ワイプ。
「セキュリティ関係の製品やサービスの中には、設定画面が英語のものも多いですが、SMSMは日本語表記で直観的に設定できる点が使い易いです」(蔦尾氏)
メーカーへの価格問合せの手間が半分以下に減少
iPadは、ジャパン建材の社員のワークスタイルをどのように変革したのか。「スピード感が格段に上がりました」と東京北営業所の石原達也氏は話す。
東京北営業所でルート営業を担当する石原氏。同氏がまず紹介してくれたiPad活用法は、「価格表」の電子化だ。
ジャパン建材が取引するメーカーの数は2000社以上。それぞれのメーカーの卸価格が記載されたのが価格表だ。しかし、2000社以上ものメーカーの価格表すべてを紙で持ち歩くことはできない。石原氏の場合、よく使う2~3割の価格表だけを携行していたというが、それでもファイリングされた価格表の厚みは10cm程度に膨らんでいたという。
だが、iPadの導入後は、紙の価格表を持ち歩く必要がなくなった。石原氏はクラウド上のストレージにほとんどの価格表をアップロードし、いつでもどこでもiPadから価格表を参照できるようにしている。
利用しているオンラインストレージサービスは、「KDDI ファイルストレージ」だ。1ID当たり10GBの容量を月額300円で利用できるリーズナブルさや、データ暗号化/ウィルスチェック/IPアドレス制限機能といった充実したセキュリティ機能などが特徴の企業向けサービスである。
価格表の電子化によって、目に見えて減ったのは、メーカーへの問い合わせ件数だという。「以前はすべての価格表を持ち歩けないので、その都度、メーカーさんに電話して価格を聞いていました。1日20~30回はかけていたと思います。しかし今はほとんどの価格表をiPadで見られますから、メーカーさんに電話で問い合わせる回数は半分以下に減りました」(石原氏)。これにより、問い合わせに要していた手間を大きく効率化できたほか、顧客にも迅速に対応できるようになったという。