(2014年10月27日付 英フィナンシャル・タイムズ紙)
ギリシャがEUとIMFによる支援策からの脱却を急いでいる〔AFPBB News〕
2010年以降、欧州連合(EU)と国際通貨基金(IMF)による支援を頼りにしているギリシャが、この支援からの脱却を急いでいるという話は一見不可解に思われる。
数週間前には、ギリシャ国債10年物の利回りが市場で急上昇し、9%を超える場面があった。
現在の利回りは7%だが、この水準でも、ギリシャ政府が公的機関から受けている融資の金利に比べればはるかに高い。最後のハードルで転んでしまうランナーのように、ギリシャは遅れたくないがためによろけてしまう恐れがある。
しかし、ギリシャのアントニス・サマラス首相とその同僚たちにしてみれば、これはどちらかと言えば財政の問題ではない。国の威信の問題であり、民主主義国では当然予想される政治的な計算の問題なのだ。
ギリシャ国民に大国に支配された歴史を思い出させる支援策
EUとIMFの支援策に対するギリシャ側の態度には、国の威信を回復したいという気持ちが満ちている。大量失業から企業の倒産に至るまで、支援策がもたらしてきた社会的・経済的コストは極めて大きい。
ギリシャ国民はこの支援策を見て、オスマン帝国からの独立戦争(1821~32年)以降に列強の支配をたびたび受けた自国の歴史を思い出している。高齢の国民は、ナチスによる占領(1941~44年)や第2次大戦後に英米が行使した影響力を鮮明に覚えている。
自己決定権を求める戦いは、ギリシャ人のアイデンティティーにおいて非常に重要な位置を占めているのだ。
一方、現在の政権には、EUとIMFのくびきから逃れることができれば、来年2月に予想される次の国家元首を選ぶ議会内投票で勝利できるとの計算がある。そこで勝利を収めれば、現政権は4年の任期を全うでき、次の総選挙(2016年6月)で選挙戦を有利に展開できるだろう。