厚生労働省は27日、高齢化で人手不足が見込まれる介護職員を確保するための対策作りに着手した。高齢化がピークを迎える2025年時点の需要に応じ、国全体の数値目標を定める方針だ。人手不足の原因とされる低賃金など処遇の改善策に加え、資格要件を緩和して高齢者らの参入促進や外国人の活用も検討する。サービスの品質維持と人員の確保をどう両立するかが大きな課題だ。
社会保障審議会(厚労相の諮問機関)福祉部会の下に設けた福祉人材確保専門委員会で27日、議論を始めた。30日には外国人の受け入れに向けた省内の検討会も立ち上げ、年内に具体策をまとめる。来年度予算案や来年の通常国会に提出する関連法案に盛り込む。
厚労省はこれまで粗い推計で、団塊の世代が75歳以上となる25年に約250万人の介護職員が必要だとし、現状からは約100万人増やす必要があると説明してきた。今回は、改めて都道府県単位での推計データを積み上げ、日本全体で25年までの精緻な数値目標を示すとした。
人手確保策も、25年までの需要の伸びに合わせ、短期的なものと中長期的なものとに整理して計画的に打ち出す考えだ。優先するのは介護職員の賃上げだ。厚労省は来年4月に改定する介護サービスの利用料(介護報酬)で、賃上げのための加算措置の拡充を目指す。
賃上げは実現しても最大で月1万円程度とみられ、若い世代をひき付ける効果は限られる。そこで、若者以外の高齢者や主婦などの参入促進にも乗り出す。介護の仕事に就きやすいよう、初心者向けの「資格」を創設することを検討する。
厚労省案は住民が介護の知識を学び体験できる研修などを設けるとし、研修を修了した高齢者らを介護職員の予備軍として地域ごとに確保する考えだ。既存資格である介護職員初任者研修で取得にかかる時間を短くするなどの要件緩和も、検討に上る可能性がある。
厚労省は法務省など関係省庁と連携し、外国人の活用にも動く。介護福祉士の資格を取得したら日本で働けるよう在留資格を与えたり、発展途上国への技術移転を目的とした技能実習制度で、対象を介護に広げたりすることを検討する。
これまでは経済連携協定(EPA)でインドネシアやフィリピンから介護福祉士の候補生を08~13年度の累計で1091人受け入れたが、合格率は5割ほどと低い。そこで外国人を受け入れる間口をより広げる狙いだ。
外国人活用には介護職員側からの慎重な意見や移民論議への警戒感もあるため、厚労省は25年の数値目標には織り込まない考えだ。処遇改善や参入促進が柱となるが、資格を広げて介護の初心者を増やすと賃金水準が下がり「処遇改善に逆行する」との指摘も多い。
厚労省はかつてのホームヘルパー2級研修に代えて初任者研修を導入し、合わせて介護福祉士との間の資格となる「実務者研修」も設けて、介護福祉士へのステップアップを促した経緯がある。
これら一定の知識・経験を保証する上級資格をとることで賃金や待遇の改善を促しつつ、いかに人材の裾野を広げるかが問われることになる。
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