<福島県知事選>評論・しがらみ知事の足かせ
◎「オール福島」の真相/東北大大学院情報科学研究科・河村和徳准教授
 福島県知事選は、「オール福島」を掲げ、自民、民主、公明、社民の与野党4党が相乗りした前副知事の内堀雅雄氏(50)が初当選した。投票率は45.85%で前回知事選(2010年)を3.43ポイント上回ったが、過去2番目の低さ。棄権者が86万6337人もいた点を指摘したい。
 選挙戦は極めて低調だった。理由の一つは、全候補が県内原発の全基廃炉を掲げ、脱原発が「合意争点化」(非争点化)してしまったことだ。
 廃炉や除染など多数の論点があったが、与野党相乗りという政党の都合で論戦の場が奪われた。福島県民は東日本大震災と福島第1原発事故で被災しただけではなく、知事選で選択肢すら与えられなかったと言える。
 通常、与野党相乗り選挙は、中央より地方の都合が優先され、地方が国政レベルでの政治対立を棚上げすることで成り立ってきた。
 今回の知事選で自民党本部は、県連が擁立した独自候補に出馬を断念させ、「負けない選挙」を選択した。その結果、中長期的に難しい課題を福島に持ち込んだと言える。
 福島県政は今後、誕生したばかりの「弱い首長」とオール与党化による「強い県議会」の環境となる。「選挙で支えてくれた」というしがらみを超え、内堀氏が決断できるかどうかが福島県政を占う鍵となる。
 福島第1原発事故後、福島県は、除染廃棄物を保管する中間貯蔵施設といった、全ての県民が納得することが不可能な政治案件を抱えた。利害が対立する中、知事が最終決断を迫られる場面は少なくない。
 被災地の首長は通常、民意を背景に難しい案件を政治決断する。だが、与野党相乗りによって「民意」を意図的に狭められた中で誕生した内堀知事は強いリーダーシップを発揮できるだろうか。
 公務員出身の与野党相乗り首長が「強い首長」になって自主性を発揮できるのは、2期目から3期目と言われる。
 「オール福島」という風景は一見きれいに映るが、逆に大事な物事を迅速に決められない環境を福島県にもたらしたとも言える。
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2014年10月27日月曜日