October 27, 2014
日々の仕事で神経がすり減っていると感じたら、ピューマに首輪を装着してみてはいかがだろうか。
世界自然保護基金(WWF)によるノーザングレイトプレーンプログラムの一環として大型のネコ科動物や爬虫類に首輪を装着してきた野生生物学者のデニス・ヨルゲンセン(Dennis Jorgensen)氏によると、標識技術の改良や効率化が進み、「より多くの野生動物を理解する機会が広がっている」という。
◆足跡をたどる
野生動物を捕獲する際、科学者らはパッド付きの足かせ罠を仕掛けるのだとヨルゲンセン氏は説明する。この足かせ罠は動物を短時間留めておくために用いられる痛みのない器具であり、頻繁にチェックが行われるという。
ターゲットがピュ・・・
世界自然保護基金(WWF)によるノーザングレイトプレーンプログラムの一環として大型のネコ科動物や爬虫類に首輪を装着してきた野生生物学者のデニス・ヨルゲンセン(Dennis Jorgensen)氏によると、標識技術の改良や効率化が進み、「より多くの野生動物を理解する機会が広がっている」という。
◆足跡をたどる
野生動物を捕獲する際、科学者らはパッド付きの足かせ罠を仕掛けるのだとヨルゲンセン氏は説明する。この足かせ罠は動物を短時間留めておくために用いられる痛みのない器具であり、頻繁にチェックが行われるという。
ターゲットがピューマの場合には、訓練された犬を使ってピューマを木に登らせてから麻酔ダーツを撃つこともある。
首輪の装着が終わると、麻酔の作用を弱めるための注射が打たれる。
科学者たちがこのような苦労をしてまで野生動物に首輪を装着する理由は、彼らの生息地利用に関する調査に役立つからだ。
あるケースでは、首輪を装着されたピューマがサウスダコタ州のブラックヒルズからはるばるニューヨーク州まで移動し、大型動物が「人間に知られることなく人口密集地域を通り抜けることができる」ことが明らかになったとヨルゲンセン氏は話す。
また、動物の生息地利用を知ることで、動物と人間の衝突を減らす方法を見つけるヒントが得られるという。
◆鳥とヘビ
首輪やタグには、生物種に応じてさまざまなタイプがある。
文字通りの首輪には電子装置に加え、動物の首にしっかり留まるようにする重りが備わっている。
また、ヨルゲンセン氏らは草原性鳥類を調査する際、「大きさがキットカットほどの」衛星タグを「バックパックのように」背負わせ、彼らの動きを妨げないようテフロン紐で大腿部に固定したこともある。
だが、首のない動物に首輪を装着することは不可能だ。
ヨルゲンセン氏はカナダのアルバータ州でセイブガラガラヘビを調査するため、ヘビが冬眠する巣穴に罠を仕掛けたことがある。
そして捕まえたヘビの体腔に、「ネズミの赤ちゃんよりも小さな」無線タグを埋め込んだ。ただし、装置はヘビの体が拒絶反応を示さない蜜蝋(みつろう)でコーティングしておいたという。
◆新境地
今や、ソーシャルメディアを駆使した標識技術まで開発されている。例えば、オーストラリアにはツイートをするサメが存在する。西オーストラリア州の水産省職員が複数の魚に送信機を埋め込み、彼らが海岸に接近するとソーシャルメディア上に警告が表示されるようにしているのだ。こうすることで、遊泳者への注意喚起が可能となる。
同様に、WWFはカナダのサスカチュワン州にあるプリンス・アルバート国立公園に生息するバイソンにセルラー方式の首輪を装着する計画を進めている。バイソンが私有地に侵入した場合などに、首輪から科学者にテキストメッセージが送られる仕組みだという。
ヨルゲンセン氏はこうした動きをコミュニケーションにおける “新境地”と呼び、野生生物を追跡するよりよい方法の探求に胸を躍らせている。だが、遠隔地から動物を追跡できるようになれば、科学者たちが研究対象である動物や生息地から遠ざかってしまうのではないかとの懸念も抱いているという。
フィールドでは、「自分自身が毎日彼らの生息地にいるからこそ、本当の意味で関心を持つことができる」のだ。
Photograph by Dennis Jorgensen / WWF