戦時作戦統制権(統制権)の韓国軍移管について、事実上の無期限延期という形で合意した韓米の定例安保協議会(SCM)は、ソウルの竜山米軍基地を2016年までに京畿道平沢へ移転させる一方で、韓米連合司令部は竜山に残留させることを決定した。韓米連合司令部の敷地は竜山基地総面積の8-9%に相当する。米国大使館の敷地なども合わせると、竜山基地の5分の1近い17%程度を米国側がそのまま使用することになる。韓国国防部(省に相当)は「有事の際、連合司令部が韓国軍首脳部と円滑な指揮システムを構築するためには、平沢に移転しては困る。連合司令部の作戦センターを移転するのに4000億ウォン(約410億円)も掛かるなど、費用の問題もある」と説明した。どれも一理ある話だ。
しかし現在、韓国は実に9兆ウォン(約9200億円)近い資金を投じ、平沢に統合米軍基地を建設している。この基地を建設しなければ在韓米軍が十分な戦力を発揮できないという説明もあった。連合司令部も、当然平沢に移転する予定で、ここには作戦センターを建てる費用も含まれている。ところが今になって、平沢に移転すれば有事の際に円滑な指揮システムを稼働させることができないというのだ。なぜ今さらこんなことを言い出すのか、理解できない。
韓国政府は竜山基地の跡地に、ニューヨークのセントラルパークに次ぐ264万平方メートルの市民公園を造成することを決めた。単なる公園ではなく、過去100年余りにわたり外国軍の駐屯地として使われてきた場所が市民の憩いの場に変わるという、歴史的な意味もある。2004年に竜山基地返還に合意した当時、米国のラムズフェルド国防長官も「一国の首都の真ん中に外国軍の基地があるというのはおかしな話だ」として、基地移転は当然だと評価した。竜山基地の移転に掛かる巨額の費用を全て韓国側で負担することに韓国国民が同意したのも、このような構想や意味に共感したからだった。ところが今や、カネはカネとして全部使いながらも、竜山基地返還の意味が大きく色あせてしまうという事態になっている。
韓国政府が2011年に発表した「竜山公園総合基本計画」の中核は、竜山基地のせいで断絶した「南山-竜山公園-漢江」という南北の緑地帯を復活させ、支流も復元し、17年から自然生態公園にするというものだ。現在は竜山基地の前で途切れている銅雀大橋連結道路をソウル都心まで延ばせば、交通網の完成にも役立つ。しかし、今回韓米が残留させることを決めた米軍エリアは、竜山公園の真ん中をふさいでいる。全ての計画が修正を求められ、効果は半減せざるを得ない。
韓国政府は、竜山公園と連携して周辺を住・商複合地域として開発し、その収益で平沢基地建設費用の相当部分を賄う考えだった。既に4兆ウォン(約4100億円)以上の資金が投じられた。しかし連合司令部の残留で、韓国国民の負担はさらに増えることになるわけだ。
韓国政府と韓国軍は「公園よりも安全保障の方が重要」と言いたいのかもしれない。ならば過去10年間は、安全保障よりも公園の方が重要だから竜山基地移転を推進してきたのか。このような無原則と無計画、無能さによって、どれほど国民が失望し、税金が無駄に使われるのか、心配になる。韓国政府は、竜山基地問題を思い通りに決められるという考えを捨て、国会や国民に説明し、同意を求めるべきだ。必要ならば、連合司令部の位置について再検討する可能性も残しておくべきだ。