あなたはどう思う? ノルマがある学生団体——SFT(STUDY FOR TWO)
2012年11月9日 11:33 AM はたらく--挑戦者たちラオスの教育支援を行う学生社会起業団体STUDY FOR TWO(スタディフォートゥ−)は、全国の約35の大学に支部を持つ。総勢305人の大型学生組織である。しかし、学生組織でありながら、課せられたノルマを達成できないと支部長が強制的に交代させられるという厳しいルールを持っている。
同団体は、2010年5月に設立された。早稲田大学4年の石橋孝太郎さんがボランティア活動でラオスに出向いた際に、日本との教育環境にギャップを感じたことが団体設立のきっかけになったという。
回収した使用済み教科書を、大学生に安価で販売し、その収益の80%を途上国支援に充てる取り組みを行っている。これまで流通した教科書は1000冊以上になる。5年後の2017年10月の段階で、途上国で小学校に通えていない子どもたちの1%にあたる72万人を通えるようにするまでの寄付金学を集めることを目指している。
ノルマを導入したのは、同団体が掲げたこの目標を達成するためだ。各支部は、毎年寄付金学を本部に納めなければいけない。初年度は20万円、2年目は50万円、3年目は100万円、4年目は200万円、5年目は500万円、6年目は1000万円がノルマの達成寄付金額として設定されている。
各支部は年間、春と秋に合わせて2回行う教科書販売期間で寄付金額に達成させなければいけない。教科書販売期間には、各支部メンバーがそれぞれの所属する大学近辺に販売ブースを設ける。
■ノルマは良い?悪い?
支部長にとっては支部を運営していくうえで、ノルマとどう向き合うかが問われてくる。団体を崩壊させる可能性を持つ悩みの種でもあり、組織をまとめるモチベーションにもなる諸刃の剣であるノルマを支部長はどう思っているのだろうか。
慶應義塾大学の支部は、メンバー総勢20人。今年設立したので、まだ一度も販売は行っていないが、ノルマは良いモチベーションになっているという。「メンバーには、楽しかったという中途半端な思い出よりも、ちゃんとした達成感を得てほしい」と、話す。「そのためのノルマを支部長が保証するのは良いことだと思う。メンバー全体でノルマに向かって活動できている」
お茶の水大学の支部長を務める安井美里さん(お茶の水大学3年)も、ノルマをチーム目標として利用している。当初、ノルマの話を聞かされたときには、難しいと思ったという。なぜなら、お茶の水大学の学生数は1600人ほど、他の大学と比べても人数が少ないからである。
しかし、活動を続けていくうちにノルマの必要性を感じるようになったという。「7人のメンバーが貴重な時間を投資してくれているので団体を通して成長してほしい。ノルマを目標として利用してほしい」と、話す。お茶の水女子大学の支部では、今年の秋に第一回目の販売を行い、5万5千円を寄付金額として得た。来年の春に行われる販売期間で14万5千円を集めることを目指す。
ノルマを達成できなかった支部長たちはどう考えているのか。明治大学の支部長を務める中山和也さん(明治大学3年)は、「ノルマの額については変動があっても良いと思うが、ノルマがあることに関しては賛成である」と、話す。
中山さんが支部長の明治大学支部は去年、20万円の寄付金額を達成できなかった。しかし、「存続願い制度」で、支部長を続けているという。この制度では、たとえ、ノルマを達成できなくても、支部メンバー全員の同意と、各支部長の3分の2以上の賛成表を獲得すれば、支部長を継続することができる。
「メンバーがやりがいを感じやすいのは目に見える売上だと思っている。また、他の支部との対抗意識なども芽生えるので、ノルマはあってもいいとは思っている」と、話した。
明治学院大学の支部長である山本恵理子さん(明治学院大学3年)もノルマを達成できなかった経験を持ち、存続願い制度で継続して務めている。
メンバー全員で一つの目標を目指すことは大事なので、目標が設定されていることは同意できるという。しかし、メンバーには、数字だけにやりがいを求めるのではなく、イベントを成功できたという経験も大切に感じてほしいと、話した。
■ノルマ設立の背景
同団体の代表石橋孝太郎さんは、「目的を果たすことこそ、団体の存在意義です。目的を明確にせず、ただなんとなく活動しているだけでは、学生団体のメンバーたちに目に見える数字でのやりがいは提供することができません。お金ではなく、やりがいに重きを置く学生団体だからこそ、ノルマを設け、みんなで共通の目的に対し、努力することが大切だと考えています」と、ノルマを設定した意図を話す。
国際協力を行う学生組織にしては珍しい「ノルマ」。あなたはどう思うだろうか。(オルタナS副編集長=池田真隆)
【STUDY FOR TWO 】
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