<福島県知事選>解説・原発終始踏み込まず
福島県知事選は、自民、民主、公明、社民4党が相乗り支援した前副知事の内堀雅雄氏(50)が圧勝した。内堀氏は、引退を表明した佐藤雄平知事の後継候補。県民は県政刷新よりも、副知事2期の実績を踏まえた県政の安定を選んだ。
内堀氏は主要政党に加え、連合福島、県農政連、県町村会など「集票マシン」と呼ばれる組織・団体から手厚い支援を受け、組織力で圧倒した。
自民党福島県連は一時、「打倒・佐藤県政」を目指し、独自候補を擁立した。しかし、党本部の圧力に屈し、9月に擁立を断念。この時点で既に勝敗は決していた。
党本部が県連の主戦論を退けたのは、7月の滋賀県知事選で党推薦候補が敗れ、最重要と位置付ける11月の沖縄県知事選に「2連敗」で臨む事態を避けたかったからだ。
原発問題の争点化を回避したい安倍晋三政権の思惑も働いた。「争点ぼかし」は奏功し、原発再稼働問題や原発輸出の是非が、「レベル7」の原子力災害に見舞われた福島の知事選で争点に浮上することはなかった。
県内の原発10基については、内堀氏を含む全候補が全基廃炉で一致。福島の知事選とはいえ、地方選挙で国政課題を問えるのかという問題も横たわる。
ただ、福島第1原発事故で飛散した放射性物質は県境でとどまったわけではない。宮城県では、汚染物質の最終処分場建設をめぐり、住民が激しく反発する事態になっている。
一度、原発事故が起きれば、影響は県境を越え、広範囲かつ長期に及ぶ。逆もまた真だが、福島県への影響が懸念される東京電力柏崎刈羽原発(新潟県)や東北電力女川原発(宮城県)の再稼働問題に、内堀氏が言及することはなかった。
復興のステージに入ったとされる岩手、宮城両県に比べ、福島県はいまだ復旧途上にある。除染廃棄物を保管する中間貯蔵施設問題、震災関連死、子どもの健康管理など新知事の政策実行に猶予は許されない。
(福島総局・桐生薫子)
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2014年10月27日月曜日