選挙:福島県知事選 きょう告示 原発、議論深まらず 与野党相乗り、かすむ復興

毎日新聞 2014年10月09日 東京朝刊

 復興政策では、熊坂氏は「放射線を避けて暮らす権利を保障する」とし、代替地の提供や住民への十分な補償を掲げる。井戸川氏は、除染で出た汚染土などを保管する中間貯蔵施設の受け入れについて「白紙に戻す」と訴える。だが、ともに実現性に課題があり、大きな争点となっていない。

 全村避難となっている古里の葛尾村のまちづくり活動に関わるNPO法人理事、下枝浩徳さん(29)=大玉村=は「原発事故で多くの企業の経営が立ちゆかない中、どういう対策を打つかを論じてほしいが、議論が深まらない」と嘆く。投票率は前回(2010年)の42・42%からさらに低下することが懸念されている。【岡田英、小林洋子】

 ◇「敗北」回避を優先

 政府・自民党は、福島県知事選で「負けない」ことを優先し、独自候補擁立を見送った。7月の滋賀県知事選で与党推薦候補が敗北し、11月の沖縄県知事選では、自民党推薦の現職の苦戦も伝えられる。「3連敗は何としても避ける」(党幹部)ことが基本方針だった。思惑が優先した相乗りで有権者の選択肢は狭まり、選挙戦での活発な論争は期待しにくくなった。

 政権が相乗りを選択したのは、知事選で連敗すれば、来春の統一地方選を前に与党内に動揺が広がる可能性があったためだ。九州電力川内原発(鹿児島県)の再稼働が迫るなか、原発が争点となって与党が敗北するリスクを回避する狙いもあった。

 自民党幹部によると、党本部では滋賀県知事選の敗北後、福島県知事選では「自民・民主両党が推せる候補を選定する」という相乗りを軸とした方針が早々に有力になったという。党幹部は「敗北は打撃が大きい。政権与党ということをかなぐり捨ててでも、勝てる候補に乗った」と説明する。

 福島県内では現職首長の落選が相次ぎ、復興政策への批判は根強い。自民党県連が独自候補の推薦をいったんは決定したのもそのためだ。だが、政権の事情が優先した。党本部は慣例を破って、県連決定を覆し、相乗りに持ち込んだ。

 政権は「政争する状況ではない」(菅義偉官房長官)と相乗り批判に反論している。復興や原発などで論戦が低調に終われば、その影響は福島だけにはとどまらない。【水脇友輔】

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 ◇予想される顔ぶれ(50音順)

五十嵐義隆(いからし・よしたか) 36 牧師 無新

伊関明子(いせき・あきこ) 59 コンビニ店長 無新

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