選挙:福島県知事選 きょう告示 原発、議論深まらず 与野党相乗り、かすむ復興
毎日新聞 2014年10月09日 東京朝刊
東日本大震災と東京電力福島第1原発事故後、初となる福島県知事選は9日に告示、26日に投開票される。現職が引退表明し、新人6人が出馬の意向を示している。事故収束が見通せない中、県内外の約12万7000人が避難生活を続け、産業再生も進まない。震災復興と原発問題が問われる選挙のはずだが、敗戦を避けたい各党の思惑で与野党相乗りとなり、論戦は低調だ。
「福島県知事が直接的に言及する立場ではない」。現職の佐藤雄平知事の事実上の後継である前副知事の内堀雅雄氏(50)は9月30日の政策発表の記者会見で、県外の原発再稼働の賛否を問われると、こうかわした。自民、民主、公明、社民各党の相乗りが、政党間で主張の異なる再稼働問題には踏み込まない前提で成り立っているからだ。
前日、共産党を除く全県議が参加する相乗り支援の母体「県議団有志の会」が発足。内堀氏から公約の事前説明を受けたが、「きょうは難しい話はやめよう」と具体的な協議は見送った。「原発再稼働に関しては政権与党の自民が反対と言いにくい。詰めて協議していくと相乗りの構図が崩れかねない」。説明の場にいた県議は明かす。
内堀氏は復興政策を前面に掲げ、原発事故の早期収束や、避難区域内の復興拠点整備を強調する。原発の廃炉作業などを担うロボットを核に据えた産業政策を独自色として打ち出す。
しかし、仮設住宅では今年6月現在で約1万3000世帯が暮らす。災害公営住宅(復興住宅)は、9月末現在で計画数の約1割の約950戸しか完成していない。住宅除染も進捗(しんちょく)率は44%(6月末現在)。被災した後に営農を再開できた農家は約6割だ。漁業はまだ試験操業の段階で95%が再開できていない。
進まぬ復興に住民の不満は根強い。内堀氏も副知事として復興政策を指揮する立場にあっただけに、有権者からは「何が変わるのか」と冷ややかな声が出る。
一方、原発即ゼロを求める福島県内の市民グループや共産党は、前岩手県宮古市長の熊坂義裕氏(62)の支援に回った。
県内の原発を巡っては、内堀氏も含め各立候補予定者が全基廃炉で一致している。このため、熊坂氏は全国の原発再稼働にも反対すると表明し、争点化を狙う。だが、前福島県双葉町長の井戸川克隆氏(68)も再稼働に反対姿勢で、脱原発票は割れる可能性がある。