エボラ出血熱対策でビッグデータを活用
2014年10月27日 16:23 発信地:ワシントンD.C./米国
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【10月27日 AFP】西アフリカ地域でのエボラ出血熱感染の流行が宣言される9日前、米ボストン(Boston)では、研究者とコンピューターの専門家からなる研究チームがギニアでの感染拡大をすでに確認していた──。
研究チームは、ソーシャルメディアや地元報道の他、インターネット上に存在する情報をくまなく収集し、オンライン疾病早期警戒システム「ヘルスマップ(HealthMap)」によって開発されたアルゴリズムに当てはめたところ、エボラ出血熱が西アフリカで猛威を振るい始める様子を捉えることができたという。
「ボストン子ども病院(Boston Children's Hospital)」で2006年に創設されたヘルスマップの共同創設者、クラーク・フリーフェルド(Clark Freifeld)氏は、「各国の政府当局は、公式発表をする際により慎重になる傾向があるため、国民への周知が遅れる傾向がある」と指摘する。
早期発見で、エボラ出血熱の感染拡大が阻止できたのかは不明だ。しかし、こうした「ビッグデータ」を活用するアプローチは、流行の抑制に効果的である可能性があると多くの科学者らは指摘している。
テクノロジー分野におけるアプローチはこれまで、主に「検出」のために使用されてきた。しかし一部の専門家らは、予想・分析での活用がより方効果的としている。これは、マーケティング担当者がターゲティング広告を配信する際に役立つテクノロジーと同じで、エボラ出血熱のような伝染病を抑え込むことにも有効だという。情報を迅速に入手することで、保健当局は病気の流行を抑制するために必要な資材を調達でき、適切の治療をピンポイントで施すことができる。
IT業界では、マイクロソフト(Microsoft)が、エボラ出血熱の研究者が同社のクラウド・プラットフォーム「ウィンドウズ・アジュール(Windows Azure)」を利用できるようにする計画を発表している。
ソフトウェアを使った診断やワクチンの供給、さらにはクラウドベースのデータ分析といった分野では、エボラ出血熱への対応に利用可能な複数のテクノロジー・ツールがすでに存在している。また世界中には、張り巡らされた携帯電話の通信網があり、ツイッター(Twitter)やフェイスブック(Facebook)などのSNS利用者も増加している。これらネットワークから疾病に関する情報を収集・分析する試みについてもある程度は成功する可能性を秘めているという。
ヘルスマップは、収集したデータを15か国語に翻訳し、研究チームがさらに詳細な分析を行う。過去にはH1N1型インフルエンザの探知も行っており、他の疾病の感染状況を監視することも可能という。
フリーフェルド氏は、「小規模な流行は常に起きている。それがいつ深刻になるかが問題なのだ」と述べている。(c)AFP/Rob Lever