TOP2014年10月御嶽山教訓、手紙に託す 飯島の山岳ガイド、仲間ら100人に
手紙に同封する御嶽山の空撮写真で、自身の避難ルートを確認する小川さん=23日

 御嶽山(長野・岐阜県境、3067メートル)の噴火に山頂直下で遭遇し、生還した上伊那郡飯島町の山岳ガイド小川さゆりさん(43)が、噴火のリスクを伝えて登山者の意識を変えたい、と自身の体験や教訓を手紙にまとめた。噴火から1カ月を前に26日、県内外のガイド仲間ら山岳関係者約100人に送る。57人が死亡、6人が行方不明となった火山災害の前で、自身が身に付けた知識や技術は通用しなかったと痛感し、一歩を踏み出した。

 9月27日はガイド登山の下見に訪れ、山頂から10分ほど下った火口近くで噴火に襲われた。近くの岩に体を張り付けた後、岩と地面の間に見つけた隙間に体をねじ込んだ。「山で死なないために気を付けてきたのに...」。隠れながら悔しさが込み上げた。

 かつて小屋番をしていた中央アルプス空木岳の空木駒峰ヒュッテで、登山者が高山病で亡くなった。雪崩で友人を失ったこともある。「山で死なないための答えがほしい」と、30歳で日本山岳ガイド協会の山岳ガイドの資格を取った。中ア地区山岳遭難防止対策協会の救助隊員になり、登山のリスクも学んだ。

 「噴火するとは夢にも思わなかった」。御嶽山の火山性地震が増えていることは報道で知っていたが、噴火は想定外だった。生還後は「生かされた自分に何ができるのか」と自問自答した。

 噴火の後も北ア焼岳などの活火山は登山者でにぎわい、ヘルメットやシェルターで安全を確保できるといった議論も耳にした。だが、御嶽山の噴石の大きさ、速度は想像以上。「火山灰の闇の中、近くにシェルターがあっても探すのは困難だろう」。意識の隔たりを感じた。

 「装備や設備があっても、噴火のリスクを意識しないと意味がない」。体験を記録に残し、活火山に登る登山者の意識を変えたいと決めた。

 A4判で5枚、約1300字の手紙では「活火山に踏み込むのはすべて『自己責任』という意識と、何が起こるか分からないという『危機感』を持ってほしい」と訴えた。信濃毎日新聞社の緊急報道写真集「御嶽山噴火」を添え、ガイド仲間ら県内外の山岳関係者に送る。

 小川さんは、県内外の生還者とも連絡を取り、経験を共有したいとし、「活火山を登るのに絶対安全ということはない。自然の素晴らしさと同時に、恐ろしさを伝えるのがガイドの役割」と決意を語った。

2014年10月25日掲載