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【社説】

福島県知事選 選択肢奪った責任重い

 原発事故後初の福島県知事選。県政の継承を掲げた前副知事が勝ったとはいえ、各党相乗りにより「脱原発」という重要な争点がぼやけてしまった。有権者から選択肢を奪った各党の責任は重い。

 六人の立候補は福島県知事選では過去最多だが、論戦は盛り上がりを欠いた。国政では激しく角突き合わす自民、民主両党が相乗りしたためにほかならない。

 初当選した内堀雅雄氏(50)は、民主党参院議員から転じた佐藤雄平現知事の下、副知事を務めた。三選立候補を見送った佐藤氏から事実上、後継の候補に指名され、民主、社民両党がまず支援を決め、自民党が相乗りした。

 自民党は、県連が擁立決定した候補を、安倍晋三首相率いる首相官邸と党本部が引きずり降ろして相乗りを決める異例さである。

 七月の滋賀県知事選では党推薦候補が敗れた。十一月の沖縄県知事選でも、米軍普天間飛行場の名護市辺野古への「県内移設」容認に転じた、自民党が推す仲井真弘多県知事の劣勢が伝えられる。

 福島で敗れれば、知事選三連敗の可能性も出てくる。消費税率再引き上げ決定や安全保障法制整備を控える政権運営や来年の統一地方選への打撃を、有力候補への相乗りで避けたかったのだろう。

 十二万人を超える福島県民が今なお、県内外で避難生活を余儀なくされている。厳しい現実は原子力災害に起因していることを福島県民のみならず、すべての日本国民が忘れてはならない。

 今回の知事選は県民自身が「原発との関わり方」をどう考えているのか、意思表示の好機だった。

 六候補が県内の原発全十基の廃炉で一致していたが、内堀氏が県外の原発の是非に踏み込むことはなかった。再稼働を進める自民党の相乗りが影響したのだろう。

 自民党は連敗を逃れた上に原発政策が明確な争点にならず、安堵(あんど)しているのだろうが、有権者から選択肢を奪った責任は重い。

 相乗りを認めた民主党側も同様だ。政権奪還に向けた反転攻勢の好機を自ら放棄したに等しい。

 内堀氏は医療、ロボット、再生エネルギーなど先端産業の集積を進めると公約した。復興推進や被災者の生活再建、賠償実現とともに応援したい。

 選挙戦では「言うべきことは言う」とも強調した。官僚出身ではあるが、政府に遠慮せず、県民の思いをぶつけてほしい。それが県民の負託に応え、国内外に「福島の今」を発信する道である。

 

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