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 御嶽山の山頂付近で噴火に遭い、岩陰で噴石から身を守った山岳ガイドの小川さゆりさん(43)。「地獄絵図だ」。噴火から約1時間後、視界が開け、目に飛び込んできた真っ黒な景色にぼうぜんとした。

 2週間ほど前、一時的に御嶽山で火山性地震が増えたのはニュースで知っていたが、ガイドの下見をする必要もあり気にしていられなかった。

 次の噴火が起きるかも知れない。下山するのに「お鉢巡り」と言われる周回コースは起伏が激しく、走りづらい。反時計回りに進んでも30分はかかる。

 くぼ地となっている「お鉢」を突っ切る「近道」を選んだ。灰をかぶった斜面をかかとで滑るように進んで15分。登山道に出て、避難小屋「覚明堂」に駆け込んだ。少しでも早く、遠くへ。地形を考えた上の選択。「生きるためだった」

 山岳ライターの垣外(かいと)富士男さん(63)=長野県松本市=は噴火時、八丁ダルミにいた。青空に上る噴煙が目に飛び込み、カメラのシャッターを押した。悲鳴が聞こえ、走り出した。

 すぐに火口と反対側の東側の斜面に向かった。数秒後、黒煙で視界は真っ暗に。灰が混じった熱風が押し寄せる。灰を何度指でかき出しても、口の中にたまる。「熱い」「苦しい」。言葉が漏れた。

 ゴロゴロと噴石がぶつかりあう。黒煙の中をおしりをつきながら進み、体が隠れる岩陰を見つけ、もたれかかった。10分ほどすぎ、さらに視界が開けた。がむしゃらに斜面を下り続け、9合目の王滝頂上山荘にたどりついた。

 30回ほど登った御嶽山。「幸運にも生き残った」。ザックに入れていたアルミ製のコッヘル(調理器具)が少しへこんでいた。(榊原織和、横川結香)