13.08.03
ななくさ農園&ななくさナノブルワリーオーナー
関 元弘 さん
1971年、東京・北区赤羽生まれ。父親の転勤で金沢、名古屋に住む。宇都宮大農学部卒業後、97年に農水省に入省。2006年に二本松市(旧東和町)に移住し、有機農業に取り組む。農業の6次化に積極的に取り組み、自ら、地発泡酒の製造を行なうと共に、地域の仲間と「ふくしま農家の夢ワイン㈱」を立ち上げ、果実酒の製造も行っている。また、行政区、消防団など各種地域活動にも積極的に参加し、地域の一員として忙し
い田舎暮らしを満喫している。夫人と2人の子どもとの4人暮らし。
ななくさ農園&ななくさナノブルワリー オーナー/
ふくしま農家の夢ワイン株式会社 取締役/
あぶくま農と暮らし塾 幹事/
二本松市消防団ラッパ手
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■自分、酒好きだから、じゃあ酒でもつくるか
──では3つ目のキーフレーズにいきたいと思います。3つ目はこちら。『アルコールツーリズム×循環型エネルギーで持続可能な農村へ!』ということでですね。アルコールツーリズムとは初めて聞いたような言葉なんですけども。そういうのが持続可能な農村につながるということなんですけど、どういった内容のことなんでしょうか。 非常に微妙な(笑) アルコールツーリズムって別に取って付けたようなね、なっちゃったけど。まぁ、自分自身ね、この(キーフレーズ)1の「加工する」という中で、何に取り組むかって言う時に、まぁいろいろありましたね。パン屋とか漬け物つくるとか。でもみんなそういうのやってるじゃないですか。で、自分、酒好きだから、じゃあ酒でもつくるかということで。 ──おー。 お酒の原料を、発泡酒なんですが、取って自ら加工を始めたところなんです。当然それは、つくって並べて売るんじゃなくて、来て呑んでもらうか、楽しんで呑んでもらうか、したいんですよね。だから交流と連動させていく、させる事が大事だと思ってるし。自分だけやっても面白くないんですよ。で、発泡酒がとりあえずできたと、道の駅の方では今、委託製造でね、つくった日本酒があって、焼酎があって、リキュールがあるんです、とりあえず。で、これ発泡酒でビールができて、次があとワインなんですよね。で、今その東和地区の中で果実酒特区、ワイン特区に取り組む機運があって、もう今年には市役所に申請してもらって。もう今年、去年からぶどう植えてる方がいらっしゃるんで、早速もう今年度中にワインの免許を取ってやろうという話が進んでる。 ※2013年8月現在、ふくしま農家の夢ワイン株式会社として、ワイン創りに取り組み中。 ──へー。 ほんと東和に来ると、何でも呑める。 ──そうですね。 もう呑んだくれにとっては天国(笑) で、それは単に呑むだけじゃなくて、来て、ぶどうのね、剪定作業(? 01:58)とか。麦まきやるとかいろんな農作業体験とリンクさせながら。さらに醸造も体験できて。 ──へー。 最終的にそれを呑むと。種蒔きからね、楽しめるビールづくりみたいな感じで。 ──それ酒呑みにはたまんないですね。 ですよね。だから「アルコールツーリズム」みたいな。ちょうど原発の関係で、子どものプロジェクトがだいぶ福島ダメんなちゃったから、だったらもう放射能、放射瀬の影響受けても大丈夫な大人を対象に。アルコールは大人だけだし。 ──はい、そうですね。 そういうのを対象にやるのがいいのかな。アルコールツーリズム。呑めば、泊まるしかないので。うん、それもまた一つ。 ──あー、はい。 農家民宿も7件くらい今年から動き始めるので、ちょうどいいのかな。■お酒だけども、もとを辿れば農産物からつくる、農産加工品でしかないので、やっぱりそのベースには農業がある
──へー。 アルコールツーリズムだ。ははは(笑) ──すごいですね。なんかこのビールとかお酒を中心にして、何かいろんなものがつながって…… そうですよね。それはあくまでも、お酒っていうのは、お酒だけども、もとを辿れば農産物からつくる、農産加工品でしかないので、やっぱりそのベースには農業があるんですよね。で、しかもその農業体験だけじゃなくて、来て楽しむなんかね、農村の生活っぽいのを楽しめるようにすれば、なんか良いのかなって。自分それいいなと思って、やりたいことなんですけど(笑) ──あー、いいですね。しかもこう、ビールじゃなくて発泡酒で取って。 うちはそうですね、ビール免許だと量が多すぎて取れないこともあるんですけど、発泡酒だといろんなビールができんですね。野菜のビールとか果物のビールとか。あとハーブのビールとか。可能性が発泡酒の方が無限に。 ──いろんなものをこう混ぜちゃって…… うん、だから自分でつくった。で、麦にこだわらず、自分のね、リンゴをやってたらリンゴのビールつくってくれって言ったらそれもつくれるし。今も洋梨のビールは頼まれて、つくってるんですけど。やっぱり、そういうね、自分の農産物でつくりたいって気持ちを持たれる方は結構いらっしゃる。そうなるとやっぱ発泡酒の方が。まぁもちろん果物そのものはワインにもできちゃうけど、いろんな選択肢を揃えていくのは地域として必要だし。ちょうどこの発泡酒免許は取りやすかったのもあるし。取り組みやすいってのもあるし。良いのかなぁ、と。はい。■材料のある限り、その分のビールができる。
──あー。それ面白いですね。またこの自然なので、山々にもいろんな材料がありますもんね。 そうですね。里山に眠ってるね、そのまさに木の実だ、葉っぱだっていろいろなものが使えるんで。今はちょっと問題はあるかも知れませんけど。 ──まぁ、そういったところの安全性さえ…… そうそうそうそう。けっこうその、未利用資源っていうのが里山にはあってね。だって、キウイは猿梨(さるなし)だろうし、ブルーベリーは何だっけな、何だっけ…… 夏櫨(なつはぜ)だ。 ──ほう。 和風のブルーベリー。結局その原型になるものって日本の里にはあるんですよね。外国から持ってこなくても。 ──そうなんですね。はい。 そういうものを、ビールのみならずね、ジャムにしたり、やり方あると思うんですけど。私はそれをビールにしてやろうかなと思ってるんです。 ──それはちょっと僕も呑んでみたいですね。 ははは(笑) これから、これから。 ──いろんなビールが…… 可能性は無限ですよね。材料のある限り、その分のビールができる。 ──ここに来ないと呑めないですもんね。 そう。そういうものをつくりたいですよね、やっぱり。 ──また、車でじゃないと来れないって言う立地が良いですよね。 そう、JR走ってませんから(笑) ──来たら泊まらざるを得ないっていう…… そう。やっぱり農家民宿も7件、今年から動くって言ってたから、ちょうど良いのかな。自分も納屋とかで始めてやっかなぁって思って(笑) ──すごいですね。罠ですね、罠。 そう、来たら呑まして、通報しますよって。はははははは(笑) ──おあつらえ向きの部屋がありますよね。 そうですね。そういう風にできれば良い。この場もそういう風に使いたいなぁと。■ 四方八方から蜂の蜜を集めてくる。そういう意味で恵みをいただいてくる生き物だから、ビーヤ
──そうですね。ここ見ていただければ分かるように、バーカウンターになってるんですね。ちょっとこれ見えますかね。「NANAKUSA NANO BREWERY」。可愛らしい看板なんですけど。 うちの製造上の屋号です。「NANAKUSA NANO BREWERY」。ちなみにその絵は嫁が描いたやつ。 ──奥さんの。めっちゃくちゃ可愛らしいですね。 ビーヤ君です。 ──ビーヤ君(笑) 今ちょっと、まだ税務署と調整中なんです。NANAKUSA ビーヤって名乗ってんのうちは。商品名「NANAKUSA ビーヤ」って。そしたら税務署がこれビールと間違えるからどうなのとか言われて。いや、ビーヤ君だからビーヤですって今言い張ってる(笑) そう、もう突っ張ってこうかなと(笑) ほんとは発泡酒だからビールって名乗っちゃいけないんです、絶対。紛らわしいから。 ──あーあー。 「いや、商品じゃないんですよ。キャラクターなんですよ。ビーヤ君がつくってるからビーヤなんだよ」って。で、税務署の人、「んー…… 微妙ですね……」って(笑) ──蜂のbeeですね。 そうそう、四方八方から蜂の蜜を集めてくる。そういう意味で恵みをいただいてくる生き物だから、ビーヤ。良いな。 ──全く問題ないですよね。 そう、決してビールじゃないんですよ(笑) でも税務署は「微妙ですねー…… うーん、上と相談します」って言ってたんで、まぁどうなんだろう。ちょっと心配です(笑) ──NANAKUSA NANO ってどういう言葉ですか。 日本中に地ビール屋さんて結構あるんだけど、多くの方がマイクロブルワリーって言うんですよね。大手のナショナルブランドに対して、手作りやクラフトだって言うように、マイクロブルワリーって名乗るんですよ。私はそんなよりも小さいからもう1個下げて、別になんだ、iPod nanoをパクった訳じゃない。より小さいという意味で、ちょっと付けさせてもらっただけです。 ──へー。 いいじゃないですか。●●(聞き取り不可 07:21)NANAKUSA NANO BREWERY(笑) ──いいですね。 噛みそうで(? 07:24) ──何か柔らかいイメージもあって…… キャラクター路線なんで、うちは。 ──まぁ何かここに来れば、ここの場所でも呑めると。 そうです。いつでも提供しますよ。 ──地域の方も時々来られたりとか…… やっとこれ、先月からつくり始めた段階で、まだまだですよ。だから、ここで飲み会やっても良いのかなと思ってますけど。 ──そうですね。なんかそういった地域の方との交流…… できれば良いですよね。うん、下に提灯でもぶら下げて(笑)■やっぱりここに来れば、人と環境に優しい農業と生活ができるっていう風に提案できるようになりたい
──「NANAKUSA NANO BREWARY」良いですよね。でも、そういうアルコールツーリズム、あと循環型エネルギーって書いてあるんですけど…… やはりその、さっき言ったように、里山ってね、何でも資源があるという風に言われてるし。実際にそのね、ここら辺に住んでいるじいさんばあさんに話を聞くと、昔ってほんとに全部を地域の中でまかなってた訳じゃないですか。山に行って草刈って、それを牛に食わせて糞を畑に戻して堆肥にして。で、さらに薪(まき)とか、子どもが木っ端を拾ってきて、学校帰りに、それを焚き付けの火にして。で、親父が切った薪で、こう風呂焚いたりしてた時代があったわけじゃないですか。聴くとほんとにエコロジーなんですよね。で、今って山が荒れて使われてない訳じゃないですか。だから、もしかしたら、そのエネルギーがね、供給できるくらいのあれがあるんじゃないのかなぁって誰もが思うことだし。もちろん、薪や炭だけじゃ限界はあると思うんですけども、でもやっぱりそういうものをまず、我々が使うことを大事にですね、まず。一時的に利用する。 ──はい。 で、もっと大きい燃料、木質バイオマスなんて今、言われてるけど、エネルギーはつくれるんですよね、●●(聞き取り不可 09:05)。それもできればなお良いんだけど。これは自分の話じゃないけども。 ──川もあるので。 そう、小規模な水力発電もできるし、よく言ってるソーラーパネルもその、中山間地域の斜面なんかを見てね、草刈りなんかもビッチリ。そりゃ金かかりますけどね、その分ね。そういうのもできるし、当然ながら木質バイオマス。日本って、アジアのこの気候ってのはすごく恵まれてるから、すごい成長量があるんです。雑草にしろ木にしろ。あれね、毎年何億立米(りゅうべい)が、ぐっと在籍(? 09:38)が増えてる訳でしょ、木が。それを結局使わずにぶん投げてく訳でしょ。それをもしかしたら、エネルギーにすれば、少しでも環境に優しい生活ができんじゃないのかなーって思ってますね。 ──あー。 まず、それは大きな話だから、自分は山に行ってね、木切って薪を使うとかそっから入ってくことをやんなきゃいけないと思ってます。 ──そういったものはやっぱり、その都市との交流の中で…… そうですよね。できれば良いですよね。やっぱりここに来れば、人と環境に優しい農業と、生活ができるっていう風に提案できるようになりたいですよね。 ──そういった自然エネルギーとか循環型エネルギーとか、言葉ではいろいろと出てきたとしても、それを実際に体験できる場所がまだ存在しない…… それはそう、それやりたいですよね。で、それはしかも体験だけじゃなくて、自分の生活に取り込まれるような努力を、自分もしなきゃいけないんでしょうけどね。はい。だから、それができてくると面白いのかなーって気はしますよね。■自分たちでお金の流れをつくって、で、エネルギーと食料の輪をつくれば、結構、豊かな農村になれる
──だからこういったまぁ、その、えーと、何て言うんですかね、場所的には不利な場所にある農村っていうのも、そこに価値が出てくる…… まぁ、そうですよね。私はそう思うんですけど。うん。 ──はい。それでこの持続可能な農村へ…… で、最終的にそれができてくると、食料とエネルギーが自給できて、しかも都市から(キーフレーズ)2のような仕組みがあって、都市からお金が還流する仕組みができれば、自立した農村ってできると思うんですよ。 ──はい。 外部に依存…… 外部に依存しないという言い方変だな、その補助金を貰ってたって何だって、その疲弊しない農村っていうんですか、ずっと続いていける。 ──お金がなかったとしても…… そう。やっぱり自分たちでお金の流れをつくって。で、エネルギーと食料の輪をつくれば、けっこう豊かな農村になれそうな気がしますよね。■自分が農業やってて1番思うのは、やっぱり続いていくことが大事だよね。100年後でも200年後でも。だから、そのための仕組みをやっぱり意識しないといけない
──はい。 やっぱりその、自分がここで農業やってて1番思うのは、やっぱり続いていくことが大事だよね、農業って。100年後でも200年後でも。だから、そのための仕組みをやっぱり意識しないといけないのかなと。ここ5年、10年なんとか乗り切ればいいやじゃなくて、100年後も同じ生活をしているようなことを意識をしたいので、やっぱり自立する農村って大事。そういう意味で、大事だと思うんですよね。だからそうなるように、頑張っていかなきゃと。 ──おー、なるほど。良いですね、そういうのがお酒を楽しむっていうところから、そういうのがスタートするっていうのが…… 足元から楽しむ。 ──まずは足元から楽しむ。 はははは(笑) そうそうそう。あんまり真面目なこと考えると、頭が難しくなって落ち込んじゃうんで。まずはですね、始められるところから。 ──そうですね。そういう大きな目標もありつつまずは…… 足元から(笑) 明日死ぬかも知れませんから(笑) ──いつでも満足して逝けるような…… そう、それしかないですよね。やっぱり。 ──ていうことでですね、まだまだ本当にお聴きしていきたいところなんですけど、お時間の方もやって参りましたので。 脚も(ストーブの熱で)熱いんで(笑) ──ほんとにこんな寒いなか…… いえいえ、こんな暑くなっちゃった。 ──本日はこの3つのキーフレーズでお話をいただきました。ほんとにですね、もう自分なんか京都から来させていただいてますけども、そういった昨年のいろんなことがあった中でも、すごく前向きに、むしろチャンスに変えてやろうぐらいの勢いで取り組まれてこられて。やっぱり都市とか、まちの方に住んでる人間からしても、ほんとになんか新しい、いろんな気づきといいますか、学びをいただいたような感じがしました。ぜひですね、この、品質、加工、交流、3つの柱というのを、3つとも全部すべてがバランスよく実現するような…… うん、そうですよね。 ──新しい村の、農村のこうモデルというのをつくっていただきたい…… できればいいですね、ほんとに。がんばんなきゃいけないですね。 ──はい。それがまぁ福島全体に広がっていって、起点になりそうな気がしますんで。はい、ほんとにまた遊びにこさせて下さい。 どうもどうも。 ──またじゃあぜひ、このアルコールツーリズムが企画になりましたら…… 頑張りましょう。 ──ご覧の方も来ていただいて。 消費者あっての農業ですから。 ──それでは、本日はこのキーフレーズのお話をお聴きしました。では次回のふくしま人図鑑でお会いしましょう。さよなら。 【参考】関元弘さん関連ページ ・ななくさ農園 ・Kon's Farming Diary in Fukushima 福島で農家をめざすコンの日記(blog) ・おいしい里山生活 Creative Rural Life(奥様のblog)| 都市の発想と田舎の和でつくりあげる有機農業〜品質を高める、加工をする、交流する〜 |
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