■「中途半端な決意ではできない」
ジョンミン役を演じるカン・ハナ(15)は、大阪の在日韓国人劇団「タルオルム」金民樹(キム・ミンス)団長(40)の娘だ。キム団長は慰安所を管理する日本人女性「ノリコ」を演じるため、母娘共演となる。日本の右翼は慰安婦問題に非常に敏感だ。鶴橋のほか、難波など大阪の繁華街にも「ゴキブリ朝鮮人は出て行け、関東大震災時のように皆殺しにしてやる」という嫌韓スローガンが響くのは日常茶飯事だ。在日韓国人にとって今回の映画出演は危険をはらむ可能性もある。しかし、カン・ハナは「中途半端な決意ではできないと思う。いったん始めたのだから怖くない」と言った。
日本人兵士役の在日韓国人俳優ユ・シン(45)=横浜在住=はこの日、表情の演技だけの撮影だったが、「殺したいと思った」と言われるほど絶賛された。将校役の在日韓国人俳優チョン・ムンソン(46)=横浜在住=は「私たちは韓国では『半チョッパリ』(チョッパリ=日本人の蔑称〈べっしょう〉)で、日本では『戦争孤児』だ。怖くないかと言えばうそになるだろう。それでも日本人の友人は私の説明を聞いて制作費を寄付してくれたし、公開されたら是非見にいくと言ってくれた。きちんと伝えることさえできれば、日本人もこの痛みを理解してくれるだろう」と話した。
この映画は、今年の冬に子役たちの心理治療を兼ねた合宿を経て、来年上半期ごろ中国ロケが行われる。そして70周年を迎える来年8月15日の光復節の公開を目指す。
■「制作費は大幅に不足」
制作サイドは『鬼郷』公式ホームページを通じ、クラウドファンディング方式(インターネットを通じて広く資金を調達する手法)で寄付を募っているが、約20億ウォン(約2億円)と予想される制作費にはまだ大幅に足りない。在日韓国人たちが寄付した5000万ウォン(約500万円)、米国在住のユ・ヨング後援会長がアリゾナ州の韓国系商店に映画のポスターを張って集めた5000ドル(約54万円)などを含め、現在までに集まった制作費は約1億2500万ウォン(約1280万円)だ。
チョ監督は「外国に連れていかれ、戻れなかった方は数万人に達するという。その方たちの魂だけでも祖国に戻って来られるようにしたい」と話した。