October 27, 2014
恋の苦労は時として劇的なものとなる。ノガン(Otis tarda)のオスも例外ではない。有毒な甲虫を食べるという一見危険な食行動が、実は交尾相手の獲得に役立っている可能性があることが最新の研究で分かった。
ヨーロッパの一部およびアジア原産の大型の鳥、ノガンが有毒な昆虫を食べることは、研究者の間ではすでに知られている。腸の中の細菌、線虫、サナダムシといった特定の寄生虫を駆除し、消化器官を掃除するためだ。
しかし新たな研究で、ノガンのオスはツチハンミョウ科の甲虫をメスよりかなり多く食べることが分かった。これにより求愛行動に際して健康に、すなわち魅力が増して見えるのだという。
もしそうだとすれば、「今回の発見は、オスがメスを引きつけるために『セルフメディケーション』(自己治療)を行うことが初めて知られた例かもしれない」と論文の著者らは述べている。
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ヨーロッパの一部およびアジア原産の大型の鳥、ノガンが有毒な昆虫を食べることは、研究者の間ではすでに知られている。腸の中の細菌、線虫、サナダムシといった特定の寄生虫を駆除し、消化器官を掃除するためだ。
しかし新たな研究で、ノガンのオスはツチハンミョウ科の甲虫をメスよりかなり多く食べることが分かった。これにより求愛行動に際して健康に、すなわち魅力が増して見えるのだという。
もしそうだとすれば、「今回の発見は、オスがメスを引きつけるために『セルフメディケーション』(自己治療)を行うことが初めて知られた例かもしれない」と論文の著者らは述べている。
◆メスによる身体検査
交尾期の間、オスは「レック」と呼ばれる場所に集まり、交代でメスへの求愛を試みる。オスは体をひねって胸と尻にある真っ白な羽毛を見せ、さらに特殊な喉袋に空気を吸い込み、羽毛のない首の皮膚2カ所を膨らませる。
ノガンのオスが体を誇示する求愛の最高潮の場面を見れば、メスはオスの体の前面にある、毛づくろいされて大きく膨らんだ羽毛に魅力を感じるのだと思うかもしれない。しかし、この行動を何秒か観察していると、成否の鍵を握るのはむしろお尻だと気が付く。
◆では、メスは一体何をチェックしているのか。
「やや生々しい言い方になるが、オスの生殖器が巨大かどうかを見ているわけではなさそうだ」と話すのは、カリフォルニア大学リバーサイド校の進化生物学者で今回の研究には関わっていないダフネ・フェアベアン(Daphne Fairbairn)氏だ。
むしろ、メスはオスの総排出腔の良し悪しを見ているらしい。総排出腔とは生殖、排尿、直腸機能をすべて兼ねる開口部で、メスは交尾で伝染する病気をオスが持っていないか、この部位を見て判断しているのだ。
◆毒もいとわず
ノガンはオス・メスともにツチハンミョウ科の甲虫を食べる行動が観察されている。しかし、一度に食べるのは通常わずか1~3匹。食べ過ぎると他の動物同様、カンタリジンという毒成分にあたって死んでしまう。今回の研究のプロジェクトリーダーで、スペイン、マドリードにある国立自然史博物館研究教授フアン・カルロス・アロンソ(Juan Carlos Alonso)氏は、「ちょうど適量であれば、ツチハンミョウ科の虫はノガンの寄生虫を駆除できるのかもしれない。少なくとも、寄生虫は別の宿主を求めて体外に出ていくのだろう」と話す。
「オスは春の交尾期間中、求愛行動がストレスとなるため寄生虫に冒されやすい」とアロンソ氏。
研究チームは、スペイン中部で野生のノガンのふんサンプルを大量に集めて分析。交尾のとき以外はオスとメスは別行動をとるため、オスとメスのふんは容易に区別できた。
他の餌を選択肢として与えられたとき、オスは明らかにツチハンミョウ科の甲虫を選んでいたが、メスは特に選り好みしなかった。また、オスはその中でも一番大きなものを選んだのに対し、メスには特定の選好は見られなかった。
アロンソ氏らは、ツチハンミョウ科の甲虫を適量摂取するオスは寄生虫を宿しにくく、したがってメスによる「最終チェック」をパスして求愛に成功する確率も高まるとの見方を示している。
今回の論文は、10月22日付で科学誌「PLOS ONE」に掲載された。
Photograph by Franz-Josef Kovacs