「歳のせいだから仕方ない」そう言って、ごまかしていないだろうか。最近目立ってきたもの忘れは、認知症の前ぶれかもしれない。それはまだ、「手遅れ」にならずに済む段階なのか。
カギをかけたか不安になる
のど元まで出かかっているのに、どうしてもその名前が出てこない。
「またか……」
埼玉県に住む笠井信二さん(68歳・仮名)は不安を覚えた。この土地に引っ越してきてから、30年以上も家族ぐるみの付き合いをしているご近所さんの名前を、不意に忘れてしまうのだ。
「『○○さん』と呼びかけようとしたのですが、出てこないから、そういうときは『こんにちは』と名前を呼ばずにごまかします。最近、よくあるんですよね。あとで自宅に戻って妻と話をしていると、ふと思い出すのですが。妻との会話は最近、『あれ』『あの人』なんて代名詞ばかりで、うんざりします」
誰しも思い当たる節があるのではないか。覚えていて当たり前のことがどうしても思い出せず、もどかしく感じる。若い頃なら「オレもボケたか」などと冗談にできたが、60歳を越してもの忘れが増えてくると、笑えなくなってくる。本当に自分はボケ始めているのではないだろうか—その不安が徐々に襲いかかる。
いま日本では急速に認知症患者が増加している。厚生労働省によれば、'12年時点で、65歳以上の認知症の患者数は約462万人。「認知症予備軍」を含めると860万人以上にのぼる。昨年出された九州大学の研究チームの発表では「(患者数は)20年前の6倍に増加している」という。予備軍を含めれば、65歳以上では4人に1人が認知症。歳を重ねるほど、その割合は急激に上がっていく。
加齢とともに身体だけでなく脳の働きも衰えるため、年相応にもの忘れが生じるのは当然のこと。だが、一口に「もの忘れ」と言っても、「単なるもの忘れ」と「認知症の前兆」があり、現れる頻度や回数といった数値によって「認知症度」も異なってくるのだ。
「中高年から悩み始める『もの忘れ』と、認知症の初期症状はまったくの別物です」
おくむらクリニック(岐阜県)の院長で、『もの忘れは治る!』などの著書もある奥村歩氏はこう言う。
いったい、どんな違いがあるのか。まずは、中高年によくありがちな事例で紹介していこう。
(1)会社を経営する木村晶彦さん(68歳・仮名)は、60代後半に突入して、記憶力の低下を身に染みて感じている。
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