前回は移動ユーザープロファイルの問題点を投稿しました。

その中で肥大化したプロファイルのコピー問題に関する解決策の一つとして『フォルダリダイレクト』を記載しました。

今回は、この『フォルダリダイレクト』に関するメリットと問題点に関して考察していきたいと思います。

フォルダリダイレクトは、知りうる限りでは(WindowsNTの頃はなかったように記憶していますし、検索しても出てこないもので……)Windows2000から実装された機能になります。

機能的には、『特定のフォルダをネットワーク上の共有フォルダにリダイレクトする』という、ごくごく単純な機能になりますが、通常の共有フォルダとの違いは、『あたかもローカルフォルダのように扱える』というものになります。

リダイレクト可能なフォルダはOS(具体的にはXP以前とVista以降)によって異なりますが、ここではWindows7でリダイレクト可能なフォルダを列挙します。

・AppData(Roaming) :C:\Users\<ユーザー名>\AppData\Roaming
・連絡先:C:\Users\<ユーザー名>\Contacts
・デスクトップ:C:\Users\<ユーザー名>\Desktop
・ドキュメント:C:\Users\<ユーザー名>\Documents
・ダウンロード:C:\Users\<ユーザー名>\Downloads
・お気に入り:C:\Users\<ユーザー名>\Favorites
・リンク:C:\Users\<ユーザー名>\Links
・ミュージック:C:\Users\<ユーザー名>\Music
・ピクチャ:C:\Users\<ユーザー名>\Pictures
・保存したゲーム:C:\Users\<ユーザー名>\Saved Games
・検索:C:\Users\<ユーザー名>\Searches
・スタートメニュー:C:\Users\<ユーザー名>\スタート メニュー
・ビデオ:C:\Users\<ユーザー名>\Videos

数えてみると、13項目ですね。項目の後ろに記載したパスはコマンドプロンプトから見た場合の通常状態のパスになります。

共通しているのは、全てプロファイルデータとなる為、パスが『C:\Users\<ユーザー名>\』になっている点です。

この状態で、例えばドキュメントフォルダをエクスプローラーから見てみます。

こんな感じで、パスがC:\Users\<ユーザー名>\Documentsになっている事を確認できます。

では、実際にフォルダリダイレクトを設定してみます。

フォルダリダイレクトはグループポリシーで設定しますので、フォルダリダイレクトを行うユーザーのOUでグループポリシーを設定します。

設定箇所は『ユーザーの構成』→『Windowsの設定』→『フォルダーリダイレクト』となり、リダイレクト可能な13項目に対して、それぞれリダイレクトの使用/不使用、リダイレクト先の共有フォルダを設定します。

設定としては、

1)基本:全員のフォルダーを同じ場所にリダイレクトする(上記の画面)

2)詳細設定:ユーザーグループ別に場所を指定する

の二つが選択でき、詳細設定の場合は、設定済みセキュリティーグループ単位でリダイレクトの設定(共有フォルダ等)を指定する事ができます。例えば設定済みセキュリティーグループごとにリダイレクト先ファイルサーバーを変える場合なんかは、詳細設定を選択するとよいかもしれません。

リダイレクト先は4つの設定が可能です。

『ルートパスの下に各ユーザーのフォルダーを作成する』を選択すると、『\\サーバー名\共有名』を指定する事により、同一の共有フォルダへユーザー名で自動的にフォルダが作成され、リダイレクトされることになります。

実際の運用の現場では、(特にドキュメントフォルダは)この『ルートパスの下に各ユーザーのフォルダーを作成する』か『ユーザーのホームディレクトリにリダイレクトする』のどちらかになるのではないかと思います。

また、ピクチャー、ミュージック、ビデオの各リダイレクト設定は『ドキュメントフォルダーの設定に従う』という設定も可能です。特にドキュメントフォルダーと分けて管理する必要がなければ、上記の設定をする事も現場では有用かと思います。

設定が終わったところで、実際にフォルダリダイレクトを設定したユーザーでログオンしてみます。

例えばドキュメントフォルダをエクスプローラーから見てみましょう。

設定された共有フォルダにリダイレクトされている事が判ります。

では、同一のクライアント上でフォルダリダイレクトが設定されたユーザー/設定されていないユーザーのログイン直後の『C:\Users\<ユーザー名>』の内容、容量を比較してみます。

まずは、フォルダリダイレクトを設定していないユーザー。

普通に各フォルダがありますね。

容量もそれなりにありますね。

では、フォルダリダイレクトを設定したユーザー。

フォルダリダイレクトを設定したフォルダ群(ex:Documents)が一切ありません。

つまり、フォルダリダイレクトが設定されたフォルダは、ユーザー側からは変わりないように見えて、実は直接共有フォルダ上のリダイレクトされたフォルダにアクセスさせられている、という形になっています。

という事は、移動ユーザープロファイルを設定した場合、これらのユーザードキュメントが格納されたフォルダはコピー対象外、となります。

劇的な容量削減が見込める、と思いきや……。

あまり容量が減っていませんね……。

とはいえ、容量は減っていますので、リダイレクト対象フォルダは移動ユーザープロファイルに含まれないという事が判ります。リダイレクトフォルダの容量が増加しても移動ユーザープロファイルの容量は増えないので、ログオン/ログオフの時間短縮が可能という事ですね。

この一見便利なフォルダリダイレクトですが、いくつか問題点があります。

一つは『オフライン問題』。

共有フォルダにリダイレクトしている為、ネットワークに接続されていないと、ファイルの一切が見えなくなります。『オフラインキャッシュ』という、オフライン時には事前にキャッシュしたものを利用し、オンライン後に同期する機能もありますが、キャッシュできていなければ真っ白、という感じです。

ですので、基本はネットワークがつながっている状態で、となります。

もう一つがリダイレクトできるフォルダが『ユーザーに依存するフォルダのみ』であり、ローカルコンピューターに紐付く設定はリダイレクト対象にできない、という点です。

それが先ほどの例での容量にあまり違いがない、という点につながっています。

先ほどの例では容量にあまり違いはありませんでしたが、実際どこが容量を食っているのでしょうか?

リダイレクトを設定したプロファイルで21MBほどあったローカルフォルダ容量ですが、この3/4近くを占めているのが、

Windows Mailのフォルダでした。パスは『C:\Users\<ユーザー名>\AppData\Local\Microsoft\Windows Mail』になります。

『C:\Users\<ユーザー名>\AppData』以下のフォルダは、『C:\Users\<ユーザー名>\AppData\Roaming』はリダイレクト対象になりますが、それ以外『C:\Users\<ユーザー名>\AppData\Local』と『C:\Users\<ユーザー名>\AppData\LocalLow』はリダイレクト対象になりません。

従っては『C:\Users\<ユーザー名>\AppData\Local\Microsoft\Windows Mail』はリダイレクトできずに移動ユーザープロファイルに残ってしまいます。

フォルダリダイレクトを意識せずに作られたアプリケーションは、リダイレクト対象フォルダ以外(酷いときにはプロファイルフォルダ以外)にユーザーファイルや設定ファイルを置いてしまい、移動ユーザープロファイルの運用を困難にする場合があります。

移動ユーザープロファイルやフォルダリダイレクトを利用する場合には、こういった点にも注意が必要です。

……つーか、Windows Mailフォルダが残っているのは、Vista互換の維持の為なんですかね。Windows7でWindows Mailは削除されたような気がしたのですが……。

次回は、移動ユーザープロファイルの破損問題をクリアする為の手段の一つとして用いられている『固定ユーザープロファイル』に関して記載したいと思います。