認可保育所に入れない「待機児童」の数を、国が初めて発表してから来年で20年。この間、都市部を中心に、子どもを保育所に入れる親たちの「保活」は激しいままだ。一体、どうなっているのだろうか?
取材:大井田ひろみ、笹円香 取材協力:「保育園を考える親の会」
制作:上村伸也、小林由憲、白井政行、中西鏡子
少子化が進んでいるのに、保育所のニーズが高まっている。バブル経済が崩壊した1990年代初め、共働き世帯が専業主婦世帯を上回る。保育所を必要とする親が増え、待機児童問題が顕在化したのだ。
もっと詳しく問題の背景にあるのは?
出生数
保育所の定員
保育所の利用児童数
国は2001年、待機児童の定義を変えた。自治体が独自に助成する「認可外保育施設」を利用しながら待機している児童らは、待機児童から除いてよいことになった。厚労省は「自治体が独自の基準を定めて適切な保育をしているため」としている。定義が変わった01年、旧定義でみれば3万5144人(4月1日時点)だった待機児童数は、新定義で2万1201人に「減少」した。
| 1995年 | 96 | 97 | 98 | 99 | 00 | 01 | 02 | 03 | 04 | 05 | 06 | 07 | 08 | 09 | 10 | 11 | 12 | 13 | 14 |
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【用語解説】*用語解説は保育園を考える親の会「100都市保育力充実度チェック」を参考にした(区分は2015年3月末まで。それ以降は認可保育所の種類が広がる)
| (1)認可保育所 | 施設の広さや設備、保育者の資格や人数などについて、国の基準を満たして認可された保育所。保育料は、世帯の所得に応じた軽減があり、市区町村ごとに異なる。自治体ごとに第2子の保育料を減免するなどの配慮もある
▼もっと詳しく
①公立▪▪▪市町村が設置する保育園。公設公営の場合は、保育者は市町村職員でベテランが多いのが特徴。同じ自治体では人事異動があり、公立どうしでは保育内容に大きな差はない。運営を民間に委託する公設民営もある ②私立▪▪▪社会福祉法人や株式会社、NPOなどの民間法人が設置運営する。保育内容は園による個性が強く、法人や園長の考えが反映さる。施設や保育者に関する基準や保育料は公立と同じ |
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| (2)認可外保育所 | 認可保育所以外の保育施設。保育料の額は施設ごとに異なる。園庭がないところも多い▼もっと詳しく
①自治体の助成施設▪▪▪自治体から助成を受ける保育施設。東京都の「認証保育所」「保育室」や横浜市の「横浜保育室」など ②事業所内保育所▪▪▪会社や病院が、従業員のために設ける保育施設 ③その他▪▪▪公的な助成を受けていない保育施設。個人によるボランティア的なものから、チェーン展開する企業経営の施設までさまざま |
| (3)認定こども園 | 幼稚園と保育園を合わせた制度 |
| (4)家庭的保育事業「保育ママ」 | 自治体や国が助成する個人の保育で、おおむね3歳までが対象。有資格者や研修を受けた保育ママが主に家庭の中で保育する |
| (5)預かり保育のある幼稚園 | 3歳以上は、正規の時間終了後、夕方まで預かり保育を実施している幼稚園もある |
マップからは全国の市区町村の待機児童数がわかる(各年とも4月1日時点)。都道府県別の待機児童数や保育所定員なども示す。都市部を中心とした100都市については詳しいデータがある。うち、「入園決定率」はその年に新たに入園を申請して入れた割合で、高いほど認可保育所に入りやすいことを示す。「保育料」も比較できる。
10月28日(火)オープン予定 全市区町村の待機児童数を一覧できます。主要都市では、認可保育所への入りやすさを示す「入園決定率」や「保育料」もご覧になれます。
全国の政令指定市と東京23区、東京都の市部で待機児童が多かった計55自治体にアンケートした。待機児童の数え方は自治体の判断に委ねられている。このため、「認可保育所に申請したが入れなかった児童」が多いのに、公表された待機児童数が極端に少ない自治体もある。本当の待機児童とは何か。「実態」がつかめない。
10月29日(水)オープン予定 自治体がそれぞれ決めている「待機児童」の定義を比較できます。
小泉純一郎首相(当時)が所信表明演説で、待機児童の「ゼロ作戦」をはじめて打ち出したのは2001年。以降、さまざまな施策も大きな効果はなく、リーマン・ショック後には首都圏で待機児童数が急増した。少子化の急速に進む地方でも、待機児童が問題になっているところがある。
10月30日(木)オープン予定 働く女性の数と保育所整備の状況から、地域ごとに待機児童問題を読みときます。
待機児童問題について、さまざまな立場から話を聞いた。保育所設置にかかわる自治体のトップや、保育の新たな仕組みを立ち上げた先駆者。それぞれの思いや、解決に向けて行動したことは何か。
10月31日(金)オープン予定 待機児童問題の解決について、保育問題に取り組む3人に聞きました。
◇待機児童対策のため、利用資格や認可施設を広げるよ 〈アウルさん〉保育の仕組みが大きく変わるそうね。〈A〉保育の新制度は来年4月に始まる。政府の有識者会議が先月、利用できる人の…[続きを読む]