御嶽山噴火1カ月:遺品、死を受け入れるため廃棄

毎日新聞 2014年10月26日 22時20分(最終更新 10月26日 22時50分)

一人息子の写真を見つめる秋山則行さん=千葉県市川市で2014年10月26日、荻野公一撮影
一人息子の写真を見つめる秋山則行さん=千葉県市川市で2014年10月26日、荻野公一撮影

 戦後最悪の火山災害、御嶽山(おんたけさん)(長野・岐阜県境、3067メートル)の噴火から、27日で1カ月を迎える。神奈川県厚木市の会社員、秋山浩和さん(25)は同僚8人と登り、頂上付近で死亡した。父則行さん(56)=千葉県市川市=は、無事下山した同僚たちが心の整理がついたころに「息子はどうでしたか」と尋ねたいという。「元気で登っていましたよ」の一言だけでも聞きたいからだ。

 灰にまみれた上着と血が付着したシャツなどと共に亡きがらが実家に戻ったのは、浩和さんの誕生日の今月2日だった。則行さんは遺品をベランダに干したが、涙を抑えられなかった。「彼がそこにいるようでつらかった」。死を受け入れようと、しばらくして廃棄した。

 その後、リュックやデジタルカメラなどが届き、今度は「救助してくださった人たちのご恩を忘れないように」と手元に残した。だが、カメラに残っていたのは御嶽山の紅葉など5、6枚だけ。当時の様子を知る手がかりはほとんどない。

 2011年の入社時に家族3人で撮った写真が置かれた祭壇を前に、則行さんは「その瞬間まで、皆さんとどう生きていたかを知りたい」と語った。【荻野公一】

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