御嶽山噴火1カ月:遺品の写真、見る勇気なく
毎日新聞 2014年10月26日 22時48分(最終更新 10月26日 23時14分)
戦後最悪の火山災害、御嶽山(おんたけさん)の噴火から、27日で1カ月を迎える。愛知県小牧市の会社員、大脇信治(のぶはる)さん(当時40歳)は、会社の同僚4人と登山し、1人だけ生きて帰らなかった。父正恭さん(77)=同県江南市=はまだ、遺品となったカメラに残るであろう写真を見られないでいる。
信治さんは噴火前日、実家に顔を出した。帰り際の「あす、御嶽山に行ってくる。山だから土産はないからね」が、最後の会話となった。7日、八丁ダルミで遺体が見つかった。同僚からは、噴火後も写真を撮っていたため逃げ遅れたのでは、と聞かされた。
カメラはひしゃげていた。メモリーカードは取り出したが「心の整理が付かない。写真を見る勇気がない」という。一緒に戻ってきた信治さんのブレスレットは、形見として右手首に着けている。
週末によく実家を訪れた信治さんに、親類の子供たちは「おじさま」と懐いていた。信治さんが亡くなってから、めい(5)は遺影がある部屋に入ろうとしない。ただ、部屋の戸を閉めると「おじさまが寂しがるから、少し開けといて」と言い、隙間(すきま)からのぞくという。【式守克史】