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【ギャンブル依存症】人生破綻、家族も翻弄 カジノ解禁「深刻化招く」 


 カジノを合法化する統合型リゾート施設整備推進法案が注目を集めている。安倍政権は成長戦略の目玉に掲げるが、懸念されるのが、時に家族や周囲の人生まで翻弄(ほんろう)するギャンブル依存症患者の増加だ。患者に接する医師らは「カジノ解禁は人生を破綻させる人をさらに増やす」と警告する。

 ▽転落

 「『最初の賭け金さえあれば一発逆転できる。明日の資金をどう調達しようか』とばかり考えていた」。仙台市の60代男性はギャンブルにのめり込んだ日々を振り返る。

 中学生で花札を覚えた。パチンコやマージャン、競馬と手を広げ30代でポーカーにはまった。会社では業績を挙げたが韓国出張のたびにカジノに入れあげ、消費者金融などから借金を重ねた。返済を迫られると「今度だけは」と親族や会社に泣きつき肩代わりしてもらうことを繰り返し、借金は累計1500万円に。

 30代後半で自己破産した。それでも給料をつぎ込み、妻が隠した通帳や印鑑をあさった。友人などからも金をかき集めては非合法の賭博場へ。最後はポーカーゲーム機の前にかじりつき、数十円単位で賭けた。ある日、ふと、自分に向けられた店員の視線に気付く。「あいつ、やめられなくて今日も来たよ、とあざ笑う目」。惨めだった。

 40歳で退職し、依存症を専門に扱う精神科に通い始めた。自殺を何度も考えたが、同様に悩む人が集う自助グループに参加し、再就職して生活も徐々に立て直した。でも、振り回した家族の人生は元に戻らない。

 男性は自らを省み、強調する。「カジノができればパチンコなどより大きな金額が動く。当然、破綻する人は増える」

 ▽待機患者

 借金、失職、離婚、犯罪、自殺…。深刻な問題につながるのにギャンブルをやめられない状態を専門家は病気と捉える。

 だが身体的不調を感じることは少なく、本人は病気と気付きにくい。2011年の厚生労働省調査では、医療機関を受診する患者は推計で、アルコール依存が4万3千人だが、ギャンブル依存は500人未満だ。

 一方、同省の研究班は、国内でギャンブル依存症の疑いがある人が536万人と推計。国内では既に競馬や競輪、宝くじなどの公営ギャンブルが合法で、法律上は「遊技」とされるパチンコ店も約1万2千ある。この上、広くカジノに出入りできるようになれば、依存症の増加など社会に深刻な問題をもたらすとの見方が専門家には根強い。

 長年、治療に取り組む北海道立精神保健福祉センターの田辺等(たなべ・ひとし)所長は、海外に比べ身近な場所にギャンブルが浸透している日本は「学歴が高く、家庭もある普通のサラリーマンや主婦にも潜在的な『待機患者』がたくさんいる」と指摘する。

 ▽社会的損失

 田辺所長によると、治療に当たる医師や臨床心理士ら専門家は少なく、100以上ある自助グループは都市部中心で支援が届かない患者も多い。厚労省は先月、五つの医療機関を依存症全般の治療拠点に指定し、対策に力を入れ始めたばかりだ。田辺所長は「依存症を増やすのは簡単だが、回復を助ける人材の育成は大変な時間がかかる」。

 多重債務問題に詳しい新里宏二(にいさと・こうじ)弁護士(仙台弁護士会)も「カジノがある韓国では自殺や犯罪の抑止対策、労働意欲の低下などによる社会的コストが、ギャンブル産業の売上高を大きく上回るとの試算がある。負の影響は数年たって初めて表れる」と警鐘を鳴らす。

(共同通信)

2014/10/26 16:36

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