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【社説】

御嶽噴火1カ月 火山の国で暮らすには

 御嶽山の噴火から一カ月。列島の火山は、その間も休むことなく活動を続けている。火山災害の恐ろしさをあらためて胸に刻み、わたしたちは、それでも前向きに火山と共存していかなくては。

 五十七人の死亡が確認され、なお六人が行方不明。火山災害としては戦後最多の犠牲者が出た御嶽山の噴火で思い知らされたのは、不意打ちの恐ろしさだ。

 噴火に先立ち、気象庁は三回、火山活動の推移に注意を促す解説情報を出していた。しかし、噴火警戒レベルは「1、平常」が継続され、異変の兆しは周知徹底されなかった。

 御嶽山に続き、宮城、山形両県にまたがる蔵王山の動きが怪しくなった。九月三十日以降、火山性微動が断続し、火口湖の一時的な白濁も確認された。仙台管区気象台は十月九日、こちらも「平常」継続のまま解説情報を出した。

 宮城、山形両県は火口湖周辺や登山道の入り口の十カ所に注意を促す看板を設置し、万一の際は山頂のレストハウスや避難小屋に逃げるよう明示した。同時に、その避難場所となる四カ所にヘルメットや水、誘導用のメガホンなどを運び込んだ。

 二十四日には、鹿児島、宮崎県境の霧島連山・えびの高原で小規模な噴火の可能性がある、と福岡管区気象台が警報を発表した。宮崎県は登山客に対し、航空機で上空から下山を呼び掛けた。

 もちろん、日々の火山活動の変化が直ちに噴火に結び付くわけではないが、空振りを恐れてリスクの周知徹底をためらってはならない。今回の蔵王山、えびの高原のような踏み込んだ対応を大切にしたい。火山と共存していくには、まず、正しく恐れなくては。

 巨大なカルデラ(陥没地形)をつくる巨大噴火が今後百年間に日本で起きる確率は約1%とする試算を神戸大の巽好幸教授らが発表した。列島の巨大カルデラ噴火は過去十二万年に計十回起きていることから計算されたものだ。

 統計学的な数値に浮足立つ必要はなかろうが、過去の事実に目をつぶるわけにもいかない。

 火山の国で暮らす以上、リスクがあるなら皆で情報を共有し、減災の努力を怠ってはならない。

 幸いなことに、情報を共有するための手段は、ひと昔前に比べて格段に進歩した。携帯電話やスマートフォンは素早く広く、情報を伝えることができる。

 犠牲になった人々の死を無にしてはならない。

 

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