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<福島県知事選>論戦遠く結論は「棄権」

福島再生の願いが込められた票が次々と仕分けられた=26日午後8時15分ごろ、福島市の国体記念体育館

 離郷を強いられた人たちに候補者の訴えは遠かった。26日投開票が行われた福島県知事選で、前副知事の内堀雅雄さん(50)が初当選した。福島再生の針路を決める重要な選挙だったが、政策論争は低調。投票率は45.85%と低迷した。とりわけ県外避難者4万6000人に論戦は現実味が薄く、古里の将来像を描けず、棄権した人も少なくなかった。

◎県外避難者、疎外感/判断材料乏しいまま

<県政に不信感>
 「誰がどこで演説しているのか、何を訴えたいのかもよく分からない」
 飯舘村から栃木県上三川町に避難する会社員男性(44)は、一票を投じることができなかった。
 選挙公報は届いたものの、舌戦は直接耳に入らない。インターネット選挙も解禁されたが、自宅はネットに接続していない。
 「選挙がこんなに遠いとは。自分のたった1票では、きっと何も変わらないだろう」
 判断材料が圧倒的に乏しいことに気付いた時、諦めと疎外感を感じずにはいられなかった。
 川内村から千葉県東金市に身を寄せる武田敏さん(71)も迷った末に棄権した。「どの候補もその場しのぎの言葉だけ。期待できる人がいなかった」と打ち明ける。
 根底にあるのは県政への不信感だ。県からアンケートは何度も届くが、現況を確かめる内容ばかり。避難者の声をくみ取ってもらえているとは思えない。以前の田舎暮らしに戻るのは無理だと思っている。

<「国と対等に」>
 一方、南相馬市小高区からさいたま市に避難する農業横田芳朝さん(69)は、介護をしている93歳の母親が体調を崩し、不在者投票の機会を逃してしまった。
 「母親もおり、わざわざ南相馬に戻って投票するわけにもいかない。恥ずかしながら今回は棄権してしまった」とため息をついた。
 南相馬の自宅には果樹園と田んぼがある。
 「除染をしても放射線量は高い。でも、いつの日か農業を再開して復興を支えたい」
 横田さんは古里をずっと思い続けてきた。福島の地元紙を購読し、知事選では候補者情報を毎日かき集めた。だが、今回ばかりは、南相馬と埼玉と間に横たわる「距離」の前に投票を諦めざるを得なかった。
 「国は東京オリンピックのことで被災者のことを忘れている。新しい知事は、福島のことを考えて国と対等に交渉してほしい」。横田さんは無念さを口にした。

<薄い政治の影>
 県内の避難者にとっても政治の影は薄い。
 浪江町から福島市の北幹線仮設住宅に避難する80代女性も、投票所に足を運ばなかった。
 「今まで選挙のたびに期待したけれど、選挙が終わったら約束を忘れる人ばかり。仮設住宅に暮らしてもう3年以上。惰性で生きる私にとって、知事選なんて遠い話」

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▽内堀氏、大差で初当選
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▽解説・原発終始踏み込まず
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▽評論・しがらみ知事の足かせ
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▽論戦遠く結論は「棄権」
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▽投票率2番目の低さ
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2014年10月27日月曜日

関連ページ: 福島 政治・行政

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