マルナカは、総連の「本部ビルは北朝鮮の大使館」という立場に頓着しなかった。反論するように記者会見を開き、白井一郎顧問弁護士は、「総連に貸すことは考えていない。所有権取得後は、速やかに明け渡しを求めて行く」と述べた。
この時点で、政府は中立の立場を取っていた。マルナカが日本企業で、入札の目的が純投資であるのが明らかだったからだ。池口氏やアヴァール社のように北朝鮮の“影”は浮かんでこなかった。
政府に「超法規的措置」を求めた朝日国交正常化担当大使
しかし、マルナカ落札の直後、3月末に1年4ヵ月ぶりに日朝局長級協議が再開され、北朝鮮側は、総連本部ビル競売問題を突き付けた。「朝日関係に大きな影響を与える」と、競売問題に政治的決着を求め、日本側が「司法判断であり、政治介入はあり得ない」と切り返すが納得しない。
協議を終えた宋日昊(ソン・イルホ)朝日国交正常化担当大使は、「実務的な法律上の問題ではない。解決しなければ、朝日関係の進展自体、不要なものになる」と、述べた。
「超法規的措置」を求めたわけで、ここから3者の模索が始まり、官邸はマルナカの中山明憲社長に近い政治家を動かして、所有権移転後の売却を説得。マルナカは高額の引き取り先を求めて水面下で活動、総連は“受け皿”を準備するといった前述の動きにつながるのである。
こうした動きと連動するのが京都の土地問題だ。京都駅前に、武富士が同和団体に地上げ資金を提供。ほぼ完了して塩漬けになった3300坪の広大な土地が眠っている。
曲折の末、現在、総連系企業が保有するのだが、約50億円で同社が購入した土地が、最低でも80億円、高ければ100億円で売却できるとして、売却話が不動産業界に流れ、買い付け証明が飛び交っている。売却話が過熱しているのは、この総連系企業が総連本部ビル売却の“受け皿”と目されているためで、既に事態は、マルナカへの所有権移転とその後の売却まで見越した動きになっている。
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