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AMD,新世代ハイエンドGPU「Radeon HD 7970」を発表――Southern Island世代のGPUアーキテクチャを整理する
4Gamerでは,米テキサス州オースティン市にあるAMDの「Lone Star」キャンパスで開催された事前説明会「Tech Day」に参加してきたので,今回はその内容を基に,Radeon HD 7970の詳細へ迫ってみたい。
Tech Dayの会場となった,米テキサス州オースティン市のAMD・Lone Starキャンパス |
Tahitiコアを採用したRadeon HD 7970のチップ。ダイサイズは365mm2とされる |
氏によれば,そんなRadeon HD 7000シリーズが置き換える予定の従来製品は以下のとおり。いずれも2012年第1四半期中に市場へ投入される計画だ。なお,Radeon HD 6700シリーズ以下の製品は継続販売されるという。
- Radeon HD 7900(Tahiti):Radeon HD 6970以上
- Radeon HD 7800(Pitcairn):Radeon HD 6950とRadeon HD 6870
- Radeon HD 7700(Cape Verde):Radeon HD 6850とRadeon HD 6770
さらにSkinner氏は,Tahitiチップを2基搭載するデュアルGPU製品を投入予定であり,その開発コードネームが「New Zealand」(ニュージーランド)であることをシルエットで示唆している。
ピーク浮動小数点演算性能は3.79TFOPS
世界初のPCIe 3.0&DX 11.1対応カードに
また,世界で初めて,PCI Express 3.0,そして,Windows 8で採用される「DirectX 11.1」に対応することもトピックである。
Radeon HD 7970とRadeon HD 6970の主なスペックを表にまとめてみたので参考にしてほしい。詳細は後段で述べる。
同社でグラフィックスアーキテクチャの開発を統括するEric Demers(エリック・デメル)CTOは,ATI Radeon HD 2000以降で長らく採用されてきたVLIW(Very Long Instruction Word)方式を引き合いに出しつつ,「依存関係にない複数の命令を1命令としてまとめて実行できるVLIW方式も,グラフィックス用途では十分に活用できるアーキテクチャだが,GCNは汎用コンピューティング用途などでも優れたパフォーマンスを発揮できるアーキテクチャだ」と,GCNを位置づけている。
根幹の設計を維持しつつ
それ以外を大きく拡張したGCN
ALUというのはArithmetic Logic Unit(演算論理装置)のことで,要するにSPのこと。つまり,GNCでSPの演算機能に手は入っておらず,単精度の浮動小数点積和演算・積和算・乗算・加算と整数演算のみをサポートしたものだということだ。言い換えると,VLIW5アーキテクチャにおける“ビッグSP”のような,倍精度演算や超越関数演算に対応した特別機能ユニットは搭載されていない。
GCNの最小単位となる「GCN Compute Unit」(以下,GCN CU)は,16基のSPからなる「Vector Unit」(ベクトルSIMDユニット)を4基と,1基の「Scalar Unit」(スカラユニット),4基のテクスチャフィルタリングユニット,容量16KBのL1キャッシュを搭載。GCN CUごとに命令発行ユニットやロード/ストアユニットを搭載するほか,4基のGCN CUで共有する容量16KBの命令キャッシュと同32KBのデータキャッシュも持ち(※詳細は後述),GCN CU単体でカーネル処理を行えるようになっているのが特徴だ。
GCN CUに搭載されたScalar Unitは,完全な整数演算機能を備え,コントロールフローや,AMD製GPUの演算実行単位である「Wavefront」(※64スレッドをまとめたもの。32スレッドを1つの演算実行単位とするNVIDIAの「Warp」と似た単位)の制御を行うことで,Vector Unitを効率よく機能できるようにするものである。
Radeon HD 7970が2048基のSPを搭載するというのは上で述べたとおりだが,GCN CUあたり64基のSPを搭載するため,GCN CU数は32基ということになる。32基のGCN CUは,16基のGCN CUブロックごとにジオメトリエンジンが用意されるので,Radeon HD 7970は2基のジオメトリエンジンを搭載する計算だ。
ベンチマークテスト結果を示したDemers氏によれば,テッセレーションによるポリゴン分割数が多ければ多いほど,Radeon HD 6900シリーズよりも優れた性能を発揮できるとのことだ。
序盤で384bit幅と紹介したメモリインタフェースは,ブロックダイアグラムからも見て取れるように64bit×6。このあたりは競合の「GeForce GTX 580」と同じだが,組み合わせられるメモリチップがデータレート5.5GbpsのGDDR5となるため,メモリバス帯域幅は競合の最大192GB/sを大きく上回る264GB/sに達する。
従来,メモリインタフェースとROPユニットは対になっていた――Radeon HD 6970の場合,2基のRender Back-Endが64bitメモリコントローラとペアになっている――のに対し,Tahitiでは,メモリインタフェースの拡張に伴って,Render Back-Endとメモリコントローラとがクロスバー接続されるよう,設計変更がなされている。これにより,より柔軟な負荷配分ができるようになり,ROPの利用効率を引き上げているのが大きそうだ。
明らかになったRadeon HD 7970のスペック
3D性能だけでなく省電力性,静音性も向上
具体的には,GPUコアに複数のデジタルセンサーを搭載し,より厳密に電力を制御できるようにしつつ,従来よりも細かなステップで動作クロックを変更できるようにして,電力効率を向上させるようになっている。AMDはこの新しいPowerTuneを使い,消費電力をできる限り引き下げるとともに,カード設計上の最大電力をフルに使って,性能を向上させることにも役立てようとしているのである。
Radeon HD 7900シリーズで採用された最新のPowerTuneにより,きめ細かなクロックゲーティング(=クロック変更)が可能になった |
一般的な3Dアプリケーションは,動作にGPUの最大消費電力を必要としない。その余力をクロックアップに振り分け,パフォーマンス向上を果たすという。「AMD Turbo CORE Technology」に似たものと言えるかもしれない |
この電力制御は,アプリケーションごとに独自の電力プロファイル――AMDはこれを「Power Signature」と呼んでいる――を付与することで実現するとDemers氏は述べているので,「Catalyst Control Center」から設定できるようになる可能性が高そうだ。
ZeroCoreは,Windowsの待機状態が長時間続き,ディスプレイの電源がオフになった「ロングアイドルモード」時に,カード上にある回路のうち,PCI Expressインタフェースを除く部分への電力供給をカットすることで,待機電力を3W以下に抑えられるという機能だ。Nekechuk氏は,「ZeroCoreを使えば,CrossFireX環境における消費電力を大幅に低減できるため,もっと気軽にマルチGPU環境を試せるようになるのでは」との期待を口にしていた。
なお,同氏によれば,ディスプレイがオンのままの,いわゆる一般的なアイドル時における消費電力は,「28nmプロセスの採用によって15W以下に抑えられている」とのことだ。
ファンの排気は「ケース内部に排気されたりすることなく,ファンの後方のみに排気されるよう,設計を変更した」(Nekechuk氏)そうで,Radeon HD 6000シリーズに対するユーザーの意見を受けて,冷却機構の改善が施されている(※厳正を期せば,電源コネクタなど,排気が漏れる部分もあるが)。
なお,2個のBIOS ROMを搭載し,切り替えられるようになっている「Dual BIOS Toggle Switch」を標準で用意していたり,接続方法次第で最大6画面のEyefinity出力に対応していたりするのは,Radeon HD 6900シリーズから変わっていない。
残念ながら,発表時点ではカードを入手できていないため,“大本営発表”以外のスコアをお伝えするには少し時間が必要だが,「新しいアーキテクチャを採用したこともあり,Radeon HD 7970の性能チューニングは,まだ十分と言える状態ではない」(Nekechuk氏)とのこと。その意味で,GCNという新世代アーキテクチャには期待が膨らむところである。
何はともあれ,カードを入手し次第,レビュー記事をお届けしたい。また,CrossFireXやそのほかの注目要素に関しては,後日,あらためて紹介したいと思う。
※2011年12月22日18:15追記
3D性能速報記事を掲載しました。
AMDのRadeon HD 7970製品情報ページ(英語)
日本AMD公式Webサイト
- 関連タイトル:
Radeon HD 7900
- この記事のURL:
(C)2011 Advanced Micro Devices, Inc.
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