オートノミー(ティッカーシンボル:OTIC)は最近新規株式公開(IPO)されたバイオ企業です。

同社は耳の疾患に特化しています。

人間の耳は下のような構造をしています。

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緑色の部分が鼓膜、その左側が外耳(Outer ear)、鼓膜のすぐ内側が中耳(Middle ear)、そして青い部分が内耳(Inner ear)です。

外耳で起こるのが外耳炎で、これは水泳の選手がよく罹ります。

中耳炎は子供がよく罹ります。

図中、渦を巻いた部分は蝸牛殻(かぎゅうかく=cochlea)と呼ばれ、別名、渦巻き管とも呼ばれます。ここは聞く力や平衡感覚を司ります。ここが悪くなる病気に、メニュエール病があります。

外耳に疾患がある場合、抗生物質をドロップで投与します。でも中耳、内耳は、そう簡単にはいきません。

中耳の場合、飲み薬で治すのが普通です。でもこれは効き目が薄いです。また薬物抵抗性が出る場合もあります。

浸出液が出る患者の場合、鼓膜切開手術でチューブを差し込みます。

その際、抗生物質のドロップを使うこともあります。でもそれはすぐ流れてしまいます。

それを示したのが下のダイアグラムです。薄いグレーのギザギザのグラフが、従来の治療法です。縦軸は薬の強さを示していますが、オートノミーのオーリプロは患部に集中してお薬を届けることができます。横軸は時間を示しており、一回の処方で20日以上もお薬が働き続けるわけです。

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このようにオーリプロは一回だけ。しかも抗生物質が必要なところに集中的に投与できるのです。だから何回もお医者さんのところへ行く必要はありません。


オーリプロは持続露出型製剤法と呼ばれる技術を使っています。それは温度に反応するポリマー(重合体=化合物)を混ぜることで、体温で液状の薬がジェルに変わるという技術です。

患部で固形物になるので、お薬が流れてしまわないわけです。

オーリプロは、この持続露出型製剤法に、既に市場に出回っている抗生物質、シプロフロキサシンを混ぜてやったクスリです。

既に500人に対する臨床試験(フェイズⅢ)が完了しており、副作用なし、薬効が十分にあることが確認されています。

このデータを基に、同社は2015年上半期に米国食品医薬品局(FDA)に対して新薬の申請をする予定です。

オートノミーはもうひとつメニエール病むけのOTO-104というクスリを開発中です。こちらはフェイズⅡです。

メニエール病は、激しい回転性のめまいや難聴の病気です。これは抗生物質の代わりにステロイドを先述のポリマーに混ぜてやる方法です。

同社の場合、ドラッグ・デリバリー・システムに工夫があるわけで、お薬自体は既に承認され、世間で広く使用されているシプロフロキサシンやステロイドを使っています。その関係で、新薬承認に際しての却下リスクは他のバイオ企業より低いと思われます。

全米では毎年百万人が鼓膜切開手術をします。つまり耳の疾患のマーケットは意外に大きいのです。なおパテントは2030年までです。

otic